ユージニア

著者 :
  • 角川書店
3.48
  • (203)
  • (358)
  • (754)
  • (64)
  • (13)
本棚登録 : 2363
レビュー : 391
  • Amazon.co.jp ・本 (444ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048735735

作品紹介・あらすじ

ある男の遺書によって、一応の解決をみたはずの事件。町の記憶の底に埋もれた大量殺人事件が、年月を経てさまざまな視点から再構成される。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 綺麗だと思ったんです。すごく綺麗な世界。
    素敵な邸宅、非の打ち所の無いお嬢様、端正な青年、夏の風景、嵐の描写までも。
    空気がどっと溢れて、目の前に広がっていくような、自分がそこにいるかのような感覚でした。

    でも怖かった。
    一章ごとに語り手が変わる、という構成で、インタビュー形式だったり、小説のような語り口だったり、様々な語り方で事件そのものを描いているんですが、その事件のイメージがどんどん鮮明になっていくんです。

    読み終わったときの何とも言えない脱力感、そして事件の収束を感じた充実感、その両方を感じました。


    祖父江さんの装丁も素晴らしい。
    ジャケットの紙裏印刷も気が利いているし、
    プロローグの、紙のサイズが少しずつ大きくなって本文の紙サイズになる仕組みで物語に引き込まれ、
    さらに本文組は全て垂直に見て少し、本の僅か斜めに組まれている。物語の独特の世界観を表現しているようでした。


    なんだかすごい本に出会ってしまった、そんな感じです。

  • 25年前
    K市でおきた、素封家一族 大量毒殺事件
    たったひとり生き残ったのは、盲目の美少女

    犯人死亡のまま終わった謎多きこの事件
    本当の真相は・・・

    多くの人間の語りによって少しずつわかってくる事実
    そして薄紙1枚謎の残ったままの結末

    もやもやするけど、美しい1冊

  • 好き。
    結局現実って、こんな風に核心は見えない。
    色んな人が、いろんな角度から見たものが、モザイクみたいにボンヤリと真相を浮かび上がらせる…様な気がするだけ。
    ホントのホントはどうだったかって、絶対に見えないものなんだもの。

  • ある街の名家で起きた大量毒殺事件と、生き残った盲目の美少女をめぐる物語。

    恩田陸さんの小説読むといつも思うけれど、とにかく不思議な感覚というか、従来のミステリ小説とは違って犯人もはっきりこの人って特定されないし、敷かれた伏線が回収されたのか謎が残る部分もけっこうあるし、いわゆる推理が主体ではない。
    人間の深層心理だとか、人間模様だとか、おそらくそっちが主体。
    だからすっきりと「犯人はこの人でどういう動機でトリックはこうで」というミステリ小説を求めてる人にはおすすめできないけれど、私はこういう想像力を掻きたてられるような小説好きです。

    王道ではないかもしれないけれど、これが“本当のミステリ”なのかなって気もする。
    実際現実で起こる殺人事件だって、真実を知るのは、当の本人である殺した人間だけ。
    完全な俯瞰で物事を見る“天の目”みたいな存在は現実には絶対ありえないから、事件の真実なんて他人が知れるわけもないまま、いつしか時間と共に流れていってしまう。そういう意味で恩田陸さんのミステリってすごくリアルだと思う。

    物語の内容もさることながら、ノスタルジックで美しい文章を楽しめるところもいい。読み手をその世界にぐいぐい引き込むような文章だと思う。
    とても読み応えのある小説です。

