アメリカン・サイコ

  • 角川書店 (1992年12月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784047912106

みんなの感想まとめ

空虚な日常を送るウォール街のエリート青年、パトリック・ベイトマンの物語は、彼の二重生活を通じて現代社会のアイデンティティの脆弱さを浮き彫りにします。学歴や肩書に恵まれながらも、実質的には無為に過ごす彼...

感想・レビュー・書評

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  • 文庫上下巻購入時、
    下巻のデータページが現れなかったので元の単行本で登録。
    映画は未見。

    語り手〈私〉ことウォール街のエリート青年ビジネスマン、
    投資銀行の副社長であるパトリック・ベイトマンの
    空虚なわりにドタバタした日々。
    というのも、学歴と肩書は相当なものだが、彼は実質、
    働いておらず、ファッションやインテリア、
    レストランやナイトクラブのトレンドを追いかけ、
    友人たちと実のない雑談を交わす一方でドラッグを嗜み、
    殺人に手を染めていたのだった……

    と聞くと、二重生活者――
    たとえ犯罪者であろうとも、一応――の
    苦悩が描かれるのかと期待してしまいそうだが、
    内容は薄く、ボリュームに見合っていない(笑)。

    酒食を共にする悪友や仕事仲間が頻繁に
    彼の名前を呼び間違える、
    あるいは、そもそも同じオフィスに勤める別の誰かと
    誤認しているらしい描写が繰り返され、
    アイデンティティの脆弱さが強調される。
    彼を彼と認識して誤らないのは、
    彼に気がある数人の女性だけ――そう考えると、
    これは一人の犯罪者のストーリーであると同時に、
    あるホモソーシャル空間の物語なのかもしれない。

    面白かったのは、
    そこにはいないであろう人物を探しに旅立つ探偵の
    エピソード(初期ポール・オースター風)と、
    主人公が悪友らと電話――恐らくトリオホン(三者間通話)――で
    ディナーの予約とその取り消しについて話す間、
    各々にキャッチホンが入って全員が混乱する場面くらいか。

  • 生粋のサイコパスなのか、上流階級のステイタス維持のために身も心も消費しすぎて重度の精神疾患を抱えてしまった人物なのか、読んでて悩ましかったです。
    個人的結論は、裕福な家庭で育ったために力があると勘違いし、歪んで育ちながら、競争社会に身を投じた結果、中途半端な壊れ方をして殺人趣味が完全覚醒した精神疾患持ちの薬中という人物像に落ち着きました。(14歳で強姦、大学在籍時に殺人を犯しているためティーンの時から壊れ始めていたのだと思います。)
    周りの同僚も大概ネジが外れていますが、パトリックは間違った壊れ方をしてしまった例のようです。むしろ周りの同僚のほうがサイコパスのように思います。
    ファッションブランドと装飾品についてくどいくらい描写されているけど、この物語において結構重要なポイントだと感じました。
    中盤くらいから。主人公のパトリックの視点が、現実なのか妄想なのか判断しにくい部分があり、混沌としていました。
    連続して殺人を犯し追跡される場面から、続きで、当たり前のように日常が描かれるのは不気味で恐怖です。タクシーの運転手さんとのやり取りで、パトリックは現実と向き合わざるを得なくなり、精神が完全に壊れてラストの妄想飲み会に繋がるのだと思います。出口はありませんは怖い。

    訳者あとがきにもあるように、これはサイコサスペンスではなく、病質としてのサイコとしてタイトル付けられているのでしょう。行き過ぎた競争社会の煮凝りのような街と人、それによって作られる階級思想、人種差別的思想という病が描かれていたと思います。想像していた内容とは異なりましたが、面白かったです。

  • あたかもAIに書かせたかのような殺戮場面や音楽批評、そして風俗描写。だが迂闊に読み飛ばすと思わぬところでしっぺ返しを食らう。ぼくが連想したのはたとえばハネケや村上龍の作品に通じる確かなサタイア(風刺)の要素だ(龍はそのあたりやや真面目過ぎる気もするが)。それはストレートに読み込めば消費社会に向けられた哄笑であるだろうし、あるいは「誰もが」サイコ(狂人)の要素を持ちえている可能性がありうることを示唆しているとも取れる。それはそうと、なぜベイトマンは人を殺すのだろう。快楽? 怒り? すべては情報の海の中に沈む

  •  俗物殺人者ベイトマンの荒涼とした脳内へ、この危険な書物を通じてダイブしてみませんか?

