絶対城先輩の妖怪学講座 七 (メディアワークス文庫)

  • KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048653909

作品紹介・あらすじ

「顰衆」との一件で、『妖怪学』への意識が変わった絶対城。自分なりの妖怪学論執筆のため資料整理にあたっていると、紫から「座敷わらし」に関する情報を耳にする。一行は巨木の佇む神籬村へと向かうのだが……。

感想・レビュー・書評

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  • 座敷童を巡る短編集。座敷童にもいろいろなタイプがあるようだ。年を経た樹木が動物たちを操って座敷童を出現させているというのはユニークだが、トンデモ感が漂うなあ。でも物語は面白いよ。相変わらず礼音はお人好しであたふたしていて心配させるなあ。

  • 【感想】
    ・今回のは単品で劇場版アニメにでもしたらいい感じになりそうな気がする。見せ場もあるし完成度も高いと思う。

    【一行目】
     「そうですか。晃は紫さんのところにも来ましたか」

    【内容】
    ・破多破多。ノタバリコ。釣瓶下ろし。座敷わらし。ナンジャモンジャ。おまけは、倉ぼっこ。
    ・座敷わらしが出るとウワサの神籬村に行ってみると妖怪専門ライターの杉比良湖奈と出会う。
    ・礼音が実家に帰ってしまったので杵松視点で、大学近くの廃工場に見えるという釣瓶下しの調査に向かい、礼音には聞かせられない話をする?
    ・東勢大学にも進出してきた合法ドラッグにかかわることになった礼音は危機に陥る。ついでに座敷わらしの正体は?
    ・この巻の一連のできごとの黒幕は誰だ!?

    ▼文学部四号館四階四十四番資料室についての簡単なメモ(妖怪については基本作中の説明によるので一般的な説とは異なるかも?)

    【アイビー】東勢大学内の喫茶店。第一学生食堂より値段は高く量は少なく客層はおしゃれで華やか。
    【晃】→櫻城晃
    【朝霧シアン】謎の少年。高校生くらい。頭脳明晰で運動神経も抜群。読んだ人はまず河童かもしれないと思うだろう。でも、河童はある意味創作された妖怪ということやし?
    【礼音/あやね】→湯ノ山礼音
    【蟻】この話のなかで皆で合体して子どものような姿になる蟻が出てくる。ホンマにおったら珍アリとしてテレビの科学系、自然系の番組で引っ張りだこやろなあ。
    【いくち】第二巻に登場。
    【糸倉】大日本護法息滅会のメンバー。じつは・・・
    【今村】映画研究会の部員。
    【空木淳郎/うつぎ・じゅんろう】紫の知人。おそらく元恋人。森林保護に携わっている腕のいい樹木医であり植物学者だったが森林に撒かれた有害物質の調査に行き身体を壊した後過激な考え方に変化した。行方不明。
    【牛鬼】概ね危険な妖怪。伝わる地域によって姿かたちごバラバラでまとめにくい。水中の妖怪としては河童よりも古い。牛鬼と言えば宇和島あたりだがわりと広く分布していたらしい。
    【馬鬼】第一巻に登場。不慮の事故で死んだ馬の霊が妖怪化し不幸を招く。
    【映画研究会】専門はホラーとアクション、バイオレンス。高尚なアート系はシネマ同好会の領分。
    【遠藤】映画研究会の部長。
    【大柴】映画研究会の副部長? 茶髪で猿っぽい顔の人。
    【大百足】第二巻に登場。
    【大蛇】第二巻に登場。
    【鬼】牛のような角を生やし虎のパンツをはいているのはウシトラの方角すなわち北東、鬼門が不吉だからだそうだ。あのクラウス教授をして「鬼には手を出すな」と言わしめた恐ろしい存在のようだ。
    【織口乃理子】国文科准教授。28歳だが20歳そこそこにしか見えないお嬢様っぽい美女。大学創始者の一族だが今は絶縁しているもよう。一時期敵対していたが、後に協力者(?)となる。

