アラビアの夜の種族

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 104
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  • Amazon.co.jp ・本 (659ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048733342

作品紹介・あらすじ

聖遷暦1213年、偽りの平穏に満ちたカイロ。訪れる者を幻惑するイスラムの地に、迫りくるナポレオン艦隊。対抗する手段はただひとつ、読む者を狂気に導き、歴史さえも覆す一冊の書-。

感想・レビュー・書評

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  • 千夜一夜物語のスケールをもっと大きくしたような物語。

    先が読めずラスト一気にのめり込む…!!




    Twitterのフォロワーさんから、読書好きな人に是非読んでほしいとおすすめいただいた作品。

    作中作と聞いていたので、想像するのは『千夜一夜物語』。

    表紙もそれっぽい色気たっぷりです(。-∀-)にや♡


    『千夜一夜物語』は、なんせ長い作品なので、バートン版の一巻しか読んだ事ありませんが、世界観にハマりまして★5でした♡
    (なぜか妻が奴隷と浮気しがち笑笑)


    『アラビアの夜の種族』は作者不詳の作品らしく、匿名の書物として世にあらわれたそうです。


    翻訳書なのですが、細かいセリフの訳が地味にジワります(*´艸`)

    魔導士ファラーが勇者サフィアーンに初めて出会った時のセリフ。


    ーーーーー

    「ペラペラとアラビア語をしゃべれるだけじゃ粧 証拠にはならない?だめかい?自己紹介とか、ほしい?」
    「ほしいです」と即座に応じたのは、やはりサフィアーン。「なみの人間にしては、ちょっと御身は美しすぎます」
    「きみだって美しいよ」
    「誉めあってどうするんですか」

    (本文より)
    ーーーーー


    お笑いコンビのテンポ笑笑



    魔導士ファラーが、ドゥドゥ姫に魔物の死体を献上した時の会話。


    ーーーーー

    「まあ!ミイラはち◯◯◯も枯れはててますのね!」
    それから、御簾を通してですが視線をあげて殊勲者のファラーにむけ、
    「あなたはどうかしら?あなたの◯ん◯◯は元気いっぱい、みずみずしいんですの?」
    (中略)
    「たしかに正気に満ちて、つやつやと輝いていると自負しております」
    「それは結構!男子の大事は陽根、そして女の大事は玉門ですものね!やっぱり萎びちゃったらいけないわ!それでは魔羅もみずみずしい妖術師のあなた、偉業をどのような達成したのか、教えていただけます?」

    (本文より)
    ーーーーー


    いや、先に偉業達成の詳細聞くだろ!笑
    。゚(゚ノ∀`゚)゚。アヒャヒャ



    いや、すみません。
    そんなちょっとした楽しみ方もありますが(下ネタ好きなだけなのがバレた)魅力は本編にあり!!

    なかなかのスケールのでかさです!!



    舞台は1213年 カイロ。

    ナポレオン率いるフランク族がエジプトに向かって侵攻中。

    少数独裁の指導者の第3位イスマーイール・ベイ。
    彼に仕える執事の筆頭アイユーブは、秘策の提案をします。

    ナポレオンはかなりの読書家。

    『災厄の書』を手中に収めた。

    この本を読むと没頭し、耽溺し、戦闘能力を無くすという。

    アイユーブが、災厄の書のフランス語訳を作る。

    これをフランク族にプレゼントし、トップを狂わせ軍勢を破滅させる。


    という作戦。

    果たして作戦は成功するのか。

    奇書『災厄の書』の内容は?!


    という突拍子もない作戦から始まる物語。笑

    既に面白そう!!


    この『災厄の書』の物語が中心で、これまたすごい!!⁝(ᵒ̴̶̷᷄⌑ ᵒ̴̶̷᷅   )⁝

    とにかく読んでほしい!!

    『美しい二人の拾い子ファラーとサフィアーンの物語(呪われたゾハル(土星)の地下宝物殿)』

    というタイトルで物語が始まります。


    あまり内容は言えませんが、大スケール地下都市冒険アラビアンファンタジーです!!(ごめん、なんか安っぽい言い方しかできない…)(-∀-`; )


    ーーーーー

    書物とはふしぎです。一冊の書物はいずこより来るのか?その書物を紐解いている、読者の眼前にです。読者は一人であり、書物は一冊。なぜ、その一冊を選んでいるのでしょう。ある種の運命で?なぜ、その一冊とーーー同じ時間を共有してーーー読むのでしょう?読まれている瞬間、同じ時間を生きているのは、その一冊と、その一人だけなのです。

    (本文より)
    ーーーーー


    ひゃーーー…!!!


    心に沁みました…(⸝⸝⸝ᵒ̴̶̷̥́ ⌑ ᵒ̴̶̷̣̥̀⸝⸝⸝)♡*゜

    やばい…『本』を愛してやまない人の胸に刺さるお言葉…♡
    しびれます…。

    一冊と同じ時間を生きてるの。(気に入ってる笑)


    めちゃめちゃ面白いので、おすすめです!

