ルポ 電子書籍大国アメリカ (アスキー新書 164)

著者 :
  • アスキー・メディアワークス
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感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048689601

感想・レビュー・書評

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  • アメリカで、日本の書籍の版権を売るエージェントをしている女性が
    書いた本。
    私がこの本を知ったのは、著者のブログがきっかけ。
    DCに行く前に色々調べ物をしていたら、数年前に起きたライフル銃無差別殺人について書いてる日本語のブログがあって、
    怒りに震えながらも正義漢ヅラしてなくて、ベチョベチョしてない文章がいいなあ、と思ったら業界人。
    twitterもやっていたからフォローして、そうしたら近日中に著書が出ることを知って、、、という経緯。

    日本との違いも交えながら、アメリカの電子書籍事情、出版社事情、業界事情を分かりやすく説明してある。
    本当に分かりやすい。ブログやtwitterでもそうだけど、文章がリズミカルというのかな。頭にすっと入っていく感じ。
    語尾もさっぱりしてるしね。自分が普段学術書の編集しているから余計感じるのかもしれないけど、ちゃんと読者に伝わることを第一に、余計な言葉も文もなく、研ぎ澄まされてる。
    分かりやすいし簡潔な文章なんだけど、でもすごーく詳しく説明がされてるの。
    グーグルのプロジェクト、アマゾンの性質、アップルのしたこと、小売(向こうでは書店とは限らない)の動向とサービス、著者エージェントetc...
    取り上げるトピックはどれも有用なものばかり。

    ただ、この本をみーーーーーんなに薦められるかと言うと、ちょっと難しいかも。
    ある程度日本の出版界やその制度のことを知ってる人、iPadやKindleを手にとったことのある人でないと付いていけないかも。
    業界の人でも、ある程度英米の作家や出版社の名前を知らないと、飲み込みにくいと思う。
    ある意味、変な手加減してないから。個人的にはそこがすごく有りがたかったのだけどね。
    「◯系の小説を書く、ある作家はー」なんて書き方されたら、ライブ感がなくなっちゃうもんね。


    全体を通しての著者の姿勢には、
    「これからこういうことが起こりうるから、日本の出版界も著者もちゃんと準備しておこうね、
    大丈夫、電子書籍は怖くないよ。新しいビジネスチャンスだよ。読者のためにもなるよ」という、ポジティブなメッセージがある。
    それは最初の「暖かい陽の光のように、Eブックを語ろうと思う」や、最後の「新たな勇気を胸に仕事に戻っていっただろう」という言葉にも出てる。
    優しい、、、、!優しいよ!
    逆に批判しているのは、バカな人。
    著者が考えるバカな人というのは、単にモノを知らない人じゃなく
    (だってすべてを知っている人、これから電子書籍がどうなるのか、本を取り巻くビジネスがどうなるのか予言できる人なんていないもの)
    何も知らないくせに、ろくに調べもしないで、知ろうとする努力もしないで、知ったかして一元的なものの見方だけで判断したり、何かを批判する人のことだと思う。特に美辞麗句を並べてカッコつけて、従来の読書形態と違うものを否定している「日本の出版文化を守りたい」発言なんぞには反感を持っているみたい。
    結局再販制度などのシステムにヌクヌク守られながら自分たちが今まで吸っていた甘い汁を、
    外資に奪われたくないだけなんでしょ、日本の業界のおっさんたちにツッコミを入れている。

    んだけど、まあ、これは私が思うに、「日本の出版文化を守りたい」という発言を、DNPがするから
    胡散臭いんであって、出版社の人からしたらそうだと思うなあ。
    こないだ漫画の編集している人の話を聞いたら、確かに電子書籍版の印税率の高さに惹かれた(すでに売れてる)著者に逃げられたらたまったもんじゃないもの。
    著者は、日本の出版界では作家がいろんな出版社から出しているから、著者は出版社に対する忠誠心が低いと書いているけど、
    日本でも漫画家は、だいたい一つの会社から出さないでしょ。例えば篠原千絵の漫画は小学館からしかでてないよね?ある時「りぼん」で連載するなんてことないでしょ。
    だから小説はともかく、漫画は持ち込み原稿の添削・アドバイスから始まって、プロになってからも編集者は「売れるおもしろい漫画」がかけるようになるまで漫画家を育てる、という体制になっているじゃない。ちょうどこの本で描かれているアメリカの出版界のように。

    だからこそ、「電子もうちから出してね」って、早く出版社が堂々といえるようにならなくちゃね。
    つーか、悔しかったら書協もキンドルみたいなの作れば?できないでしょーけど。

  • (2010/10/26購入)(2010/10/28読了)

    「本とマンハッタン」というブログのブロガーさんの本。彼女はアメリカ在住の出版エージェントで、ブログではアメリカの出版事情を幅広く紹介してくれている(かなりの毒舌で)。

