新ソーシャルメディア完全読本 フェイスブック、グルーポン・・・これからの向きあい方 (アスキー新書 177)
- アスキー・メディアワークス (2011年1月8日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048701600
感想・レビュー・書評
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今の流れが良くわかる。ソーシャルメディアの本は、常に最新のモノがいい。とくに、この本は、よく整理されていてまとまっていると思う。今後のプレゼンなどにも使えそう。
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ツイッターもフェイスブックもまだ始めていないので、具体的な中身については実感できない部分もあったが、ソーシャルメディアの位置づけ、意義のようなものはおぼろげながらに頭にはいったような気がする。
情報量の爆発的な増加、バーチャルな世界の拡大といった現象のなかで、次に来る未来が、インターネットを手段として人間が本来持っていた社会性に再び目覚める、原点回帰の時代であるという著者の指摘は非常に示唆に富む。
『伝票の代わりに、スマートフォンをもったいつものサブちゃんが「大旦那さんのお好きな灘のお酒が入りましたよ」とフェイスブック内の「磯野家」に投稿する。時間と距離を超え、人と人とがより密接に結びつく未来は、こんな心温まる風景ではないでしょうか。』
もちろん物事にはすべて光と影があるのだが、筆者のこの言葉のような明るい未来を信じて進んで行きたいものだ。 -
まさに、やらないといけない当社の課題が良くわかった☆
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2010年はTwitter、Facebook、Foursquareなどのソーシャルメディアを、日常的に活用した1年だった。これだけ複数のWebサービスを継続的に活用し続けたのは、始めてかも知れない。同じように、ソーシャルメディアに魅了されたユーザーも多いだろう。ソーシャルメディアの仕組みを利用したビジネスが多数生まれたのはその証左だ。だが、それらの多くは“本物”ではない。仕組み自体が簡単に模倣しやすく参入障壁が低いため、体裁を真似たソーシャルメディアライクなサービスが、雨後のたけのこのように乱立し、ユーザーを困らせている。
ソーシャルメディアに詳しいループス・コミュニケーションズの斉藤徹(@toru_saito)氏がまとめた本著を一読すれば、理念や顧客と長期的な信頼関係を築いていこうとする姿勢がなければ、ソーシャルメディアの多くは失敗に終わってしまうことが痛感できるだろう。ビジネス・普段の生活を問わず、ソーシャルメディアには常に人が介在する。ソーシャルメディアの延長線上には常に、「人・生活者」がいるということを意識しなければならない。
この状況を本著では「マーケティング3.0」を例に取って説明する。ソーシャルメディア時代のマーケティング、すなわちマーケティング3.0の本質は「どう(開発や販売に)協力してもらうか?」ということにある。「人・生活者」があらゆるマーケティングプロセスに介在していることを強烈に意識した言葉だ。1.0が「どう売るか?」、2.0が「どう継続的に売るか?」という考え方であることと比較しても、その違いは明らかだろう。斉藤氏は本著でマーケティング3.0を「主客一体の三河屋」のようなもの、とまとめている。しっくりくる表現であり、個人的にはフィリップ・コトラーの『コトラーのマーケティング3.0』よりも理解が深まった。
●関連レビュー
コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
http://booklog.jp/users/saicolobe/archives/4023308390
こうした姿勢は、ソーシャルメディアを活用するあらゆるビジネスモデルや商品開発プロセスで求められる。グルーポンを代表するクーポンの共同購入型サービス、言い換えればフラッシュマーケティングも例外ではない。グルーポンのビジネスモデルの構成要素は「時間制限のあるクーポン」「一定数以上の集客による成立」「早い者勝ちではなく共同で購入する仕組み」にある。すなわち、「みんなで購入すればみんながハッピー」というモデルだ。結果として、人に推薦しやすく、口コミによるバイラルループが起こりやすい。広告やビラといった既存の集客方法しか実施できなかった中小のリアル店舗にとっては、救いの神ととらえられたわけだ。
