とんび

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
4.31
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048738910

作品紹介・あらすじ

つらいときは、ここに帰ってくればいい。昭和37年、ヤスさん28歳の秋、長男アキラが生まれた。愛妻・美佐子さんと、我が子の成長を見守る日々は、幼い頃に親と離別したヤスさんにとって、ようやく手に入れた「家族」のぬくもりだった。しかし、その幸福は、突然の悲劇によって打ち砕かれてしまう-。我が子の幸せだけを願いながら悪戦苦闘する父親の、喜びと哀しみを丹念に描き上げた、重松清渾身の長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 重松清の作品でも特に好きな物語。今とは違う時代というのもいいし、所々に泣けるシーンがあって最高だった。もう一度読みたい。

  • 親にとって子どもってみんな『鷹』なんじゃないか?
    そんなことを思った物語でした

    もちろん最愛の人を失ったことはとてつもなく不幸な出来事であったと思いますしその生い立ちも決して幸せなことではなかったと思います
    だけどヤスさんの人生をうらやましいと感じました
    信頼できる仲間たちに囲まれ、時にはすれ違うこともあったにせよ自慢の息子を育て上げました
    でもそうなんですよね
    子どもってみな自慢なんですよ
    自分は大したことない人間だけどそんなのからよくぞ生まれて来てくれたよくぞ育ってくれた
    もうあっという間に自分なんか超えていく存在なんですよね
    みんな『鷹』なんですよ
    そしていつか『とんび』になるんです

    だからこの物語は『とんび』が『鷹』を育てる物語であると同時に『鷹』が『とんび』に「成長」する物語でもあるんですきっと

  • さすが 重松氏。
    とても素直な文章で読みやすく あっという間に読み終えました。
    昔かたぎの父親と一人息子の物語です。
    父親の周りの人たちが とてもいい人たちで、その人たちに支えられながら成長する過程を描いています。
    人生をギュッと凝縮したような作品でした。
    静かな勇気を与えてくれる作品です。
    父親必読の一冊です

  • 読んでよかった。感動の涙か止まらない。ホント読んでよかった。

    普通の人たちの普通の日常の中で当たり前に営まれる生活を書いてるので、ドラマティックなことも起きないし奇跡もないし、なんならすごく不幸なことも起きない。でも号泣必至。人の愛とか思いとかをすごく上手に描き出している。

    「子供を愛さない親はいない」なんて言葉があるけど、昨今はそうとも言いきれない大人がいるのは確か。やりきれない悲しい事件も多い。こんな狂った時代だからこそ、不器用で力強い愛をこれでもかってぶつけてくる父親を、この本で堪能してほしい。我が子には見せない父親の舞台裏が呆れるほど滑稽で不細工で、なのにこんなにも愛が溢れてることに、「あ~親なんだなぁ」ってシンミリしちゃう。

  • ケツまくって逃げる場所がないといけんのよ、人間には。錦を飾らんでもええ、そげなことせんでもええ。調子のいい時には忘れときゃええ、ほいでも、つらいことがあったら思い出せや。最後の最後に帰るところがあるんじゃ思うたら、ちょっとは元気が出るじゃろ、踏ん張れるじゃろうが

  • ドラマと同時にタイミング良く手に取れて感動。
    妻を失った父親ヤスが不器用ながらも男手ひとつで息子アキラを育てる、親子の絆を描いた物語。
    家族の絆を描いたらこの方と言わんばかりに、重松さんは、流石です。原作本では、広島弁という方言と口よりも先にすぐに手が出るヤスではあるが、真っ直ぐな親バカぶりがほのぼのとして涙々でした。
    そして、海雲和尚はじめ照雲・たえ子・幸恵・会社の同僚等、周囲の温かい支えがあってこそ真っ直ぐな鷹として育たれたのですね。海雲さんのアキラの背中は皆で温めてやる、親は海になれの言葉や遺書に涙溢れ心に深く残っている。
    本当に素敵な作品に出会え良かった。

  • 涙がひたすら止まらなかった。
    自分の小さい頃の行いを思い出して両親にたくさん迷惑かけてしまったなと思う気持ちと
    もしかしたら自分が幼い時、両親はこんな気持ちだったのかなと、気づけば重ね合わせて読み進めていた。
    それくらいリアリティがあり、感情移入までできてしまうという点では最高傑作なんじゃないかなと心から思った。
    自分が親になる時がきたら、もう一度読見直さなければと思える作品だった。

