サウス・バウンド

著者 :
  • 角川書店
3.79
  • (456)
  • (540)
  • (665)
  • (50)
  • (17)
本棚登録 : 3058
レビュー : 586
  • Amazon.co.jp ・本 (535ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048736114

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 奥田作品の中では一番好きな作品。私が沖縄に憧れるきっかけをくれた本です。
    元過激派でとにかくエキセントリックで頭のぶっとんだ親父にうんざりする息子の視点で描かれたドタバタヒューマンストーリー。こんな親父いるわけないと思うでしょう?いるから。私の父は元過激派でこそありませんが、この親父に性格がどことなく似ていて、父に振り回されて辟易する気持ちがすごく分かってします。(お父さんがこのレビュー読んでませんように)
    でも憎めないから不思議なんです。
    文章のテンポが良くワクワクして一気に読めてしまいます。特に沖縄に移住してからの家族や地域の方々との交流はとても楽しそうで心が暖かくなります。本当、奥田さにヒューマンドラマを書かせたら無敵ですね。どんな最低な人間でも好きになれそうな気がする。

  • ああ、何で今まで読んでなかったんだろ。面白かったー。良かったー。「夏の100冊」のおかげです。

    思えば、「家族小説」っていうのを毛嫌いしてた頃があって、とにかくそのテの惹句がついてるとパスしてたのだった。大震災以降あからさまに連呼されているけれど、家族のつながりとか絆とか、そういう言葉が無反省に使われていると、拒否反応が起こるんである。

    ずいぶん前だが、田辺聖子先生が「大家族の良さとか、したり顔で口にするおっさんを見ると、とびかかって首を絞めてやりたくなる」と書かれていて、そうそう!と拍手したことがある。幼い頃や、カモカのおっちゃんと結婚してからの、慈愛に満ちた大家族の暮らしを心から愛おしんで書いている田辺先生にして、この発言。家族は(とりわけ大家族は)大なり小なり、誰かが我慢を強いられている上に成り立つものだと思う。そこをちゃんと見ないで、家族を描くのは欺瞞だ。

    この小説で、語り手の小学生二郎の父親は、かなり極端に「自分を犠牲にしない人」だ。第一部では、いくらなんでも…とウンザリしてくるくらいに。二郎もウンザリしているのだが、父を怖がってはいない。父親が、自分の意に染まない二郎の行動にも、最後には「見て見ぬふりをして」認めてくれることを知っているからだ。子どもに対して、自分の考え方を貫くことも、また、最終的にグレーゾーンで歩み寄ることも、どっちもなかなか難しいものだけど。

    この二郎がしばしば、自分が子どもで無力であることを悔しく思う場面があるが、これはかつて子どもだった人はみんな身につまされるのではないだろうか。子どもってほんとに「自由」がない。誰かにご飯を作って(あるいは買って)もらわなくちゃならないし、夜になったら家に帰らなくちゃいけない。家出したって、外を普通に歩けるのは午後三時から八時くらいまでの間だ。ああ、もう早く大人になりたい!と思ったことのない人っているんだろうか。(イマドキの子どものことはわからないけど)

    でもね、二郎君、あなたが先生たちを見てて気づいたように、大人だって大して自由じゃない(あなたのお父さんは除く)。そして何より、その不自由さの中に「自由」の芽は大事に育まれている。そう言ってあげたくなる。二郎君はとっくに知っているだろうけど。

  • とにかく面白い。
    主人公は小学6年生の二郎。
    舞台は前半は中野区中野、後半は西表島。
    父は元革命家、税金払う必要なし、義務教育不要
    って感じで常識でははかれない意識の持ち主。
    それゆえ、主人公の周囲にはさまざまなトラブルが。
    でもひとつひとつ乗り越えて立派に成長していく。
    前半は主人公が中学生の悪に苦しめられつつ
    それに対峙していく物語で、後半は西表島に
    移住してからの家族の生活の物語。
    すごく面白い。私は後半の方が好きだったけど、
    とにかくさっぱりすっきり爽快な読後感。
    また忘れた頃に読みたい。

  • 「卑怯な大人にだけはなるな。立場で生きるような大人にはなるな」「これは違うと思ったらとことん戦え。負けてもいいから戦え。人と違っていてもいい。孤独を恐れるな。理解者は必ずいる」
    この作品をYAに分類してしまって良いかどうか迷うところだが、難しい内容かもしれないが中高生にこそ心に響く言葉があり、こんな人がいたら良いと思える大人や子どもたちが登場する。読んでもらいたい。

  • 最高

  • あえて児童文学としたけれど。映画は豊川悦司、天海祐希、北川景子、田辺修斗、松本梨菜。

  • 元過激派の父をもつ少年の視点からの日常を描いた作品。

    東京・中野に住む上原二郎(小学6年生)が主人公。

    不良少年から目を付けられるが、友達とともに反抗する。

    父は父で右翼や、公安に自分の思想をかまし、自分の生き方を曲げようとせず、騒動が絶えない。

    そんな姿に影響されたのか、二郎少年も負けても負けても立ち上がって向かっていく。

    そのうち、家族は西表島へ引っ越すことになるが、そこでも父が騒動を巻き起こすことに。

    父・一郎の考え方は左よりではあるが、長いものに巻かれない、正義を堂々と正義という姿勢や生き方は、社会にうんざりしている者にとって、励みになりそう。

    痛快であり、元気も出るようなすばらしい小説でした。

  • とある人の物語、というのは題材、登場人物、背景を一つ間違えるとただのだらだらした文章であって物語でなくなるので、読んでいてもつまらない。
    この物語はその3つがどれも逸品で、読みながら残りのページ数がこれほど切なくなるものはなかった。
    五百数ページで収まるのかとハラハラしていたのが、きれいにまとまりストンと落ちる。
    たまたま父を送り迎えする病院の待合室にあった本を手にして読み始めたのがこんなにも冒険活劇だとは思いもしなくて
    いい本に出合えるのも運命だなぁって、でもそれはいっぱいの本を読む、という意思がなければ出会えないので、今後も空いた時間にはどんどん未知の本に手を出して行きたいと思った。

  • すごく面白かった!
    上原家の家族全員が良いキャラで好きになれる。
    周りの人達もそれぞれ個性があって良い。
    最後の方は読み終わるのが惜しくて、毎日5ページくらいを大事に読み進めた。
    また何年後かに読みたい作品。

  • ハラハラする場面と、ほのぼのしている場面と、物語に緩急があり、楽しく読める。

    父親をはじめとする、キャラクタの個性が強いおかげかと思われる。
    身近にはなかなかいない、豪快な父親が物語を盛り上げている。

    父親の言動には賛否両論あると思うが、そこは小説の中という事で、おおめに見てもらうのが良いと思う。

    この物語のような、生活も楽しそうだなぁと思ってしまう一冊。
    忙しく働くビジネスマンが、少し落ち着いて考えるためにも良い本である

著者プロフィール

おくだ・ひでお
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライターなどを経て1997年『ウランバーナの森』でデビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞受賞。2004年『空中ブランコ』で直木賞、2007年『家日和』で柴田錬三郎賞、2009年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『最悪』、『イン・ザ・プール』、『マドンナ』、『ガール』、『サウスバウンド』、『無理』、『噂の女』、『我が家のヒミツ』、『ナオミとカナコ』、『向田理髪店』など。映像化作品も多数あり、コミカルな短篇から社会派長編までさまざまな作風で人気を博している。近著に『罪の轍』。

「2019年 『ヴァラエティ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

奥田英朗の作品

ツイートする