少女七竈と七人の可愛そうな大人

著者 :
  • 角川書店
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レビュー : 665
  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048737005

感想・レビュー・書評

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  • 詩的で切れ味鋭い
    センチメンタルな文体。

    思春期の女子特有の
    匂いたつような濃密で閉鎖的な世界観と
    男たちへの強烈な嫌悪感。

    北国の和情緒あふれる情景描写や
    古風な台詞、情念の世界。

    そして切実で甘酸っぱい
    未知なる恋の予感。



    さすが桜庭さん。
    この人の切ない感性は
    ほんまツボ。

    少女の痛みを書かせたら
    彼女の右に出る者はいないですよね。


    七竈が花の名前で
    七回燃やしてやっと灰になることが
    その由来であることなど、
    恥ずかしながら
    この小説で初めて知りました。




    自分を変えるために、
    こころのかたちを変えるために、
    ふしだらな人間にならなければと決意し、
    辻斬りのように
    7人の男たちと体の関係を持った母・川村優奈。


    そしてそんな母から
    遺憾ながら
    美しく生まれてしまった17歳の少女
    川村七竈(ななかまど)。


    黒い鉄の塊である鉄道模型を愛す七竈の
    美しいがゆえの苦悩と
    切なすぎる初恋を描いた
    章ごとに語り手が変わる連作長編です。
    (犬の視点もあるのですよ)


    清々しいまでに自分の美貌には関心がなく、
    鉄道オタで
    『世界の車窓から』が好きで(笑)
    男たちを毛嫌いする
    七竈のキャラが抜群にいいですね。


    田舎町において美しいということは
    なんの価値もなく好奇の目にさらされ
    妬まれるだけ。


    七竈が唯一心を許す
    幼なじみで
    おそろしく美少年の
    桂 雪風(かつらゆきかぜ)。


    ゆっくりと惹かれ合う異形の二人。

    しかし二人のかんばせは
    時が経つに連れ
    そっくりな風貌と化していき…



    いわば漫画的設定だし、
    極力感情描写を排除し
    ドライに描いていながらも
    登場人物たちの痛みが行間から滲み出て
    一人一人に感情移入してしまうのは
    やはり桜庭さんの実力なんでしょうね。
    (二人が名前を呼び合うだけのシーンなのに切なさが零れ落ちるのです)


    雪風に恋をする
    おかっぱ頭の少女
    緒方みすずや
    七竈をむくむくと呼ぶ
    元警察犬のビショップなど
    脇キャラが魅力的なのも◎。



    人は永遠の、
    限りないものに憧れる。

    でも、限りあるものほど、
    愛おしく思えるもの。


    美しさもまた然りなのかな。


    日々がただ美しいうちに
    時間よ止まれと願い続けた
    悲しき少年と少女の軌跡。


    いつまでもいつまでも余韻の残るラストも秀逸な
    記憶に残る一冊です。

  • ああ悲しい。
    最近こういうミステリー系読み始めてからかなりはまっていってる。

    そのころから、ぼくと七竈のかんばせは似始めていた。

  • 言葉が、どこまでも綺麗だった。
    雪のようで冷たくて、湿っぽい。けれど物語は七竃を、雪風をおいて淡々と進む。待ってはくれない。青春も、老いも、命も。
    さようなら、雪風。
    さようなら、七竃。
    二人は、可愛そうな七人の大人たちは、幸せになれるのかしら。

  • 世界で一番美しい別れのお話。
    綺麗で静かな文章だと思いました。少年や少女はただただ美しくて、大人は醜い。
    少女は大人になり、自分の道を生きることを知る…

