詩羽のいる街

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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本棚登録 : 554
感想 : 140
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  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048738842

作品紹介・あらすじ

「あの日まで、僕はこの世に奇跡が存在するなんて信じていなかった」。マンガ家目指して持ち込みを繰り返すもののいっこうにモノにならない僕。ある日突然現れた詩羽という女性に一日デートを申し込まれ、街中を引きずり回される。お金も持たず家もない彼女が、行く先々ですることは、街の人同士を結びつけることだけ。しかし、そこで見たことは、僕の人生を変えるに十分な出来事だったのだ。-幸せを創造する奇跡の人、詩羽とは。

感想・レビュー・書評

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  • 詩羽(しいは)という名の不思議な女性が人々をつないで前を向かせ、
    いつの間にか彼女の周りの社会を変えていく。      

    詩羽は住む家もお金も持たない。
    しかし、彼女に恩があると思う人たちから寝る場所や食べるものなど、
    何もかもが提供される仕組みをつくる。
    見ず知らずの人に手を差し伸べると必ず向けられる懐疑の目。
    「どうして?」に対する彼女の答えはいつも同じだ。
    「人に親切にするのが、あたしの仕事」彼女の親しい友人が言う。
    「詩羽はね、触媒なの。彼女自身は変らないんだけど、
    彼女がいることで周りの人が変わっていくの」
    とはいえ、詩羽は相当な切れ者で、しっかり計算された親切と提案が、
    次々とウィン・ウィンの仕組みを創り出していく。

    「これは大人のファンタジー?」と思いながら読みすすめると、
    詩羽の活動を通して、作者の社会に対する具体的な問題提起がされる。
    例えば、フードロスを減らすために賞味期限の近い食材でエコ料理を提供する人々。
    二酸化炭素排出削減のためにカープールを実行して
    環境問題に一歩踏込もうとする人々。
    ネットによる誹謗中傷をすることで快楽を得る人とそれに傷つく人々。
    そして、老若男女を問わず孤独に苛まれて暮らす人々、等々。

    非難することも罰することもせず、ただ親切にして前向きな提案をし続ける主人公。
    「世の中、そんなに簡単じゃないよ」と思う一方で、
    人が人を信じなくなったらおしまいだとも思う。
    そして、実際に社会を良い方向に変えていくのは、
    たしかに一人一人の優しい気持ちの連鎖にちがいない。

  • とにかく、とっても面白かった!!
    図書館で借りて読んだのですが、購入することに決めました。

    自分の好きな本が登場したり、様々な知識がちりばめられていたりと、この本から別の本を読みたくなります。
    新しい発見をするのが好きな読書家にはもってこいな作品です。

    えええ!!と驚いた場面やなるほどなーと感心してしまう場面もあり、読み応えたっぷり。
    ほぼ1話完結で、どの章も最後はすっきりして終われます。
    登場人物はごく普通の人ばかりだけれど、とっても魅力的に描かれています。
    私も詩羽に出会って、価値を見出してもらいたいなあ…。

    楽しい本が大好きな人におすすめしたい一冊です。

    • jyunko6822さん
      フォローありがとうございます。
      私も詩羽、大好きでいろんな人に勧めまくってます。
      フォローありがとうございます。
      私も詩羽、大好きでいろんな人に勧めまくってます。
      2012/12/09
    • まろんさん
      はじめまして。フォローしていただいて、ありがとうございます!まろんです。

      詩羽の作ったわらしべシステム、素敵でしたね。
      あんなふうに、心も...
      はじめまして。フォローしていただいて、ありがとうございます!まろんです。

      詩羽の作ったわらしべシステム、素敵でしたね。
      あんなふうに、心も身体も気持ちよく動かして
      自分の周りの世界を変えてゆけたらいいなぁ、と思います。

      私も、素敵な本をむしゃむしゃ食べられたら、きっと素敵な味がすると思います。
      でも、もったいなくてやっぱり食べられないので
      呼吸するように本を読む、というのが今のところの理想でしょうか。