    • hs19501112さん
      「自分が親に・・・・」

      ぜひそうしてください!と人に言いたくなる作品ですね。

      自分も……この作品を読んだのが、自分が親になって...
      「自分が親に・・・・」

      ぜひそうしてください!と人に言いたくなる作品ですね。

      自分も……この作品を読んだのが、自分が親になってほんの2~3年後、父親が定年退職を迎えた直後くらいというタイミングだったもんで、心にズブリとぶっ刺さりました(笑)。

      残念ながら観れてないですが、連ドラ化されましたよね。
      2020/02/04
  • 図書館で出会った一冊。

    ドラマになったのは知っていたのですが、見ていません。
    家内が「毎回泣けた!」なんて風に言っていたのですが、、

    原作となるこちらも、泣けました。

    少なくとも“親”であるのであれば、
    何かしら感じることがあると思います。

    主人公は一組の父子、ヤスとアキラ。
    息子のアキラは自分から見て、ちょうど一回り上の計算に。

    どこにでもいそうな家族3人でスタートした生活が、
    母である美佐子さんを亡くしたことで激変します。

    子どもを育てるということはどういうことなのか、
    親はどんな思いを込めて、親であり続けるのか。

    アキラが産まれるところから、
    そのアキラも“親”となるところまで、

    その辺りのエピソードが、さすがの重松さん、
    といった感じで、展開されていきます。

    その間は約30年間、時代は昭和の高度成長時代、
    形態的には連作短編、でしょうか、大好物です。

    これはドラマも観ないとなぁ、、と。
    なんて、息子の寝顔を見ながらなんとなく。

    親の一人として、息子の一人として、
    いろいろと涙腺へのダメージが大きかった一冊です。

  • ドラマ化されてからというもの毎回観ながらグスグス泣いてた私(笑)
    それで「これはぜひ原作を読まねば!」と息巻いて図書館に予約入れたらすぐ回ってきて@@なんとまあ!田舎って有難い。
    3話目と同時進行で読み始め、一気読みだった。
    ヤっさんは内野聖陽さん、アキラは佐藤健さんをがっつり思い浮かべながら。
    思いっきり照れ屋で不器用で天邪鬼だけど一人息子・アキラへの愛情はとてつもなく大きいヤっさんがカッコイイなあとおもった。
    周囲からも自分でも“とんびが鷹を産んだ”と言ってたけど 
    いやいや、ヤっさんとアキラはどう考えても「親子鷹」だし!泣かせるなあ!
    周りを固めるあったかい人たちにもジーンときた。
    読みながら父と母のこと、そして夫とのこと、自分と子どもとのこと、
    いろんなことを考える機会ににもなった。

  • 『感想』
    〇主人公の生涯を追った話は、自分に当てはめて読んでしまうので、共感してしまう部分に心揺さぶられる。

    〇ヤスさんと同じところ、それは子どもがかわいいところ。子どもは宝、自分よりも大事に思える精神構造を科学的に解明してもらいたい。自分の遺伝子を残す以外に何かある気がする。

    〇ヤスさんと違うところ、恥ずかしがり屋で思いと行動が繋がらないところ。それでは相手に伝わらない。相手に気づいてもらえることから幸福感が訪れるんよ。

    〇自分には家族がいて、家族には守られている・守っていくという気持ちは感じている。だが家族以外にそういう人いるだろうか。ヤスさんやアキラの周りには支える手がいくつもある。羨ましい。

    〇親は自分からなるものではなく、子どもにならせてもらっている。子どもに成長させてもらっているんだ。同じように子どもは親があって子どもでいさせてもらえる。そうして支え合い、成長していくことができる関係が親子なんだ。

    『フレーズ』
    ・ひとの死を悲しむことができるのは幸せなのだ、と三回忌の法要のときに海雲和尚に言われた。ほんとうにつらいのは、悲しむことすらできず、ただ、ただ、悔やみつづけ、己を責め続けるだけの日々なのだ、と。(p.75)

    ・大事に思うとる者同士が一緒におったら、それが家族なんじゃ、一緒におらんでも家族なんじゃ。自分の命に替えても守っちゃる思うとる相手は、みんな、家族じゃ、それでよかろうが(p.313)

    ・山あり谷ありのほうが、人生の景色がきれいなんよ(p.336)

    ・スジは通っている。きれいすぎるぐらい通っているが――それはしょせん、「理」のスジだ、とヤスさんは思う。「情」のスジが通らないかぎり、うなずくことはできない。(p.363)

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著者プロフィール

重松清
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、2001年『ビタミンF』で直木三十五賞、10年『十字架』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『流星ワゴン』『疾走』『その日のまえに』『カシオペアの丘で』『とんび』『ステップ』『きみ去りしのち』『峠うどん物語』など多数。

「2023年 『カモナマイハウス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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