紫色のクオリア (電撃文庫)

著者 :
制作 : 綱島 志朗 
  • アスキーメディアワークス
4.11
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本棚登録 : 1149
レビュー : 145
  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048679046

作品紹介・あらすじ

自分以外の人間が"ロボット"に見えるという紫色の瞳を持った中学生・毬井ゆかり。クラスでは天然系(?)少女としてマスコット的扱いを受けるゆかりだが、しかし彼女の周囲では、確かに奇妙な出来事が起こっている…ような?イラストは『JINKI』シリーズの綱島志朗が担当。「電撃文庫MAGAZINE増刊」で好評を博したコラボレーション小説が、書き下ろしを加え待望の文庫化!巻末には描き下ろし四コマのほか、設定資料も収録。

感想・レビュー・書評

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  • クオリア。
    それは、赤を赤と感じる感覚質。
    人を人であると。自分を自分であると。魂を魂であると。。。
    「百聞は、一見に如かず。」
    シュレディンガーの猫は、箱を開けるまで、
    死んでいるのか、生きているのか分からない。
    どちらの可能性もあるし、いやどちらの世界も存在するのか。
    では、生きていると観測するのは。死んでいると観測するのは。
    それを確定するのは、人間のどの観測装置なのか。
    。。。鞠井ゆかりには、ニンゲンがロボットに見える。

    あえて言うなら、似非科学小説だろうか。
    ハードSFと見せかけて、実は神話的世界観な話。
    突き詰めて、突き詰めて、でもやっぱり、
    人は信じるところに、生きるってこと。
    ラノベらしい結論といえば、そうなのかもしれないな。
    いろんなアイデアを科学から借りたけど、
    結局は、一番平凡なとこにしか落ち着かない。
    作者自身が、ストーリーは作れても、
    科学やクオリアについて思考しきれてない印象。
    結局、紫色の瞳は、なんなのかほとんど描かれないし、
    その一番の謎を解決しようとしないで、
    周りをぐるぐるかき混ぜただけ。
    そして、人が一番安心出来る、
    作中で殺人犯が言ったところに落ち着くことになる。
    > いまだに自分たちには、魂があり生命があると思っている
    > 自分達が特別だと思いたい人間。
    人間は特別な存在で、確固たる存在で、
    その魂によって運命を切り開かなければならない。
    そんな、誰もが信じたい妄想、希望。
    それが世界の摂理なんだという、所謂セカイ系の分法に。
    思考拒否して、読者のクオリアが一番安心する場所に。

    文章は精彩さに欠く印象が強い。
    地の文も会話も説明調が多いし、
    かと思えば、なんの脈絡の無い文章が続く。
    遠まわしに、キャラを引き立てたいのだろうけど、
    文章力というか持って行き方が、上手くないので、
    読んでいて、面白くないし、萌えもしない。
    端的にいうと、回りくどい。

    主人公は科学的な知識で自分の受け入れられない運命を、
    理解しようとし、あらゆる知識を集めて見るのだけれど、
    自分の思うような解決はしない。
    なぜだか分からない主人公に、友人は一言、
    あることを「信じる」ということが必要なんだと言う。
    主人公は、それを受け入れる。
    結局のところ、主人公は、何一つ自分で思考出来ていない。
    借り物の理論、借り物の考え、借り物の公式。
    自分がどうすれば良いか、だけしか思慮出来ず、
    それがどういうことなのかの答えを借り物で済ませる。
    思考拒否。自分は凡人だ、まだ中学生だからと言い訳して。
    そして、簡単に結論される。分からないことは信じればよい。
    人間の思考には限界があって、
    それを超える事は信じるしかないのだからと。
    違う。主人公は知識を得ただけで自分で考えてなどいない。
    自分の限界、人間の限界を借り物の知識で規定したに過ぎない。
    そこに気付かなければならない。
    思考拒否して、ただ信じればよいという心地良さに、
    すがるのは、本当に自分で運命を切り開くことだろうか。

    「鞠井に関するエクストラ」は「玩具修理者」
    「10億分の1のキス」は「時をかける少女」+「ひぐらしのなく頃に」

    共感覚と自閉症(サヴァン症候群)