    文庫本で3巻あるので、読み応え抜群!

    私は単行本を読みました。(厚みがあり腕が疲れるので文庫本をおすすめします…)


    故に読み終えた後は、少々アラビアン・ロスに陥りました…(༎ຶ⌑༎ຶ)

    う〜…語らいたい…!!!

    とにかく読後の余韻が凄い!!!


    読んで良かった作品です!!!・:*+.(( °ω° ))/.:+



  • 聖遷1213年、西暦では 1798年。
    訓練された軍人奴隷のマムルークたちが支配してきたエジプトにフランス軍が迫る。
    指揮するは28歳の青白い顔の司令官、ナポレオン・ボナパルト。

    エジプトを収める23人の知事(ベイ)。それぞれの動き。
    大軍を率いる者。
    裏から操る者。
    そして密かにフランス軍を壊滅させる策を練る者。
    軍隊を破滅させる策。破滅させる。フランス兵を。極微の献上品によって。それは書物。

    読者と特別の関係になる書物。
    読者を破滅させる書物。
    現実を混濁させる物語。「災厄(わざわい)の書」

    本当に望まれたときに語り部は現れる。
    譚る者と譚られる者。 夜の種族。

    この世の捨て子たちの物語。
     怪異な顔立ちを持ち魔物と交わったアーダム、
     白子としてこの世ならぬ美貌と屈折した心を持ち魔力を身に付けるファラー、
     生まれながらの豪胆さと明るさを持つ盗賊サフィアーン

    夜が朝(あした)に代わり、朝(あした)が夜に代わる。
    物語は不死ではないから、その記憶の運び手が強靭でなければならない。すると物語は譚られることにより不滅になる。 それが譚られる間はエジプトは滅びないといわれる物語が続く。
    そしてその物語が終わる時。

    ***
    ナポレオンのエジプト遠征の歴史的結末は分かっているので、それにどう向かっていくか、という物語内の現実と、
    人や書物を死なせないためには譚り続けることという言葉の力を入り混じらせた物語。
    マムルーク王朝の事は全く知らなかったので、検索してみたところ、物語に出てくる人たちは実在の人物だったり、実際の事柄を元にしていたので”応えあわせ”もなんだか楽しかった。

  • おともだちさんに薦められて読んだ。
    時間は掛かったが、それでも内容が薄れ忘れることなく最後まで読み進めることができた。

    まず、第一部直前のアイユーブの科白があまりにも最高だった。なんッ……! おま、あんなに自信満々に言っ……?!! と、思わず声に出るほどにしてやられた。
    3人の主人公──否、4人かもしれないけれど──の内では、やっぱりファラーのキャラクタがいちばん好きだった。
    正直、3人、あるいは4人の主人公みんな色々サイテーなのだけれど。
    ファラーの生立ちと森のものの夢の石室があのように繋がるのはカタルシスを覚えるほどだったし、色無子であった彼が書物であるという、白紙の、あるいは空白であったという繋がりも綺麗で得心できるものだった。
    白紙の頁だからこそ、多くのものたち、醜かったり千切れかけているものたちを引き連れることができたのは、それらが『文字』の象徴だったからなのではないかしらと思って楽しくなった。
    主人公たちの中でも、彼の終焉が最も納得がいったというのもあると思う。異界の果てで文字を綴り紡ぎ続けるファラーの血筋が、夜の種族となって、語られない歴史を受け継ぎ続けるの、訳者さんの後記とも相俟って最高だと思う。
    サフィアーンの無垢さは微笑ましいけど罪は罪だし利権者を家族で固めるの好きじゃないし、アーダムはアーダムでお前隊長とか殺害したの忘れてないからななに満たされてんだ、という気持ちなので(個人的な好き嫌いです)。
    そして、アイユーブ。
    あれは、そういう仕込みだったのだな。あの第一部前の違和感は、そういうことだったのだな、と。
    彼がファラーの血族かどうかは不明だけれど、血は淆ざるからこそ美しく、もしくは語りを聴いて物語を共有することで『夜の種族』は伝播するとのことであれば、物語の永続性があまりに綺麗に描かれていて、好きだなぁと感じた。

    訳者さんの後記まで含めてでこの日本語版は完成感あるので、やはり最後はこれで締めたい。
    ファラー?

  • 千一夜風に語られている間はナポレオンのカイロ侵略は起こらないという,摩訶不思議な理屈で夜に夜を重ねて物語が続く.「妖術師アーダムと蛇のジンニーア」と「美しい二人の拾い子ファラーとサフィアーン」の物語が重なりもつれあって万華鏡の世界が広がり,最後終わるかと見えたこの長い夜のさきに語り手と聞き手を入れ替えた新たな物語が始まる.まるで覚めない長い夢を見続けているようだ.