    【ガイラゴ】ぶよぶよした肉体の妖怪。第四巻に登場。漠然とした恐ろしい妖怪のひとつ。
    【香宇良山/かうらさん】かつてクラウス教授が謎の集団に脅迫された山。W県にある。
    【河童】超有名な水妖だが創作された妖怪に近い。鬼が古代、天狗が中世を代表する妖怪なのに対して河童は近世を代表する。発生当初から人間より弱い存在という設定らしいが櫻城紫さんの説では自然(特に水関係)に対する人間の感覚が江戸期には、畏れつつも最後には支配できるというふうに変わってきたからではないかとのこと。もともとあった河童的存在のイメージに人間があれやこれや付け加えた結果、今の姿になった。医療・薬学とも関わりが深い。
    【鎌鼬】第三巻に登場。有名妖怪。民間伝承系でしぶとく生き残っている。真空説はあり得ない。
    【川端恭介】礼音の地元での二学年先輩。日奈美の恋人。おとなしい性格。今のところ登場はしていない。
    【川坊主】ぬめぬめした体表を持つ人型の妖怪。第四巻に登場。河童の亜種。人を見ると襲ってくる。エンドウ豆が苦手。
    【考える】知らなければ考えろ。 第二巻p.21
    【着ぐるみ】《男はな、着ぐるみに入ったら、女子に接触したくなる生き物なんだよ。これはもう自然の摂理だから仕方ない。》by大柴、第五巻p.91
    【杵松明人】理工学部の三年生。絶対城の友人にして協力者。すごく聞き上手で人あしらいがうまい。元演劇部。「ロマンとセンチメンタリズムは人生を彩る大事な要素だ」第四巻p.317。
    【木村茂吉】小久保荘の営繕担当。節足動物ラヴァー。
    【きよ】はるか昔の兵部家の当主で、河童と闘い腕を切り落とした。
    【京極夏彦さんとの違い】京極夏彦さんの作品とものごとを解決させる方向性は近いが、テイストは異なり、こっちはおどろおどろしい感じはほぼなくあっさりと軽くてドタバタしてる。コケオドシがないので好ましくはある。
    【清姫】安珍清姫の清姫。彼女も鬼の一種。
    【クラウス・インフォレスト】絶対城の師匠。紳士的にだが、美女はとりあえずナンパする。文学部四号館の正式な持ち主。フィールドワークが好み。密教系古武道の達人。正体は自称・・・。「声を荒げた時点であらゆる議論は終了となる」第三巻p.122。
    【倉ぼっこ】座敷わらしの一種で倉にいる。
    【光陰】罵王院光陰。大日本護法息滅会のトップ。自称「憑きもの」。昨年まで東勢大学工学部バイオ資源学科の大学院にいた。担当教授は真萱/まがや。今は退職。本名は番場尚敏。
    【コーポ・ネオ苗代】礼音が入居している集合住宅。大学から自転車で二十分。いろいろ不便な位置にあるので家賃はお手頃。
    【小久保日奈美/こくぼ・ひなみ】礼音の地元での友人。今はひなびたしかし通好みの温泉宿小久保荘の若女将。
    【駒引川】櫻城紫の屋敷の近くを流れる川。河童が出る。なるほど、やからその名前か。最近開発計画が出ている。

