三日間の幸福 (メディアワークス文庫)

  • KADOKAWA (2013年12月25日発売)
4.11
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感想 : 499
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本 ・本 (306ページ) / ISBN・EAN: 9784048661690

作品紹介・あらすじ

 どうやら俺の人生には、今後何一つ良いことがないらしい。寿命の“査定価格”が一年につき一万円ぽっちだったのは、そのせいだ。
 未来を悲観して寿命の大半を売り払った俺は、僅かな余生で幸せを掴もうと躍起になるが、何をやっても裏目に出る。空回りし続ける俺を醒めた目で見つめる、「監視員」のミヤギ。彼女の為に生きることこそが一番の幸せなのだと気付く頃には、俺の寿命は二か月を切っていた。
 ウェブで大人気のエピソードがついに文庫化。
(原題:『寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。』)

感想・レビュー・書評

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  • 人の価値は金銭評価できるか。
    誰しも道徳の授業などで一度は聞いたことがある問いでしょう。
    もし仮に、これからの余生を売ることができたとしたら、そこにはいくらの値がつくのだろうか。万か億か、はたまた兆か。
    これはそんな人生を諦めた”僕”と監視員ミヤギとの儚くも美しい物語である。
    人の価値は平等である、とある者が言ったとしても、これについて普遍的な同意は得ることは到底できない。学業に優れている者、運動神経が良い者、芸術や音楽の才に恵まれている者など、社会にとって正の影響を与えている者は、そうでない者と比べて社会的に明らかに優遇される。ここでの価値の指標は、社会への客観的な貢献度なのである。
    しかし、上のような才能は、それが活かされる環境に置かれて初めて開花する。つまり、それを活かすも殺すも社会の在り方によって左右されるところが大きいということだ。
    家庭環境や交友関係、社会情勢などあらゆる要素によって人の才はその芽を閉ざす。それゆえに、人の価値は不平等に平等なのだ。
    本作は、軽い切り口ながらラストにかけて人生の価値について感動とともに語りかけてくれる。
    そして読後には、恋愛は純粋な自己犠牲であると言わんばかりの美しさにカタルシスを感じざるを得ないだろう。

  • かなり面白かった。昔から気になっていたので購入。なぜ三日間なんだろう?とずっと謎だったけど読み終わったとき、ふさわしいタイトルだと思いました。
    ただ、最後の終わり方がちょっともやもや。

    • マメムさん
      初コメです。
      ちょっともやもやは分かります(^_^;)
      アフターストーリー的なものを求めがちなのは、読書あるあるかもですね^_^
      初コメです。
      ちょっともやもやは分かります(^_^;)
      アフターストーリー的なものを求めがちなのは、読書あるあるかもですね^_^
      2024/03/15
    • うたえながさん
      マメムさん!コメントありがとうございます!アフターストーリーがあったらもっと面白くなりそうですよね( ^^)
      マメムさん!コメントありがとうございます!アフターストーリーがあったらもっと面白くなりそうですよね( ^^)
      2024/03/16
  • 十歳の俺たちに向けて、学級担任である二十歳代の女性教員は、こんなふうに問いかけた。

    「何よりも価値のあるものだと言われたりしている『人間の命』は、実際の金額にすると、いくらくらいのものだと思っていますか?」(愚問です…。)

     一人のお利口さんが、手を挙げていった。「サラリーマンの平均的な生涯賃金は二億円から三億円ほどだと、普通の人は…。」
    (以下省略・冒頭より一部抜粋)

     いかにも生命保険会社が、保険料算定の基礎に使われそうな意見です。

     学級担任はこのとき、「正解はない」と言ったが、正解らしきものは存在した。(物語上の正解です)

     クラスで虐められていた男女二人の子どもが、もし十年後に売れ残っていたら、一緒になろうと約束したという。

     主人公は十年後、二十歳になった俺は貧困大学生、その日の食事にも困っている。
    ある日、寿命を買ってくれる店があるという情報を得て訪れた。
    買ってくれるものは、「寿命・時間・健康」だと受付で聞き、寿命を売ることにした。
    余命から何年分の売却か?と、査定額を聞き驚愕したが、一発逆転の可能性は低いと考えた上で将来を悲観し余命を三カ月残し売ってしまった。そのかわりあなたに監視員がつき、人生の終末を見届けるという。余命の生き方で人生が変わることもある、という。さらに物語は進行していきます。