  • 千夜一夜物語×ダンジョン探索RPG。夜の種族が語るアーダム、サフィアーン、ファラー三者の物語。それを19世紀ナポレオン侵攻下のエジプト人たちが筆記する。さらにそれを21世紀サウジアラビアを訪れた日本人が邦訳する、という入れ子構造の物語。
    本書は装飾過多と思われる文言が並び、内容に比して文章が非常に長い。しかし一見無駄に長いと思われる夜の種族の語りが、効果的に物語内に時間を創り出している。夜の種族の20日間にわたる語りの長さを、作中の聴き手と読者が共有することで、ただ文章を読むだけでは感じ得ない時の流れを体感できるようになっている。また、ダンジョン探索RPG風味なのは、長い物語を飽きさせない工夫なのかもしれない。
    しかし、いくらアーダムたちの物語がメインといえども、入れ子構造の外側に行くほど内容が陳腐化するのは残念。外側の描写は主に本書の終盤で描かれる内容であるが、ナポレオン侵攻の設定も、夜の種族の物語の余韻も、あまり活きていないように見える。
    クライマックスは、魔王サフィアーンの身体に乗り移ったアーダムと、アーダムの書物を読み込み魔導を極めたサファーとの一騎打ち。アーダムが己れの書物と闘っていることにだんだん気付き、焦り、最後に悟る様子が面白い。アーダムvsアーダムという意味では、最初から最後までアーダムの物語だった。

  • おもしろいんだけど……うーん、ハマりきれなかった。序盤はグイグイ読み進められるのだけど、後半、物語が収束に向かっていくところでファンタジー色が強くなりすぎるし、激しいバトルシーンの描写を細かくやりすぎているのが一因かもしれない。しかし、「書物」をテーマにした壮大な物語としては著者の力量が存分に感じられ、なかなか圧倒される。本好きによる本好きのための物語であり、そして本が読者を飲み込んでしまう物語でもある。あまり時間をかけず、連休などを使って一気に読んだほうがたぶん楽しめる。

  • まぁぐいぐいと読ませてくる。
    ページをめくる手が止まりませんでした。

    文章も軽妙でありながら濃厚で、夢中になってくると酩酊感がありました。この感覚「大審問官」を読んだときにもあったな。

    構成が変態的。良い意味で
    緻密に計算されて書き上げているようにも思えるし、一種のトランスの中で書き上げているようにも思える、ある種の毒を持った本でした。

    一年後かにもう一度読み返してみよう。


    ファラー?

  •  ひたすら面白い物語を書こうとしたんだと思う。で、ジャンルとか売れ線とか度外視で、とにかくやたらと面白い物語が生まれた。そういう意味ではエンターテイメント小説の2大ジャンル、SFとミステリの賞を両方とったのも納得(2002年の日本SF大賞、日本推理作家協会賞を受賞)。
     恥ずかしながらこの著者の作品はこの本が初体験だったわけですが、会話調の文章がとても生き生きしていて、とても「読ませる」。と思ったら、戯曲の流れの人なんですね。どうりで、流暢かつメリハリある語り、騙り。
     これから読む人へのアドバイスとしては、日曜日に読み始めると月曜の朝方まで読んでしまう可能性が大なので、三連休の初日くらいをお勧めします(笑)。

  • 面白かった。バトル系は苦手なのでそういう場面では少々つまづいたけど、古川にしてはリーダビリティが高い文章なので659ページのボリュームもなんのその、苦もなく一気に読み終えた。設定も構想もよく練られていて「すげーな!」と感心してしまう。ただなんでだろう、こんなにも楽しめたのに心にズシリと響いてくるものは何もなかったという、、、。まっいいか、たまにはそういう読書も。

  • いやー、非常に非常に面白い作品であった。
    アラビアンナイト形式で進行する物語に、
    ナポレオンのエジプト東征が絡んだ壮大なファンタジー。

    語彙豊富な文章と、やや芝居がかった台詞回しにも惹かれる。
    途中、Dungeons & Dragons 、Wizardry、
    DRAGON QUEST をどうしても想起してしまった。
    戦士と魔法使いはどちらが強いのか?
    やはり魔法戦士には敵わないのか?
    僧侶、吟遊詩人、レンジャー、盗人、遊び人、踊り子入り乱れての大騒ぎ。
    パフパフ有りr(^ω^*)

    最初の「はじめに」と最後の「仕事場にて」もイイ味だ。
    読まずに死ぬわけにはいかない傑作であると理会。

    2002 年 日本推理作家協会賞受賞作品。(何故に?推理小説?)

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著者プロフィール

1966年生まれ。著作に『13』『沈黙』『アビシニアン』『アラビアの夜の種族』『中国行きのスロウ・ボートRMX』『サウンドトラック』『ボディ・アンド・ソウル』『gift』『ベルカ、吠えないのか?』『LOVE』『ロックンロール七部作』『ルート350』『僕たちは歩かない』『サマーバケーションEP』『ハル、ハル、ハル』『ゴッドスター』『聖家族』『MUSIC』『4444』『ノン+フィクション』『TYOゴシック』。対談集に『フルカワヒデオスピークス!』。CD作品にフルカワヒデオプラス『MUSIC:無謀の季節』the coffee group『ワンコインからワンドリップ』がある。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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