烙印の紋章IX 征野に竜の慟哭吹きすさぶ (電撃文庫 す 3-23)

著者 :
  • アスキー・メディアワークス
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本棚登録 : 165
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048708081

作品紹介・あらすじ

西方より舞い戻り、"皇太子ギル"として復活をとげたオルバ。ビリーナとも再会を遂げた彼は、近い将来に起こるであろう戦いに向け準備を進めていく。一方、帝都ソロン。皇帝グールは帰還したギルを偽物と断じ、老練な将軍フォルカーを司令官とした一軍をアプターへ差し向ける。圧倒的な戦力差のなか、皇太子として反皇帝の狼煙をあげなければいけないオルバは、寡兵をもってして鮮やかな勝利を得るべく策を練る。両軍はついに激突の時を迎えるが-。英雄への道を描くファンタジー戦記、第9弾。

感想・レビュー・書評

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  • 再びメフィウス皇子として舞い戻ったオルバは、ついにメフィウス国との戦いを開始する。
    二倍以上の兵力差を覆すべく、様々な戦略、戦術を駆使して勝利をもぎ取ろうともがくオルバ。
    智を尽くし、力を尽くして戦いに臨むオルバだったか、その戦闘での代償も大きく・・・、みたいな感じのお話。
    相変わらず、お話は面白い・・といいたいところだけど、なんとなく飽きてきたのかな?
    今巻に限ってのことなのか、単に飽きたからなのか、若干、物語の魅力が落ちたような気がした。ということで★4。
    冒頭、ビリーナに銃を突きつけられるシーンは面白かったけど、そこ以外ではあんまり出番のないヒロイン。まあいつものことだけど。
    この期に及んでもビリーナに正体を明かさないオルバにイライラが募る。
    結局、ビリーナはオルバの秘密を知らされない限り、本当の意味でのヒロインとして物語に絡めないんだと思う。
    あと、前々から少なからず感じていた矛盾、というか無理が今巻でより顕著に感じられるようになって来た。
    それは、ギル・メフィウスに対する不自然な好感度の高さ。
    ただのうつけで、好き勝手をやってきただけのギルが、なぜこうも民衆に愛されているのか、まったく理解できない。
    戦争に勝利した英雄とは言うが、そのほとんどはギルが勝手に軍を率いて起こした戦だった。
    アプターの人々も、ビラクの人々も、それ以外の多くの民衆も、兵を挙げて戦に突き進んだオルバを恨みこそすれ、諸手を挙げて歓迎するというのがどうも理解できない。
    アプターなどはギル自身の手で街を焼かれている。勝つためだとはいっても、自らが住む街を焼かれて民衆が彼を英雄視するだろうか?
    それぞれの戦いでは、少なからずギルに対する恨みや怒りがあったはず。そうした描写がなされず、どのような変遷を経てギルが支持されるに至ったかは、これまでの物語でもほとんど描かれてこなかった。
    そもそも、内乱で疲弊した西方諸国に戦争を仕掛けるというのは、戦国の世の皇帝として必ずしも間違っているとは言い難い。
    タウーリアを楽に手に入れることができるなら、メフィウスの国力は上がり、メフィウス国民の生活は潤ったはず。
    これを、ギルはほとんど私的な理由で止めた。それだけなら無駄な人死にを出す戦争を未然に防いだという正義もあろうが、ギルは西方とメフィウスとの戦争を止めた上で、自らが戦を始めてしまった。
    メフィウス国民にとってなんら得ることのない無益な内乱を。
    だというのに、ここに来て民衆は諸手を挙げてギル皇子を英雄視している。
    いかにしてギルが民衆に支持されるに至ったかがきちんと描かれていれば問題なかったんだけど、そこが抜けているのでどうにも収まりが悪い。
    同様に、ビリーナのギルに対する好感度も、これまであまり描かれることがなかった。
    それもそのはずで、ビリーナはギル=オルバということを知らない。
    オルバに命を救われたり、交流があったりしても、それがギルへの好感度につながらない。
    だというのに、ビリーナはなにかにかけてギルを気にかける。
    だというのに、ギルはビリーナをなにかにかけて後回しにする。
    ギルとビリーナの間にあるのは恋愛感情とは少し違う。お互いの行動力や責任感に対する尊敬といったものだろうと思う。
    主人公とヒロインの関係が、お互いなんとなく尊敬している以上のものにならず、交流事態も少ないとあっては、盛り上がろうはずもない。
    しかしそこは主人公とヒロイン。物語的にも惹かれあう必要があり、いつの間にかお互いの好感度が少しずつ上がっている様子。ここでも、ギルに対する不自然な好感度の高さを感じる。
    最後に、西方諸国のギルに対する対応にもご都合主義を感じた。
    そもそも、ラバン・ドウがほとんど無条件でギルに協力する意味がわからない。オルバは確かに西方で英雄にはなったが、その発言力が絶対的だったわけではない。
    疲弊したタウーリアがメフィウスとの戦闘を避けるため、ギルと利害関係が一致したからこその協力関係だが、ラバンにしてもアークスにしても、もっとあくどく自国の利益を追う道があったのではないか。
    唯々諾々とギルに従い、なんらの画策も起こさない、というのがどうもすっきりしない。
    所詮ラノベ、そんな細かいところまで気にしても仕方がないとも思うが、これまでその細かいところまで散々つき合わされてきた物語なのだから、いまさらになってご都合主義で流されるのが納得いかないというかなんというか。
    まあ、色々総じて、物語的な魅力が1レベル下がった、と感じた9巻だったと、そんなレビュー。
    これまでは予想を上回る展開で物語が進むことが何度となく会った。だからこそ面白く感じたし、ぐいぐいと話に引き込まれた。
    だけど今巻はほとんど終始、物語が予定調和の中に進み、意外性がなかった。
    予想通りに苦戦しながら、予想道りに勝利し、予想道りのキャラが死んだ。
    この烙印の紋章。これまでは最後の最後で予想を上回るからこそ面白かったんだと思う。
    ところがこの9巻と、5巻では物語が個人的な予想を超えなかった。
    だから、評価がいまいち伸びなかったんだと思う。

