- Amazon.co.jp ・本 (492ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048734745
作品紹介・あらすじ
首を切り取られた石膏像が、殺人を予告する-著名な彫刻家・川島伊作が病死した。彼が倒れる直前に完成させた、娘の江知佳をモデルにした石膏像の首が切り取られ、持ち去られてしまう。悪質ないたずらなのか、それとも江知佳への殺人予告か。三転四転する謎に迫る名探偵・法月綸太郎の推理の行方は-!?幾重にも絡んだ悲劇の幕が、いま、開く。
感想・レビュー・書評
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彫刻家の川島伊作は愛娘の江知佳をモデルに石膏像を完成させるも、病に倒れ急逝。葬儀が終わった後、石膏像の首が切断され何者かに持ち出された形跡があった。伊作の弟からの依頼でその調査に乗り出した法月綸太郎。伊作を取り巻く複雑な家庭事情が明らかになる中、事件が起きる…
真相が徐々に小出しで明らかになるプロットなので、たたみかけるようなスピード感のあるどんでん返しではない。しかしながら、張り巡らされた伏線が最後に一本に収斂されるプロットはあざやか。連載作品を連載後に書き直しただけあって、構成が緻密。特に探偵役の法月綸太郎の調査活動が、後々事件に絡みあう構成が上手い。探偵は必ずしも完全無欠でなくても良いのだ。
《法月綸太郎シリーズ》は20年程前に「頼子のために」「一の悲劇」「ふたたび赤い悪夢」の三部作を読んだ。内容はあまり覚えて無いがいずれも一定水準以上の出来だったと記憶。他の新本格系の作家と趣きが異なり、落ち着いた作風の印象。
本書はタイトルにあるように“生首”を扱うテーマにもかかわらず、おどろおどろしさは感じず淡々と物語は進む。派手さは無いが、端正なロジックが光る一冊。
週刊文春ミステリーベスト10 2位
このミステリーがすごい! 1位
本格ミステリ・ベスト10 1位
本格ミステリ大賞受賞(2005年)
《法月綸太郎シリーズ》 ※:短編集
1.『雪密室』
2.『誰彼』
3.『頼子のために』
4.『一の悲劇』
5.『ふたたび赤い悪夢』
6.『法月綸太郎の冒険』※
7.『二の悲劇』
8.『法月綸太郎の新冒険』※
9.『法月綸太郎の功績』※
10.『生首に聞いてみろ』
11.『犯罪ホロスコープI 六人の女王の問題』※
12.『キングを探せ』
13.『犯罪ホロスコープII 三人の女神の問題』※
14.『名探偵傑作短篇集 法月綸太郎篇』※
15.『法月綸太郎の消息』※詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
出オチ。
タイトルがいいだけ。 -
05年のこのミス1位。
テンポがゆっくりな感じがした。
ところどころのエピソードがいろいろ暗喩してるんだけど
題名にも、ああ、そっか。ってつながるんだけど
いまいち、期待に沿わなかった。
うーん。
人が死ぬ部分より、彫刻の謎の部分がおもしろかった。
すっきりしたのは、一番最後のページと最初のほうのナゾがつながったところかなあ。
あまりガツンとはこなかった。残念。 -
冒頭からそれは伏線と敷かれていて、もっと早くにそこに気が付いて然るべきではあったけれど、自分で深く考えるより、法月君に明かされる方が心地よい。
初見ではあまりいいと思わなかったように記憶しているけど、忘れ果てて再読したら思いのほか良かった。斜め読みしてしまったかしら。 -
作品解説:著名な彫刻家・川島伊作が病死した。彼が倒れる直前に完成させた、娘の江知佳をモデルにした石膏像の首が切り取られ、持ち去られてしまう。悪質ないたずらなのか、それとも江知佳への殺人予告か。三転四転する謎に迫る名探偵・法月綸太郎の推理の行方は――!? 幾重にも絡んだ悲劇の幕が、いま、開く!!