    今が正に余生の転換期かも知れません。だからこそ子どもたちの将来の夢や、今の自分の生き甲斐を求めたいです。過去の事跡を悔いてもしょうがない。寧ろ失敗が多い人ほど、「人生の教訓」が豊かだと思う。でも、学ぶ努力は必要だと思います。

    あとがきに、著者は「後悔や嘆きが深ければ深いほど、世界はかえって残酷なくらい美しくなるのではないでしょうか。(中略)
    作品を通して命の価値だとか愛の力だとかについて語ろうという気は、更々ないのです。」と書いています。

    読書は楽しい。

  • 爽やかで心地良い恋愛小説といった具合ですかね。
    本作『三日間の幸福』は『恋する寄生虫』にも似て、淡く切ない恋愛小説ですが、『恋する寄生虫』よりも爽快な読後感でした。三秋縋さんの特徴を少しは理解できてきたかもです。

    あらすじと感想です。
    十歳の時に天才では?と自覚した主人公クスノキは、ある幼馴染と十年後も売れ残っていたら結婚しようねと約束し、それを信じて時を過ごすも、なんとも自堕落な大学生へと変貌します。
    世界にも日常にも絶望したクスノキは、とある店で自分の『あるモノ』を売ってしまいます。そして、『それ』を売ったことを機に女性と出逢うのですが、そこからクスノキの人生は急展開を遂げる。

    といった流れでしたが、なるほど、それで『三日間の幸福』なのですね。とても美しい展開だと感じました。また作中の「相手にされない真実より、楽しまれる虚構の方が、ずっといい。」という言葉が妙に奥深く刺さりました。何故かは、是非お手に取ってみて下さい♪

  • 寿命を売った大学生クスノキと彼を見守る時間を売った監視員ミヤギ。
    寿命30年より価値ある一ヶ月と最後一捻りある展開が見事。

  • 「三日間の幸福」の本当の意味が分かると、
    おお、素敵でないか…と思った。

    この本の、終盤のクスノキみたいに、
    幸せを純粋に感じられたら、人間欲張りすぎず幸福に生きられるのにな、と思った。

    ストーリー的には面白かったけれど、クスノキとミヤギの関係が最後までくすぐったい感じでしっくりこなくて…星4つで(^^)

  • 寿命を1年1万円で売ってしまった男とその監視員の物語。僅かな余生で幸せを掴もうと努力するが上手くいかない。男は余生の使い道を模索するが...。

    最高の物語。もう、三秋縋さんのファンになりました。「恋する寄生虫」も然りだけど、特殊な条件のある恋の描きかたが本当に素晴らしい。最初は主人公が可哀想に思ったけど、後半は本当に幸せそうで読んでいる方まで幸せが伝播してくる。お互いを思い合う優しい気持ちで満たされた。

  • もし自分だったらとずっと考えていた。

  • ★2.5
    途中まで設定が面白く、読みやすかったけど、
    最後のまとめだけファンタジーだな。
    そういうテイストの作品なのかな?
    ―――――――――――――――――――
    ■人生を諦めかけていた主人公が"寿命"を売って残りの余生3ヶ月を過ごすストーリー。

    売ることができるのは、
    ①寿命 ⇒ 未来がなくなる
    ②時間 ⇒ 売った年数分、透明人間になる
    ③健康 ⇒ 不明

    "健康"を売った場合は、どうなるのか気になる。
    直ちに五体に支障が起きるのか、内臓の方なのか?

    個人的には同じ人間でも若い時の10年と、歳をとってからの10年では価値が全然違うと思う。

    ――――――――――――――――――――――――
    ■主人公が過去に関係性があった人、全員から疎ましく思われていることに絶望を感じる。

    『自分は特別で、いつかは何かを成し遂げる人』
    ⇒若い時に多くの人が勘違いしている自信。
    気づかないで周りを見下して、幸せを掴むチャンスを逃しているのは自業自得だな…。

    『死ぬ前にやりたいことリスト』
    これは死亡フラグがたってからでなく"生きている間にやりたいことリスト"として常日頃から考えておいて損はないと思った。

  • まさしく三日間の幸福とはこのことか。
    三日間のみならず、これから一年、十年生きる中でこの三日間の幸福こそ、幸福の本質なのかもしれない。
    清々しい。読んだ後は夜空を見上げ、ハンモックに揺られ、冷たいレモネードをストローでちゅうちゅう吸った時のような清々しさです。
     

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著者プロフィール

WEBで小説を発表していた作家

「2015年 『僕が電話をかけていた場所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三秋縋の作品

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