ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~ (メディアワークス文庫)
- KADOKAWA (2014年12月25日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048691895
作品紹介・あらすじ
太宰治の『晩年』を奪うため、美しき女店主に危害を加えた青年。ビブリア古書堂の二人の前に、彼が再び現れる。今度は依頼者として。違う『晩年』を捜しているという奇妙な依頼。署名ではないのに、太宰自筆と分かる珍しい書きこみがあるらしい。本を追ううちに、二人は驚くべき事実に辿り着く。四十七年前にあった太宰の稀覯本を巡る盗難事件。それには二人の祖父母が関わっていた。過去を再現するかのような奇妙な巡り合わせ。深い謎の先に待つのは偶然か必然か?
感想・レビュー・書評
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怪我をして大船にある総合病院に入院している大輔。
6月に入ってからのことを、傍らにいる篠川智恵子に語り始める。
いったい何があったのだろうか。
栞子さんから太宰治『晩年』の貴重な初版本を手に入れようと付け狙い、石段から突き落として足に怪我を負わせてしまった危険な男、田中敏雄が再び現れます。
田中の祖父が持っていた、あの時のとは別の、署名がないのに書き込みがあるという『晩年』を探してほしいと二人に頼みます。
47年前、大船の撮影所の近くで、大輔の祖母絹子が切り盛りしていたごうら食堂には、ロマネスクの会と称する読書サークルの仲間が集まっていました。
田中敏雄の祖父田中嘉男と、虚貝堂の店主杉尾さん、小谷次郎さんの三人。
大学教授の富沢博さんと娘の紀子さん。
栞子さんの祖父は、久我山書房という店に住み込みで修行していました。
そして、紀子さんは久我山家と親しく交流があって…。
二人の祖父祖母の時代から太宰の稀覯本を巡って、さまざまな謎が渦巻いていました。
大輔と栞子さんの結びつきは、ただの偶然ではないような気がします。
まだまだ複雑な事情が絡んでいそうです。
ようやくここまでたどり着いて、この物語の真相が早く知りたいような、まだ終わってほしくないような、複雑な気持ちでいっぱいです。 -
栞子の持つ稀覯本、太宰治の『晩年』を奪うために栞子に危害を加えた田中敏雄が、保釈されて再び接触してきた。依頼人として、祖父が持っていた『晩年』を探してほしいという…。大輔と栞子は、調査の過程で行き当たった47年前の盗難事件の謎に挑むこととなる。
一冊まるまる太宰だった。田中敏雄が探す『晩年』と、47年前に盗まれた稀覯本『駈込み訴へ』とがどうつながるのか…。そして最後に見えた血の繋がりに驚いた。こういうのを因縁といいのだろうか。
古書そのものの由来だけでなく、古書を取り巻く人々のつながりを書いてきたこのシリーズ。
久々に読んだのだけど、今回は『駈込み訴へ』と『晩年』を巡り、盗んだり危害を加えたり騙したり…、そんな犯罪絡みの暗めの話が続く。世界に一冊の稀覯本で、コレクターとして絶対に手に入れたいと思うことと、それを手に入れるために狼藉を働くこととの間には深い溝があると思うけれど、何かに突き動かされるようにいとも簡単に乗り越えてしまう。古書絡みでなければ普通の人たちで、古書を愛する気持ちが根底にはあるはずなのに。人間の業の深さのようなものを感じる。
それも古書の持つ魔力なのかもしれない。でも今回はそういう負の側面が強く出過ぎて、ライトな読み口なのに読後感は重めだった。 -
2022/05/26読了
#三上延作品
古書にまつわる日常の謎解き。第6弾。
栞子さんにケガを負わせた保釈中の田中敏雄から
ふたたび太宰の「晩年」を狙う脅迫状が届く。
それとは別に太宰自家(殺)用の「晩年」の存在が
明らかになる。
2冊の「晩年」をめぐる3代に渡る争奪戦。
過去に遡り、相関図がいきなり複雑化してきた。
栞子さんと母親の確執が溶ける感じがしないんだが
このままエンディングに向かうんだろうか。 -
シリーズ6作目は太宰治作品をベースに進む。
過去の事件、因縁。
祖父母の代からの出来事と現代との繋がりに少し混乱。
内容的にミステリーとサスペンスが融合した感じで。
全体像はまだ掴めてはいないけど、今後のクライマックスへの序章。
そんな印象を持った今回の作品でした。 -
第六巻は丸々全編、太宰治です。家にあった日本文学全集の太宰治の巻は、けっこうハマって読みました。高校生の時です。何にハマるかと言うと太宰の文体ではないでしょうか。今の若い人たちにも、若いうちにハマってほしいと切に願います。そして、こっち側へ帰って来て欲しいです。帰って来られなかった人達が、この第六巻の登場人物達だと思うので。当然、物語は超ダークです。
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シリーズ6作目。今回も太宰治が全編のテーマ。
栞子さんの持つ貴重な古書のせいで、今度は大輔まで事件に大きく巻き込まれる。
栞子さんのおじいさんの過去や、最後には智恵子さんの知られざる秘密も暴かれかける。 -
太宰づくしのシリーズ第6巻。
本のつないだ奇妙な縁が栞子さんと大輔くんを取り巻いているようです。
今回も息つく暇も惜しいくらい、夢中になって一気読みでした。
かつて栞子さんを石段から突き落とした男が、再びビブリア古書堂の2人の前に現れます。
…ただし、今度は依頼人として。
その依頼は過去の出来事へと2人を導いていきました…
ついに恋人同士の間柄になった栞子さんと大輔くん。
今回の事件はいつも以上に危険な気配が漂っていますが、いつしか2人のあいだに強い信頼関係が結ばれていたことに気付かされる場面が多くてきゅんとしました。
そろそろシリーズクライマックスとのこと。
早く読みたいような、名残惜しいような…。 -
全編、太宰治がテーマ。複数の作品、一つは複数の稀覯本(きこうぼん)が登場して、ボーッと読んでると、話が分からなくなったので、途中で整理し直して読んだ。作者あとがきによると、この本のために調査して、もともと古書に詳しいわけではないとか。
シリーズ冒頭に登場した田中敏雄が再登場、栞子さんの母、智恵子の影もチラチラ。そして、登場人物のルーツや過去にまつわる謎も。シリーズが佳境に入ってきた感じがする。
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栞子さんが足を怪我することになった太宰の「晩年」を巡る事件が再び戻ってきます。
あの時焼き払ったことになっている栞子の「晩年」は、突き落とした犯人の田中の捜していたものではなく別の「晩年」があるという。
一冊まるまる太宰治の今作は、古書への執拗なまでの想いというか執着が空恐ろしいお話です。
栞子と大輔の祖父母の代まで遡って、物語が解き明かされていきます。
もはや血のつながりも本の所有もややこしくなってきて混乱するけど、栞子と大輔の絆は深まったということで。
そして、やっぱラスボスは智恵子なんですかね。
著者プロフィール
三上延の作品





