アイの物語

著者 :
制作 : 李 夏紀 
  • 角川書店
3.96
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本棚登録 : 498
レビュー : 107
  • Amazon.co.jp ・本 (465ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048736213

感想・レビュー・書評

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  • これはすごい! インターミッション(幕間)の構築が芸術的です。ごく自然な流れの中で、ヒトとは何か、心とは何かを問いかけてきます。フィクションを書くことや、本を読むことに対する作者の信念が伝わってきました。
    とくに『詩音が来た日』がすばらしかった。ロボットたちへ受け継がれた「がんばるぞお、おう」から、明日への元気をもらった気がします。おばあさんになった時、詩音みたいな介護用ロボットと出会えたらいいなぁ。

  • 久しぶりにSFを読んだ。
    人工知能に対する可能性について論理的なストーリが展開され、一気に読むことができた。
    結論も十分に納得が行く内容だったが、そうなってしまうのであれば、人間は悲しい存在だと思った。

  • 桁違いに面白かった、ここ5年で一番面白かったし、価値観が変わった。勉強になりました。

  • 読んでる間は甘くていい気分だったけど、読み終えてしばらくするといくらか疑問がわき上がってきた。

    見たいものだけ見るというゲドフィールドという概念は人間の愚かさの象徴として描かれてるけど、これは一方で賞賛されている物語る力というものと表裏一体ではないか?これにより、物理的には1つしかない世界を仮想的に多数作り、相互に事実やアイデアをフィードバックしあうことでより高速にそれぞれの世界を進化させることができる。

    AI にゲドシールドがないとするなら、あらゆる命題は真偽判定されてすぐに全体に共有されるのだろうか。それは必然的に多様性のない均質的な社会を生む。そして、その社会を支える唯一の正しさとは、フレーム問題の回避のために妥協した推測でしかない。それは人間社会よりよい社会?価値観の摩擦がないのでより快適な社会?

    フィクションにせよAIにせよ、それが人の救いとなるのは、多様性に貢献するからではないのかな。

  • 【感想】
    ヴァーチャルとリアル、アンドロイドと人間。その関係で芽生える感情を、5つの短編と長編で表現した作品。
    途中までは?だったが、最後まで読むとなかなか考えることが見えてきた。

    アンドロイドが考える「人のため」の行為が「もてなし」の作法に通じているのが面白い。マトリクスで元人間のマスターが支配という形をとったのとは対照的。

    「愛」をi、即ち虚数として表現したのも面白い。究極の「愛」とは相手を気遣い、相手に気づかれないように相手の望みを叶えることなのかもと思えた。

  • SFはこれまで敬遠していたが、大森望オススメとあって手にとってみました。最高のSF体験ができる、素晴らしい本。
    全部で7編の未来の話で、それぞれ独立している。
    どの作品もレベルが高く、読み始めたら止まらない。
    特に第五話「正義が正義である世界」が最高!
    仮想空間やら、アニメの定番やら、特撮の矛盾やらをパロディ調にぎゅっと詰め込んだ作品で、かなり笑えます。
    この作品を読んで思ったのは、我々の今の生活って、既にSFの世界に入っているのかもしれないってこと。
    そういう意味で、自分の生活に身近な物語として読めるSFですので、面白い物語を探している方には非常にオススメしたいです。

  • 素晴らしかった。ヒトが抱える「致命的なバグ」にどうしようもないやるせなさを感じる。自身を振り返って悲しくなる。それでも、切なる希望を込めて夢や理想を語ることはできる。フィクションが生み出す、真実より正しい何かを確かに感じる。物語への深い信頼に共感した。

  • ただの短編集じゃなく、入れ子の構造が面白い(5+4i)。 各短編はレイヤー2。インターミッションはレイヤー1。レイヤー0は読者である。 『人間はみな認知症なのだ』(7+9i)

  •  ロボットとヒトは敵対するのか──どんどん技術が上がっていくAI関連の命題とされているだろう。SFに疎い私でも、ロボットがヒトを征服していく話が多々あることは知っている。