    【三枝】東勢大学の学生。大日本護法息滅会に関心あり。
    【櫻城晃/さくらぎ・あきら】櫻城紫の妹。長身の礼音よりも背が高い。鬼について調べていたがそのせいで殺されたそうだ。実はとある真怪。《知らずに不安がるより知って苦しむ方が好きなの。》第七巻p.256。《当たって砕け!》第七巻p.257。
    【櫻城紫/さくらぎ・ゆかり】非の打ち所のない美人。礼音は彼女にコンプレックスを抱く。絶対城いわく「同好の士」。大学と同じ市内のようだが人里離れた感じの深泥淵(みどろぶち)の傍らに建つ屋敷で暮らしている。茶道櫻城流宗家の令嬢にして櫻城流の家元でもある。河童専門のアマチュア研究家として絶対城も一目置く。
    【座敷わらし】家に出る、子どもの姿をした妖怪。初めて記録に出るのは明治に入ってからと意外に新しい。《二十一世紀になってもなお噂が生まれ続ける、現役の妖怪》第七巻p.20。無人になった住居が増える限り座敷わらしも増える。座敷わらしがいて、それが去って集落自体が衰退し廃村になるというパターンがありそうだと絶対城は推測している。
    【沢渡冬二郎/さわたり・とうじろう】櫻城さんちの庭師。
    【しかみ】恐ろしい顔をすることで鬼神に近づく。糸倉は自分たちを「しかみ衆」と読んだ。
    【七人みさき】第二巻にちょっと名前が出てくるけど、個人的には昔からあれがけっこう怖い。なんでかわからないけど。いつかメイン妖怪として出てくるだろうか? まあ、あれを妖怪と呼べるならやけど。
    【酒天童子】ビッグネーム。元々が妖怪なのか、鬼なのか、ゲリラ組織、テロ組織なのか、盗賊団なのか、ただの怖い人間なのか、あるいは正義の味方だが中央にとってはおもしろくなかった連中だったのかよくわからない。この話ではなんらかのシステムの頂点のようだ。体制とは別の視点で日本を守っているらしい。かつて体制に倒されたわりに体制と協力することもあるらしい。
    【樹木信仰】比較的新しい文化。元々はただ建材としてしか見ておらず奈良時代前後に寺社建立のため巨木を伐りすぎレアになった後に生まれたらしい。
    【城之内】映画研究会の女性部員。
    【白尾根】隣の市の小さな町。雪女が出る。
    【しろまくれ】第三巻に登場。はしてないけど名前は出た。それに例えたせいで礼音を怒らせた。
    【真怪】ほんとうの妖怪と分類されるもの。中には怪異を操る「技術としての真怪」というのもある。
    【真怪秘録】幻の本。この物語の中心になっていると言える。絶対城が追っているものとも言える。
    【スカイJ】最近流行っている合法ドラッグ。東勢大学にもやってきた。価格は安く効果抜群のわりに肉体的には害がないと言われている。話の流れからすると、とある樹木医が関わっているのだろうか。あと、もしかしたらとある妖怪専門ライターも?
    【杉比良湖奈/すぎひら・こな】座敷わらしに襲われたと思ったら妖怪専門ライターだった。エヴァのミサトさんのイメージくらいかな。より劇的にしようとして盛って書くわけだが(捏造)それはそれで妖怪に対する正しい記録方法ではある。かくして妖怪には尾ひれがついていき曖昧な存在になっていく。
    【絶対城阿頼耶/ぜったいじょう・あらや】文学部四号館四十四番資料室に住まうワイシャツに黒の羽織で黒色の長身の怪人。妖怪に詳しい学生。バリトンボイス。スポーツは嫌いだがフィールドワークで山歩きには慣れている。改名しているらしく、その名の由来は井上円了の文章のようで、絶対城はあらゆる知識の集まる書庫のこと、阿頼耶は最も深い場所くらいの意。本名というか元の名前は不明。クラウスは知ってるようなので過去にあったらしい出来事のときに変えた可能性が高い。実家は政治家を輩出する家柄。礼音は「先輩」と呼び、杵松は「阿羅耶」と呼ぶ。
    【創作妖怪】絶対城は創作された妖怪にはそう大きな関心を示さないが、創作物であっても多くの人のイメージとしてあるのなら、脳内にいるのなら、いつかそれら多くのイメージがかたちをなすこともあるかもなあとか思う。AIM拡散力場みたいに。
    【蒼空/そら】小学五年生。礼音が通う市営スポーツセンター二階の柔剣道場で合気道を習う受講仲間。船幽霊を目撃してしまった。礼音のことをコーチと呼ぶ。