だが、「グルーポンおせち事件」のような「生活者に対する裏切り」が起きてしまった。ソーシャルメディアの成功を導く「短期的な利益<長期にわたる顧客との信頼関係の構築」という不等式が「>」に逆転してしまったからだ。米Grouponでは「誤解を与えないように目立つ場所に、注意やただし書きをつける」「店舗の電話番号を掲載し、Grouponが対応する」「サービスが不満だった場合は、利用後でもお金を返金する」といった、顧客支援の徹底がなされている。短期的な利益よりも顧客との信頼関係をというスタンスで、社員一人一人が顧客のために仕事をする、米Zapposにも通じる企業姿勢であり、これが成功をたぐり寄せた。ほかの類似するフラッシュマーケティングサービスは、こういった基本姿勢を徹底できるだろうか? それができなければソーシャルメディアを駆使したビジネスは頓挫するのがオチだろう。
一方で、ソーシャルメディアを正しく活用すれば、消費者をその企業のファンとして獲得できる。米GAPはFacebook、Foursquare、Gropuonを使い、チェックインした人にジーンズをプレゼントしたり、来店者に割り引きサービスを実施したりした。ソーシャルメディアとリアル店舗の小売業を密接に結びつけることで、ファンをうまく増やし、実売に結びつけている。このようにソーシャルメディアを活用できる企業もある。ソーシャルメディアの活用は、その企業の事業やマーケティング活動の本質を映し出す鏡といえる。
あまたあるソーシャルメディアの事例やトピックに1本の線を通し、俯瞰的に理解したい場合に本著はお勧めだ。私自身はソーシャルメディアを駆使したビジネスがどう成功するかという観点が気になったので、このレビューではそこを中心的に取り上げた。だが、一生活者としてのソーシャルメディア活用についても把握しやすい内容になっている。「ただいま」と言えば「Googleは“検索結果”という形式知、ソーシャルメディアは“おかえり”という暗黙知が返ってくる」、「100万人にではなく、100人にメッセージを伝える」――といった例えを読むだけでも、ソーシャルメディアとは一体何なのかを肌感覚で理解できるようになるだろう。
企業のソーシャルメディア活用という視点では、斉藤氏が後に上梓する『ソーシャルメディア・ダイナミクス ~事例と現場の声からひもとく、成功企業のソーシャルメディア戦略~』を参考にするとよさそうだ。
●はじめに
●序章 ソーシャルメディアが変える「明日の商い」
1.生活者が“勝手に”企業を応援、商品を宣伝する
2.顧客の不満をリアルタイムでサポート
【事例】/桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」/グリコ乳業「ドロリッチ」/ソフトバンク「アクティブサポート」
●第1章 ユーザー数だけではない――Facebookの本当の凄さ
1.実名ソーシャルメディアで現実社会とバーチャルがつながる
2.実名のメリットは人脈の創造にあり
●第2章 効率的な顧客導線のカギとなる“ソーシャルグラフ”
1.生活者は、信頼できる情報を渇望している
2.ソーシャルグラフがビジネスに与えるインパクト
【事例】米国の映画専用SNS「Flixster」/米リーバイスのソーシャルコマースサイト「Friends Store」で好きなジーンズ情報を友人と共有
●第3章 企業がコントロール不可能なマーケティング新時代
1.ソーシャルメディアとマーケティング3.0の時代
2.日本型の主客一体思想が世界のスタンダードになる
●第4章 生活者を味方につけることがビジネス活用のカギ
1.ソーシャルメディアをはじめても、50%の企業が失敗する
2.生活者が応援したくなる企業でなければ生き残れない時代
【事例】米大手デザート・フランチャイズ「Tasti D-Lite」/顧客を虜にする米インターネット通販会社ザッポス
●第5章 “商品開発”は「コラボレーション」がキーワードに
1.生活者が企業のパートナーとなる時代
2.コラボレーション型の商品企画・開発での3つのポイント
【事例】ソーシャルメディアでV字回復を果たした無印良品のロングセラー「体にフィットするソファ」開発秘話/10万件のアイデアが寄せられた米スターバックスのソーシャルメディア活用