      これからもレビュー楽しみにしていますので、どうぞよろしくお願いします(*^_^*)
      2012/12/10
  • 好きな話だった。
    読んで思ったのは、私も詩羽になりたいってこと。
    でも、難しいなーと思い、でも詩羽だったら、こうして最初から無理だって諦めないなって思った。
    詩羽と同じことはできなくても、詩羽のような想いを持って生きていくことはできる。
    迷った時には、それを頭に置いて進んでいけばいいなと思う。

    • kuroayameさん
      登場人物を自分に置き換えて目標とできるような作品にはなかなか出会うことがないので、レビューを拝見させていただき、とても素敵な作品なのだと実感...
      登場人物を自分に置き換えて目標とできるような作品にはなかなか出会うことがないので、レビューを拝見させていただき、とても素敵な作品なのだと実感しました♪。
      いつも素敵なレビューをありがとうございます♥。
      2012/12/20
  • 2011.2.21 初読 市立図書館

    お気に入りの読書ブロガーさんがお薦めしていて、たまたま図書館にあったので借りてみた。

    すごくおもしろかった!!予想以上。
    めっちゃ私好みです。
    読みやすくて、リズム感があって、あと物語の構成が完璧だと思った。
    あの人と、この人がここで繋がって・・・(この小説の場合は街全体だけど)、それがカチッカチッとはまっていくのが読んでてものすごい楽しかった。
    読んでて楽しい小説ってそれだけでもう☆四つ。
    その上、この小説は最後まで完璧だった。
    最後まで裏切らなかった。最後の最後まで楽しく読めた。

    実際には、詩羽みたいな女性がいるわけないよねって半分は思うんだけど、でも、もしかして現実にもこんなふうに誰かと誰かを繋げている人も存在するかもしれない。いても不思議じゃない。
    狭い範囲でも、そんな人がいるはず。
    誰もがその可能性をもってるんじゃないかと思ったり。


    「本当は人間はみんな、自分の人生を変える力は持ってるはずなんですよ。ただ『変わるわけがない』『変えたくない』って、理由もなしにそう思ってるだけなんですよ」

    「愛とか正義なんか関係ないです。そんなお題目で人間は動かせません。協力し合う方が得だって気づかせればいいんです」

    「悲観的なことばかり見てると悲観的になっちゃいますよ。現実から目をそむけちゃいけないけど、いい面もちゃんと見ないと。それこそ現実逃避です。」

    作中まんがの「戦まほ」読んでみたいなぁ・・・。

  • こういう本に出会えるからマイベスト3を敢えて書いてないんだなぁとしみじみ思える。
    本との出会いって偶然?必然?さもなくば、運命!!

    素直に感動しました。
    リンクしあう好意(悪意も?)が見事に歯車のようです。

    山本弘さんだからSFってカテゴライズしましたが、胸キュンでも人生でも青春でも何とでも読めます!

  • 読んだ方がいい、読んだ方がいいと言われて読んでみて
    読んでよかったって思える本はそんなにないと思う。
    ああ、すごいなあ。わたしもこの本に、すすめてくれた人に変えられてしまったなあ、と誇らしくも悔しく感じている。
    誰もが影響し合いながら毎日を生きている。
    協力して生きた方が合理的なこともある。
    あああああああわたしもできるのであれば、だれかに+の影響を与えられて、かつ自分もしあわせでありたいものだ。
    それはとても難しいことだけれど、不可能ではないはずだから。

  • この本を読み終えた時、きっとあなたも
    詩羽に会いたくなっていること間違いなし。



    とても活発な女性、詩羽(しいは)と、街の人たちとの関わりあいのお話。
    どの話にも、思いやりと愛が溢れています。
    男女が登場するものの、恋愛方面に向かう話では無かったり。

    「爽やか」な話が好きな人にすごくお勧めできる本です。
    とにかく「爽やか」なんです。
    …大切な事なので2回言ってみました!
    結構前に読んだ本だったのに、
    今でもこうして感想が書けるほど印象に残っています。
    この本では、人と人との関わりあいでしか得られない、
    色んな大切な事を学べる気がします。

    -----------------------------------------

    図書館で、タイトルに惹かれて何となく棚から取り出してみました。
    ぱっと見たその表紙に惹かれて、何となく借りてみました。
    読み終わった後、すごく物足りない気持ちになってしまいました。
    もっともっと詩羽の活躍を見ていたかったー…! って感じです。
    良い意味で、色々心残りのある作品です!