このミステリーがすごい!(2005年度版) 第1位
う~ん…。評価するのが難しいですね。複雑すぎて何がなんだかわからないような伏線がひとつに収束されていく様は、確かにミステリーとして優れていますが、死体が登場する第4部までは、起伏に乏しい展開(ひたすら伏線の挿入)が続くため、「このミス第1位」という評価を踏まえつつ読むと飽きてきます。
タイトルだけ見るとホラーの苦手な方は引いてしますかもしれませんが、気持ちの悪いシーンはありませんので安心してください。 -
期待はずれでした。まず、殺人事件がなかなか起こらないし、事件が起こるまでの間も彫刻の首が切り落とされたことについてどうでもいい推理をしてみたりと前半かなり退屈な内容で読むのに時間がかかりました。事件が起こってからはなかなか面白い作品ですが1冊の本としてはハズレですね。 以前に読んだ法月さんの「キングを探せ」が面白かっただけに期待していましたが、まるでダメでした。
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端正でスノビッシュな生首ミステリの佳作。
法月さんの小説は、長編の『頼子のために』と短編集『法月綸太郎の冒険』『パズル崩壊』それに短編の「ノックス・マシン」をアンソロジーで読んだくらい。(あれ?『法月綸太郎の新冒険』『法月綸太郎の功績』は読んだっけ?記憶が曖昧です)
最近のミステリも読んでおかなきゃなあ~と思い、ブックオフで108円になっているのを買いました。(装丁は単行本の方が好き)でもこれ2004年発表でもう十年前になるんですね。全然最近じゃないじゃん!……時流についていけてないなあ。
閑話休題。本作には題名通り生首の死体が登場しますが、あまりグロテスクな印象はない。探偵役の法月綸太郎(作者と同名)が地道に聞き取り調査をする場面がほとんどを占めています。で、その地道な捜査が読んでて楽しいんですよ。ここはロス・マクドナルドゆずりなのかな。
中盤まで死体は出てこない。前半は彫刻の首だけが切り取られる事件を綸太郎が追い、後半はそれに見立てた本物の生首が現れるという展開。
最後に明かされるトリックはよくできているなと思いました。ただ、ある登場人物が「もし私が知っていたら」「私が悪かったんだ」式の後悔をするのは、あまり迫って来ませんでした。以前読んだ『頼子のために』が見事なギリシャ悲劇になっていたのに対し、『生首に聞いてみろ』は無理にギリシャ悲劇にしようとしている感があります。
生首ミステリといって私がぱっと思いつくのはクリスチアナ・ブランド『ジェゼベルの死』と栗本薫『鬼面の研究』くらいですが、あの戦慄すべきトリックとゴージャスな悪趣味に彩られた『ジェゼベルの死』に比べるとよくも悪くも端整。佳作という印象です。『頼子のために』は傑作。
そういえばこの本たしか豊崎由美さんが悪口言ってなかったかなと思い起こし、昔のミステリマガジンを調べてみました。
そうしたらありました、2005年2月号のコラム「隔離戦線」。ある登場人物の生理現象(具体的に言えないのがもどかしい)が犯人のトリックに組み込まれているけど、そんなのうまくいくわけねえだろ!とのこと。確かにそうなんだよね、あれはかなり強引。
その通りではあるんだけど、豊崎さんの挑発的な文章にはかなりイラッときました。
「二〇〇五年版『このミステリーがすごい!』は、さしずめ法月綸太郎スペシャル。十二年ぶりに新作を出したというだけで、こんなに饗応していただけるなんて、ミステリ業界はちょろいねっ!」
ミステリ業界関係者でもないのにムッとしてしまったのは、私が今でもミステリをホームグラウンドだと思っているからなのかな。
とはいえ、なんでこれが1位?と思ったのも事実。そこで今度は「このミス」2005年版を読んでみました。
あー、なるほど……。『生首に聞いてみろ』を1位に推している人は少ないんですよ。