  • いよいよギルとして”父”と戦う道を選んだオルバが、その手に得たもの、その手から無くしたものはそれぞれ大きい。決意とか覚悟とか、なんど今度こそと思ってもまだ足りないのかと思い知り、だが引き返す道はすでにない。続きを祈るように待っている。
    というか。ラスト数ページってとこで叫ぶかと! いやーーーっ。

  • とうとうギル(オルバ)が表舞台に戻ってくる、というところからお話は始まる。
    打ち倒すべき敵が皇帝と定められ、その分戦いも避けようのないものとなっていく。

    途中迷走している感じも受けたが、9巻まできてやっと、このシリーズの良さが出てきたかな、という気がする。物語もそろそろ佳境、というところだが。

  • シークぅぅぅ!!!

    皇子ギルの復活に揺れるメフィウス国内。
    オルバが新たな決意のもと立ち上がる非常に重要なエピソードだけど、何よりシークね!
    いやもうなんといっていいのやら…。
    似てるなぁとは思ってたけど、そこまでキルヒアイスと同じ道を辿らなくていいのに…。
    色んな意味で歴史の分岐点となる巻。

  • ようやくオルバにライバルというか,彼に見合った敵が出てきて,知略戦が今までとは違う様相に.“どこまでも馬鹿を演じてやろう”という相手の意図がとてもよかった.いよいよ王宮も動きだし,グールの意図も見え始める.物語の特性上,どうしても「オルバの快進撃は止まらない」というオチになってしまう中,王宮の人間模様やガーベラ侵攻をうまく絡ませていて,戦記として飽きさせない構造に.やっと,ギル皇太子の本当の物語が始まった,というところか.
    ところで,ホゥ・ランの挿絵が見当たらないので残念な限り.

  • レギュラー級キャラの死。
    よくぞ殺した、と思う。
    戦記物なら当たり前におきることなのに、ラノベでは主人公クラスのキャラが死ぬってのはそうそうないわけで、そのキャラの死が物語、あるいは関連する人の未来まで方向付けるのは銀英伝から伝統の流れ。
    ターニングポイントとなるかどうかは見所だと思う。


    そこはかとなく影響を感じないでもないな。

  • もっと脚光を浴びてもいい作品だと思います。

  • 最後の数ページを読むのが辛かった。
    一気に読みきって、読了後は何かが抜け落ちたような喪失感を感じた。

    とにかく、シークのオルバに対する愛情が深い。
    オルバには自分がついていないと駄目だと言っていたシークの言葉通り、
    皇子という立場の重圧と恐怖を自覚したオルバの背中をおしたのはシークで……
    その場面はオルバの弱さや何もかもを受け止めた唯一の存在であるシークの姿が在ったような気がする。

    ビリーナとのギルとしての再会で、ビリーナに押されっぱなしのオルバは少年らしい姿で好感を持てた。
    個人的にはランとの関係が好き。


    今回の終盤でのオルバの姿は痛々しい。
    そして、次の行動に移る彼らの今後に期待。

  • え、ちょ、好きキャラ死んじゃったよーぅ……。

  • 2011.9.10購入

    あの人がいなくなるとは思わなかった…わけではないけど(少し前にそうならないといいなぁていうフラグめいたものもあった気がするし)やっぱり寂しい。
    自分が案外あのキャラ好きだったんだなと

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著者プロフィール

戦記ファンタジー『烙印の紋章』著者。

「2020年 『叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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