大研究! 中国共産党 角川SSC新書

著者 :
  • 角川マガジンズ(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047315976

作品紹介・あらすじ

急速な経済成長の反面、格差と腐敗、言論統制、大気汚染など難題が山積している習近平新政権。しかし、旧ソ連・東欧諸国の共産党政権が崩壊したなか、なぜ中国だけが急速な台頭を遂げられたのか。それは、イデオロギーのみに固執せず現実主義の実践を徹底。日本も真似のできない長期成長戦略の策定、優秀な人材確保・育成、危機管理などの強固な国家マネジメントが存在するからである。豊富な現地情報と独特の視点で中国共産党という巨大組織の強みと弱みを浮き彫りにし、日本人の知り得ない真実に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 「中国共産党」という世界でも異質な政府を取り上げつつ、中国の近現代史、現状、未来を論じた良書。
    中国の反日教育はひどいと思いつつも、確かに日本人も穿った見方で中国を見ているなと再確認した。

    社会主義でありながら資本主義経済を導入する中国型の「資本主義社会計画経済」は極めて現実主義的であった、という視点から中国の経済発展の理由を説明する前半。
    「打倒資本家」をスローガンに徹底した資本経済の排除を目的としていた旧ソ連と異なり、毛沢東は革命後に「資本家を取り込む」方向に切り替えたという話は面白い。まさに現実主義。つまるところ、旧ソ連型のイデオロギー型社会主義でなく、現実主義型社会主義を採用したのが、中国が唯一生き残った理由なのである。
    数年前の薄キョ来失脚事件も、共産党がイデオロギー主義者の復活を阻止した「現実主義」重視の好例だ。
    他にも北京中央部勤務者は、年の1/3を地方で研究に費やせというのも素晴らしい制度と思う(日本の政治家の「地方巡業」と異なり、地方特有の問題を発見→研究→解決をワンセットとしたガチガチの実務出張とのこと。かつ、同研究の執行に至っては、様々な機関と頻繁に意見交換され、数万人が間接的に関わることになる)。
    この徹底的な現実主義は、確かに日本人の目にはリベラルでなく、危険な雰囲気を纏う存在として映るかもしれない。ただし、その実、戦闘力は極めて高く、民主主義的な要素を豊富に含んでいるというのは、日本ではあまり報道されない。リーマンショック時、翌日に金利引き下げを行う等迅速な対応でいち早く窮地を脱した中国を(悔しいが)見習う必要性はある。

    後半は共産党政権が抱える問題を切り取る。。共産党というあまりに強大な執行機関は、経済に与える影響も大きい。トップが変わるとその下も派閥人事で一変する中国は、人事異動が上であればあるほど、国内が一気に混乱してしまう(総理が変わってもトヨタが潰れないのは、日本の官僚の凄いところだ)。

    日中関係、米中関係についても述べる。石原慎太郎氏は国粋主義者として国民受けは良いが、その実、尖閣問題で日本経済(特に青島の日本企業)に大ダメージを与えたことは、しっかりと覚えておくべきと思う。
    米中は、互いに経済的に依存しているから絶対に紛争には持ち込まない(つまるところ、領土問題で日本の代理戦争を担うほど肩入れはしない)という事実は使い古された理論であるが、これもしっかりと認識しておくべき。

    最後に、本著者は「歴史の経験則」という言葉を多用する。「休息に経済発展した国は、軍国主義化した(日本、ドイツ、アメリカ)」。「人民革命国はその後の経済発展が痛烈に送れる(東南アジアにおけるフィリピン)」など。これはあくまで過去の事例で、未来に当てはまるかは分からないことだけど、これこそ歴史を学ぶ意義だと思うし、人類の至宝と思う。

    小気味良いテンポと平易な分、お勧めです!

  • 共産党の凄さも読ませられる。
    社会システムの違いの善し悪しもあるが、日本の政治家、官僚の莫迦さが毎度浮き彫りにはなる。
    いずれにせよ、この国と対抗出来ると思ってるのかね。

  • 「中国共産党は崩壊しない」という著者の基本的な考え方に沿って書かれている。主張が強すぎるでもなく、日本人にも違和感なく読んで理解できる。特に、中国共産党は中東の独裁国とは異なり党内にそこそこ健全な闘争があって人選されている、地方政治をちゃんと経験してから国政に関わるシステムになっており、日本の政治家より優秀。など鵜呑みにしないまでも耳を傾ける価値あり。とても勉強になった。

  • 単眼思考に陥ってしまった晩年の毛沢東だが、若い日は徹底した現実主義者だった。毛沢東は共産主義は資本主義に必ず勝つ、共産主義の優越性を必ず証明しなくてはならない、という考えに完全にとらわれており、大躍進政策が失敗したにも関わらず冷静さを取り戻さず文革が起こった。
    中国はシンガポールのリークアンユーから国家マネジメントを学んだ。一党独裁で中国と似ていた。

  • 比較的客観的に中国共産党のことを書いていると思いますが、やはり著者が中国人であるためか、問題点から意識的に目をそらしているのか、見えていないのか、ところどころ突っ込みが足りないと感じるところもあります。それなりに厳しい見方も織り交ぜてはいますが、むしろ日本側に責任転嫁しているように感じられるところもあります。嫌中論者が読んだらツッコミどころ満載かもしれません。

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著者プロフィール

(しん さいひん) 多摩大学大学院フェロー。株式会社中国ビジネス研究所代表、中国ビジネスフォーラム代表。1944年、中国江蘇省海門市生まれ。81年、中国社会科学院大学院修士課程修了。三井物産戦略研究所中国経済センター長を経て、08年4月より多摩大学・同大学院教授。15年4月より現職。主な著書に『中国の越えがたい「9つの壁」』『大研究! 中国共産党』『今の中国がわかる本』『検証 中国爆食経済』『中国経済の真実』など。

「2018年 『中国新興企業の正体 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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