    詩羽、すごくかっこいい! 
    こんなおねーさんがいたら、ずっと着いて行きたいなぁ…

  • 人に親切をすることで、報酬を得て生活をする、という詩羽。
    親切やサービスは無償である、という常識を覆し、さらにそれを成り立たせてしまった。
    すごい物語です。

    なんだか、この世のサービスやボランティアは無報酬である、というのがおかしいなぁと思う。
    そして、無報酬ですることが尊いという価値観も変だなって思うし。

    そういう、人の無償の善意に頼って作ってあるシステムってたくさんあると思う。
    一人のお医者さんの善意にたよって時間外勤務をさせ、それがないと成り立たないシステム。

    一企業の寄付に頼った慈善事業なんかも、システムがまわっている間はすばらしい活動だけど、その企業の力がなくなったらあっという間にシステムがなくなってしまう。
    システムがなくなって困るのは慈善を受けている側の人たちだけど、文句も言えない。


    詩羽のシステムは、その辺りのことをパスしてる持続可能なシステムなんじゃないかな。
    人の愛とか正義に頼ったシステムは、経済的な問題に勝てなかったりする。

    とか書いたけれど、そんなことはどうでもよくなるくらい楽しい、奇跡のような物語です。
    愛じゃなく、論理的な理由を述べる詩羽はとっても冷静で楽しくて、でも愛にあふれていてステキな女性です。
    読んで本当によかった1冊です。

  • 宝物の一冊です。落ち込んでいるとき、迷っているとき読むと元気がもらえる、力強さがあります。容姿の描写はあまりないのに、ヒロインが最高に魅力的です。

  • 「みんなを幸せにすることが好きなステキな人ってだあれ?」
    とチコちゃんに聞かれたら,即座に「詩羽(しいは)」と応えたくなる。そんな主人公の物語。
     4つの話は,1話ごとに一人の脇役と詩羽との関わりにスポットをあてながらも,話題同士の心地よいつながりが見えてきて本の中の世界の広がりが感じられる。なにせ主人公は「幸せにする」ことが目的なので,手段はいろいろ。そこがおもしろいし,読んでいて心が温かくなってくる。
     「詩羽のような人物はいないよ,そんなのできないよ。たかが作り話だよ」という感想を持つであろう読者の先回りをして,詩羽はいう。

    「人間は何となく『そんなことできるわけない』って思っちゃうもんなの。誰もやったことがない。常識に反している。だからできないって…。でも,試してみたら案外,簡単にできたりするもんなのよね。~後略~」(p.49)

     こんな風に言われると「ちょっとやってみっかな」って思う人も実際にいるかもしれない。小説という作り話なのに,自分の現実の行動を変える力を持っているという作品の強さに脱帽する。さらに,作り話と現実はそんなに違わないだろうと作者は呼びかける(中学生女子・沙世の言葉をとおして)。

    『戦まほ』は現実だったんだね。カルバスタンは架空の遠い国じゃなくて,この日本のことだったんだね。銃弾こそ飛び交わないけど,言葉の弾丸が人を撃ち抜き,言葉のテロが人を傷つける国。『戦まほ』の中に,「人は,顔の見えない相手には,いくらでも残虐になれる」という台詞が出てくる。目の前の子供を傷つけることはためらう人でも,大勢の人を殺すミサイルの発射ボタンは平気で押せるのだと。(p.177)

     著者の山本は,物語の中に物語を登場させる。ま,それはフィクションにはよくあることだと思う。が,その登場のさせ方が,読者である私に「それも読んでみたい」と思わせるような紹介のしかたなのだ。先の『戦まほ』=『戦場の魔法少女』という連載漫画にしても,本当にあるのなら読んでみたいと思う。このあたりの小説内小説の設定のしかたがうまい。

     最後の場面で,いろいろつながってくるのがこれまた気持ちいい。いくらネタバレでも,そこまではかけない。

     あなたが手に入れた本書の最後の1ページが切り取られていないことを祈ります。

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著者プロフィール

元神戸大学教授

「2023年 『民事訴訟法〔第4版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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