オリンピックの身代金

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (524ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048738996

作品紹介・あらすじ

昭和39年夏。10月に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつある首都・東京。この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人としていない。そんな気運が高まるなか、警察を狙った爆破事件が発生。同時に「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が当局に届けられた!しかし、この事件は国民に知らされることがなかった。警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ…。「昭和」が最も熱を帯びていた時代を、圧倒的スケールと緻密な描写で描ききる、エンタテインメント巨編。

感想・レビュー・書評

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  •  最近ドラマ化と文庫化されて、話題が再燃してきたので私も便乗。2020年開催予定の東京オリンピック効果ですねえ。

     東大大学院生という、恵まれた立場にありながら、オリンピック建設の人夫として働こうとする島崎が、国から金を取ろうと決心するこころの描写が見事だった。

     オリンピック建設場での苛酷な作業の描写や、憤っても仕方がないとあきらめてきつい作業をすることを受け入れる人夫たちの描写は、読んでて心が痛かった。
     しかし、これって、過去に本当にあったことだろうし、今だって少しはあることなんだろう。
     いつだって、弱いものは強いものに搾取される。金のないものは、よっぽどのことがない限り、這い上がれない。そして、死んでも悲しまれない。生まれて10年ほどで、男は出稼ぎに出され、生まれて20年ほどで、女は働き手として農村へ嫁に出される。
     何のために生まれてきたのか、と叫ばずにはいられない。
     けれど、1969年は、こんな人たちであふれていたのか・・・

     今の平和で平等で豊かな日本は、昔の人たちの努力があったればこそ。それに思い至った作品だった。

     あと、ヒロポンこと、覚せい剤には手を出さないようにしないと・・・

    • とし長さん
      あやこさん
      コメントとフォローありがとうございます。
      こちらからもリフォローさせていただきました。またレビュー参考にさせてくださいね。

      この本についてですが、華やかに思われがちな東京オリンピック時の裏にこんな人々の犠牲があったのか、と思うとまた違った見方をしてしまいますね。

      最近も非正規労働だとか、ブラック企業だとか、貧困家庭だとか、形は変わってもこの本にあるような、格差や搾取は残り続けているのだな、なんてことを改めて考えてしまいました。
      2013/12/28
  • 久しぶりにページを捲るのがためらわれました。ああ、もうすぐ捕まってしまう。テレビで見て大体は分かっているのに、どうか無事でいてくれないかと願ってしまいました。
    村田役は笹野さんのはまり役ですね。松山ケンイチは歌舞伎役者にはとうてい見えないけれど、さりとて誰が国男の虚無感を演じられるか
    というと、誰も浮かびません。

    読後もずっと国男のことばかり考えていました。何も語らずに去ってしまったからでしょうか。

    奥田さんはうまいなあ。時系列をずらしたのも、読者の心を鷲づかみする効果があったと思います。奥田氏とお近付きにならないでよかった。愛してしまいそうですから(笑)。

  • 考えさせられる小説である。オリンピック当時といえば、経済成長が続き、大多数の日本人が希望に満ちていたと思いがちであるが、この小説では、依然として貧しい田舎の実情や、経済発展の人柱(同小説より)になって、その日の生活をするのがやっとという人々にも焦点をあて、オリンピック当時の裏の一面に触れることができる。当時、社会主義、共産主義に走る若者が多かったのもうなずける。

  • 図書館より。
    東京オリンピックの時代の東京が舞台の社会派サスペンス。
    序盤は主人公の島崎の兄の死をきっかけに当時の労働者たちの過酷な状況や東京と地方の格差が描かれるのですが、これがものすごく綿密に描かれていて驚きでした。

    綿密なのはそこだけではなく、オリンピック時の警備体制や警察と公安の縄張り争いなどもすごいリアリティでこれぞ力作!といった印象を受けます。

    島崎目線の章と警察など他の登場人物目線の章で時系列がバラバラに描かれているので、それに慣れるまでは少し読みにくかったのですが、警察目線で事件を見た後に、島崎目線で事件に至るまでの過程や心情の移り変わりなどが細かく知ることができる構成になっていてその見せ方も面白いです。

    上下二段組みで500ページ以上の大作ですがそれを感じさせない本でした。

    第43回吉川英治文学賞

    • とし長さん
      あやこさん
      フォローありがとうございます。
      時系列バラバラは確かにちょっと読みにくいですね……

      でも、一つの事件に対して複数の目線で書けるって、かなり頭使うんだろうな、とも思います。それを破綻なく書いているあたりも「奥田さんすごいなあ」と思うところです。

      奥田さんの作品は多いみたいなのですが、最近読めてないです……。また何か読み始めようかな、と思います。
      2013/12/28
    • HNGSKさん
      とし長さん。こんにちは、あやこです。
       
       オリンピックの裏にこんな惨事が・・・と思うと、背中が寒くなりますね。とし長さんの言われるとおり、今で言うところのブラック企業がその流れを受け継いでいるのでしょうか・・・せちがらいです。