  • 1990年台のハイソサエティが主人公。親のお金があるので自分は働かなくても良い身分で、そのせいなのか、もともとの気質なのか、すごく尊大な差別主義者。その割には女性がホイホイ釣れるのはやはり金なのか。実はすごいイケメンだとか?カタカナのハイブランドの名称が羅列されているだけなので読み飛ばしていたら、えげつないSATSUGAIシーンが挿入されているので油断がならない。ドナルド・トランプの名前が頻繁に出てくるが、この頃から一線で活躍してたんだなあ。日本のバブル期なので、その時代を感じたい人には良いのかも。

  • 以前読んだ「悲しみのイレーヌ」に出てきたので気になって。
    鋸で切断した女性の頭部を使って射精し、そのまま依然勃起状態の性器に頭部をつけたまま血染めの部屋を歩き回る描写は斬新でした。
    残虐行為以外の部分は内容が無いような感じで苦行だったけど、訳者解説や他の方のレビューをみたところ、それが本書の魅力のようですね。
    パトリックはエリートでありながら仕事をしていないし、それでも他人と優越を競い、なぜこんなことをするのか。
    そういったことについて語られる箇所はありませんが、きっとそこは重要ではないのでしょうね。

  • 悪趣味を極めた殺人描写(しかもしつこく繰り返される)よりも、トンデモアーティスト評や登場人物がまともに人の名前と顔を一致させることが出来なかったり(それだけ容姿や服装が似たり寄ったりになっている)、エリートサラリーマンと彼らが馬鹿にしていたおつむの足りないモデル女がファッションの話においてはほぼ同質の会話を繰り広げたりする辺りに作者の底意地の悪い悪意が垣間見えて面白かった。あと主人公パトリック・ベイトマンは質の悪い百合豚だった。

  • ジェネレーションXの代表的な作家。90年代の裕福な若者たちの退廃を描かせたら天下一品。
    「レス・ザン・ゼロ」でデビュー。
    アンドリュー・マッカーシーやロバート・ダウニー・ジュニアが出ていて、当時は憧れました。
    それが、行き着いた果てはこの「アメリカン・サイコ」。
    「1969年に7歳だった」主人公は、裕福でハーヴァード卒で投資銀行に勤めて、トム・クルーズと同じマンションに住んで、一流企業の重役の美女の彼女やらなにやらたくさんの美女たちに取り囲まれ、やりたい放題。
    でも
    「私は人間としての特徴をすべて備えていたー肉、血、皮膚、体毛ーしかし、脱人間化が強烈に進行していて、深いところまで達したので、人に共感する通常の能力が根絶されていた。徐々に意図的に葬ってあったのだ。私は現実を模倣するだけだった。一個の人間の形だけを、いいかげんに真似ていて、精神の中のぼやけた片隅だけが機能していた。」p330
    すごくわかる気がする・・・
    これが、NYやTOKYOのジェネレーションX。

  • 頭がおかしいのは、はたして主人公だけだろうか?

    『STUDIO VOICE』 "狂気のアメリカ特集" が読むきっかけ。
    19歳くらい。

    主人公パトリック・ベイトマンはウォール街で働く若きエリート。
    ……のはずだが仕事の描写はほとんど無い。
    内容の大半は女と遊ぶかジムへ行くか夜ごと高級レストランやクラブへ繰り出すかという行動の記述と、目に留まったブランド品の名前で埋まる。
    リストを延々と読まされているようで苦痛。

    かと思えばパトリックの隠れた趣味、殺人シーンについてはやけに生々しい描写になる。
    女の口にドリルを突っ込むシーンは、グロすぎて細目で読んだほど。

    普通なら
    「なぜこんな事をするようになったのか?」
    「何か事情があるのか?」
    といった主人公の背景や心情について深く掘り下げるところだが、この作品にはそれがない。
    生い立ちも無ければ、家族の詳細もない(どうやら父親とは軋轢があるようだが)、同僚や友人も誰が誰だか、顔がない。

