ビブリア古書堂の事件手帖5 ~栞子さんと繋がりの時~ (メディアワークス文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048662260

作品紹介・あらすじ

静かにあたためてきた想い。無骨な青年店員の告白は美しき女店主との関係に波紋を投じる。彼女の答えは-今はただ待ってほしい、だった。ぎこちない二人を結びつけたのは、またしても古書だった。謎めいたいわくに秘められていたのは、過去と今、人と人、思わぬ繋がり。脆いようで強固な人の想いに触れ、何かが変わる気がした。だが、それを試すかのように、彼女の母が現れる。邂逅は必然-彼女は母を待っていたのか?すべての答えの出る時が迫っていた。

感想・レビュー・書評

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  • 第四巻のレビューにも書きましたが、この『ビブリア堂古書堂』のシリーズは思いつきで話をつなげていった訳ではなく、おそらく全体のプロットを書いてから順番に書かれたストーリーだと思いました。

    『ブラック・ジャック』は私も子供の頃、弟が持っていたのを借りて読みましたが、同じ第四巻に色々なバージョンがあって全部で五冊所有している家があるなんて、マニアというのは凄いと思いました。
    他の作品では『黒いハンカチ』は積読です。
    リチャード・ブローティガンは興味をひかれました。

    この先のストーリーは栞子さんを襲った犯人と、母の智恵子が何を考えていてどういう結末になるのかが、そろそろ気になってきました。

    以下、ネタバレですので、これから読まれる方は気を付けてください。


    プロローグ リチャード・ブローティガン『愛のゆくえ』(新潮文庫)
    大輔がした告白の返事を五月中にはっきりさせると栞子さんは言っていました。そして今日が五月最後の日でした。

    第一話 『彷書月刊』(弘隆社・彷徨舎)
    大輔は滝野ブックスの息子の滝野連杖から妙な話を聞きます。
    『ホウショゲッカン』という1985年創刊から2010年まで25年続いた雑誌のバックナンバーを売りに来る客が古書店の間で噂になっているというのです。案の定、ビブリア古書堂にもその65歳の宮内多美子という東京都大田区に住む女性が『彷書月刊』を売りに来ます。栞子は『彷書月刊』についた印と新田という字を見て、なぜ多美子が売買を繰り返しているのか謎を解き明かします。

    断章Ⅰ 小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)
    志田の住居である河原に栞子がやってきて、志田に関するとある秘密を解き明かします。
    そして栞子は自分の方も「母の智恵子にわたしも会いたがっていると伝えてほしい」と頼みますが、志田は断ります。

    第二話 手塚治虫『ブラック・ジャック』(秋田書店)
    五月末まであと三週間のある日、栞子さんの同級生だった滝野連杖の妹の滝野リュウが部活の後輩だったという大学二年の真壁菜名子を連れてきます。
    菜名子は高一の弟で不登校になった弟の慎也が父の大切にしていた『ブラック・ジャック』の何冊かを盗んだのを探してほしいと言います。
    栞子は菜名子の父の亮太が持っていた『ブラック・ジャック』の4巻は全部で五冊あり、そのうちの三冊がなくなったのを言い当てます。慎也に白状させると、そのうちの一冊を父の亮太が母が危篤で容態が危ない時に病院へ行く道すがら古本屋に立ち寄って買ったのが気に入らなかったと打ち明けますが、栞子は見事に亮太のその日の行動の謎を解き明かし、説明します。

    断章Ⅱ 小沼丹『黒いハンカチ』(創元推理文庫)
    リュウと智恵子は何度かチェーン店のカフェで会っていました。
    その店で、栞子はリュウに「母にわたしが会いたがっていると連絡をとって欲しい」と頼みますが、リュウは「もし会いたければ本についての問題を解いてみなさい」と智恵子からの伝言を言い、栞子は「どんな問題でも解く」と答えます。

