- Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047915473
作品紹介・あらすじ
母が死に、1冊のノートが遺された。ドイツ軍が駐留し、レジスタンス運動が巻き起こったフランスの片田舎で、あの日、本当は何があったのか-。追憶のまばゆい光の中できらめく故郷で、あまりにも幼すぎ、無邪気だった私。ノートに綴られた母の心のつぶやきが今、私の胸をえぐり、贖罪の涙を誘う。
感想・レビュー・書評
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読みおわっても、
物語が終わった気がしなかった。
です。
まだ、どっかで続いんじゃないか
っていう。
へんなかんじ。 -
「光が強ければ影も濃くなる」という言葉がなんとなく浮かんだ。
子ども時代の夏の日、木の上の隠れ家遊びやオレンジの鮮烈な香りや年上の謎めいた外国人に対する一途な憧れが光なら、戦争や母親との不和、物語の舞台の背後に流れる暗い川とその主の怪魚「おっかあ」が象徴するものが影。
主人公の少女は子供ながら機を見るに敏、人の弱みを見逃さず、徹底的に利用する残酷さは空恐ろしいばかり。人間関係には「支配する」と「支配される」しかないような気分になってくる。
最後まで良くできた力のある物語ではあるけれど、特に主人公の母親の気持ちを考えると、ちょっと読むのがつらくなるようなところも。
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ひねくれた子供と母親との間の緊迫感が面白い。
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作者自体初読み。
有名らしい「ショコラ」も知らないので、表紙に惹かれていつだか買ったものかな?
時代のせいか全体的に暗めな印象の作品だった。
ある老女が田舎の朽ちた空き家を購入して、直して古いレシピをもとにカフェを開きつつ、
その家や彼女自身に過去何があったのかが語られる話。
トーマスの最後には驚いた。
てっきり母親が凄惨な事件でも起こすのかとハラハラしながら読み進めたので。 -
美味しい料理や景色のきらめく描写の奥底から、ゆらりと立ちのぼり絡みついてくる不穏さがやっぱりジョアン・ハリスさんだなあと。
すごく好きな読み口です。
文庫化しなさそうなので、結局図書館で借りてしまいました。
文庫化したら買うのにー!
↓
文庫化しなさそうなので単行本で買いました。 -
ショコラが良かったので、他のジョアンハリスの本を探しました。
母を憎いと思っても、似てくる外見に苦しむ様子など、人の心情が細やかに書かれています。
良くも悪くも環境が人を少しずつ変えていくんですね。 -
う~ん。自分の家庭環境と照らし合わせて少し読むの苦しくなった。あと、自分も頭痛持ちなので、お母さんの苦しみが気の毒で...バファリンあげたくなってしまう。でもモルヒネ飲んでるような人には効かないかあ~ε=(・д・`*)ハァ…
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金田一の登場しない横溝正史+母の呪い。
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ラッセ・ハルストレム監督、ジュリエット・ビノシュ、ジョニー・デップ 出演の「ショコラ」は、豪華キャストというだけではなく秀作映画でした。
フランスの小さな村にやってきた母子が、チョコレート屋を開く。
古い因習の残るその村の人たちは、最初は警戒しつつも母親の作るチョコレートの味に魅了され、次第に心を開いていくが、あるとき、ジプシーたちが村に立ち寄り、ジプシーをよく思わない村人と愛情をもって接する母親に次第に波風が立ちはじめる。やがて母子は店をたたんで村を立ち去る。
私は相当にビノシュ贔屓なので、「ショコラ」は大好きな映画ですが、『1/4のオレンジ5切れ』は、その「ショコラ」の原作者ジョアン・ハリスの最新邦訳作品です。
『ショコラ』『ブラックベリー・ワイン』『1/4のオレンジ5切れ』は、ジョアン・ハリスの食にまつわる題名を冠した小説シリーズ「食の三部作」で、『1/4のオレンジ5切れ』はシリーズ最後の作品だそうです。
私は、『ショコラ』も映画でしか見ていなくて、『ブラックベリー・ワイン』も読んでいないので、ジョアン・ハリスの小説は本書がはじめてでしたが、とにかく面白くて一気読みをしてしまいました。
主人公のフランボワーズ・ダルティジャンは、フランスの小さな村でクレープ屋を経営する60代の女性。
彼女は、50代のとき、身分を隠して幼少時を過ごしたこの小さな村に舞い戻る。
彼女の出生の秘密を知っていれば、この村の人々は彼女を決して受け入れなかっただろうし、ましてや彼女の焼くクレープを食べにくることもなかっただろう。
しかし、彼女が頑なに守り通してる自分の母の名前と事件の真相は物語の最後になるまで語られることはない。
彼女は9歳の頃を回想する。
時代背景は、第二次世界大戦のナチス・ドイツがフランスを占領している頃。
オレンジを病的に嫌い、夫が戦死し3人の子どもを育てている母は、偏頭痛持ちで、子どもたちのことを深く愛しているのにもかかわらず、うまく表現することができない人だった。
亡くなった時、兄には農場を、姉には一財産はあろうかという地下倉庫のワイン、そして、末っ子のフランボワーズには、雑記長一冊とトリフが母の遺産として遺された。
この遺産の分与によって母の愛情の比率が手にとるようにわかる気がする。
しかし、フランボワーズは、兄から農場を買い取り、母の雑記帳を手に、あの忌まわしい事件のあった生まれ故郷の村に帰ったのだった。
非常に巧みな作者である。
特に、母娘の関係の描写は非常に上手く、少女の頃にわからなかった母の悲しみや苦しみ、寂しさ、不器用ながら精一杯愛情を持っていたことなどが、成長し、老いたフランボワーズにはよくわかる。そして、いつの間にか自分も娘に対して母のように自分勝手な冷酷さで接していることに気づく。
長男で自分より少しいつも大人だった兄、美人で収穫の女王に選ばれた姉。
吃音癖のある幼馴じみのポール。
フランボワーズの初恋の相手であり、当時、村に駐留していたドイツ軍兵士トーマスとその仲間たち。
彼らが、回想部分の脇役をがっちりとかため、
兄の息子や嫁やその弟らが、現時代のフランボワーズの平穏に騒音を持ち込む。
『ショコラ』と同じくらいいい映画になりそうなストーリーだが、本書が映画化される話はまだないらしい。
しかし、『ショコラ』の主人公ヴィアンヌ・ロシェのその後を描いた小説がイギリスで発刊されたそうで、ジョアン・ハリスの小説3冊を邦訳してきた那波かおりさん訳の日本刊行が待たれる。