       それはそうと、私も奥田さん、大好きです。「最悪」「無理」「邪魔」あたりの、転落描写が、特に好きです(笑)
      2013/12/29
    • とし長さん
      あやこさん
      転落描写が好き、なんとなく分かります(笑)

      「邪魔」と「無理」は聞き覚えがありました。そのうち読みたいなーと思っていたのですが、なんだかんだで後回しになってました……

      自分がよく行く図書館は奥田作品は結構置いてあるので、今度行くときチェックしてみますね。
      2013/12/30
  • 戦後20年を経て開催される東京オリンピック。
    オリンピックを妨害することを宣言して、一人の爆弾犯が反旗を翻す。

    いや~面白かった!
    時間軸をずらす書き方で、追う側追われる側の距離が徐々に近づく感じがたまらなかったです。
    島崎の目的は『平等な世の中』。
    労働者や地方の人間が搾取されながら成り立つオリンピック、支配層に反感を持つというのはわかる気がしますが、かなり極端。
    クールで感情の起伏を感じさせない島崎だから、その頭の良さを元に、労働者達が望んだように国を変える人になって欲しかったなと思います。

  • 時代は昭和39年、東京オリンピックの年。
    戦争に負けた日本が国家の再建を図り、国民は貧困に喘ぎながらもオリンピックに大きな期待を寄せています。
    そんな最中にオリンピックに関連する施設や要人宅で爆破事件が起こります。
    草加二郎を名乗る犯人島崎国男と、刑事落合、オリンピック警備の最高責任者の息子、須賀忠の3人にスポットを当てて群像劇スタイルで物語は進みます。

    それぞれの立場での思想や行動が細かく描写されていて、最後まで飽きる事なく読み切る事ができました。
    奥田英朗作品は久々に読みましたが、話が分かりやすくとても読みやすかったので他の作品も読もうと思いました。

  • 国男の生きざまが悲しすぎる・・・。

    最後があっさりすぎて結局どうなったのか
    気になる。。

  • 国男が包まれた大きな闇が巨大で悲しかった。
    でも何故彼がそこへ行き着くのか、丁寧に書かれていてよく分かった。
    スリの留吉との絆にも胸打たれた分、ますます悲しくなった。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    昭和39年夏。10月に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつある首都・東京。この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人としていない。そんな気運が高まるなか、警察を狙った爆破事件が発生。同時に「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が当局に届けられた!しかし、この事件は国民に知らされることがなかった。警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ…。「昭和」が最も熱を帯びていた時代を、圧倒的スケールと緻密な描写で描ききる、エンタテインメント巨編。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    2020年、東京オリンピック。
    確かに嬉しいし楽しみなことだけど、
    1964年のこの当時ほどの熱気はないだろうな、と思う。

    もちろん当時を知っているわけではないし、
    この本を読んで初めて知ったこともたくさんあった。

    新幹線とかモノレールとか、オリンピックのためにぎりぎりで出来たとか知らなかった!

    そんなこともあって、1964年と言う年は東京、いや日本にとって、
    大きな変換点の年だったんだろうな、と...

    この本の中でも、犯罪者ややくざさんまで、オリンピックを心待ちにし、出来る限り協力しようとする姿勢が伝わってくる。

    戦後の貧しい時代を乗り越えた人々にとって、
    この年のオリンピックは未来への希望そのものだったんだろう。

    そんな中、労働者ばかりが搾取され死んでいく現状を知ってしまった東大院生、島崎国男はオリンピックへの反逆を試みるのですよ。

    オリンピックへ、国家への反逆、でも決して当時騒がれていたいわゆる「アカ」ではない。

    彼に共感を覚え、息子のように思う村田が言う。
    「親の脛をかじって革命だ反逆だなんてww」

    東大もその後大きな抗争を経験したりするけれど、確かにそんな一面もなきにしもあらず...なのかな?

    とにかく島崎は持ち前の頭の良さと運の良さで、武器を手に入れ少しずつ淡々と警察を追い詰めていきます。

    それにしても、東京駅の一件は残念だった!

    ...って言うくらい、いつの間にか島崎に肩入れしてる自分(´・ω・`)
    クールなのに熱い感じがいいですよねぇ...
    ある面ではヒーローではないのかな。

    それだけに、最後は釈然としないです...
    ええ?それで!?みたいな感じに...
    もう少し、島崎国男を見たかった。

    にしても、吉永小百合さんが脅迫されたとか、
    それに関連して爆弾魔がいたとか
    (それは捕まってないそうですね)
    千住のお化け煙突とか
    当時の品川の状況とか
    知らないことだらけでした。

    作者も当時は5歳くらいだったそうですが
    まるでその時代にいたかのようですよね。

    ただ、当時のことを現代の尺度に置き換えていて無理がある、と言う意見もあるようで、実際にその時代を過ごした方からするとまた違う見方があるのかも?

    ともあれ、作者の時代考証の緻密さと構成の妙に脱帽。

  • 面白くて、二段組の長編を2日程度で一気読み。
    ちょうど自分の両親が育った時代が高度経済成長のど真ん中だったことを実感しました。
    戦争の酷さと、急速な発展ゆえに取り残された人たちの哀しさがありました。

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