    【第一学生食堂】通称「いっしょく」。礼音御用達。
    【大日本護法息滅会】宗教団体。東勢大学から車で二時間半ほどの山間の朽縄町にあり、教祖の光陰は大学のOBで昨年まで理工学部の院にいたらしい。
    【高岩】とある若手政治家のボディーガード。
    【竹上行哉/たけがみ・ゆきや】依頼人。勘違いしたイタリア人またおに大袈裟で軽い人物。不特定多数の女性への愛に生きている。
    【立見菜月/たつみ・なつき】薬剤師。四十歳手前くらい。白尾根の温泉で出会った。天寺市の兵部製薬で働いていた。
    【多邇具久/たにぐく】蛙を神として敬うときの呼び名。特に知恵の神としての性格を強調するとき。農業国の日本では蛙が田の神とされることも多い。
    【憑きもの】第四巻に登場。大日本護法息滅会のトップ、光陰が使うとされる。飯綱使いとか管キツネなどのこと。光陰はトウビョウ(小蛇の集団)を使うらしい。持ち主の意思を反映して勝手に働いたりする。おおむねいい目にあっているヤツへの社会的制裁として「あいつは憑きもの」だとレッテルを貼る形らしい。「今日はついてる」と言ったりするのはこの憑きもののことなんだとか。
    【付喪神】第一巻に登場。長く使われた道具が変じた妖怪。
    【土蜘蛛】第一巻に登場。人を襲う蜘蛛妖怪。けっこう強力な妖怪として描かれることが多い。
    【釣瓶下し/つるべおろし】人魂のようなものが上下に行ったり来たりする。バリエーション多し。
    【手品】妖怪学と近い方向性を持つので絶対城はその手の資料も多く持っている。
    【天狗】第三巻に登場。超ビッグネーム。公的記録にも民間伝承にも現れ、歴史も長く、さまざまな様相で描かれる。絶対城先輩の暴くその正体は・・・
    【東勢大学】舞台となる私立大学。天寺市(てんじし)にある。古い施設を流用して創られており怪しい噂がいっぱい。
    【鳥山石燕】妖怪画集で有名な絵師。オリジナル妖怪を入れたり、名前をより印象的なものに変えたりしているので絶対城の評価は微妙なところがある。
    【ドレス】礼音が絶対城をしばらく居候させた礼に買ってくれた。礼音いわく《あんな王室主催フラメンコ大会みたいな服》第四巻p.77。
    【泥田坊】第四巻に登場。メジャー妖怪だが鳥山石燕の創作なんだとか。当時の誰かを風刺したものらしいが昔からの伝承と創作妖怪を区別なく並べたために同列に扱われるようになった。ご近所に似たようなのが出没しているらしく小学生の間では「ドロドロ」と呼ばれている。

    【ナメラ筋】位置的な妖怪。超常的な存在が利用する道。ナメラとは一般的には蛇のことを今するらしい。
    【南郷蒼空/なんごう・そら】→蒼空
    【ナンジャモンジャ】正体のわからない大木でかつ畏怖を感じさせる神々しさのあるものの総称。
    【鵺】第三巻に登場。その正体は・・・
    【ぬらりひょん】第一巻に登場。頭が大きくて背丈の低い老人の姿の妖怪。「妖怪の総大将」的な言い方は後付けの設定だとか。
    【粘菌】南方熊楠で有名になった、かなりおもろい生物。第四巻の重要ファクター。
    【ノタバリコ】座敷わらしの一種。低級。屋内を這いまわるらしい。
    【のっぺらぼう】メジャー妖怪。闇夜の象徴。意外なところで登場。この話の中では、相手の持っているイメージを利用して、幻覚で変身しているように見せる能力を持っている。
    【破多破多/ぱたぱた】ぱん、という音が聞こえるが音源を探しても見つからない現象の妖怪化。
    【春田】市営スポーツセンターで合気道を教えている師範。
    【一つ目小僧】メジャー妖怪。第四巻に登場。絶対城は月を擬人化したのではないかと考えている。
    【判断】「それを決めるのは本人じゃないさ。判断するのはギャラリーだ」第二巻p.40
    【ひょうすべ】河童の仲間。古いタイプ。うん? ひょうすべと、いっこ下の兵部って音が近いな。神話伝説系では音には意味があることが多いのでたぶん関係あるんやろな。
    【兵部統子】天寺市市会議員。駒引川を開発しようとしている。兵部製薬の一族。駒引川開発は誰が考えても赤字になるので企業と議員の癒着は取沙汰されていない。他者に命令したりすること自体を好むタイプと織口先生は言う。男の権力者に多いタイプ。「若いチカラ活用プロジェクト」を推進している。
    【広人】そらくんの友人。合気道を習っている一人。
    【神籬村/ひもろぎむら】廃村。座敷わらしが出るというウワサ。開拓されて十年ほどで捨てられた。スケール感の狂う超巨大なクスノキがある。他に正体不明の物音が聞こえることがあるらしい。
    【船幽霊】第二巻に登場。
    【ふれあい牧場】白尾根で雪女の話を聞いた寺の隣にかつてあった動物園と牧場の中間のような施設。動物虐待をしていたらしく、管理も甘く苦情が多かったからか夜逃げした。
    【べとべとさん】第一巻に登場。足音だけがついてくる追跡系の妖怪。あるフレーズを唱えることで去ってゆく。
    【方相氏】鬼を追い払ったりする。
    【星川】海洋生物学専門の小柄で童顔で気弱そうな女子学生。理工学部のバイオ資源学科四年生。船幽霊事件で関わった。見た目に反してイヤなことはテコでもやらない強さも持つ。いつか礼音のライバル? になるかも? 「恐竜とかマンモスとか、単体で強い生物って、意外とあっさり滅びますから……。弱くて小さくて小賢しい方が、結果的には有利なんですよ……?」

