Pの迷宮

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 44
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048734905

感想・レビュー・書評

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  • 幸せな生活をおくっていたはずの弥生が突然発症したパニック症候群。
    北海道の地方都市のホテルで男を刺したとフロントを呼ぶ女。
    このふたつの出来事の因果関係は20ページも読めば想像はつく。
    けれど、なぜこのような病気を発症したのか、なぜこの事件は起こったのか。
    そして、自らフロントに電話して救急車を読んだ女が、刺した事実以外の全てを黙秘しているのはなぜなのか。

    2段組み400ページ一気読み。
    最近の私では考えられないほどの集中力で読んだ。

    自分が認知している自分自身は、ほんのわずかな部分だけ。
    記憶はあてにならない。
    いくらでも改ざんできるし、何ならなかったことにだってできる。
    そのすべてを明らかにすることが、幸せに繋がるとは限らないのに、人は知らないということを不安に思ってしまう。

    隈本は精神科医であるとともにサイコパスでもあったのだろう。
    自分の思いだけに固執し、他人の都合、他人の想いには忖度しない。できない。

    運命のイタズラが佐紀子たちの運命を複雑に交差させる。
    が、自分に置き換えてみた時に、他にどんな選択肢があったというのか。
    願わくば、彼らが再び家族としての機能を取り戻してくれればいいと思う。

    本編とは直接関係がないが、森島は、息子の幸せを勝手に判断するのではなく、一度きちんと話し合うべきだと思う。
    一度自分を捨てた母がやっぱり恋しいのか、時たま顔を見せる父親と過ごす時間が大切なのか、鬱陶しくも一番側に居る祖父母との関係はどうなのか。
    時間がかかっても、直接本人の言葉を聞いて、一緒に悩むべきだと思う。

  •  釧路のホテルで有名な精神科医が刺されて亡くなっていた。同室から女がフロントに通報して発覚したのだが、女は身元を決して明かさない。彼女が口を閉ざす理由は何か。彼女が守ろうとしているのは一体何なのか。

     今でこそ、病気の名前も症状も知る人が多くなった「パニック障害」だが、これが書かれた時代はきっと今ほどではなかっただろう。黙秘を続けた女の娘がこの病気を患っているのだが、あちこちをたらいまわしにされたがようやく病名がわかり、治すためと受け始めたカウンセリングでありもしない虐待の記憶を呼び起こされ、
    それによって家族が崩壊してしまう。医者やカウンセラーが絶対正しいと思いがちだが、この話のように、
    そこに悪意が潜んでいないとどうして断言できるだろう。もっと何の知識もない状態なら、最初から最後まで驚きの連続だったろうけれど、きっと一般よりは知識がある状態で読んでしまったので、各所でいわゆる“説明”が多いのが少し気になってしまったのと、展開が読めてしまったのが残念。もっと前に出会いたかったな。

  • 構成的に少し読みづらい面はあったが内容的にはすばらしかった。
    最後の方は涙がポロポロ状態だった。

  • 「黙秘」に改題

  • 北海道で起こったある殺人事件。
    メイン舞台は裁判所。被告人は完全黙秘。
    裁判を通じ、捜査段階では分からなかった
    事件の真相が次第に明らかになっていく。

    話の軸に精神医学が密接に絡み、話に深みを与えている。
    精神医学や心理学に興味ある人なら面白いかもしれません。
    文体は硬め。

    約4時間

  • 人間の心理をも追求している作品。一気に読んだ。

  • 実際のカウンセリングや、病気について詳しくはないけれど、話はかなり作りこまれているように感じた。
    面白くて一気に読んだ。

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著者プロフィール

1943年東京都生まれ。東京大学理学部卒。82年『ハーメルンの笛を聴け』で第28回江戸川乱歩賞候補。85年『殺人ウイルスを追え』で第3回サントリーミステリー大賞佳作。〈壮&美緒シリーズ〉に代表されるトラベルミステリー、『自白の風景』『黙秘』『審判』『目撃』『無罪』などの法廷ミステリー、『「法隆寺の謎」殺人事件』『人麻呂の悲劇』などの歴史ミステリーにも定評がある。

「2023年 『殺人者 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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