  • ラノベらしからぬSFのセンス・オブ・ワンダー溢れる小説。

    感想を書くのにネタバレを避けるのが難しい。特にあらすじのことは書かない。
    ネタ自体は使い古されたものなのだがラノベの軽い世界でフルスロットルされると驚愕する。
    アニメ化を目指す傾向があると思い込んでいたラノベでこういう小説が許されるのかと。
    小説・活字媒体でないと、この世界は表現できないだろう。壮大極まりない世界にクラクラする。

  • 量子力学の視点で平行世界を扱った物語。ラノベというよりSFと呼んだ方がしっくりくる文章と構成で、ハヤカワ文庫で大原まり子でも読んでいるような、そんな感じだった。アマゾンの評価が高いので気になって読んでみたが、2009年出版、そうか、『Steins;Gate』や『まどか☆マギカ』より先にこんな物語が存在していたのか。この二作を知っていたら必ずやどこかで重ね合わせて思い出すであろう。

  • ライトノベルとして考えないほうがよい。幾度と渡る思考実験においてそれが真実であるという不確かな自己観察性。平行世界という無限の人生。それは人の観念。感情という眼には見えない他者不観測的概念。シュレディンガーの猫の正当性と斉一性はいずこ。匣の中の函数の数式はどこにあるのか。「目」に見えるモノはそこにあり、どこにある。彼女を守るための壮絶なるトライアンドエラーの果てに何を見るのか。嗚呼!このレヴューを書かない私は今頃何をしているのだろうか。

  • 自分以外のすべての生物がロボットに見える女の子。そんな独特なクオリアを持つ不思議ちゃんを中心とする平和な学園コメディー……のはずだった。
    早速ネタバレだが、不思議ちゃんは■される。それを赦せなかった友人による復讐劇、それがこの物語の主軸となる。内容としてはシュタインズゲートに近い。大切な人を救うためにあらゆる可能性を四苦八苦しながら彼女が平和に暮らせる世界線を探していく。
    コペンハーゲン、エヴェレットなど量子論を踏まえた物語であるが、説明もわかりやすくすらすら読める。科学と読者の距離感がちょうど良い作品なのかなと思った。
    一般的に不思議な力で誰かを救う物語は主人公(男)が大切な女性を救うものであるが、本作品は女性が女性を救うという点で新鮮だった。

  • ?Fのクオリア (電撃文庫)

  • ラノベのSFでは、最高峰ではないでしょうか。
    惜しむらくは映像化にあまり向いていなかったことかしらん。(漫画版もおもしろかったけどね)

  • 人間がロボットに見える紫の瞳をもつ少女・鞠井(まりい)ゆかりと、そのクラスメイトで友人の少女・波濤学(はとう・まなぶ)の物語です。

    第1話「鞠井についてのエトセトラ」は、「東京バラバラ殺人」と呼ばれる事件にマナブが巻き込まれ、ゆかりが彼女を救うために、彼女の左手を「修理」する話。

    第2話「1/1,000,000,000のキス」は、本書の中心になる物語です。アメリカからやってきた天才少女アリス・フォイルが、ゆかりを彼女と同じような特殊な才能をもつ子どもたちを育成する「ジョウント」という組織に勧誘します。マナブは、ゆかりがアメリカのジョウントに行ってしまうことを望んでいないのに、ゆかりを引き留めることはしませんでした。その結果、アメリカにわたって半年ほどで、ゆかりは命をうしないます。マナブは、ゆかりがジョウントの実験の犠牲になったことを突き止めようと決意しますが、そんな折、彼女の左手に奇妙な出来事が起こるようになります。ゆかりがマナブの左手を「修理」するために使った携帯電話を通して、並行世界の自分自身と話ができるようになったのです。

    こうして、本書の叙述は並行世界のマナブたちを次々に渡り歩くようにして、ゆかりを死から救おうとするマナブの試みが語られます。最後は、観測原理の外部へと出てしまったマナブに、思いもかけずゆかりが語りかけます。彼女の運命は、彼女自身のものであり、親友のマナブでもそれを奪うことはできないと。そしてマナブは、自分とは違う運命を持ち、自分とは違う世界の質を享受する「他者」としてのゆかりに改めて「出会い」、「友達」となります。