  • 自らの美貌を呪いながら生きていく七竈は
    遠く旅に出た母を求め、
    親友・雪風と寄り添いながら日々を過ごす。

    「ずぅっと一緒にいよう。雪風」
    そのささやかな願いも
    無常に過ぎてゆく時と
    残酷な現実の嵐の中に
    のみ込まれてしまう―


    雪の街・旭川を舞台に進んでゆく
    切なくも美しい少女の物語




    大好きな桜庭作品の中でも
    特に好きな作品です

    こんなに切なくて
    胸をぎゅっと掴まれるような作品は
    なかなかないかも

  • 淡々としていて静謐で、それでいて奥行きのある文章。旭川の真っ白な雪景色の中に浮かび上がる七竈の黒髪と雪風の七竈色の真っ赤なマフラー。色彩のコントラストが自然と浮かび上がってくる言葉選び。どこか俗世間を超越した大人びた美しい少女七竈が魅力的。最後のシーンは切なくも美しい。桜庭一樹の繊細な文章になんだかはまりそう。2011/191

  • 類い稀なる美貌をもってうまれた七竈と、彼女を取り巻く大人達の恋愛ものがたり。
    美しい少年・雪風との恋、思春期に感じる孤独感、大学のための上京…
    誰しもが経験したであろう、風にのって儚くきえてしまうような気持ちをさらりと表現している。

    いつまでも色褪せない、宝物のような作品。

  • 図書館から借りました

     青春小説。
     北海道の小さな街が舞台。

     まがまがしいまでに、呪いのように美しい少女七竈(ななかまど)の物語。

     ある日、七竈の母は思い立つ。
     辻斬りのように男遊びがしたい、と。
     そして、一ヶ月の間に七人の男と関係を持つ。
     学生時代の知り合い、嘘つき、美しくて自分を惨めにさせる男、無口な男、きらきらして夢を語る男等々。

     そして出来たのが七竈。
     七竈は高校生になる。
    「いんらんな母」と母親を呼びながら、彼女は恋う。娘を置いてけぼりにして男をアサリに旅に出てしまう母を。
    「私を見てください」
     でも、願いはすれ違う。
     母が家に居着くようになったとき、七竈は母を待つ魑魅魍魎の一つであるのをやめて、東京の大学に進学するのだ。
     母の言い分もわかる気がする。
    「娘が待っていてくれるのを知っていたから、出歩けた。私を愛してくれる者がいたから」
     でも、それって、待つ方はたまらない。

     ここまでは、七竈と母親の話を重点に説明したが、この物語の本筋は同じ年の、やはり美しく生まれた七竈の親友、雪風(少年)と七竈の物語なのだ。
     雪風は言う。
    「君がそんなに美しく生まれてしまったのは、母親がいんらんだったせいだ。母親がいんらんなときに子供をみごもると、娘は美しくなってしまうんだ」と。
     七竈は言う。
    「ええ、ええ、雪風」
     最初、なんだこいつらは、と思ったのだが。
     話が進むにつれ、この説を二人は信じずにはいられなかったというか、その説で周囲を納得させたかったのだな、とわかった。
     二人は似てしまう。
     雪風の父は、七竈の母の寝た「美しい男」であったから。
     雪風とあまりに似すぎてしまって、もう一緒にいられなくなり、彼女は東京へ。
    「七竈」
    「雪風」
    「七竈」
    「雪風」
    「七竈」
    「雪風」
     こうして何度も、二人はただ名前だけを呼び合うシーンがたびたび出てくる。
     終わってみると、「君がそんなにら美しく生まれてしまったのは~」のくだりセリフが、なにやら静かに必死に練りだした理屈だったのとわかって、なんだかすごく、綺麗で悲しい。
     すごく、綺麗な話なのだよね。

  • 桜庭一樹の中ではこれが一番好き。

  • 少女七竈と少年雪風
    美しい二人が好き。

    変わってしまう、続かない現実が寂しい

著者プロフィール

桜庭 一樹(さくらば かずき)
1971年、島根県生まれの小説家。
1999年「夜空に、満点の星」で第1回ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。
『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編部門)、『私の男』で直木賞を受賞。他の代表作に『GOSICK -ゴシック-』『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』『赤朽葉家の伝説』などがある。
ゲームのノベライズやライトノベル作品や、山田桜丸名義でゲームシナリオを手がけるなど幅広く活躍している。

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