1位推しは伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』(総合2位)の方が多い。
「法月さんの新作なかなかいいじゃないか。1位にするほどじゃないけど久々だし、4位か5位くらいには入れとこう」な人が大勢いたのでこの結果になったのかな。伊坂さんは『チルドレン』も『グラスホッパー』もランクインしていて票が割れたというのもあるし。
後出しジャンケンだけどこの年は乾くるみ『イニシエーション・ラブ』が1位をとるべきだった。あれは本当に驚いたもの。
……と、後半なんかネガティブな感想になりましたが、つまらないわけじゃ全然ないですよ!いいミステリです。面白いです。「このミス」1位というブランドに私が振り回されちゃっただけで。
そういえばこの小説のスノビッシュな側面にまだふれていませんでしたね。
冒頭の写真展の場面ではロバート・メイプルソープやHIROMIXの名前が出てくる。
ハードボイルドの翻訳家は「『ラストムービー』と『荒野のストレンジャー』、それに『ロング・グッドバイ』をごちゃ混ぜにしたような私立探偵小説の野心的なパロディ」 を訳する。
作中で重要な位置を占める彫刻家・川島伊作は和製ジョージ・シーガルと呼ばれ、作風の変遷がこと細かに記される。
そしてきわめつけが美術評論家・宇佐見彰甚!
川島伊作を崇拝する真摯でアカデミックな顔と油断ならない山師の顔の両方をあわせもつ。
母子像の首が切り取られた結果川島先生はシーガルを越えたのだ、という演説はいわゆるひとつのポストモダンという感じで、ものすごくうさんくさい。(法月さんもよくこんな詭弁を考えつくもんだと思う)
この宇佐見彰甚、ぶっちぎりでキャラ立ってます。
というわけで、なんだかんだでかなり楽しい読書でした。『一の悲劇』『ふたたび赤い悪夢』も読もうかなー。 -
2005年版このミスの第一位の作品。
一位だけあってよくできてる。非常にロジカル。
最近、ファウスト系の勢いのあるミステリばかり読んでいたけど、やっぱりこういう方が好きだなと痛感。連続殺人じゃなくても十分に読めるんだわな。
彫刻家の病死をきっかけに、彼の遺作である娘をモデルにした像の首が切り取られ持ち去られる、そのあとに娘が殺されて、と。過去にも彫刻家の妻と、その妹夫婦の間に諍いがあったりしていたのだけれど、基本的な事件はそれだけ。
そもそも遺作である像に首があったのか、なかったのか。あったとしたらどうして切り取られたのか、云々。一つ一つが細かくてしっかりできてるし、オチもあるし。綺麗。
以下空白部分は一応反転処理。
ただまあ、初期の時点で首を切り取った人物が「娘の絵知佳」であること、その理由が「自分ではない首があったから」ってのは気付ける。気付けたのはそれだけで、あとはややこしいから解決するまで考えなかったけど。
相変わらず探偵役の綸太郎が悩んだり落ち込んだりと、人間らしい部分が前面に出ておりました。もうね、綾辻の所為で、「綸太郎」って文字を見ると、「悩める作家リンタロー」にしか変換されないんだわ(笑)
法月作品は過去に何作か読んだことあったけど、もう一度読み返しておこう。
久々に本格ミステリを読めて満足。
05.01.14 -
2005年のこのミス第一位、週刊文春ミステリー第二位という人気作品。でしたが、私にはちっとも響きませんでした。本格ミステリーで生首とくれば、島田荘司「占星術殺人事件」と比較せざるを得ません。
まず、本作は大幅な加筆修正があったにせよ、月刊誌で二年の長きに連載されたもののせいか、どうでもいい描写や会話が多い。そうした文章が、真犯人をカムフラージュする効果があるのならまだしも、連載小説によく見られる、原稿用紙のマス埋め的役割しか果たしていないのは残念。また、探偵業なのに携帯も持たず、本作でも連絡が取れないために逃した貴重な情報がありました。
私が編集者なら、次作のタイトルは、「法月綸太郎、携帯持てよ!」を推奨。