    リンクはこちら↓
    http://oharakay.com/

    今回の本では、アメリカの電子書籍事情を非常に簡潔に分かり易くまとめてくれている。

    アメリカでも電子書籍に対する反発はあるものの、全体的には新たな本のカタチを受け入れ発展させていこうとしているとのこと。日本でも、冬にシャープから新たなデバイスが登場するなど、業界の動きが活発化していくと思われるので、注目したい。

    ちなみに、今の所キンドルもiPadもリーダーも気に入らないので、電子書籍デバイスを買う予定はない。が、ガラパゴスには期待していますよ>シャープさん

  • アメリカでのいわゆるフツーの人に近い目線で電子書籍を見ると、あるいは出版関係者からの目線などアメリカでの話題をいろいろな角度から取り上げている。それでいて日本では今後どうしたらよかろうかという点にも触れられていて良い。
    まだまだこれからの分野だから目が離せない。

  • 電子書籍の本というよりは、アメリカにおける印刷会社、出版社、著者、読者、販売店という少なからず書籍の電子化による良くも悪くも影響を受ける人たちをスポットを当てた内容。

    もう少し電子書籍そのものにスポットを当てたものを期待していたので肩すかしを食らった感じ。でもAmazonとGoogleの電子書籍への取り組みについても記載されていて、そこはとても面白い。

  • アメリカでも日本でもニッチなところから市場は発達する。
    ビデオも最初はアダルトから普及した。電子書籍もBLなどのジャンルから発達していくのではないだろうか。
    アマゾンは既存の書店を敵に回して悪役を演じてきた。
    グーグルも今後進出してくる。
    日本でも紙以外の本で普及してくるだろうか。

  • まあまあ。
    勉強のために読んだけど、
    費用対効果は低い。

  • 辛口でした。

  • 佐々木さんの「電子書籍の衝撃」を読んだ後でこちらを読むと、アメリカと日本の出版文化の違いがよく分かる。しかし、近い将来、アメリカで起こっていることが日本でも起こり得るだろうと思った。いや、既に電子専門の出版社が立ち上がったりもしている。
    日本語という言語の特質が動きを鈍らせているだけだろう。
    例え電子書籍が今の新刊を揃えたとしても紙の書籍はなくならないだろう。読書という行為に絞れば、KindleやNook、iPadが紙という媒体にはその利便性で敵わない。少なくとも今は。

    英語圏における電子書籍はGoogle Editionの登場で、ほぼほぼ勝利者が決まってしまうだろう。またもGoogleか。Googleは公的な機関にでもなってしまえばいい。

    願わくは、音楽もそうなのだが、良質な本が埋もれない事だけを祈る。

  • NY在住の出版エージェントが、アメリカにおける電子書籍の現状をレポートしている渾身の一冊。電子書籍における変革の模様を、読者、出版社、Amazon、作家、エージェント、Apple、編集者、Googleというさまざまなプレーヤーの立場から描いており、変革の波の大きさを改めて痛感する。

    特に印象的だったのが、このレポートが古いもの VS 新しいものという単純な図式で描かれていないことである。むしろ、古いものと新しいものが、ともに力を合わせながら、新しい場を形成していっているようにも思える。これは、アメリカという国がその生業から、変化を受け入れることに対する耐性の強さを持っているということなのか、業を煮やした著者が日本の出版業界へ警鐘を鳴らすために、そういう視点で描いたのか・・・

    Amazon、Apple、Googleといったキープレーヤーが、同じように電子書籍というものに取り組みながら、少しづつ立ち位置が違うというのも興味深かった。デバイスに付加価値をつけることが目的の後発Appleはエージェンシーモデルを取り入れ、買場のプラットフォームに強みを持つAmazonは価格決定権を得るためにホールセラー・モデルを主張する。Googleは他のサービス同様、無料コンテンツに拘り、図書館的な立ち位置をもくろむ。おなじみの3社がこの業界でも場を賑わし、動向に目が離せないところである。

    そしてこれは、遠く離れた異国の話でも、出版業界に限った話でもないのだ。自分の国のこと、自分の業界のこと、自分の会社のことと思いながら、何度も何度も再読した。議論をするも大いに結構、ただしそれは実行を前提とした議論であってほしい。著者の結びの一文が、胸に突き刺ささった。「ぐずぐずしている時間はない。」

  • 2010/10/23追記
    コメントにあるリンク先を読み、検閲に対する著者の考えについて、私の理解が間違っていると認識しました。文字面にとらわれて表面的な理解をしてしまいました。申し訳ありませんでした。

    以下の感想は一応その時に感じたことなのでそのまま残しますが、その中に含まれる著者の考え方に関する批判の部分は、私の浅薄な理解によるものだと割り引いてお読みください。