    ただ物を見て、物を買い、食べ、飲み、喋り、セックスし、殺す。
    あるのは見てくれだけの物、上っ面だけの行動だけだ。

    だったら人だって、一定の枠に入りさえすれば彼でも彼女でもおかしくない。入れ替え可能である。
    パトリックが知り合いを混同したり、彼自身も誰かと間違われるのは、どうもそういう事らしい。

    ---------------------------
    コメディじみた殺人鬼

    ここまでだったらまだ「情緒の欠けたひどい本を読んじまった」で終わるのだが、この本の困ったところは、この情緒のなさ――問答無用で人を切り刻む、内面の欠けた人間、中身の無い物体――を描きつつ、コメディじみている点だ。

    だいたい、パトリックはバカだ。
    バレるかもしれないのに知り合いに歴代の殺人鬼についてペラペラ語りだすし、自分のちっぽけなプライドを守るのに必死すぎる。
    人を刻むのに何の感傷も持ち合わせない殺人鬼も、周りを社会という枠、力の及ばないシステムに囲まれ、そこで生かされている存在に過ぎないと気づく。

    頭がおかしいのは、人殺しの主人公だけだろうか?
    この殺人鬼を野放しで飼っている、見えない檻があるのだ。


    うろ覚えだが、パトリックは殺した後の残骸を神経質に隠そうとはしなかった。
    これは自分がやった事を誇示したいのもあるだろうが、暗に「死体が見つかれば、誰かが俺を見つけてくれる。そうすれば、俺はこの檻から脱出できる」という気持ちが働いているようにも見える。

    ところが、ここからが悲劇だ。

    普通なら「犯行がばれてしまう!」危機的状況が訪れても、何やかんやで結局バレずに済んでしまう。そのたびに彼は再び、元の檻の中に押しやられてしまうのだった。
    最後に彼が見た言葉は


    「ここからは出られません」


    こうして、澱は溜まり続けてゆく。
    殺人も止むことはないのだろう。

    うーん、皮肉な話だ。

    ブログ:
    http://haiiro-canvas.blogspot.jp/2013/11/be.html

  • 2010/07/08、谷中 信天翁で購入。二冊目?

  • かなり忍耐を試される本です(笑)。

    クリスチャン・ベール主演で映画化されましたが、観たのは昔であまり覚えていないので…原作を読むことに。

    とにかく主人公パトリックの人間性を全く欠いた人付き合いに驚愕。

    彼も仲間たちも彼らの女たちもドラッグや安定剤なしには生きられず、流行りのレストランに行き、仲間よりセンスの良いブランド品を持つことにのみ血道をあげる…。

    パトリックの惨殺シーンも目を背けたくなるおぞましさでしたが、何よりも彼の魂の無い人生に読んでいて寒気がしました。

    しかしながら危機感に欠ける殺人鬼ですよね。
    証拠隠滅が雑すぎるし、すぐバレるだろ?って読んでて何度も突っ込み入れてしまいました。

    『訳者あとがき』で言いたいことをすべて言ってくれてる感じですね。

    でもパトリックっていつ仕事してるんだろう…。

    殺人鬼でさえなければ、ちょっと興味深い人物なのですが(笑)。

  • ハワイ行ってたとき読んでた。げらげら笑った。

  • 大好き

  • これはこれとして、すごい世界を描き出したものだと思う。

  • 映画になって話題になった作品。映画は見ていませんが、原作はかなりグロテスク。昼間はエリートサラリーマン、夜は猟奇殺人者の男性がひたすら殺人と日常を繰り返していく物語。かなり衝撃的な内容です。主人公の男性の心情が細かく描かれています。外見的な神経質さを持ちながらも、抽象的な感情表現をするところがとても好き。突然違う世界へトリップしたような気分にさせる。ある種麻薬的な読み応えで、読み始めると止まらない。グロテスクなセックスシーンなど大丈夫な人にはオススメ。

  • あんまり大きい声では言えませんが好きですねー、こういう世界は。

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著者プロフィール

1956年横浜生まれ。東京大学大学院修士課程修了。翻訳家、東京工業大学名誉教授。著書に『翻訳の秘密』(研究社)、訳書にH・ジェイムズ『デイジー・ミラー』(新潮文庫)、J・ラヒリ『停電の夜に』(新潮社)、E・ヘミングウェイ『老人と海』(光文社古典新訳文庫)、E・ストラウト『オリーヴ・キタリッジの生活』(早川書房)など。

「2024年 『オクシアーナへの道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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