知の挑戦: 科学的知性と文化的知性の統合

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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047914308

作品紹介・あらすじ

科学、宗教、芸術などあらゆる知を統合し、人間の本性を解き明かそうとする、知の巨人ウィルソンの金字塔的著作。

感想・レビュー・書評

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  • 自然科学、社会科学および人文科学を全体的に取りまとめようという、いわば知の統合を徹底的に主張する作品。自然科学分野では進んでいる統合をどうして社会・人文科学分野では進まないどころか反対するのかを糾弾する。というのも、科学分野で細分化がとことん進められるに伴い、全体を知ることがない専門家集団が幅を利かせる現在、そのような偏ったデータでしか世界を導くことができない状況に危機感を抱き、これからは全体論的世界観を持った人間が世界を導かなければならないし、そういう人間しか世界を導くことはできないと断言する。その返す刀で、だからこそ、知の統合が必要なのだと言う。昨今、指導層、大衆からを問わずに蔑まれているリベラル・アーツの復権に飢えているといってもいいかもしれない。特に、遺伝性=文化共進化というキーワードが何度も出して、知の統合の必要性と可能性をのたうち回るように主張する姿勢に頭が下がる。とはいえ、最終章で唐突に環境論を冗長に説くことに、しりすぼみ感が否めない。ただ、間違いなく興味深いさくひんであり、この約25年後の現在は知の統合の方向性はどうなっているのか知りたくなる。

  • 話題が偏っててこの厚さか、もっと広くもっと薄く

  • 社会的生物学とか行動生態学とか、いろいろ呼び方はある。

    自分にとってエドワード・ウィルソンといえば、そうした社会的生物の人で、特に「ハキリアリの人」なのだが、本書ではそうした離れて知識そのものについて人間を対象にして書かれている。『人類はどこから来てどこへ行くのか』に近い。

    なかなか面白かったのは、「意味とはなにか?」との問いに対して、意味とは「心象を広げ情動を引き込む興奮の広がりによって作られる、複数の神経回路のつながりである」というあたりか。
    ちなみに、「情動が強く持続したもの」は気分、「現実性も生存価もないシナリオを作り続けること」は狂気だそうだ。

    本書で一番気に入ったのは「一切れ口にしただけで生涯つづくドリアンという概念が確立される」か。
    あと「ギャングの倫理規範」なんてのもかなりおもしろいんだけど、またハキリアリについて書いてほしい。

  • 読んでおいて損はない

  • 知性とは何なのか。科学、宗教、芸術から差し示した。「イオニアの魔力」「アリアドネの糸」など、中二病ワードも楽しい。
    この本の示すのは、地球上で確かに人類のみが為す事ができる、科学、芸術、宗教に基づき知性を示す事ができるということである。確かに魂の器としての進化は必要であるが、文化的な環境に居ることが知性にとって重要だと説いている。
    またこの本は我々の未来を解き明かすために過去に学ぶというアプローチをとっている。しかし、自然破壊の原因であり、それを知ってはいるがやめられない存在であるとしている。
    僕が小さい頃のワクワク感が最近の科学界にはあまり感じられない。モノに依存することの現界を示しているのか。今のところ細分化されている学問が、今まででは全く関係がないと思われたものが出会っていくという統合の時期なのかもしれないということを改めて示したのかもしれない。

  • 物理から化学、生物、医学、心理、社会学、倫理、宗教は学問としては分離している。とくに生物から心理学へのステップにおいては断絶に近い状況にある。確かに還元論的アプローチで全てが説明できるというデカルト的科学観は現在ではほとんど否定されつつあることは間違いない。部分の集合が現象する「創発」は部分からは演繹で導くことは難しい。
    かといって、部分の働きを無視していいかというとそうとも言い切れない。部分は集合に満足な説明を与えることはできないかもしれないが、集合に制限とヒントをもたらすからである。
     しかし、今日の科学の細分化された状況を鑑みるに、すべてを鳥瞰して見ることのできる科学者はほとんどいないか、ごく一握りである。それだけでなく、一段下のレベル(構造的に)の学問的知識を全く知らないか関心を持たない研究者も多い。これでは土台から学問を建設することは危うい。
     大学だけでなく、小・中・高の段階から学問の総合的・基本的知識を教育する必要性が今日より高まっているのではないかと思う。

  •  

  • 第1章 イオニアの魔力
    第2章 学問の大きな枝
    第3章 啓蒙思想
    第4章 自然科学
    第5章 アリアドネの糸
    第6章 心
    第7章 遺伝子から文化へ
    第8章 人間の本性の適応度
    第9章 社会科学
    第10章 芸術とその解釈
    第11章 倫理と宗教
    第12章 行き先

  • 原題は"Consilience"。統合という意味らしいのですが、初耳の単語で、まずタイトルからして難解であることを隠そうとしていません(Yahoo!の辞書検索でも出てこない...)。

    また邦題の副題では、"科学的知性と文化的知性の統合"となっていますが、必ずしも本の内容を正しく反映しているように思えません。著者の姿勢としては、社会科学や道徳、倫理などを自然科学の手法や知見から再構築していくか一部門として取り込むべきだという企図があります。第2章において自ら傲慢な態度と断りつつも、それが正しい態度だという意見を最後まで崩しません。特に社会科学や心理学などについては、エセ科学とまで言いそうな勢いがあります。そのあたりは当然想定される通り著者の批判を招く部分であるのかと思いますが、個人的には強く惹かれる部分でもあります。

    タイトルの話から入りましたが、内容を見るとその野望の大きさが分かります。何を統合しようとしているかというと、もちろん自然科学(物理学、化学)や複雑系の科学(分子生物学、細胞生物学、生態学等)から、心(神経生理学、脳科学)、遺伝子および文化(遺伝学、進化生物学、文化人類学:著者は遺伝子と文化の共進化という概念を強調している)、社会科学(社会学、経済学、政治学)、芸術、倫理、宗教、まで含まれています。度を越えて博識だということは分かりますが、読む方も大変です。ある意味、野心的というか無謀な挑戦にも思えますが(特に芸術のあたり...)。

    最終章は、人口増による環境破壊(種の多様性の破壊)や食料や水などの自然資源の問題への警鐘がつづられています。確かにそうなのですが、それまでの章とうまくつながっているのかな、というところ少し気になります。でも、これもどうしても言いたかったんでしょうね。

    敬意を表して星5つ。とにかく読むなら腰を据えてちゃんと時間が取れるときに読むことをお勧めします。

  • はじめに言っておきます。途中で断念です。まだこの本を読めるレベル達していいないのだろう。
    理解に苦しんだのか興味もうすくなってしまって、断念することにした。
    Complainする資格はないけども、1つの結論に対して長々と話されているといったNegativeな印象ももってしもうた。。。著者の人には申し訳ない!!
    そんな中でも学んだことは、『すべての学問は1つに繋がる』ということかな。色々な学部や学科があるけどもそもそもそれらはすべて1つだったんじゃないかって本当に思えてきた。
    アインシュタインじゃないけど、世の中で起こることはすべて数字で証明することができるのではないだろうかとマジで思ってきた。
    新しい視点で物事が見れる本だったことは事実なので感謝です。

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