●第6章 生活者同士の「共有」が重視される“ソーシャルコマース”
1.信頼と同行関係という新たな買い物導線
2.活用タイプ別に見る販売活動事例
【事例】Googleの新ソーシャルコマースサイト「Boutiques.com」がすごい/Facebook初のコマースサイト、米「1-800-FLOWERS.COM」/自社コミュニティー「ハピテラ」を開設した巨大コマースサイト「ニッセンオンライン」
●第7章 「同時性」と「先回り」を実現する“顧客サポート”
1.顧客の不満を探し出し、企業からアプローチをかける
2.もうひとつのリアルタイム顧客サポート先進事例
【事例】コンチネンタル航空「離陸失敗事例」/サウスウエスト航空「機体損傷事例」/社員2100人が参加して人力Q&Aを実践する米家電販売チェーン「BestBuy」
●第8章 ソーシャルメディア時代の“企業ブランディング”
1.マスメディアからソーシャルメディアへ、広告媒体が移行
2.100人のブランド・ファンに向けたメッセージを発信する
【事例】米ペプシの社会貢献キャンペーン「Pepsi Refresh Project」
●第9章 グルーポンが火を付けた“フラッシュマーケティング”
1.リアル店舗にターゲットを絞った戦略
2.グルーポン成功の秘密は企業姿勢にあった
●第10章 “位置情報サービス”でリアル店舗に顧客を増やす
1.位置情報サービスはビジネスにどう活用できるのか
【事例】米GAPが「Facebook Places」で計1万本のジーンズプレゼント
終章 ソーシャルメディアが導く未来
1.情報大爆発時代の情報の価値はリアルな人間関係から
2.バック・トゥー・ザ・リアル・ワールド -
ソーシャルメディア界における第一人者、斎藤 徹氏による、文字通りの完全読本。ソーシャルメディア全体の”今”が、ビジネスという側面から余すことなく網羅されている。フェイスブック、ソーシャルグラフ、マーケティング3.0、ソーシャルコマース、フラッシュマーケティング、位置情報まで、ここ半年くらいで話題にあがったようなキーワードについて、全て俯瞰して見ることのできる貴重な一冊。
◆本書に書かれている内容
序章 ソーシャルメディアが変える「明日の商い」
第1章 ユーザー数だけではない フェイスブックの本当の凄さ
第2章 効率的な顧客導線のカギとなる”ソーシャルグラフ”
第3章 企業がコントロール不可能なマーケティング新時代
第4章 生活者を味方につけることができるビジネス活用のカギ
第5章 ”商品開発”は「コラボレーション」がキーワードに
第6章 生活者同士の「共有」が重視される”ソーシャルコマース”
第7章 「同時性」と「先回り」を実現する顧客サポート
第8章 ソーシャルメディア時代の”企業ブランディング”
第9章 グルーポンが火をつけた”フラッシュマーケティング”
第10章 ”位置情報サービス”でリアル店舗に顧客を増やす
終章 ソーシャルメディアが導く未来
著者は、ジャーナリストや評論家ではなく、実際にコンサルタントとして事業を行っている方である。しかし、セミナーなどで活用した企画書を公開したり、主だった動きがあると即座にブログで解説をしてくれたりと、その惜しげもない情報発信のあり方には、個人的にも助けられることが非常に多い。そのため、第三章「企業がコントロール不可能なマーケティング新時代」、第4章「生活者を味方につけることがビジネス活用のカギ」に書かれている”企業のあり方”:「利用者の共感」、「評判が知れ渡る」、「特別な感情を持つ利用者」、「社会に対する貢献姿勢を明確にする」などの主張には、著者自身の情報発信の姿勢もダブって見えた。
ソーシャルメディアにおける”あるべき振る舞い方”というのは、”一般社会において大切なこと”と、ほぼ同じである。それゆえ、本書に書かれていることのコアな部分は、かつて学校の先生に教わったことであるということにも、気付かされた。共感も、評判も、傾聴も、貢献も、信頼も、対話も、みんな小学校で教わったことだ。そんなベーシックで、最も大切であることを、ソーシャルメディアでの情報発信を通して日々実践されている斎藤氏が語っていることに、本書の最大の価値があるのだと思う。
ネット上でも顔の見える時代、”何を言うか”と同じくらい、”誰が言うか”も大切になってきている。そういった意味で、企業ユースだけでなく、個人のあり方としても、大切なことが書かれていると思う。