    第三話 寺山修司『われに五月を』(作品社)
    一昨年、栞子が店に万引きした本を持ち込んだので出入りを禁じた門野澄夫が智恵子の紹介だと言って頼みごとをしに来ます。
    寺山修司の初版本の『われに五月を』を亡くなった上の兄から譲ってもらったのに持ちかえろうとしたら他の親族に止められたというのです。
    栞子の推理で澄夫は嘘の遺言は言っていなかったことが証明されます。
    最後に澄夫が寺山からの引用で「誤解でしあわせになれるなら、誤解で満足できるなら、僕は誤解を愛する」と言いながら、誤解を解こうとせずに皆の元から去っていくのが印象的でした。
    そしてまた、最後に栞子は智恵子と対面します。

    断章Ⅲ 木津豊太郎『詩集 普通の鶏』
    栞子は母に大輔と付き合うことを報告した後「お父さんのことを知りたい」と母にたずねます。
    智恵子は「ある日、突然、自分が姿を消す予感があった。結婚する必要はなかった。寂しく悲しい思いをさせただけだった。ここに残るのなら気を付けなさい」と言い残します。

    エピローグ リチャード・ブローティガン『愛のゆくえ』(新潮文庫)
    「大輔くんが…好き」という栞子さんがとてもキュートで可愛かったです。
    最後はいい雰囲気の二人のところへ、栞子さんから『晩年』を奪い取ろうとした田中敏夫からの脅迫状が投げ込まれて…。

    6巻へ続く。

  • ついに栞子さんに告白してしまった大輔だが、返事を聞かせてもらえないまま2ヶ月近く経っている。何か理由がありそうです。

    本についての雑誌「彷書月刊」をまとめて売りに来る、落ち着いた感じの白髪の女性。この謎めいたお客さんは、この物語に登場している、意外な人物とつながりがありました。
    ここにやって来るお客さんの誰もが人に言えない事情を持っていて、人間関係が入り組んでいて、読み進めるたびにどんどん面白くなってきます。

    栞子さんの同級生で、「滝野ブックス」の滝野蓮杖の妹リュウがビブリア古書堂にやってきます。
    探してほしいと依頼された本は、手塚治虫の『ブラックジャック』。
    昭和50年代に発売された少年チャンピオンコミックスは、私にとってまだまだ記憶に新しく、そんなに昔には思えないのに、30年ほど前のものが古書として取り上げられているということに、驚きと焦りのようなものを感じます。
    知らないうちに、時間は容赦なく過ぎ去っていくのですね。
    自分が一生のうちに読める本なんて、ほんの一握りかもしれない。

    母智恵子と再会を果たした栞子さん。
    たとえ10年前に家族を残して、家を出ていったとしても、母であることには変わりがないはず。
    どんなことがあろうと、栞子さんと大輔くんには幸せになってほしいです。

  • 2022/05/25読了
    #三上延作品

    古書にまつわる日常の謎解き。
    家族を捨てた母との再会。
    五浦の告白を受けるも
    自分も母と同じように古書に惹かれ
    消えてしまうことを恐れ答えに悩む栞子さん。

    もしこの世界にあるものが現実だけだったら、
    物語というものが存在しなかったら、
    わたしたちの人生はあまりにも貧しすぎる・・・
    現実を実り多いものにするために、
    わたしたちは物語を読むんです。

    本しか興味のなかった栞子さんに
    五浦さんが良い変化を与えているように見える。

  • シリーズ5作目。
    今回は本編とサイドストーリーが連なっての短編物語。
    古書を通じて知る様々な人間模様。
    そして栞子さん自身の恋愛。母親との関係。
    そしてラストで…。
    今回も読みやすく。惹きこまれて読みました。
    最後に気になる展開。
    次のシリーズはいつも以上に楽しみです。

  • 前回のラストから、どういう展開になるのかハラハラしながら待っていた5巻です。

    今回は3つの中編で、テンポよく読めました。
    古書ミステリーということで読み始めた本シリーズですが、栞子さんと大輔くんの関係からも目が離せなくなってきてしまいました。
    ぎこちない空気になってしまっても、本の話となると普段のペースを取り戻すところが、なんだか微笑ましい2人です。

    栞子さんの母親の話題が出ることが多くなってきましたが、常人には計り知れない洞察力と知識欲、それにふわふわとした掴みどころの無さで、不安な気持ちにさせられる存在でした。

    そして、今回のラストも引っ張ります…。
    6巻も読まなければ!

