きりこについて

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
3.82
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本棚登録 : 1981
感想 : 390
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048739313

作品紹介・あらすじ

きりこは両親の愛情を浴びて育ったため、自分がぶすだなどと思ってもみなかった。小学校の体育館の裏できりこがみつけた小さな黒猫「ラムセス2世」はたいへん賢くて、しだいに人の言葉を覚えていった。ある事件がきっかけで引きこもるようになったきりこは、ラムセス2世に励まされ、外に出る決心をする。夢の中で泣き叫んでいた女の子を助けるために…。猫を愛するすべての人に最新書き下ろし長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 自分を溺愛する主人公と猫とのコミュニケーションをコミカルに書いた小説。
    最初は、なんだかよくわからない主人公にモヤモヤ感あったものの、奈落に落ちていく姿を見せられ、そして猫という相棒に救われ成長する姿がなかなか良かった。コミカル過ぎて、漫画本でも観ている感覚。
    ページ数も少なめなので、疲れなく読めた。

  • 猫好きさん必読です! 素敵すぎます!
    きりこに寄り添う黒猫の、ラムセス2世♪

    またまた~。。。猫さえ出てくれば、すぐ☆5つつけちゃうんだから~
    なんて思った方のために、ことわざに関する、ラムセス2世の名言をいくつか。

    「猫の手も借りたい」・「猫に小判」
    。。。猫の手は、忙しいときでなくとも、マッサージやジャンプに力を発揮するのだし、
    中にはキラキラしたものが好きな者もいるので、一度猫の前に小判を置いてみてほしい。

    「猫をかぶる」・「借りてきた猫」
    。。。猫を頭からかぶる楽しさをつくづく想像してみてほしいし、
    借りてきた猫は、すぐに返してください。

    ね? 素敵でしょう? この、ヒゲをぴんと張って、静かに思索してる感じ♪
    「世界は、肉球よりも、まるい」と、生まれて間もなく悟ったこのラムセス2世が

    空気の抜けた浮き輪のような輪郭に、「犬」の字の右上の点のような目、
    アフリカ大陸をひっくり返したような鼻、口元には難解な並び方の歯、
    顎はそのままなだらかに首につながっている、という、
    作者に太字で「ぶす」と描写されてしまうヒロインきりこを
    心から愛し、尊び、相談に耳を傾け、助言し、支える様子に胸が熱くなります。

    西加奈子さんは好きな作家さんだけれど、
    性に関してかなりあけすけな言葉遣いをするところだけがちょっと苦手で
    この物語でも、きりこの幼なじみ、ちせちゃんはAV女優になるというし、
    あらら、やっぱりだ。。。どうしよう!と、実は慌てふためいたりしたのです。

    でも、両親に溺愛され、自分は可愛い♪ と信じきっていたのに
    初恋の男の子に「ぶす!」と指摘されて以来、何年も引き籠っていたきりこが
    容れ物も、中身も、経験も、全て含めて自分なのだ!と叫ぶとき、
    「人間は、中身よね」と訳知り顔で語ってきた浅はかさに、はっとした私がいて。

    人間として生まれた以上、逃れられるはずのない身体という容れ物を
    しっかり見つめて作品を創ってきた西加奈子さんだからこそ書けた作品という気がします。

    世界は、肉球よりも、まるい。
    まるくて、不思議に満ちたその世界で、
    ラムセス2世を見習って、死ぬまでしっかり、そして楽しく生きなくちゃ!

    • jyunko6822さん
      ずいぶん前にサラッと読んだけど、ぶすなきりこのイメージしかなかったので、また読んでみましょう!という気になりました。
      面白いレビューありがと...
      ずいぶん前にサラッと読んだけど、ぶすなきりこのイメージしかなかったので、また読んでみましょう!という気になりました。
      面白いレビューありがとうございます。
      2012/12/08
    • まろんさん
      kuroayameさん☆

      うんうん、猫を愛するkuroayameさんなら、
      ラムセス2世のすばらしさを思う存分堪能してくださると思います!...
      kuroayameさん☆

      うんうん、猫を愛するkuroayameさんなら、
      ラムセス2世のすばらしさを思う存分堪能してくださると思います!
      この本、ハードカバーだと、表紙カバーをめくると
      豆粒みたいな猫があちこちに描かれていて、それがまた可愛いんですよ~♪
      西加奈子さんは、短編集『しずく』でも猫を魅力的に描写されていたので
      ホンモノの猫好きだなぁ、と思います(*'-')フフ♪
      2012/12/10
    • まろんさん
      jyunkoさん☆

      きりこの「ぶす」度についての描写があまりに衝撃的ですものね。わかります!
      そんなきりこの、「難解な歯並び」が
      猫たちに...
      jyunkoさん☆