  • 恩田さんの作品は夜のピクニック以来二作目。もうほとんど細部を覚えていませんが、きれいな文体、きれいなお話、きれいな人物、だったような気がする。そんなきれいな作風のひとだと思っていたので、この小説の不安定さ、鬱々しさには意表を突かれてとても楽しめました。楽しむ、というお話ではないんですがね。うまく言えないけど。
    でもやっぱり夜のピクニックの時にも感じたきれいな文体っていうのはそのまんま、彼女の文章ってほんと感覚的で美しいなあと思いました。青い部屋、白い花、色の描写がほんときれいで引き込まれます。緋紗子のミステリアスな雰囲気も、満喜子の掴みどころのなさも、描写が緻密でとても魅力的でした。風景も人物も、それそのものではなくて、むしろそれに纏う空気を描いているみたい。実体がないという意味ではなくて、実体まるごと空気と一緒に真空パックにいれて保存して、それひとパックで一事象として扱うというか。
    こんなふうに物事を書けるひとって、普段どんなふうに物事を捉えているんでしょう。あたまのなかを覗いてみたいような、覗きたくないような。語り手が変わるところも、今の語り手でちょこっとだけ出てきた人が次の語り手になってまた新たな展開を開いていく、お話が二転三転、真相が少しずつ少しずつ明らかになっていく構成力もお見事でした。でも決して真相全部は見せてくれない、明らかにしない。うーん、すごい。お話がちゃんと一点に落ち着かないのも当初はおおう?!としましたが、これこそが狙いだったのかもと画策させてくれます。もう一度時期をおいて読み返したいなあ。装丁もすごくきれいでどきどきしました。表紙を裏返すと出てくる写真、これはどの場面のつもりなんだろう。書きおきを模した最初のプロローグも凝ってて素敵。でもやっぱりハードカバーは重いので、読み返すなら電子書籍買っちゃうだろうなあ。
    まあなんだかんだいいつつ、お話そのものよりも、わたしはこの小説の雰囲気の描写そのものを楽しんでました。ストーリー自体はまあ、賛否両論、やっぱりわたしも少し腑に落ちないところあり。でもそんなことどうでもよくなるくらい、このひとの文章がわたし好みでとてもお腹いっぱいです。

  • 遠い夏、白い百日紅の記憶。死の使いは、静かに街を滅ぼした。知らなければならない。あの詩の意味を。あの夏のすべてを。(「BOOK」データベースより)
    恩田さんらしいサスペンス。夏の暑さや街並みの描写はさすが。じわじわとした恐怖。

  • 本を開いて驚きました。凝っているなぁと。
    最初は語り手のことも内容も漠然としていて読みにくいと思いましたが、徐々に引き込まれていきました。犯人が誰なのか真相は気になるところですが、多分全部“事実”なのでしょう、その人にとっては。
    「だから、実際に起きたことを、本当に知るというのは絶対に無理なんだなあと思いました」登場人物の一人が言ったことは胸にストンと落ちました。 

  • 金沢が舞台のミステリー。お祝いの席で一家がみな毒殺され、家族のうち生き残ったのは目が見えない少女だけという凄惨な事件の関係者へのインタビューをまとめた話やそれぞれの思いを書いたものだけど読み終えてももやもやが残る。
    人は全てわかるわけではない。刑事も目撃者も、被害者も、犯人でさえ全てを知らない。なんとなく、みんなが納得できれば、それが正しいものではなくても事実となる。真実は何か、事実とは何かがテーマだと思う。

  • その町では誰もが知っている医師一族のお祝いの最中に起こった毒殺事件。配達員によって運ばれたビールやジュースに毒が入っており、目が見えない少女以外の人間は全員毒を飲んでしまう。その少女が犯人ではないかと匂わせながら話は進んで行くが、最後まで疑惑が確信に変わる事はない。読了後はスッキリとしない。

  • あの夏。死の使いが静かに町を滅ぼした。

    名家で起こった大量無差別毒殺事件。

    忘れられた祝祭。
    盲目の少女の微笑み。
    白い百日紅の記憶。
    夢の通い路。

    真実は永遠の闇のなかに消えてゆく…

    日本推理作家協会賞授賞作。

    ***
    面白い!!
    2回読んで、さらには時系列を書いて考えるくらいはまりました。
    間違いなく犯人はこの人だとわかっているのに、決定的な証拠を突きつけられないもどかしさ。
    読めば読むほど不安を煽られる展開に、止まらなくなること請け合いです◎

全391件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

恩田陸(おんだ りく)
1964年、青森市生まれ。水戸第一高校を卒業し、早稲田大学進学・卒業。1991年、第3回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作となった「六番目の小夜子」でデビュー。2004年刊行『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞及び第2回本屋大賞、2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。2017年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞、第5回ブクログ大賞などを受賞した。同作品による直木賞・本屋大賞のW受賞、そして同作家2度目の本屋大賞受賞は史上初。大変大きな話題となり、代表作の一つに挙げられるようになった。同作は2019年4月に文庫化され、同年秋に石川慶監督、松岡茉優・松坂桃李らのキャストで映画化される。

ユージニアのその他の作品

恩田陸の作品

ユージニアに関連する談話室の質問

ユージニアを本棚に登録しているひと

ツイートする