    ずさんな読みにより、著者の人格を棄損するような文章を書いたことをお詫びします。

    ------以降、初読書時の感想------

    電子書籍に関するアメリカの出版界の実情をざっくり知ることができるとても良い本だったが、ルポの一線を越えた著者の見解が示されたところに、いくつか違和感を感じた。

    例えば6章のアップルに関する話の中で、日本のアニメや漫画を世界に輸出する上で暴力や性表現に関する文化的な違いが問題になるというような話になったのだが、そこでアップルの検閲が当然みたいな話になっているのに驚いた。

    その話題に入るちょっと前に、「本を作ることに関わる人は、常に検閲という行為と戦ってきた」と検閲の悪さを書いているのに、それがたった3行後に、「ところが、ジョブスは潔癖主義者なのだろう。」の一言で、アップルの検閲がさも問題はあるけど間違いじゃないみたいな話になり、その後はアメリカの保守的道徳間の話で完全に検閲正当化の話になっている。

    この検閲に疑問を抱かないのは、著者がすっかりアメリカ人になっているか、はたまた検閲の対象がロリだの萌えだのという著者にとってどうでもいい問題だからなのだろう。

    ここら辺の自分の考えが絶対正義でみじんも疑うところもない姿勢に、鯨やイルカの捕獲に反対する自然団体と同じ傲慢さを感じた。

    そしてなんといっても一番違和感を感じたのは最後の第9章。この章は完全にアメリカの話を離れ、日本の電子書籍に関する著者の見解を披露するという内容なのだが、電子書籍に関する著者の見解は自分とほとんど変わらないのに、この章での論理展開には一切全く同意できなかった。一言で言うと、9/11のテロを受けるアメリカの傲岸不遜さそのものが現れた吐き気がするような文章だった。

    まず日本語が特別な言語でない話。仕事で英語が必要なのは当然という見解は同意するが、何故それが日本語を否定するという話になるんだ。

    「日本語は世界一美しい言葉だ」という主張は別にただ単にその人の主観であり、他の言語を貶めるものでもなく、別に暴言には当たらない。どの国の人間だって自分の言語がすばらしいってことぐらい言うだろう。他の言語のことを知らなくても、母国語のここが好き、ここが美しいと感じるのは、(著者のように)よっぽど母国や母国語が嫌いな人間でもない限り、自然なことだ。

    もちろん英語を学ばない言い訳にそういうことを主張するおっさんは俺も嫌いだが、しかし母国語が好きだってだけで「社会をガラパゴス化させ、外資を阻む勢力となる。」って書かれたら、フランス人やアラブ人じゃなくても、アメリカの文化帝国主義だって感じるだろう。

    「日本の出版文化の話」。出版文化という言葉が既得権益と同じという見解は同意で、文化という言葉を隠れ蓑に著者や読者をないがしろにする人間は俺も大嫌いだが、しかし最後が、自由資本主義で、公平な市場競争により淘汰されるべきところは淘汰されるという安直な結論なのにはさすがにちょっと絶望した。

    そもそもここで書かれているのはビジネスと経済の原理原則だけであり、それで文化がどうなるかについては全く考察されていない。市場主義は効率的な経済を生み出すが、しかしそれが文化的な意味でも最適な解を生み出すなんて保証されていないよ。竹中平蔵だってそんなこと言わないだろう。

    一体どういう教育受けたら、こういう単純な古典的経済学脳が生まれるのだろう。

    批判(非難?)ばっかりの感想になってしまったが、最初に書いたとおり、ルポの所だけは非常に分かりやすくうまく書かれている。ルポ☆3.5、著者の見解☆-1で、評価は星2つ。

    • oharakayさん
      アップルの検閲に賛成しているのではありません。私企業であるからにはその権利があるということです。そしてアメリカの保守的な道徳観を紹介したまで...
      アップルの検閲に賛成しているのではありません。私企業であるからにはその権利があるということです。そしてアメリカの保守的な道徳観を紹介したまでです。

      私がどれだけ表現の自由を重んじているかはこちらのブログエントリーをご覧下されば幸いです。
      http://oharakay.com/archives/2059

      最後に一応「ルポ」なので文化論に終始しないよう努めたつもりです。

      私の受けた教育を非難しているようですが、基礎教育は日本で受けました。
      2010/10/10
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著者プロフィール

日米で育ち、バイリンガルとして講談社のアメリカ法人やランダムハウスと講談社の提携事業に関わり、2008年に版権業務を代行するエージェントとして独立。GoogleのブックスキャンプロジェクトやAmazonのKindle発売をきっかけに、アメリカの出版業界事情を日本に向けてレポートするようになった。著作に『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(2010年、アスキー新書)、それをアップデートしたEブックなどがある。ブログ(oharakay.com)やツイッター(@Lingualina)を発信中。

「2015年 『日本の作家よ、世界に羽ばたけ!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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