      きりこの「ぶす」度についての描写があまりに衝撃的ですものね。わかります!
      そんなきりこの、「難解な歯並び」が
      猫たちにとってはとてつもなく魅力的だったりするあたりが、また素敵すぎて♪

      この本の「身体、心、経験ひっくるめて私」というテーマを
      昨日読み終えた最新作『ふくわらい』でも、西さんは変わらずに追い続けていて
      その真摯さに感動してしまいました。
      それにしても西さん、猫の気持ちになり切って書いてくれているのがうれしいです♪
      2012/12/10
  • きりこは、ぶすである。

    それから、始まる文章。
    思わず、笑ってしまった・・・。馬鹿にしたわけではなく、驚いたのかな。

    主人公のきりこのそばにいる猫・ラムセス2世によって語られたお話。

    「吾輩は猫である。」に似てるかな?と、感じたけれども・・・。

    何とも面白い♪
    可愛い可愛い、と長年言われていたきりこは初恋の男の子に容赦なく「ぶす」と言われ傷つく。
    父親、母親も何も感じてくれない。

    そういう、思春期?の悩みは分かる気がする。


    少しずつ、前向きに「自分らしく」生きていく事を決意したきりこがたくましく見えてくる。


    確かに、私も「容姿」という形で捉われてきた気がする…。

    • しをん。さん
      まろんさん
      まろんさんのレビューを読んで気になっていたので、借りてみました(●^o^●)

      ですよね(笑)
      ぶすの連発には衝撃的でした…(...
      まろんさん
      まろんさんのレビューを読んで気になっていたので、借りてみました(●^o^●)

      ですよね(笑)
      ぶすの連発には衝撃的でした…(゜o゜)

      はい!
      きりこちゃんが、実はいい子だったのは・・・ラムセス2世がいたおかげかなあ・・・と思います。

      はじめての西加奈子さんでしたが、いい感じでよかったですヽ(^o^)丿
      2012/12/29
    • kuroayameさん
      いつも素敵なレビューを拝見させていただきありがとうございます(^_−)−☆。
      この本は凄く気になっていたので、レビューを拝見させていただき感...
      いつも素敵なレビューを拝見させていただきありがとうございます(^_−)−☆。
      この本は凄く気になっていたので、レビューを拝見させていただき感謝しています(^O^)/。
      とっとも楽しい雰囲気が伝わってきて、もう絶対てにしてみたいです☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆。
      ありがとうございました(#^.^#)。
      2012/12/31
    • しをん。さん
      kuroayameさん
      こちらこそ、いつもいつもありがとうございます♪

      私も他のブクログさんのレビューを見て気になっていまして…。
      絶...
      kuroayameさん
      こちらこそ、いつもいつもありがとうございます♪

      私も他のブクログさんのレビューを見て気になっていまして…。
      絶対手にしてみてください(^^♪

      ありがとうございましたヽ(^o^)丿
      2012/12/31
  • 「きりこは、ぶすである。」
    いきなりそうきますか!!

    他人がどう思おうが、心から可愛いと褒め、愛してくれるパァパとマァマ。
    人間の言葉を理解し、いつもそばに寄り添い見守ってくれる猫、ラムセス2世とともに成長していくきりこ。

    容れ物と中身すべてひっくるめて自分なのだと気づくまで、
    そして、ただそこに存在するだけの自分を、あるがまま受け入れることの、なんて難しいことか…

    自分のしたいことをかなえてあげられるのは自分だけ、
    着たい服をきて、自分らしく生きていく。
    そこに気づけたきりこは素晴らしい。
    だから”ぶす”なんかじゃない。
    猫の目から見た人間の愚かしさこそが”ぶす”なんだから。

    そして猫は偉大だ。
    うちの猫と暮していた頃「この子達、本当は全部わかっているんじゃないの?」って思うことがよくありました。
    やっぱり、そうだったんだね~。

    ”死ぬまで生きた”ラムセス2世に一言お伝えしたい。
    これを読んだ私は、人間が世界で一番優れているなどという愚かな考えは、決して持っていないよ。
    ことわざにしても、そう言われれば「なんて失礼な!」(笑)
    願わくば、おぼんさんのような長老になって欲しかったけど、
    また、健康で聡明な猫として何千回も何万回も生まれ変わるらしいので楽しみにしているね。

    これから黒猫ちゃんを見かける度「ラムセス2世~」って呼びかけちゃいそうです。(笑)
    「世界は、肉球よりも、まるい」うん!うん!そうだね♪

  • いきなり冒頭から「きりこは、ぶすである」
    それも、ぶすは太字
    それでも、最初は他の方のレビューにあるように、気の毒な容姿にもめげないきりこの生き方や本題に入っていくのであろうと読み進めていたが、次から次へと畳み掛けるようなきりこの容姿のぶす描写
    美男美女の両親から生まれた、両親の、それどころかご先祖様の残念な点ばかりを受け継いで生まれてきたきりこ

    あまりの容赦のない残酷なぶす表現にだんだん気持ちが滅入ってきて、しんどくなってきて読むのを断念!