    【真萱鋭吉/まがや・えいきち】東勢大学で研究室を持っていた生物学者。粘菌が専門。憑きもの使いの血族らしく、その教え子がトップを務めている大日本護法息滅会と何らかの関わりがありそうな感じ。
    【間刈/まがり】市営スポーツセンターで剣道を教えている警官。厳格で短気な性格。
    【見越し】第二巻に登場。
    【水木しげる】民俗学的伝承のある妖怪と、鳥山石燕などの創作した妖怪を、おそらく意識的に混在させて紹介し、そのことで最近の妖怪観が決定づけられたと絶対城は言う。
    【海晴/みはる】蒼空(そら)の友人。小学六年生。市営スポーツセンターで剣道を習う美少女剣士。鎌鼬の被害に遭った。
    【目目連】いっぱい目がある妖怪。鳥山石燕の創作。
    【門】平安京の門、有名どころでは羅生門や朱雀門ではおにがよく出る。内と外を隔てる境界だからということだそうだ。ただあくまでも象徴なので門はあっても防壁とかはなかったらしい。

    【夜行さん】第二巻に登場。
    【柳田国男】妖怪という現象がいったいどういう存在であるのか、実際にいるならばどういう現象であるのか現代人の目で見直した井上円了に対し、柳田国男は妖怪が伝わってきたということ自体を、その背景を重視した。ある意味人間を主体に考えているということか。井上円了へのアンチテーゼ的なところがあるので円了の考えを踏襲しているところがある絶対城にとっては微妙な位置付け。
    【山姥/やまうば】第三巻に登場。個人的には「やまんば」と呼んでいたが「やまうば」が正式? 絶対城によると民間で広まった伝承ゆえに鬼や天狗に較べより直接的な怖さがある。恐怖をもたらす者であると同時に善性を抱くこともある不可解な存在。
    【ユーレイ】絶対城は湯ノ山礼音をこう呼ぶ。
    【友香/ゆか】礼音と同じ学部の友人。
    【紫/ゆかり】→櫻城紫
    【雪女】ラフカディオ・ハーンの雪女が秀逸すぎてイメージが固まってしまったが、多くは出会った人間をいきなり殺す。いろんな話が混じりやすいタイプ。
    【湯ノ山礼音/ゆのやま・あやね】語り手。ヒロイン? 大学一年、経済学部。長身でツルペタ系の女性。たぶん、うまくすれば男装の麗人ふうになれると思う。絶対城先輩はユーレイと呼ぶ。とある妖怪の末裔らしくサンプルとも呼ぶ。能力を解放したら凄いんやけど普段は解放していたくはなく、そのためには絶対城先輩の作る(怪しい)アイテムが必要でほぼ下僕扱いされている。趣味と特技は合気道。蒼空くんいわく《コーチには女子のことは分かんないだろうけど》第六巻p.81
    【妖怪】個人的に考えているだけだが、妖怪は概ね、人間が主に自然(および自然現象)と折り合いをつけるため、そのズレを埋めるために発生したのかなと思っているので絶対城先輩のやり方は本来のありように合ってるんだろうと思う。
    【妖怪学】井上円了がつくった学問。その意図は妖怪という怪しい存在に理性の光を当て、そのバックボーン、背景に隠されたものを探ること。要するに妖怪なんていないと証明したかったってことかと。それは時として不都合なことを隠蔽してきた権力側にとってまずいことでもあり、それゆえに危険でもあった。
    【妖怪学の意義】礼音がいつか誰かの役に立つかもしれないと言って、ある程度絶対城先輩が納得したみたいなのが不思議。そんなもんとはちゃうでしょ? よっぽど弱ってたのかと思ったら、そうでもなかったみたいやし。ちょっとキャラがブレてたかな。
    【妖怪の分類】井上円了が提唱したらしい。生物などを見誤った「誤怪」、捏造された「偽怪」、自然現象などを超自然と思い込む「仮怪」(その中でさらに物理的実体に由来するものを「物怪」、心理的要因に由来するものを「心怪」)、そして「真怪」はほんとうの妖怪。

