聖戦ヴァンデ〈上〉

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  • 角川書店
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レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048730266

感想・レビュー・書評

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  • フランス革命と言えば「ベルサイユのばら」。そして、それより遡ること100年くらい前(?)のルイ14世の時代が舞台の「アンジェリク」くらいしかフランスの歴史の手がかりを持っていません。あ、「レ・ミゼラブル」も関係ありか。
    それらの物語を思い出しつつ、唯一知っているロベスピエールを基準にして、時代背景や登場人物の立ち位置を探りつつの読書でした。

    ロベスピエールを崇拝している若き革命家ジュリアン。
    実家は下級貴族くらいでしょうか。格別いい暮らしをしているわけではありませんが、かといって貧乏でもありません。
    それがロベスピエールの演説を聞いて、自分の人生を人民と真理に捧げると言った全きの無私の人ロベスピエールに憧れ、自分も同じ生き方をしようと心に決める。

    対するアンリは貴族の中でも上流の方。国王騎兵隊の士官で、王と貴族の生活を守るために自分は存在していると思っている。

    彼の副官ニコラは庶民の出。
    しかし、アンリに命を救ってもらったこともあり、アンリの高潔さを心から信頼しているのだが、革命が起こったことによって自分のいるべき場所を考えることとなる。

    フランス革命は、人民が自由を勝ち取ったということで、どうしても革命軍を善としがちであるけれど、その革命軍を率いておきながら、恐怖政治を強いたということで処刑されたロベスピエールがジュリアンの理想だというのなら、この物語の着地はどこになるのだろう。

    ジュリアンもアンリもニコラも、自分の信念に忠実で嘘がない。
    立場が違えばきっとわかり合える良き仲間になったはずだ。実際アンリとニコラは腹心の友と言ってもいいくらいの絆があった。

    人が争うことの何がよくないって、人のはなしに耳を貸さなくなること。
    自分の意見は正しい。自分の立場が絶対。
    それに反対するやつは敵。

    ジュリアンがどんどん頑なになっていくのを読んでいて、辛い。
    彼にはロベスピエールが語る理想しか見えていない。
    今、目の前で苦しんでいる人たちが見えない。

    “革命は、このフランスに生きるすべての人間に二者択一を迫り、踏み誤ったものを容赦なく切り捨てて進むのだろう。その時自分は、どこに与していればよいのか。国に対して軍に対して、また自分自身に対して、どうあればよいのか。”
    思い悩むニコラ。

    国王を守りきることのできなかったアンリは死ぬつもりであったが、革命軍に神を信じることを禁止され、国王を慕うことを止められた農民たちが反乱を起こすとき、彼らを無駄死にさせないために彼らの先頭に立つことを決める。

    “わしらからたくさんの税金を取り、司祭様まで取り上げ、国王様を殺し、そのうえわしら自身まで連れて行こうとする革命政府に、わしらはもう従えません。(中略)けれど、反抗の仕方がわかりません。ムッシュウ・アンリ、どうぞわしらの先頭に立ってくだせぇ”
    “踏みつけられて生きるより、自由を求めて死んだ方がいい”

    プライドや建前を持たず即物的な農民たちの考えに戸惑うアンリだが、農民たちの気持ちを汲みつつ、上手に話をまとめ上げるカトリノーの柔軟な姿勢はとても好感が持てるし、彼を見ながら変わっていくアンリも好ましい。

    それに引き換えジュリアンの前にいるのは、がちがちの理想主義者ロベスピエールとか、極めつけの日和見主義者のタレイランとか、若者の成長を喜ぶどころか足を引っ張ろうとするゲスな奴らばっかりなんだもんなあ。

    10代から20代の若者である主要人物3人の、青くて硬い人間性が、革命が続くにつれてどう変貌していくのか。
    そして、彼ら3人の運命は。
    下巻が楽しみ。

  • 藤本さんの「マリー・アントワネット」を読んだので、藤本作品で好きなものを(笑)。国王ルイ16世夫妻処刑後に、ロワール地方でものすごい王党派の反乱が起こります。その反乱、「ヴァンデ戦争」を扱った作品です。2人の軍人が主人公です。1人は超名門貴族の若者、アンリ・ド・ラ・ロシュジャクラン子爵。王家のブルーの上着を着る、国王親衛隊の将校です(「ベルばら」のオスカルと同じ)。もう1人はその副官、ラザール・オッシュ。彼は平民出身の優秀な軍人。王家が崩壊した瞬間から、この2人が敵味方に分かれなければならなくなってしまいます。この別れがクールであってまた切ない!「我は王軍、友は叛軍(←講談社文庫「ダルタニャン物語」のシリーズより)」のテーマはやっぱりいいんだわー。領地に帰ったアンリ子爵は革命をある程度認めながらも、やはり王に仕えた身として納得いくはずもなく、貴族有志とともにルイ17世擁立を目指して反乱勢力を(ややなしくずし的に)束ねることになり…と物語は進みます。この反乱は本土でもあまり語られない傾向らしく、読んだときは衝撃でした。「それって内戦だよ!」という激烈さ。でも、よく考えたら、あんなにフランスは広いんだから、花のパリだけの問題で収まらないのは当然です。そういうことを見せてくれた点で、この☆の数です。

著者プロフィール

藤本 ひとみ(ふじもと ひとみ)
1951年、長野県生まれの作家。西洋史への深い造詣と綿密な取材に基づく歴史小説で脚光をあびる。フランス政府観光局親善大使。
国家公務員として厚生省に勤務し、その後は地方公務員に。兼業で少年・少女漫画の原作を手がけて、1984年集英社第4回コバルト・ノベル大賞を受賞。1992年に西洋史、犯罪を主題とした小説を描き始める。『侯爵サド』『ジャンヌダルク暗殺』で第19回および第23回吉川英治文学新人賞の最終候補。
ほかの代表作に、『新・三銃士』『皇妃エリザベート』『ハプスブルクの宝剣』『王妃マリー・アントワネット 華やかな悲劇のすべて』など多数。

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