    もう少し我慢すれば、本題に入っていくのであろうが
    私には続かなかった
    次に読みたい本があったから余計に気持ちがそちらにいってしまった

    また気が変わったら、読むとしよう

  • ★3.5
    きりこは「ぶす」な女の子。
    人の言葉がわかる、とても賢い黒猫を拾った。
    美しいってどういうこと?生きるってつらいこと?
    きりこがみつけた世の中でいちばん大切な事ーー。


    きりこは、ぶすである。
    でも、きりこは一人娘で大変可愛がられている。
    パァパもマァマも「可愛いなぁ」と、褒めに褒めて育てた。
    きりこはつまり、自分がぶすであるということを、つゆほども、思わなかった。
    小学校の体育館裏で拾った、黒猫ラムセス2世はとても賢くて、大きくなるにつれ
    人間の言葉を覚えていき、きりこも猫の言葉を理解し会話できるようになる。
    5年生の時、好きな男の子に「ぶす」と言われショックを受ける。
    クラスメイトの態度も豹変し…悩んで引きこもる日々。
    うちの、どこが、ぶす?

    物語の語り手はIQ740の黒猫のラムセス2世。
    きりこはぶすである…衝撃の一言で物語は始まる。
    これでもか、これでもかってきりこのブスさ加減を描いてる。
    きりこの勘違い女王様ぶりを描いてて、これはちょっと…って思ってた(。>﹏<。)
    でも、中盤からきりこの悩みと共に、ラムセス2世が猫の世界の素晴らしさを語る事によって、
    人間が囚われている。おのおのの心にある鏡。
    他人の目や批判や評価や自己満足…ただ、そこにいるというそれだけの事の難しさ(*T^T)
    囚われているときは、自分を生きていないことになる。
    自分の好きな様に生きる事は、結局自分を大切にしている事なんだと思った。
    また、人は「容れ物」もに囚われている。
    容れ物である外見と中身、そして経験してきた人生全てが自分なんだなぁ。

    人生において大切なことは何なのか、そんな事を考えさせられました。
    ネコの世界との対比で人間の愚かさを描いてるのも面白かった。
    ラムセス2世が、とっても良い味出してます。
    人間と違う猫の価値観が面白い。
    猫って本当はこうじゃないのかな…って感じさせられました。
    猫好きにたまんない一冊でした(*´˘`*)♡

  • 猫の日だけに猫の話、というわけでもないですが。

    西加奈子さん、「さくら」をだいぶ前に読んだような気がするんだけど
    内容も感想もろくに覚えていなくて、特に印象が残っていない。
    そんな感じでしたので2冊目につながらなかったのですが
    この本はわりとおもしろかった。

    ぶすのきりこと猫のラムセス2世。
    なかなか強烈でなかなかお目にかかれない個性的なキャラが、
    微笑ましくもあり痛快でもあり滑稽でもあり悲しくもあり。
    ちさちゃんはカッコいいね。

    自分は自分、あなたはあなた。
    高校生くらいに読めば、もっとリアルに伝わったかな。
    やっぱ、その上で中身も見た目も大事だよね。

    ニヒルな猫の愛情のある言葉がどうにもかわいい。
    ・・・じゃなくて賢い。

  • 面白かった
    ちせちゃんが最高
    自分のやりたいこと、堂々と表現できるって素敵なことだけど、現実は難しい

  • ラムセス2世が、かわいい。
    物語は、性のシビアな話にもなっていくがテレビのニュースなどだと普通に通過されていきそうな内容の繊細な部分を描き出している。
    きりこは、ブスかもしれない。
    だけど、それでいいんだよね。
    いいところもいっぱいある。
    自分の思春期の辛い時を思い出す。
    でも大人になり報われたらそれでいい。

  • 図書館で借りたもの。

    美男美女の両親から生まれた「ぶす」だけど、愛情たっぷりに育てられたきりこ。
    どんな時でも子どもを信じ、味方でいるマァマとパァパが素敵。

    この本は、きりこが拾った猫「ラムセス二世」が書いたものなので、猫の描写が詳しくて面白い。
    『(猫たちのIQには幅があるが)一番下の猫は、IQがない。無、ゼロなのである。そういう猫は二十五時間くらい自分の肛門を舐めていたり、自分の尻尾を追いかけ続けて、そのまま死んでしまったりする。』
    この描写にかなり笑った(笑)

    面白くて一気読み!
    残しておきたい言葉がたくさんある。
    きりこのようにぶれずに生きることが、どれだけ難しいか。
    他者を羨まず、自分は自分でいいんだ、と思えるようになりたい。

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

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