  • 人気シリーズも5作目。
    大輔の告白に対して、返事を延ばす栞子だが、その理由とは‥?

    大らかな人柄の五浦大輔の視点で語られ、ほとんど本が読めないという設定で誰にでも入りやすくしてあるのが上手いですよね。
    ヒロインは漫画チックな容姿の楚々とした内気な美女・篠川栞子で、ツンデレというか~普段は大人しいけど、本の話になると夢中になるキャラ。
    そして、出てくる本の薀蓄は半端ない‥
    思わず世界に引っ張り込まれますね。

    今回のプロローグとエピローグは「愛のゆくえ」
    なるほど。しかも、ちょっと仕掛けが入っていたりして。

    古本屋に本を売ってはしばらくしてまた買い戻すという謎の行動を取る中年女性。
    その理由と、正体は‥?
    せどり屋の志田の知人の老人に、どんな関係が‥

    手塚治虫の全集の同じ本がなくなり、もとは複数あった謎。
    栞子さんが鮮やかに解き明かしますが、な、なんてややこしい出版物‥
    手塚治虫のこだわりは、よくわかる気はしますが。

    寺山修司の高価な本を兄から遺品としてもらいうけたと主張する男。
    出入り禁止だった弟に遺すとは、そんなはずはないと思う妻は‥
    過去にさかのぼる辛いいきさつは思いがけなく、栞子の身近で起こっていた‥

    突然家を出て何年も音信不通だった栞子姉妹の母親・智恵子は出てきてみたら、強烈なキャラ。
    今回も見え隠れする存在がピリッと効いてます。
    謎の多いキャラなので、両親の結婚のいきさつを栞子が聞くくだりで、こちらもちょっと納得しました。そういう女性だと承知の上でのプロポーズだったと。

    勝手な母親に怒りを覚えつつ、似ている自分がいつか同じことをするのではと心配していた栞子さん。
    大輔くんの思いがけない言葉で、ハッピー感溢れる未来をイメージできるようになります。
    ところが、まだまだ事態は急変‥? 乞うご期待ですね!

  • 北鎌倉駅に近いビブリア古書堂。その女店主・栞子さんとアルバイトの大輔くんによる古書にまつわるミステリーと謎解き。

    3月(前巻)に栞子さんに想いを伝えた大輔くん。
    その返事はなかなかもらえず。5月のうちに答えると栞子さんは言うのだが・・・。

    大輔くんの視点で語られる地の文。彼にとっての盲点はそのまま読み手の盲点となる。もちろんそのように仕掛けられているわけだけど・・・。
    まんまとはまってしまった私。

    また、家を出た母親との関わりも今まで以上に多くなり、栞子さんが何かを乗り越えようとしているのわかる。栞子さんの控えめな態度が母親によって形成されたのを知るにつれ、母娘の複雑な関係に少しばかり息苦しくなってくる。

    似たもの同志でありながら娘は母親のことを認めつつも許せず、母親に心の奥底を見透かされるのを恐れて一定の距離を置いている。そのことが却って、その距離の中にある特別な感情を知らしめる結果を招いているという皮肉。

    娘に対する愛情は一般的なそれとは異なっており、また自分をつき動かす好奇心に抗うことのできない母親の智恵子さん。前巻のあまりに奔放な態度は理解に苦しんだが、本巻の最後の彼女の言葉に思いやりを感じることができた。

    「でも、万が一最後はそうなったとしても、その前になにかを変えられるよう、努力をする人間でありたい」(P290)
    栞子さんは「自分は決して母親のようにはならない」と思いつつも、同じ血が流れるいるが故、同じ過ちを犯してしまうのではないかとおびえる。だから、大輔くんを愛していることに気付いていながら、一歩踏み込めずにためらってしまう。

