多田由美さんの漫画を電子版で勝手に読むシリーズ続き。1990 年刊行の作品。大判で読みたい傑作。初読当時は海の向こうのだめだめだけれど愛しい人たちぐらいの印象で読んでいた。今となっては切なすぎるどうしようもない隣人たちとしか読めない。愛しさを求めて、けれどもその日常はすごく刹那。騙されて騙して加害者になり被害者になり、けれどもどうしても人とのつながりを切れないし切りたくない。日常はどうしようもなく殺伐としていて、けれども、同居したりさせたり定住するところがなかったりなくしたりという関係のなかで、小さなよすがをつくりあげて生きていくことにすがり続けている。悪いのは社会なのはそのとおりで、けれどもそれを変えるための何かをしているわけでもできているわけでもない。もう若くはない。親の遺産も食いつぶした。じゃあ、この先にあるのは? なんだかんだでバブルの残り香のなか総中流意識で生活をしている人たちが大半だった初読当時よりも、日々の生活がぎりぎりの単身者で溢れ返っている現在のほうが、自分ごととして読める人は多いのではないかと思った。描かれている風景が異国すぎて、隣人の話として読めない感もあるかもしれないけれども、逆に、それでいて全然遠くない話として読めるのがすごいと思う。多田さんがすごいのか、今現在という時代がだめな方にすごいのか。絵は綺麗すぎるぐらい綺麗。ずっと見ていても飽きないぐらい。