パターン・レコグニション

制作 : William Gibson  浅倉 久志 
  • 角川書店 (2004年5月発売)
3.58
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  • 14レビュー
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047914681

パターン・レコグニションの感想・レビュー・書評

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  • 実に10年越しで読了。まだ邦訳されてない本3部作の最後、Zero Historyを洋書で買っちゃったのがキッカケで。
    映像化された時のシーンが目に浮かぶような魅力的な舞台設定と、興味を引くガジェットの数々、一癖もフタクセもある登場人物たちと、素晴らしい材料が揃っているのに、肝心のストーリーはあまり面白くなかった。
    根幹をなすフッテージの謎、背景にある主人公ケイスの抱える持病と父親の消息、他の登場人物達の思惑、どれもカタルシスに乏しい結末だった。
    SFとも現代小説ともつかない、ギブスン版「なんとなくクリスタル」といったところか。

  • いよいよ現代に舞台が移ったが
    出てくるギミックはどれも気になるし、
    主人公の病的な才能もまた面白い。
    大好きです。

  • ケイス・ポラードは、フリーランスのクールハンター。持って生まれた超能力、「売り込み市場の記号論に対する、病的で、ときには激烈な反作用」をももたらすアレルギー反応を使って、マーケティング世界で売れそうな商品を探し出すのが仕事だ。ロゴデザインの可否も一瞬にして体内レーダーで感知する、歩くご託宣。グローバルマーケット界のデルフォイの巫女だ。

    しかし、鋭敏な感覚には、過剰なロゴの氾濫は拷問にも似た反応を引き起こす。ケイスの衣服CPU(ケイス・ポラード・ユニットの頭文字)からは、ジーンズのタグはもちろん、リベットに至るまで、一切のロゴは取り除かれている。色は、黒かグレイ、特別な印象を抱かせないものに限られている。それに、バズ・リクソン製のMA-1フライトジャケットというのが、定番のスタイル。

    毎日のエクササイズとF・F・F(フェティッシュ・フッテージ・フォーラム)の掲示板で仲間と話すのが唯一の気晴らし。フッテージとは、ネットにランダムに流される断片的な映像だが、その質の高さと謎めいた提示の仕方からカルト的な人気を集めている。仕事でロンドン滞在中のケイスは、クライアントの実業家ビゲンドから、そのフッテージの作者を探せという依頼を受ける。ヒッチコックの言うマクガフィンだ。

    半強制的に作者探しを引き受けさせられたケイスは、F・F・Fの仲間パーカ・ボーイのくれた情報を信じて東京へ飛ぶ。断片の一つに透かし状の記号が見つかったというのだ。コンピュータに詳しい中国系アメリカ人、旧型コンピュータの蒐集家、産業スパイ、ロシアの黒幕と、お膳立ては揃った。ロンドンを主な舞台に、東京、ロシアを駆けめぐる暗号解読ゲームが始まる。

    あとがきによれば、作者は、この小説を書く前に三つの決まりを作ったという。1、近未来というこれまでの背景を現在に変える。2、多視点描写を止め、一人の視点から語る。3、主人公に関する物語では場面の省略をしない。その結果、どういう効果が現れたか。追跡者と妨害、思わぬ手助け、最後の謎が解け、絡まり合った結び目がほどかれた結果現れた意外な事実、その後の緩叙楽章と、そこに現れるのは、古典的とも言える謎解きサスペンスである。スピード感のある記述はハードボイルド小説を思い出させる。

    頻出するファッション・ブランドその他の固有名詞は、主人公の仕事やキャラクター設定からくるのだろうが、マニアックさはただごとではない。ハローキティはまだしも、たれぱんだ、こげぱんまで出てくるのだ。ミッキーマウスやミシュランマンには過激なアレルギーを見せるケイスが、これらゆるめのキャラクターには平気なのが愛嬌である。登場する自動車やコンピュータ(ギブスンはマック派らしい)等、一つ一つのアイテムの選定は、かなり吟味されている。こだわり派にはそれだけでうれしい。ボンド映画、その他からの引用も楽しい。

