医師が教える幸福な死に方 角川SSC新書 (SSC新書)

著者 :
  • 角川マガジンズ(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047315730

感想・レビュー・書評

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  • 回復の見込みがなければ延命措置をせず大人しく亡くなること。これが自然の摂理で幸せな死に方なのだろう。

  • 100を超えて活躍する高齢者をポジティブに祭り上げせず現実の高齢者問題に目を向ける、そしてエンディングノートは用意しておく。
    長生きすることが疎まれる時代になろうとは昔の人は思いもよらなかっただろうな。

  • クオリティ・オブ・デス(QOD)死の質。自分の死について意識し、本人の理想とする生き方をして亡くなっていく。そして、残された家族にも個人に対する後悔の念を残さないような生き方をする。そのためには死ぬまでにしておくことを決め、死に際しては、延命処置の要不要を自分で選択する。巻末に、書き込み式エンディングシート(医療処置意思確認表)がついている。

  • 終末期医療を中心に、死の準備へのアドバイス。平易な中にも温かみがあり、心にしみた。

  • QODとは本人の理想とする生き方をして亡くなっていく。そして、遺された家族にも故人に対する後悔の念を残さないような死に方をする

    寿命の質を示す健康寿命
    QOLを保ち、よりよいQODを達成するためには、私たち一人一人が、健康寿命ということを念頭におき自分の健康を自分で管理する必要があります。また、死に臨むときにはどういう処置をしてほしいのか、どういう終わり方をしたいのか、人生の設計図を描いておかなくてはならないのです。

    日野原重明さん100歳で聖路加国際病院名誉院長
    柴田トヨさん、98歳でベストセラー詩家
    昇地三郎さん、105歳「しいのみ学園」創設

    健康寿命と平均寿命は7〜9歳くらい差がありますから、この差の期間は、寝たきりのような状態で過ごさなければならないわけです。

    清水由貴子さんは母親の介護に疲れて自殺

    日本の人工透析は、一人当たり年間400〜500万円の医療費がかかります。
    日本の総人口の400分の1の人たちが医療費の30分の1を使っている

    生活習慣病関連の医療費は、国民医療費全体の3分の1にのぼる
    病気か病気でないかのグレーゾーンの人を掘り起こして薬付けにしている

    カソリック神父のアルフォンスデーケン先生は、死をタブー視する日本をつぶさに見て、日本における「死の準備教育」の重要性をずっと訴えてきました。

    人は必ず死ぬのだ、一人称の死を切実に考えることが意外にむずかしい

    キューブラー・ロス女史の「死の5段階理論」
    自分が死ぬということはウソでないかと考える否認
    なぜ自分が死ななければならないのかという怒り
    なんとかしなうに済むには何をすればいいかという取引
    どうにもならないというあきらめと抑うつ
    最後に自分が死にいくことを受け入れる、受容
    これに「期待と希望」を加えるのがキリスト教徒

    ストレスを受けると、交感神経が優位になり、交感神経の末端からノルアドレナリンが分泌されます。そうすると、副腎皮質からステロイドホルモンが分泌され、血小板が集まって固まるのを促進します。血管も収縮して、血液がドロドロになって流れにくくなり。熱を運べなくなるため、冷えが起こるのです。

    吉田茂首相の側近として活躍した白州次郎は「葬式無用、戒名不要」という実に潔いシンプルな遺志を示しています

    自宅で死を迎えるために
    地域の地域包括支援センターに相談すると、往診をしてくれる病院、訪問看護ステーションを紹介してくれます

    家政婦さんや介護ヘルパーに支払う料金は、1日24時間働いてもらうと自費で約2万円必要になり、1ヶ月約60万円です

    我が国では、積極的安楽死を行うと医者が殺人罪に問われてしまいます。人工呼吸器や人工透析など中断すれば死に至る治療を始めてしまってから中止するのは家族にとっても医者にとっても非常に重い決断となります

    現在、末期の認知症患者の約80%が、胃瘻が施されている。約30〜50万人の人が胃瘻で「生かされている」

    医療従事者たちは、とりあえず、栄養を補給しておけば安心と考えて胃ろうを選択しがち

    回復が見込めない場合、栄養補給も拒否する意思表示をしておいた方がいい

  • 僕自身40歳を過ぎて、死に方というのを強く意識するようになっている。その時に、「本人の理想とする生き方をして亡くなっていく。そして、残された家族にも故人に対する後悔の念を残さないような死に方をする」という考え方が、すごく共感できたし貴重な知識を多く得られたと思う。

  • 日本人の平均寿命は男が79.6歳で2位、女が86.5歳で1位@2009(p15)だそうです。世界平均が65歳程度であることを考えると長寿であり望ましいことですが、一方でいつまで健康で人生を楽しめるかということも重要であると思います。

    基本的にお医者さんは延命治療をしますので、その場合は、それを支える人たちや治療を受けている本人にとって、精神的・経済的に大変な思いをされると思います。

    この本では、普通の人と比較して「死」にお付き合いをしている川嶋医師が、幸福な死に方とはどんなものであるかを提案しています。まだ健康だと思っている私はこれまで「死」について考えたことは無かったので、この本を読んでそれについて考えてみる良い機会となりました。

    「死」に対する準備をするといこうとは、今をいかに悔いなく幸せに過ごすかに繋がることも私は発見することができました。

    以下は気になったポイントです。

    ・2025年には高齢者に該当する65歳以上の人口比率が30.5%になる、現在でも国民医療費総額の約半分は、65歳以上の医療費が占めている、一人当たり2300万円と言われる生涯医療費の半分は70歳以上になってから消費する(p13)