    【霊】妖怪は自然発生だが霊は人工的なもので深みが違うらしい。それは、ぼくもそう思ってる。
    【六条清香/ろくじょう・きよか】小学生。竹上の英会話教室に通っている女子グループの一員。蒼空くんいわく「ロードオブザリング」みたいなかっこいい名前のスポーツをやってたらしい。って、六巻第二章の答え、それだけでわかるやん。

    【わいら】第三巻に登場。名前と姿だけはいくらか流布しているがバックボーンを持たない妖怪。どうやら無名の絵師の創作かもしれない。
    【若いチカラ活用プロジェクト】兵部統子市会議員が推進している。大学生などの能力を地域振興に使おうというプロジェクト。織口先生は反対している。
    【笑い女】第三巻に名前のみ登場。

  • 続きものやから、できるだけ間を開けずに読もう、読もうとかいいつつ半年…。
    前作を読んだのが2月やで!? うへえ。こないだ読んだような気がするのに、何って、早いわ、日が経つのが!! (そこか)

    ちゅうことで、毎回同じことを繰り返すけれども、独特な著者のリズムについていくのにしばらくかかる…(笑)。
    そうそう、こういう内容と(元々ホラーにも伝奇にも妖怪にもさほど興味がないので…)(じゃあ何で読んでるん)こういうノリやったよね~、と、思い出してからはスルスルスルッと読了した。今回も、大変面白かった。

    「スカイJ」って実在するん? しないよね?
    ちゅうか、植物がめっちゃ怖くなってきたんですけど!
    巨大な神木ってトトロに出てくるみたいなイメージしかなかってんけど、そんなことないやん‼ めっさ怖いやん‼ 笑

    まあこれは、もしかすると神籬村に来た人間が最終的にはご神木を切ろうとするから、切られるわけにはイカンという神木からの反撃なんかもしれへんけど…。
    それにしても…。
    だって空木さんは、ナンジャモンジャの木の腐朽菌を何とかしてあげようと思ったわけやろ…? ひー。

    子孫を残すことを最終的な「勝ち」にする話って、SFでもよくあると思うんやけど、すっごい怖い。
    パッと見は、この話だって、最終的にはナンジャモンジャの木は枯れたんやし、めでたしめでたしのはずやのに、全然めでたくない。
    めっちゃ後味悪い。(;^ω^)

    でも、そこを追求してもしょうがないねんね。ちゅうか、できひんねんね。
    ナンジャモンジャの木がほんまに遺伝子情報をばらまいたんやったら、また数年後に誰かが対処するしかないわけで…。

    先のことまでこだわらない。
    こだわらないというか、先のことを対処するためには先人の知恵を借りようっちゅう感じかな。


    さてさて、今回は途中に杵松さん主観の章も入っていて、なかなか面白かった。
    連作短編というのとはまた違うけれど、一応ひとつひとつの章が独立しながら全部つながっていて、読み終わったら1冊通してまとまって長編になっているこの構成はうまいなあと思う。

    内容量もなかなかやと思うのに読みやすい。
    最初のころの(?)心霊現象やと思っていたことを舞台装置的なものでおためごかすみたいなノリが懐かしいよ…?

