バカをつらぬくのだ! バカボンのパパと読む老子・実践編 (角川SSC新書)

  • KADOKAWA/角川マガジンズ
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047316768

感想・レビュー・書評

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  • わたしにとってドリアン助川さんは、パフォーマーというより「人生相談の人」。新聞や雑誌で目にするその文章にはいつも、不思議な説得力を感じてきた。これは「バカボンのパパと読む『老子』」に続くものらしい。そっちも要チェックだ。

    本書では、「老子」の文章を引きつつも、著者がそれを咀嚼して自分の言葉で身近な例を挙げながら語る内容となっている。最初のあたりは、特に新味があるわけではないなあなどと思っていたが、だんだんひきこまれて、フンフンなるほどと、一気に読んでしまった。まったく威嚇的でないやわらかい語り口の中に、確かな芯があると思う。

    「老子」は確かに「論語」とは比較にならないくらい面白い。そして、難しい。すごく哲学的なのだ。本文に「中国大陸のインテリ家庭は、人目につく応接間には『論語』を置き、寝室の枕元には『老子』を隠しておくとよく言われます」とあるが、いやいや、これは実によくわかる。ままにならないこの世を落ち着いた心で生きていく叡智がここにあるのではないかと思わせるものが、「老子」にはある。

    引用されている「老子」の文章のすべてがわかったとは言えないけれど、「老子」に書かれていることや、他の人の言葉として紹介されているもの、ドリアン助川さんの言など、随所にうんうんと納得したり、むむむと考えさせられたりするものがあった。

    「世界はあなたの散歩道であり、最初からあなたのものなのです。わざわざ三十年ローンを組まなくても、この星は始めからあなたに与えられています」

    「There is no way to peace, peace is the way. (平和に至る道というものはない。平和とは道そのもの、やり方のことなのだ)」

    「まっすぐな人はぶれぶれなのだ。 … だって、ぶれない人なんて思考を放棄しているに違いないのですから」

    今回もっとも心に響いたのは、仏陀(著者は人間としての姿に共感して「ゴータマさん」と呼んでいる)の言葉。ゴータマさんたち原始仏教集団は、人々の施してくれるものを日々食べる。施されたものは何でも、すべて食べる。彼らをよく思わない人が入れた牛糞だって食べたそうだ。そのゴータマさんがただ一つ受け取らなかったものがあり、それは自分たちを罵倒する言葉だった。「私たちはなんでも受け取りますけれども、その言葉は結構です。どうぞお持ち帰りください」と言い返して。

    「老子のおじさんも同じことを言っているのです。私たちの肉体は何でもかんでも受け取りたがる。だから屈辱的な言葉もそのまま自分のものにしてしまう。しかも後生大事にそれをいつまでも抱え … 苦しんでいる。やめなさい、もう今日限りそれを相手に返してしまいなさい、心から消してしまいなさいと言っているのですね」

    ドリアン助川さんは、ゴータマさんの台詞は、言葉で傷つけられ、今も苦しんでいるというみなさんにとって参考になるかと思うと書いていた。これはなかなか難しいかもしれないが、じんわり効いてきそうだなあと思った。

  • 無為自然、持たざる…頭ではわかるような気がするが、今の物質社会では実践はなかなか厳しいのではと感じた。
    反面、週末に大自然の中でキャンプをしたくなったり、疲れた日は何もしないで過ごしたりと、人間の心の奥底では、老子のいうTAOを無意識に欲しているのではないかとも思う。
    中国のインテリは応接間に論語、枕元に老子、という一文は妙に頷ける。

    隣人全員、老子の思想なら成立するのかも、と考えてみたが、そもそもその考え方こそが対立概念の始まりか…何もしない立場をとる姿勢は、最近よく聞く「ダイバーシティ」を理解する入り口としても老子はアリではなかろうかと、ちょっと思った。

    昨今、モノが一通りいきわたって豊かになり、コトにお金を使うようになり、皆が目に見えないものに価値を感じ始めた今、老子がすっと腑に落ちる人が増えるタイミングなのかもしれない。

  • 著者もいろいろ苦労してるんだなあと、内容とは違う所で深く感銘を受けてしまった。
    内容自体は、薄い自己啓発本への転落をギリギリのところで踏みとどまっている感があって、好印象。

