風の音が聞こえませんか

著者 :
  • 角川書店
3.41
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本棚登録 : 78
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048737906

作品紹介・あらすじ

川村美知は、保健福祉センターの障害保健福祉課で働く新人ケースワーカー。統合失調症を抱え、通院も服薬も途絶えたまま一人暮らしのアパートにひきこもっている杉浦晃の母親から相談を受けた彼女は、晃の訪問指導を引き受ける。何度も厚い壁に跳ね返される美知だったが、しだいに彼女のひたむきさが晃の心を開いていく。美知は、晃との間に些細な共通点を見つけては喜び、二人でいると素直な気持ちになれるのだった。だが、晃の回復に取り組む中、美知は、晃の主治医・佐伯にも惹かれていく…。優しさに溢れる筆致、美しいラストシーンが胸を打つ、かつて書かれたことのない恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 現役の精神科医によって書かれた一冊。
    統合失調症を抱える男性・晃と彼を支えるケースワーカー美知、主治医の佐伯を中心に物語が進む。

    統合失調症という病気は幻聴や幻覚、薬による重い副作用など、苦痛を強いられることが多く、更に世間からの偏見もあり、社会復帰が困難ということを実感した。

    患者と支援者の間に生まれた信頼関係を超えて、恋愛関係に発展してしまうタブーに始めはヒヤヒヤしたが、どこまでも真っ直ぐに想い合い支え合う2人を応援する気持ちが自然と生まれた。

    ラストは意外な展開だったが、これで良かったのかなと思う。

  • ケースワーカーと統合失調症の彼との
    純愛

  • 精神保健センターの相談員と統合失調症を患う患者の夢物語である。精神病はとても複雑で難しい病気だ。この本のような恋愛は難しいとは思うがこれに近い恋愛は可能だろうとも思う。

  • 精神保健福祉センターのPSWが統失の男への援助過程に恋に落ちて同じく
    精神的な病に陥ってしまう話だったかな?
    精神病院に行った時あるため統合失調症の症状ついて(幻聴、パーキンソンなど)かなり現実的に書かれれていたな。また再発についてもまたリアルであったな。
    クライエントに感情移入しすぎてのめり込んでしまうのは新人CWにはありがちだと思う。けれど彼女ほどハマってしまうのは彼女は劣等感に無意識的にも苛まれてたから。相談援助を行うにあたってクライエント第一に考えていないケースワークに腹が立った部分も。
    けれど恋愛小説として読むと上々。特に後半の2人で湖畔で手を繋いで寝そべってUFOを見ながら眠りに落ちてしまう(薬の影響)部分は切なく美しくて良かった。
    精神疾患や相談援助に興味がある人はおすすめです
    風の音が聞こえませんかって幻聴のことだったのね

  • ★3.5 
    読後感...

  • 専門用語のような無味乾燥な言葉で説明されるよりも心に響くものがある。
    相手の中に自分を見てそれを救いたくて手を差し伸べる、というのは私にとってもドキッとする言葉だった。そしてそれがお互いを不幸な結末へと導くというのもすごく共感できる。
    小説だけあって話が出来すぎていると感じる部分もあるけれど、結末には納得。ハッピーエンドなのも好感。

  •  新任ケースワーカーの川村美知は、今日も杉浦晃(すぎうらひかる)の元を訪れていた。保健福祉センターの精神保健相談にやってきた母親によると、高校の時から引きこもりがちで、一度就職したことはあるものの2ヵ月程度でやめてしまって再び引きこもり、統合失調症を発症。幻聴と独り言がひどいのだという。前任者は何もすることができなかったと聞いた美知は、少し強引かなと思いつつも積極的に家の中に入り込み、晃に話しかけ続ける。

     病状のアップダウンが激しく、普通となんら変わりないと思えるような時もあれば、突然病状が悪化することもある。治療を受け続けさせるためには、関わり合う人たちとの信頼関係が不可欠であって、それが男と女ならばそこで愛情が芽生えてしまうことは決して不思議なことではない。が、一筋縄ではいかないのがこの病気の怖ろしさなんだなぁ。基本的には応援したくなる2人だったのだけれども、思い込みや幻聴が激しくなっている人に競馬はどう考えても軽率だと思うし、最後の逃避行はさすがに身勝手すぎて、美知に”自分の行動に酔っている女”を感じてしまった。切ないけれど、やっぱりこの2人は離れた方がお互いの身のためかな。

  • うーーーーん。
    もともと恋愛ものはあまり読まないんだけど…物足りない。
    村上龍の『心はあなたのもとに』みたいに、主人公の男性にむかつきながらもぐいぐい物語に引き込まれていっちゃった…みたいな力がない感じ。

  • 恋愛小説苦手だけど、これは読めました。

    精神分裂症の患者とケースワーカーの恋で
    患者がすこしづつワーカーである女性に不安定ながらも
    心を開いていく過程が、素敵だった。

    だけどやっぱり、精神疾患を持つ男性とワーカーという立場
    そして彼女の過去の出来事が、彼女を苦しめ

    間近にある普通の幸せに転がり込む様は、
    残念だが、リアルだとも思った。

  • 統合失調症(本書の記述は精神分裂病)の若者と、新米のケースワーカーとの心の交流を選んだ物語。
    実際には、「こんな簡単に行くのかなぁ?」と思いつつも、つい物語の流れに引き込まれてしまった。
    「DZ」「サバイバーミッション」とは、また違う作風に違う作者名で発行している作品も読みたくなった。
    あまり有名な作品じゃないけど、かなりオススメ!!

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著者プロフィール

1960年。現在、執筆の傍ら精神科医としても勤務を続ける。2000年、『D’Z』で横溝正史賞を授賞。2002年10月、最新刊『手のひらの蝶』も刊行。

「2003年 『DZ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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