鬼の跫音

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048739115

感想・レビュー・書評

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  • どんでん返しが強烈で、考察のしがいもある。
    ゾッとするのに、予想外の結末に出し抜かれる感じが、たまらなく楽しい。

  • 久々の道尾秀介作品。短篇集なので少し物足りなさはあるが、私が道尾作品に求める物はこういう感じなんだと再確認。
    集中力途切れることなく一気読み。

  •  道尾秀介初の短編集。

     十一年前に山中に埋めた友人が発見され、警察からの尋問を受ける私。歳月がすべての証拠をかき消し、私の犯罪を知っているのは、木の陰でわびしく鳴いていた鈴虫だけかと思っていたのだが…「鈴虫」

     部屋から窓の外を覗き、バランスをくずして転んだ僕は、その拍子に椅子の足を折ってしまう。椅子の足の付け根に刻まれた奇妙なメッセージ。猟奇的な殺人を犯した少年が刑務所で刻んだ文字だとわかった僕は、彼の意図を探るべく彼の故郷に向かう。「ケモノ」

     若い時分、友人にそそのかされ、祭りの夜に犯してしまった過ち。それを忘れるためにいったんは故郷を出た私だったが、仕事で祭りの取材をするために気のすすまぬまま、故郷にもどる。そして、そこでいるはずのない少女に出会い…「よいぎつね」

     作家としてデビューしたものの、思うように筆が進まず困っていた僕のもとに、見知らぬ青年がやってくる。突然現れたその青年は、二月(ふたつき)前に、僕の部屋に入り、貯金箱を盗んだというのだが…「箱詰めの文字」

     Sに薦められ、神社で大願成就の達磨を焼くことになった私。家事で両親を失い天涯孤独の身になった私を訪ねてくれ、ともに過ごすようになったS。私のたったひとつの願いも叶い、幸せのはずだったが…「冬の鬼」

     4年生になり、僕を執拗にいじめるようになったS。誰にも打ち明けることができないツラさに耐えられなくなったとき、僕は見知らぬ女性と出会う。彼女は深緑の布に包まれた不思議なものを出し、僕の上にそっとかざすと「もう、大丈夫よ」と言うのだった。「悪意の顔」

     初の短編だ~!と思ったら、道尾さんにとっても初だったらしく…ホラーなので、おもしろかった~とかはならないけど、どんどん裏切られる感覚は悪くない。もうひとつ、もうひとつ…と、ついつい読んでしまいました。

     個人的には、ラストの「悪意の顔」が印象的でした。真相は、はたしてどちらだったのでしょう。
     

    • zakkuuさん
      道尾秀介は短編集もいけますね。
      Sという共通項があるものの、それぞれが独立した短編はどれも読みごたえがあって僕も好きです。
      グイグイ読ま...
      道尾秀介は短編集もいけますね。
      Sという共通項があるものの、それぞれが独立した短編はどれも読みごたえがあって僕も好きです。
      グイグイ読まされました。
      道尾秀介・・・いいですよね。
      2010/05/08
    • なぎさん
      fukurooさん、コメントありがとうございます。すごいスピードで読まれていらっしゃって、びっくりです。

      道尾さん、最初に読んだ「向日...
      fukurooさん、コメントありがとうございます。すごいスピードで読まれていらっしゃって、びっくりです。

      道尾さん、最初に読んだ「向日葵…」が書評とは裏腹に微妙な感じで、残念だったのですが、TVで道尾さんをお見かけしてから、また興味をもって読んでいます。
      明るい内容でないことはわかっていても、ついつい手にとってしまいます。ペースは遅いですが、これからもどんどん読んでいこうと思っています。
      fukurooさんの感想を楽しみにしています。
      2010/05/09
  • どのお話も、明確な コレ という何か はないけれど、ちょっと怖い。

  • 残念ながら私には合わなかったようです。

  • 道尾先生の短編集でふ。
    私好みの作品ばかりでふ。

  • 「ケモノ」と「冬の鬼」が強烈。

  • 久しぶりの再読。
    暑苦しさが吹き飛ぶような涼しさがあるかと言えば、むしろ逆で、まとわりつくような厭らしさが残る短編集だった。
    すべての話、主人公たちのエゴイズムを際立たせる話なのでただただ苦々しい。
    彼らが救われるわけではないのだけれど、だからといって勧善懲悪でもなく、彼らは破滅の道を辿ったり狂気の世界で生きていくしかないという結末なので、自業自得とはいえ虚しくなる。
    全話に登場する『S』なる人物は、時に主人公の敵であり時に主人公のエゴイズムを満たしてくれる存在でもある。またやはり全話に登場する『鴉』は主人公の心の奥底まで見つめる、ある意味主人公の心の鏡のようなそんな存在であった。
    自分を邪魔するもの敵対するものを排除しても、どれほど言い訳を重ねても虚に虚を上塗りしても、自分という目だけはごまかせない。結局そこに目をそむける事ができないまま、ある者は虚の世界に生き続け、ある者は破滅していく。
    ホラーというよりは自分自身の醜さを見せつけられるような抉られるような作品集であった。

  • 一人称で語られるSとのうすら寒いホラー(ファンタジー?)短編6本。
    手触りの悪いエピソードばかり・・・ただ一皮むけば人間みんなこんなもんかとも思います。
    普段我々読み手は「思うだけ」でとりあえずやり過ごしているけれど、「よし、殺そう」とか「面倒だからやるしかないか」とか、割と気軽にイケないことをやってしまう語り手。
    ある意味この人は読み手の我々に代わってやってくれているのかと思う。
    はなはだよろしくない行為が連なっているのに、抵抗なく受け入れてしまいましたー。
    読んだ後味の悪さに「あぁ、やっぱこれはやるもんじゃなくて、読むもんだな」と再確認させてくれる。

    各作品すべて語り手も状況も相手も何もかも違うけれど
    語り手が一人称(自分)であること、相手がSと称されること、それとちょこちょこ顔を出す小道具が不思議な幻惑を呼ぶ一冊。

  • 背筋をひやりとしたものが走る短編集。
    キーマンとしてSという人物が出てくるのが共通点。

    中でも「冬の鬼」はよかった。
    春琴抄を思わせる作品だった。火事ですべてをなくした女が、それでも「愛している」と言ってくれた男性のためにあるお願いをする。

    「一生私の顔を見ないでください。達磨みたいに醜く焼け爛れた私を見ないでください」

    なんと残酷でかわいらしいお願いでしょうか。そして相手の男性はそれに答え眼球を摘出する。

    この作品だけでも読む価値有りますよ。

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著者プロフィール

1975年生まれ。2004年『背の眼』で「ホラーサスペンス大賞特別賞」を受賞し、作家デビュー。同年刊行の『向日葵の咲かない夏』が100万部超えのベストセラーとなる。07年『シャドウ』で「本格ミステリー大賞」、09年『カラスの親指』で「日本推理作家協会賞」、10年『龍神の雨』で「大藪春彦賞」、同年『光媒の花』で「山本周五郎賞」を受賞する。11年『月と蟹』が、史上初の5連続候補を経ての「直木賞」を受賞した。その他著書に、『鬼の跫音』『球体の蛇』『スタフ』『サーモン・キャッチャー the Novel』『満月の泥枕』『風神の手』『N』『カエルの小指』『いけない』『きこえる』等がある。

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