    ・平均寿命から「要介護による自立できない期間」を引くと健康寿命となるが、日本人は男:72.3歳、女:77.7歳で世界一、平均寿命との差である7-9年間が介護を必要とする期間(p16)

    ・一般病棟では、医療法の改正により、入院日数が90日を越えると病院にとってはコスト上、割にあわなくなる(p21)

    ・100歳以上の超高齢者の65%の人々は寝たきりである(p23)

    ・第1級障害者である人工透析患者は、薬代が無料、病院としては治療費が年間400-500万円なので病院は患者のわがままを聞くことがある(p45)

    ・アメリカでは死因のトップが「がん」から、加齢による「循環器疾患=脳卒中、心筋梗塞等」がトップになった(p52)

    ・アメリカでは、ほんの一部の高齢者や障害者、低所得者以外は、それぞれが民間の保険に入り、そのレベルにより受けられる治療が違い、しかも高額、全人口の15%程度を健康保険に加入させる国民皆保険は2014年から実施予定(p61)

    ・がんは、死を迎えるにしても数カ月から数年の猶予をくれるので、人生をいかに終わらせるか、死へのスケジュールが立てやすい(p77)

    ・鳥は朝日が昇る45分前に鳴き始める、日の出前に起きる習慣を続けることで、病気を起こしてしまった自分の肉体や精神の不備に気づいて、生活習慣を改めることで奇跡は起こることを悟った(p78)

    ・病名がついている病気のほとんどは、自分の体の中で作ってしまう、生活習慣病等の病気は、その根本原因がわかっていない(p92)

    ・冷えや「がん」の原因は、心のストレスである、若い世代の癌は、心の問題が関連している場合が多い、自己治癒力が低下してしまった結果、発症する(p97)

    ・治療を選ぶときは、「自分が主体」になれて、「自分が幸せになれる」医療かを見ることがポイント(p115)

    ・予定寿命を設定したら、1)やるべきこと、2)できること、3)やりたいこと、を整理してリストアップする(p122)

    ・生前にどんどん整理をしておくべき、膨大な量の品物を残されたまま死なれると、残された人たちは大変な思いをする(p130)

    ・延命医療をどのように受け入れるかは、「事前指示書」あるいは「尊厳死宣言書」によって意思表示ができる(p144)

    ・日本では延命治療の是非については、尊厳死法が法制化されていないので、あいまいである、日本尊厳死協会が「リビング・ウィル」の発行、登録、保管を行い、いざというときには主治医に示すことになっている(p144)

    ・一度、延命してしまったら、「もういいや」と、人工透析を中断することはできない(p170)

    ・本書を機会に、自分なりの死に方を考えることを推奨する、常に死を傍らに意識することは、必ず人生を豊かなものにしてくれる、一日一日に感謝して、丁寧に生きようと思えるはず(p171)

    ・病気は本人が自分で作りもすれば、自分で治すこともできる(p174)

    2012年8月5日作成

  • 日本の平均寿命が女性が世界第2位、男性が第8位に後退したとのニュースが最近ありましたが、その原因は大きくは震災によるもの(震災を除くと寿命は延びている)で、そのほか20代女性の自殺が増えてきていることも要因とのこと。(http://news.mynavi.jp/news/2012/07/27/086/

    そんな中、日本においては今で死を日常から遠ざけてきている傾向があったが、死を意識することも、少し身近になってきたのではないかと思う。本書は日常から死を意識して、生活の質を高めるQOD ( Quality of Death )を提唱している。とくに死を迎える前に、自分がどのような死を望むかを宣言し、家族などに理解を求めるとともに、日々を生き生きと過ごすことが大事であると。

    1年に1回程度、どんな死を望むかを考えるのも、よさそう・・・と思った一冊でした。

  • 仕事で「なかなか死ねない」高齢者を見ているので、たしかに無駄な延命治療は必要ないと思う。この本にも書いてあるように100歳を越しても元気に活躍されている有名人を見ると、自分も100歳まで生きても元気でいられるように気持ちになるかもしれないけど、現実は100歳以上の高齢者の65%が寝たきり。
    認知症は加齢に伴う病気だから、長生きしたら誰でも認知症になる。でもそれって自然なことだと思う。年をとってだんだん弱って頭もぼけて自然に亡くなるのが半世紀前は当たり前の姿だったんだから。
    介護保険があっても介護者は辛くて長い苦しみを味わう。私の利用者さんの娘さんは本人の前で「死ねばいいのに」って言ったけどそれが本音。言わない家族だってそう思わないわけではない。

    ただ、死ぬまで健康寿命を保つために賢い患者になれるようにすることが大切なのはわかるが、納豆が健康に良いとテレビで言うとスーパーの棚がからっぽになったりするのが今の日本人の有様。
    利用者さんもそうだけど、こうならなきゃダメだよ、こうしないとダメだよと言っても変わろうとしないけど、自分からもっと良くなりたいと言う気持ちが湧いてくるように持っていくと意外に頑張れるしどんどん変わって行ける。声高に叫ぶだけでは人は変われないと思う。
    著者はそういう人間の弱さに対する理解が少し足らないような気がした。

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著者プロフィール

医学博士。神奈川歯科大学大学院統合医療学講座特任教授。
北海道大学医学部医学科卒業。東京女子医科大学大学院医学研究科修了。ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院、東京女子医科大学などを経て現職。
冷え研究の第一人者。人の自然治癒力を高めることを重視し、現在は、近代西洋医学と補完・代替医療を統合した医療の教育を日本の医療系の大学で実践中。
主な著書に、『毎日の冷えとり漢方』(河出書房新社)、『心もからだも「冷え」が万病のもと』(集英社新書)、『死に方改革』(ワニブックスPLUS新書)など多数。

「2022年 『終末までの生き方。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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