    (あっ、今回は久しぶりに杵松さんの章でそういう展開になってたけど!)

    ほんで、今回も順調に乙女な絶対城先輩と、またもや拉致監禁されて自力で脱出する礼音ちゃんね…(笑)。
    今回の礼音ちゃんは媚薬的なものに侵されて下着姿で監禁という、どこをどうとってもアレな展開にしかならなさそうな味付けやのに、男前男前。読んでてほんま安心できます。

    平成の女子は、礼音ちゃんみたく、自分で自分を守らんとあかんからね! 誰かに助けてもらえるとか思ったらあかんねん、世知辛いよなあ。(;^ω^)

    そういう意味で、このシリーズって、「今どき」やなあって思う。とってもいい意味で。
    私が礼音ちゃんぐらいの年齢のころは、「いかに守ってもらえるか」が女子としての数値の高さやったような気がするので、自分で自分を守って、必要か不必要かの基準すら自分で選んで一人で生きていってもエエねんでってここまでわかりやすく出してくれるお話を若いころに読めたら選択肢が広がっていいんちゃうかな~、と、思ってしまう。

    (なんかめんどくさいこというてる)
    (申し訳ない)

    大丈夫、フォーティーズの私は、自分で自分を何とかしようと思い始めてるから(今頃!?)。


    あと、先日もたばこのもらい火をする男子を見たんやけど(@寺町三条のホームズ)なにこれ流行ってんの。
    まさか杵松さんと絶対城先輩でそのくだりを読むとは…。

    それにしてもこのシリーズは根っからの悪人が出てこない。
    織口先生も最初は大概やったもんな…。前作では晃さんが大概やったのに、今回の冒頭でも作中でも礼音ちゃんとのんびりお茶までする仲になって、礼音ちゃんそれでエエのっちゅう具合。

    今回登場した杉比良さんもなかなかの女性やのに、この調子やと礼音ちゃんとのんびりお茶する仲になりそうやな。
    礼音ちゃん、どこまで懐が広いねん…。

    ちゅうか、この三人の女性の共通項って、礼音ちゃんを拉致監禁したっちゅうねんから、恐ろしいわ。笑


    知らずに不安がるより、知って苦しむほうが、確かにマシかもしれへんなあ…。
    きついのはどっちもきついので、出来ることなら味わいたくないけど、どちらかを選ばないとあかん二者択一なら後者のほうがマシかも。

    最悪なことでも知ってしまったらあとはそれを飲み下すしかないもんな。飲み下すってことは、ある程度の覚悟も備わるわけで。

    せやけど、知らんままっていうのはしんどい。
    ああだろうかこうだろうかと疑心暗鬼にとらわれ続けるのって、延々と続く上に救いようも落としどころもない。
    いい方向のことなら、悩んだり考えたりしてるだけで幸せなんやけどね。

    ほんま、想像力っていうのは、いい方向にだけ使いたい。
    悪いことばっかり想定せなあかんような想像力はいらんわ。悪いことを事実としてとらえて、その後どうするか対処法を考えるほうが、そりゃあ、ましかな。


    あと、装丁というか表紙と扉絵のデザインがびみょうにかわった? 絵を描いてはる方は一緒やけど、なんか、デザインが変わったかなーって。



    ■■■■


    ■売文業

    文章を書き、それを売った報酬で生計を立てること。

  • 「破多破多」
    夜中に家の外から畳を叩くような音が聞こえてくるという怪異。
    祟りをなす石の精や古井戸ど、音源とされる存在は伝承地域により異なる。
    物の怪や怪異は一般的に証明出来る者もいれば出来ない事を指す場合もあるから、でっち上げの記事でも楽しければ有りなのかもしれないな。