    SF的な設定を詰めないでもこういうストーリーを構築できるのは、ライトノベルの強みだろうと思います。その強みを存分に生かした作品だといっていいと思うのですが、そのぶん心理的な方向にストーリーが収束することになりがちなのもまた、ライトノベルの特徴かもしれません。SFファンにとっては、設定の詰めの甘さよりも、むしろその辺りに不満を感じるのではないかという気がします。

  • 膨大なSF知識をラノベに落とし込んだ物語。テンポがよく一気に読めた。2話構成+aという収録は、物語の尺とスケールのバランスが少々悪く感じるけれど、それは構成面の悪さではなく、この設定で色々な形の話をもっと読んでみたかったな、というかなり贅沢な感想によるものです。ラノベとしてもSFとしても傑作だと思う。

    * 設定の広がり

    人間がロボットに見える、という少女の設定を連想式に広げて話を組み上げている。人間がロボットに見える=人間とロボットの見分けがつかず、人間と感覚を共有できない。その悲しみが上手く思春期特有の全能感や少女性と合致していてストーリーが非常にライトノベルとの親和性が高い。ロボットという特異な視点が人間の本質を見抜くという中2病をくすぐる設定に、殺人鬼に誘拐されて解体されるというグロ描写と絶望感もラノベっぽく素晴らしい出来。そのハイライトシーンが上手く紫色のクオリアを持つ鞠井ゆかりとの対比になっているのも面白く、その後主人公の学を救出、そして『修理』というシーンによってゆかりを避ける天上七実の理由という伏線を回収しているのもポイントが高い。とにかくアイデア、テンポ、構成面のバランスがいい。

    タイトルにもなっているクオリアに始まり、哲学的ゾンビ、シュレーディンガーの猫、量子論などを盛り込みつつ、分かりやすくストーリーと設定に絡めている。設定をただ書き連ねるのでは無くストーリーで説明するというのが最大の見所であり、キャラクターを中心に語ることにより主眼の話がブレていないのも大きい。

    * 不満点

    不満はかなり少ないが、ドリルを持つというクラスメイトの設定が放置されていたのが少々もったいない。総合的に1話目の鞠井ゆかりの紹介、2話目のメインという、2つの話を比較した場合、物語構成そのもののスケール感が段違いだったというのが小説一本を通して見た場合若干美観を損ねているのは否めない。あとラノベ特有と言ってしまえばそれまでだが、端折られた描写(他の世界線でのアリスに対する拷問や解体シーン等)が気になる所。一種のセカイ系に属する物語。

    * 他の物語との比較

    物語そのものは『魔法少女まどか☆マギカ』における暁美ほむらのループや、『シュタインズゲート』における鳳凰院凶魔の椎名まゆりを救うためのループ、『バタフライ・エフェクト』などとほぼ同じストーリー構成である。

    【疑問点】何故ループものは『特定の誰か』を助ける構成になるのだろうか?

    そちらのほうが主人公の絶望感や変貌を表現しやすく、運命に抗うというのは共感を呼び感情移入しやすいためであろう。安易に逆にしたところで、平行世界=無限に生存しているため、誰かを殺す目的だと完全抹消の部分で話が動かなくなる恐れがある。また殺すというのは危機であり、転じて、誰かを救う目的になるためどのみちあまり意味が無い。

    全ての世界線を渡って殺し続けてきた人間から逃げる話、というのがあまり見当たらないのも、その世界線で記憶のダウンロードを済ませた当該人物を殺すことにより話が終わるからだろう。そこを解決したのは『スティールボールラン』のヴァレンタイン大統領であり、襲い来る死の運命そのものが敵になった『ファイナル・デスティネーション』だろう。また亜種だが映画の『ザ・ワン』も似たようなシチュである。

    結論として今まで読んだどのラノベよりも面白く、興味深い。ループものはセカイ系になりやすいということが分かっただけでも十分過ぎる収穫だった。

  • 『悪魔のミカタ 魔法カメラ』以来に読む作者の作品だが
    主題も主人公もまったく変わっておらず
    わが道行ってすがすがしい
    やはり主人公とヒロインの2人で完結していて
    恋愛小説としてもせまいが
    持ち味というものか

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