     これはAIアイビスがヒトである僕に小説を読む。それだけの物語。だが、それがすべての物語。幕間にアイビスと僕の作品についての会話がなされるが、それ以外はSF短編集とも云って良い。
     短編一つひとつだから読みやすいのだが、引っかかるのは主人公が頑ななことだ。敵対する意思はないというアイビスに対して、頑として受け入れない。おそらくその理由は今まで生きて来た中に根が深くあるのだろうと思ったが、それにしては後半あまりにも簡単に警戒を解きすぎのような気がするので、そこだけがしっくりこなかった。
     ただ彼らが紡ぐ物語はとてもおもしろく、一つひとつ見解を示していく様はいろいろと考えさせられる。ヒトとは、ロボットとは、平和とは。ヒトがヒトだからこそ、平和を目指すのが難しい。それは悲しい性だ。
    「マスターは自分でも気がつかないうちに、憎悪の対象をさらに拡大している。最初は(略)ただ一人だった」よく描かれる負の連鎖から逃れられないヒトとしては、この言葉にぞくりとしたものを感じた。


     以下ネタバレになる。
     これだけロボットに対して根深い悪感情を持つのには相当な理由があると思ったのだが、まさか実際は「何もない」とは思わなかった。アイビスたちががんばったのに、結局ヒトとロボットで苛烈な争いが起きてしまった。そう思っていたのに、それさえも「なかった」。あるようにしたのはヒトならではの感情が生み出したもので、それはなんとも悲しい話だ。争いなど起きなかったのにそう信じ込ませるヒトをそのままに、ロボットは理解されずとも彼らのために生産を続ける。本当にロボットが平和を望んでいる証であり、ヒトを許容できるそのハイスペックさに感動する。

     隣人を愛する。それが人類の、本当の命題なのだと改めて考えさせられた。

  •  SFです。アンドロイドのアイビスが「僕」に語った7つの物語を、インターミッション(幕間)で繋いだ構成です。

     特撮ヒーローものやゲームのキャラクターといったサブカルチャーに、正直なところ最初は抵抗を感じました。しかし読み進めるにつれ、この小説が見かけによらずとても奥の深いものであるということに気づきます。一つ一つの物語も興味深いですが、それらを語りつくした後に明らかにされる世界観が圧倒的です(8+9i)。

     優れたフィクションというのは数学の証明問題と同じようなものだと思いました。「仮定」から飛躍のない一貫性のある流れで導かれた「結論」には、それがどれほど荒唐無稽なものでも読者は説得力を感じます。ユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学がともに数学として成り立つのと同じように、現実に即した世界を描いたフィクションであれ荒唐無稽なSFであれ、論理的な筋道がしっかりしていれば意味のある物語として成り立つでしょう。逆に論理的な詰めが甘いと、読者は「御都合主義」と感じてしまうでしょう。そしてこの「アイの物語」で作者は、論理的な「詰め」の部分で少しの妥協もしていません。作者はフィクションの力ということを信じ、考え抜き、磨き上げるようにしてこの物語を書いていると思います。

     しかもこの小説には様々な問題提起が含まれています。心や肉体や生命とは何であるのか、現実と非現実の境はどこにあるのか、恐怖が人々の心に仮想敵を生み出し争いを引き起こしてしまうという事実、人間というものが不完全であり絶えず誤りを犯し続ける存在であるという事実……

     一九四〇年代から二〇四〇年代までのおよそ一〇〇年間が「ヒトが最も輝いていた時代」だったというのはあながち嘘ではない気がして怖い。であればあと二十年ちょっとで、我々が輝いていた一〇〇年は終わりを迎えます。人類はどこへ向かっているんだろう? そんなことも考えさせられる小説でした。

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著者プロフィール

作家。2003年に本格SFにして著者初の四六判ハードカバー『神は沈黙せず』(角川書店)を刊行。同作は読者の話題をさらい、日本SF大賞の候補となった。また2006年5月に刊行された単行本『アイの物語』(角川書店)も各書評家に絶賛されている。

「2018年 『怪奇探偵リジー&クリスタル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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