    「ノタバリコ」
    岩手県に伝わる座敷わらしの一種。
    家の神になり切れず、かといって悪を為す力も得られなかったなり損ないの座敷わらし。
    正体を知ってしまえば怖くはないが、ただ今回の場合は虫が苦手な者からすれば逆に気味が悪く感じるな…。

    「釣瓶落とし」
    近畿・東海地方に伝わり夕方や夜間に大木の上から鶴瓶のように落ちてくる妖怪。
    上下運動する様子が鶴瓶に似ているところから、この名前がついた。
    あんな場所で薬の流通というのは在り来りだが、祠など何かを祀っている場所でするのはどうかと思うな。

    「座敷わらし」
    東北地方に広く伝わりその家から去る時のみ姿を見せる。
    家の中に茸がある時は幸せな気分であり、育ち切ると自壊してしまうから不幸になる。
    どんなドラッグにも違法である限り何かしらデメリットはあり、メリットだけで楽しい気持ちを持続するなど出来ないだろうな。

    「ナンジャモンジャ」
    全国各地で用いられた種類の分からない怪しい大木を指す呼び名。
    種が特定できない木なら何でもいいわけではなく、畏怖の念を抱かされるような迫力を持った木。
    こんな事が本当に起きていたら恐怖所では無いだろうし、知らぬ間に人間社会が他の何かに取って代わられてる様で恐ろしいな。

    「倉ぼっこ」
    倉わらし・御蔵ぼっことも呼ばれる座敷わらしの一種のような妖怪。
    同士だからこそ気にしないのかもしれないが、いい歳をした男女が一つの部屋にという事をもう少し考えた方がいいのでは…。

  • 今回は怖かった。
    少しずつ進展…でも先輩確かにアレはダメだと思う。

  • 座敷から編
    三角関勃発か?
    次回も楽しみ

  • 絶対城先輩の気持ちが少し前向きに(素直に)なってきたような。でも鈍感すぎじゃないですか。晃さんの行動に期待。

  • 前の巻で絶対城先輩の過去の因縁に決着もついて、ここから第二部。
    自分の考えを書きまとめようかと思いたった先輩が、最初に出会うのは座敷わらし。

    晃さんも今後本格参戦するそうで、礼音はこれから気が気じゃないでしょうね。
    というような本筋はいいとして、峰守ひろかず式の妖怪がたり好きなので、このまま長期続いて欲しいものである。

  • 座敷わらしがテーマの巻。

    ノタバリコと座敷わらしの正体は説得力があって面白かった。
    最後の黒幕はこれまたトンデモ設定。

    一見、なんの関連もなさそうな学内で流行っている合法ドラッグと座敷わらしの関係。
    分かりやすい伏線だったけれど、話の流れがスムーズでに入れた感じがする。

    冒頭部分の座敷わらしを見たら幸せになれるという近年の話は東北の旅館のオーブみたいの?
    そういえば、そういう話もあったなあ…という感じ。
    座敷わらしは見たら幸せになれる、というイメージはなかった…。

    絶対城先輩と礼音ちゃんがどうなるのかにまにま。
    晃さんも入って三角関係がどうなるのか楽しみ。
    杵松さんの立ち位置が毎回よく分らない…。
    怪しいと見せ掛けてなにもない人なのか。
    うーん。

  • 一連の鬼騒動が終わって、いったんリセットという感じの巻。今後に関わってきそうな登場人物の紹介と、おなじみのメンバの関係を再確認している感じ。
    また、満を持しての座敷童がテーマですが、なかなか斬新な結論でした。

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著者プロフィール

小説家。2008年に『ほうかご百物語』でデビュー。著作に『少年泉鏡花の明治奇談録』『金沢古妖具屋くらがり堂』『今昔ばけもの奇譚』『ゲゲゲの鬼太郎(TVアニメ第6期ノベライズ)』など。予言獣を扱った作品に『ほうかご百物語8』、『絶対城先輩の妖怪学講座 十』(いずれもKADOKAWA)、『アマビエを探しに』(『文芸ラジオ』8号)などがある。
○推し予言獣は「左立領」。中に二人くらい入っていそうなデザインが着ぐるみ怪獣愛好家としてはたまりません。

「2023年 『予言獣大図鑑』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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