    ケイスは、常に飛行機で飛び回っているため、慢性のジェットラグに冒されている。実務家のビゲンドは、前頭葉の収縮が原因だというが、ケイスは魂が体より遅れることからくるのだと語る。作品の背景に9.11の出来事が採り上げられている。執筆途中に事件が起きたことで、作家は大幅な書き直しを余儀なくされたという。SF作家は、未来社会を描くことで現在を批評している。ところが、事実が想像に先行してしまったのだ。作品の完成は、予定より大幅に遅れた。魂が追いつくのを待っていたのだろう。

    ケイスは、ヘルムート・ニュートンが撮影したジェーン・バーキンと比べられたことがあるそうだ。作家のイメージがどの辺にあるのか分かるが、小説から伝わってくる像は少しちがう。腕力もあり、護身術も使える。リーヴァイスのブラックジーンズに、MA-1を羽織ったアンチ・ジェンダー・ヒーローの登場である。ヒロインではなく、ここはやはりヒーローと呼ぶべきだろう。特にサイバー・パンクを知らない人にお勧めしたい。後味の好いエンタテインメントに仕上がっている。

  • 描かれているものは現代に違いないが、どうしてこんなに近未来的に感じるのだろう。ブランドのロゴやフッテージに顕れる過剰なまでの力を持つ「断片」に慣れていないからなのか。実際には慣れきってしまって気がつかないだけなのに。

  • ギブスンかっこいいよギブスン。

    『ニューロマンサー』読んだときは、サイバーパンク的な混濁とした未来都市の様子や、仮想現実に関する描写にかっこよさを感じていたのかと思っていたが、本作を読んで、そもそもギブスンの文体(と、それを変換する朝倉久志の訳)がカッコ良かったのだと思った。

    ケイスという名前に籠められた意味は、『ニューロマンサー』と本作で共通している部分を感じた。

    深く読み込もうと思ったら読み込める奥行きがある。

    好きなんだけど、どこが好きなのかをあまり語れなくてもどかしい。

  • パタン認識の教科書ではない。舞台は現代、どこからともなく、インターネットにものすごーく魅力的な映像がたびたびアップロードされるので、その映像のファンたちが映像の制作者を見つけようとする話。

    スプロール3部作以降のギブスンの主張の一つは、我々の社会を時系列データとみなすと、ある種のマーケターは人間の集合が発生させるこの時系列データ(信号)から金になるパタンを見つけ出すパタン認識機とみなせるんじゃないの、というもの。この考え方は近年でこそ当然と思われるものの(ビッグデータだ!)、ギブスンがその嚆矢 ``Idoru" を出版したのは1996年。やっぱこの人すごいよな……。

  • 20100309
    ウィリアム・ギブスン
    だがサイバーパンクではなく、、、なんというかサスペンス?
    ヴィデオ製作者姉妹のエピソードは不思議な雰囲気

  • ひさびさにウィリアム・ギブスンの新作を読んでますが、『スプロール三部作』以外では面白いほうかも。
    一応SFではないのですが現代物、というほどのリアリティはないかも。それがダメ、という事ではなくただ「大人の小説ではないな」と思いました。
    ま、そーゆーのが好きなんでいいんですけどね。
    でも最近、好きな人の新作読んで『おもしれえ!』って叫んだ事ないな〜(自分の感受性が鈍化してるのか!?不安…)
    2004/08/03

  • SFでなく、現代の物語。Divaという映画を思い出した。■彼はアヒルと正面衝突した。時速250ノットで(主人公がパニックになりそうな時につぶやくおまじない: He took a duck in the face at two hundred and fifty knots)(あらすじなど)ケイス・ポラードはロゴマークを見ると、その商品の成功・失敗を判定できるという体質で、企業からのコンサルテーションを職業にしている。極めて完成度の高い映像の断片である、フッテージがWebで話題となっており、ケイスは雇い主からその作者を探すように言われる。電子すかしを手がかりに、作者であるロシアの大富豪の姪にたどりつくケイス。が、作者が爆発事故の後遺症で寝たきりになっており、フッテージも彼女の両親を素材に、外の世界との接点を求めて作成していることを知り、、、

  • これをSi-Fiに入れるのはなんか違う気もするんですけど、現代を舞台にしたサイバーパンクそのものですし・・・

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