  • 前作の「バカボンのパパと読む「老子」」をさらに日常の中で活かせるように噛み砕いた内容です。

    老子の「道(タオ)」には不思議な魅力がありますが、原文をしっかりと理解しようとすると難解です。

    その点、この本の著者のドリアン助川さんの老子の解釈は非常にわかりやすくて腑に落ちます。

    無為自然である道(タオ)に近づけるような日々を送りたいものです。

  • 経済的に成功し、ガツガツしている人からは負け惜しみにも映るかもしれない。
    けど、こういう生き方をしたいよね。

  • 著者の経験談を老子に照らし合わせてみたという内容です。具体的で実感しやすいです。
    緊張の連続で疲れ気味の人には良く効く薬となるでしょう。老子の教えは体質的には受け身型向けだと思います。そういう人ほど現代に生きにくさを感じているはずです。読めば少しは力が抜けて楽になります、私の場合はですけど。そして力が抜けたあかつきには、見えてくること感じることが増えてくるように思います。バカボンのパパのように、これでいいのだと思えます。

  • 2015.8.29中国の古典、老子を、一部抜粋しながら現代にも使える知恵として著者が解釈、解説している本。大分著者の私見とか個人的体験談も入っているので、老子を通した著者による自己啓発書、と言えるような雰囲気がある。が、この本でついに、老子の思想についてしっかり理解できたように思う。その根底には道、タオがあり、これは自然の摂理のことである。無為自然の教えとは、この自然の摂理に沿って生きるべし、ということである。無為とは、何もするな、ではなく、不自然なことをするな、である。故にまずは自然の摂理を理解し人生哲学として応用するという視点、姿勢が必要になる。人間もチンパンジーと遺伝子ではほぼ変わらず、600万年近く前では猿だったのであり、我々の発展は自然の克服という形をとっているにしても、この自然の原則=タオから逃れることはできない。むしろ逃れた故の不幸もある。生命の循環において、一見役に立たない倒木が、土や水を育むように、長い目で見たときに一見無駄に見えるものは無駄ではなく必要なものなのであり、人生にも同じことが言える。無駄は無駄でないし、益を求めてすぐに役立つことは、すぐに役立たなくなるのである。また自然は所有しない。人間の所有欲こそが煩悩の元である。所有とは、壁を作ることである。守ることであり、排他的である。でもそんなのはできても一時的である。所有なんてしなくても我々はすでに与えられているのであり、独占ではなく、その与えられた世界との開かれた関係性を築くことこそ、自然の在り方である。直線は嘘、ぶれぶれこそまっすぐ、アスファルトを貫く雑草の力、心の変態、この私であることに足ることなど、学びは大きい。またこの思想を知るには自然を知る必要があるので、自然科学にも興味が持てそうである。カブトムシのサナギのように、私の心は何度も、孤独と苦しみの内に生まれ変わるだろうし、雑草のように、弱くともただただ伸びていこう、生きていこうとするだろうし、木の枝のように信念はブレて志は右往左往だろうし、しかしブナの木が桜の木にはならないように、私は私としてあり続け、私として生きていく。社会で生きていくには人間のルールが必要だが、しかし一方で私という生物、ヒトとして充実した人生を送るには自然のルールも必要だと思った。すべてを採用することはできないが、ぜひ取り入れていきたい考え方である。あと、老荘思想と仏教の先に禅の思想があるってのは地味にびっくりした。自然の摂理の内から、ヒトとして幸福に生きるための哲学を教えられ、また自然との豊かな関係性についても考えさせられる一冊。散歩にいこう!これでいいのだ!

  • 無為自然。どこまで実践できるかはわからないが今後の生き方について考えるきっかけになった。

  • バカになれることは素敵なことである!!

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著者プロフィール

ドリアン助川 訳
1962年東京生まれ。
明治学院大学国際学部教授。作家・歌手。
早稲田大学第一文学部東洋哲学科卒。
放送作家・海外取材記者を経て、1990年バンド「叫ぶ詩人の会」を結成。ラジオ深夜放送のパーソナリティとしても活躍。担当したニッポン放送系列『正義のラジオ・ジャンベルジャン』が放送文化基金賞を受賞。同バンド解散後、2000年からニューヨークに3年間滞在し、日米混成バンドでライブを繰り広げる。帰国後は明川哲也の第二筆名も交え、本格的に執筆を開始。著書多数。小説『あん』は河瀬直美監督により映画化され、2015年カンヌ国際映画祭のオープニングフィルムとなる。また小説そのものもフランス、イギリス、ドイツ、イタリアなど22言語に翻訳されている。2017年、小説『あん』がフランスの「DOMITYS文学賞」と「読者による文庫本大賞(Le Prix des Lecteurs du Livre du Poche)の二冠を得る。2019年、『線量計と奥の細道』が「日本エッセイスト・クラブ賞」を受賞。翻訳絵本に『みんなに やさしく』、『きみが いないと』(いずれもイマジネイション・プラス刊)がある。

「2023年 『こえていける』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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