    自分もかつての母親のように、知りたいと思う気持ちを抑えることができず、大切な人を置き去りにしてその人の前から突然立ち去ってしまうのではないかと恐れている栞子さんに大輔くんは言う。

    「いや、俺もいっしょに行けばいいじゃないですか」(P296)

    これまたなんとシンプルな!
    こうあるべきとか、手に入れた情報に逆に振り回されて柔軟性を欠いた思考に陥りがちな私たちを、さらりと解放してくれるリターンエースのような一言。
    あれこれできない条件ばかりを並べて頭をかかえる非生産的かつ非建設的な毎日に、衝撃的ですらありました。

    大輔くん、素敵です!

    • だいさん
      >大輔くん、素敵です!

      だんだん、かっこよくなって来ましたよね!
      >大輔くん、素敵です!

      だんだん、かっこよくなって来ましたよね!
      2014/06/19
    • nico314さん
      だいさん、こんにちは!

      本の中には大輔くんのほかにも『イイ男』がいっぱいです!
      素敵な女性も、憧れる先輩方も!
      もちろんかわいい子...
      だいさん、こんにちは!

      本の中には大輔くんのほかにも『イイ男』がいっぱいです!
      素敵な女性も、憧れる先輩方も!
      もちろんかわいい子どもたちも!!

      現実の世界の人たちの素敵なところも、ちゃんと目を向けたいなあと・・・。
      2014/06/19
  • おもしろかったです!

    本にまつわるミステリーは薄めですが、大輔さんへの返事を真剣に考える栞子さんの魅力が溢れんばかりです。

    ラスボス智恵子との対決(?)シーンにドキドキした。
    なんかフラグ立ちまくっていたし。
    言い残した言葉からすると、最後に起きた災厄の元凶なんだとプンプンする。

    栞子さんは大輔くんの言葉がうれしかっただろうなー。
    もうちょっと余韻に浸りたかったのに…w

    ビブリアがサスペンス・ミステリーぽくなっていきそうな次巻が楽しみであり、ちょっと怖い。
    ラスボス智恵子が願うのは娘の幸せなのか、自らの探究なのか。

    最後は気持ち良く物語を終えて欲しいものです。

  • 読了。3、4巻より二人の間が扱われている。
    やはり好きな関係性である。
    栞子さんの血というか、過去に怯える感覚は共感する。最後、大輔の口から出た言葉に、私も驚き、胸があたたかくなった。それが一生分か、10、20年程度か、あるいは数年程度の安寧かは目をそらすとしても。



    ーー
    蛇足。
    …全く関係ないが、向井万起男さんを連想した。『君について行こう』良作である。向井氏は医師であり、経歴も性格も?立派だが著作のとおりの人物だ。ついて行く。なよなよしたイメージが先行するが、そんなことはない。
    洋の東西、昭和の昔も令和の今も、様々なカップルが存在すると改めて思う。
    石原軍団も終わり、昔当たり前に存在していたものが消えていく。新しい出会いを増やしながら、かけがえのない毎日を大切に生きたい。

  • 第五巻では、手塚治虫「ブラック•ジャック」が出て来ます。自分事ですが、第五巻にしてついにトリックがトリックにならないという事態になってしまいました。何故かと言うと、ブラック•ジャックを連載と同時に読んだ手塚治虫マニアとしては、チャンピオンコミックスが発売されるとすぐに買っていたからです。うちの息子曰く「我が家に稀覯本があったとは思わなかった」…だ、そうです。マンガも初版をとっておくもんですね。

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著者プロフィール

『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズが累計700万部を超えるベストセラーとなる。同シリーズで、文庫作品初の『本屋大賞』候補、『本の雑誌』が選ぶ「この40年の書籍 第1位」に選ばれるなど、幅広い層からの支持を集める。

「2022年 『ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三上延の作品

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