あくむす(1) (電撃コミックスNEXT)

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  • KADOKAWA (2014年2月27日発売)
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Amazon.co.jp ・マンガ (162ページ) / ISBN・EAN: 9784048662345

作品紹介・あらすじ

mothy_悪ノPの名曲『悪ノ娘』を元にした4コマ漫画。わがまま娘の王女リリアンヌ(悪ノ娘)と、彼女に振り回される家来たちの日常を描いたドタバタコメディ。この王女を止める者は現れるのか――!!

感想・レビュー・書評

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  • 絵柄が安定していて非常に読みやすいパロディ。
    どうしてこうならなかった…。

  • これは壁という名の枠線を壊すことからはじまる喜劇です。

    歌声合成ソフトおよびそのイメージキャラクター「VOCALOID(以下:ボカロ)」が隆盛を極めた2010年代前期、「PHP研究所」をはじめ多くの出版社から相次ぎ小説化、漫画化の企画が動きました。
    本作はそのひとつ「悪ノ娘・シリーズ」/「大罪・シリーズ」の中核を占める超有名楽曲『悪ノ娘』からの、派生スピンオフとして作られたギャグ・コメディ作品となっています。

    なお本作と同時期に連載された作品として、主として『悪ノ娘』と表裏一体の『悪ノ召使』から材を取った『悪ノ召使 ~おぺらぶっふぁ!~』なる作品もあります。
    もっとも、ギャグに振り切れた本作と比べると印象はかなり異なっています。

    説明は割愛させていただきますが、あちらとこちらで同期したネタもあったりします。
    強いて言うのなら同じ題材をどう調理するか比べる楽しみがあるのかもしれませんね。

    さて。悲劇と言って差し支えのなかった本編から一転しての喜劇というべきか。
    本作『あくむす』は、そこの落差を楽しむ、ストーリー(?)仕立ての「四コマ漫画」となっています。
    デフォルメを効きに効かせた丸っこい絵柄がほんとうにかわいらしいのですね。

    それと、よく口が大開きになっててアホっぽい(※褒めてます)キャラたちの表情豊かなやり取りが印象的でした。要所要所で無表情を織り込んで感情いっぱいにシュールな寸劇を演じてくれたりします。
    近世ヨーロッパを下敷きにした本編の世界観をはるか彼方にぶん投げていることさえ気にしなければ、きっと万人が楽しめる作品だと思われます。ほのぼのとブラックの取り合わせが絶妙なんですよ。

    そもそもこの作品、開始早々一本目のネタからしてナレーションにツッコミを入れるメタ(・フィクション)ネタに走っていることからもわかる通り、いい感じに弾けまくっているんですよね。
    この時点で作品の方向性がわかるので合わない人はこの時点で回れ右ができるのは良心的かなと。

    全二巻という短さが気にならないくらいにやり切ってくれたので私個人として大いに推したい思いです。というかコンセプト上長々とやるものではないことは自明なので、きっとこれくらいでちょうどいい。

    それはさておき。
    本作のキャラクターは元々の楽曲を作り上げた「mothy_悪ノP」氏が自らノベライズを手掛けたシリーズのうち、『悪ノ娘 黄のクロアテュール』と『悪ノ娘 緑のヴィーゲンリート』。
    以上の二冊を押さえれば、本作を十二分に楽しむうえで問題はないかと存じます。それを抜きにすれば最低限でも楽曲『悪ノ娘』、『悪ノ娘』、『白ノ娘』の三曲分、計十七分の予習は必要と思われますが。

    とまれ。本来なら、本編を楽しんだ方が余技として本作に手を出されるのが正しい道筋なのでしょう。
    レビューとしては紹介の順序が逆な気がしますが、私も細かいところは気にしないことにしました。

    そういったわけで話を移して、ゆかいな「悪ノ娘」を取り巻く人々について軽く触れてみますと……。
    わがままお姫様「リリアンヌ」と、それに振り回される侍従の少年「アレン」。
    このふたりのボケツッコミを基本として、脇を固める国の重鎮「三英雄」たちがリリアンヌのブレーキ役になっているかと思いきや、三者三様でダメな大人っぷりを発揮していて本編の悲劇も形無しです。

    で、三英雄の養子や弟子だったりして、次代とギャグ展開の主軸を担うアレンの同輩たちもヤバい。
    リリアンヌの暴走という名の火に油を注いで回る輩がいるわ、本編のパワーキャラを極限解釈しているシュール枠がいるわ、ふてぶてしさMAXでマイペースを地で行く子がいるわで、実に曲者揃いです。

    隣国に目を移すと、常に目がしいたけになっている憧れの歌姫とネガティブとこじらせの権化であるその親友のコンビ。彼女たちの雇い主である大商人の父と愛娘の一方通行になっている親バカ関係など……。
    キャラクターそれぞれにわかりやすい個性付けが施されている点が素晴らしい。

    その上で、彼ら彼女らがどういった関係を築いているのかを順を追って読者に見せてくれるのですね。
    私がそう感じたからと断らせていただきますが、元ネタをあまり知らずとも話についていけるくらいには作中での補足説明も親切でした。原作を抜きにしてもコメディとしての完成度は高いように思われます。
    なので、モチーフになったボカロキャラが誰なのかについては省かせていただきました。

    本編のキャラクター性を過度に強調してはいるものの、だいたい芯は捉えているのも評価点です。
    絵柄もあってギャグ補正が効きに効いていること自明です。なのでゆるっと楽しむが吉でしょうね。

    気になる範囲としては、元々がいじられキャラであることを差し引いても海を挟んだ隣国の王「カイル」が幼稚すぎるってことくらいでしょうか。
    これも早々に鳴りを潜めて、相変わらず軽く扱われつつも原作準拠になるので許容範囲ではありますが。

    あえて言うなら時事ネタっぽいネットミームやモチーフ元であるボカロキャラたちの持ち物「ネギ」や「タコ」などが目立つ。そこが十年越しに知らないで読む方への障害になるかもといったところです。
    ただ、時代を選ばない作品を作るのはそれこそ困難です。それを言っても詮無しといえばそれまでです。

    以上。
    繰り返すようですが、本編の世界観とはかけ離れたギャグ時空なので割り切る必要こそあります。
    ですが、一級のコメディだと私は思っています。

    本作特有のモブキャラを除けば、本編のキャラの延長線で話を作っているのも強みです。
    原作者「mothy_悪ノP」氏のキャラクターメイキングの巧みさを本作のギャグの冴えによって逆説的に証明した気さえしてきました。もちろん本作を手がけた「けん」氏の腕前を認めたうえでですが。

    また、最初にこれが舞台劇ですよってさりげなしに提示しているのもなかなかに洒脱なポイントだと思います。説明は省きますが、悪ノ娘と舞台劇は切り離せないくらいに緊密な間柄になっていますから。

    そのために洒脱ついでに言っておくと「第四の壁」ってメタフィクション用語って演劇由来ですね。
    よってコマの枠線をぶっ壊したり乗り越えたりしてる本作にそれこそ似通ってしまうのかもしれません。

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