かれん

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048739443

作品紹介・あらすじ

札幌のラジオ局からフリーアナウンサーとして上京してきた稲葉雪乃にある時、奇妙な仕事が舞いこんだ。依頼者は地図製作会社の社長・葛木晋一郎。雪乃に亡き妻・千勢の身代わりを演じてほしいという。記憶が3年前に遡ってしまった義父が死の床にあり、視力も衰えているため、千勢と声が似ている雪乃に白羽の矢が立ったのだ。雪乃は、神田川を挟んで此岸と彼岸を行き来するような生活を開始した。だが直後、雪乃の前に五十嵐と名乗る謎の男が現れた。五十嵐は千勢のかつての恋人であり、雪乃の心をざわめかせ始める…。愛する者を失った男たちと、東京でひとり働く女の孤独と再生とは?ベストセラー恋愛小説『モルヒネ』の著者が、ふたたび生と死、そして愛を問う書き下ろし長編。

感想・レビュー・書評

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  • 札幌のラジオ局からフリーアナウンサーとして上京してきた稲葉雪乃にある時、奇妙な仕事が舞いこんだ。
    依頼者は地図製作会社の社長・葛木晋一郎。
    雪乃に亡き妻・千勢の身代わりを演じてほしいという。
    記憶が3年前に遡ってしまった義父が死の床にあり、視力も衰えているため、千勢と声が似ている雪乃に白羽の矢が立ったのだ。
    雪乃は、神田川を挟んで此岸と彼岸を行き来するような生活を開始した。
    だが直後、雪乃の前に五十嵐と名乗る謎の男が現れた。
    五十嵐は千勢のかつての恋人であり、雪乃の心をざわめかせ始める…。
    愛する者を失った男たちと、東京でひとり働く女の孤独と再生とは?
    (アマゾンより引用)

    面白かった!
    最後のほう、何かじーんとした。
    けど、視点があっちこっちにいく感じが少し読みづらい。

  • 図書館でふと手にとった一冊。
    初めて知る作者だったけど、なかなか面白かった。

    姉を亡くした雪乃、妻を亡くした晋一郎、娘を亡くした信三、元恋人を亡くした五十嵐。
    大切な人を失うのはつらくて悲しい。
    さいごは温かい気持ちになれるような話でよかった。


    札幌のラジオ局からフリーアナウンサーとして上京してきた稲葉雪乃にある時、奇妙な仕事が舞いこんだ。依頼者は地図製作会社の社長・葛木晋一郎。雪乃に亡き妻・千勢の身代わりを演じてほしいという。記憶が3年前に遡ってしまった義父が死の床にあり、視力も衰えているため、千勢と声が似ている雪乃に白羽の矢が立ったのだ。雪乃は、神田川を挟んで此岸と彼岸を行き来するような生活を開始した。だが直後、雪乃の前に五十嵐と名乗る謎の男が現れた。五十嵐は千勢のかつての恋人であり、雪乃の心をざわめかせ始める…。愛する者を失った男たちと、東京でひとり働く女の孤独と再生とは?

  • フリーアナウンサーとして働く雪乃へ舞い込んできた仕事は、特殊だった。

    地図製作会社の創業者である信三は病気を患っており
    事故で亡くなった彼の一人娘の千勢の事実を受け入れないでいた。

    千勢と声の似ている雪乃が、彼女になりすまし、信三をはげますという仕事内容は
    簡単にみえて、人を騙しているという罪悪感などの複雑な心境に苛まれた。

    千勢の夫であり、取締役の晋一郎の冷静で隙のない言動。
    関連会社でかつて千勢と交際していたという五十嵐の愛嬌のある存在。

    自分の都合のいい時へとさかのぼってしまった老いた信三。
    家政婦の笠原の優しさ、愛犬のジンジャーの屈託のなさ。

    千勢と取り巻く人たちの抱いているそれぞれの思いに心を傾け
    熱心にそれらと接した雪乃。

    「記憶のなかにしか存在しなくなった人に会い、そしてまた、まだ見ぬ人に希望を託し、あれこれと思い描く。」

    失望と希望。それでも自身の生を生きる人たち。

    まじめー。
    千勢って人間味の見えない人だったのか、とらえどころがない。
    最後のほうの言葉がよかった)^o^(

  • 身代わりについての物語。丁寧な書きぶりが、いい。

  •  フリーのアナウンサーをしている雪乃に依頼されたのは、亡くなった女性の身代わりになって余命いくばくも無い父親のもとを訪れてほしいというものだった。千勢というその女性と声がそっくりだというのだ。

     地図製作の会社を経営していた信三という老人はうっすらとしか目が見えない。雪乃を千勢と思い込んで、鏡花を朗読してくれと頼む。意識も千勢がまだ結婚する前にあるらしい。

     次第に千勢の生き様に触れることになる雪乃もまた、カレンという名の血の繋がらない姉を事故で亡くすという過去をもっており、生前に親しむことができなかったことをずっと悔いていた。花蓮という地名が書かれたメモが見つかったことなどから、カレンへの思い、今はマニラに住む両親への思いが複雑に絡んでくる。


     ストーリーはほとんどなく、登場人物も限られています。ほとんどは模索する思考の中で、亡くなった人々への罪悪感を持ち続ける残された人々の内面が描かれています。

     
     どうしてか、他人のこととなると、楽観と、希望的観測が、容易にできてしまう。たいていの人は、他人を励ますことに長けている。

     だが肝心な自分の姿は見えない。だから誰かに話を聴いて欲しくて、自分がどんな姿をしているか、教えてもらいたがる。
     
     そして、こちらの過去の記憶や弱気にとらわれない、どこか無責任な、他人の言葉に、望みを見出す。

     人がひとりでは生きていけない理由のひとつに、そのこともふくまれているのではと雪乃は思う。

     ああ、やはりこうして書き出してみるといいねえ。

     安達さんは詩人なのではないかしらん。長い長い散文詩だと思って読むことをお勧めします。


     いつかレビューで安達さんのを書きたいと思っているのですが、介護に関連するものを書いてくれないかなあ。こんなにしなやかで強い文章を多くの人に読んでもらいたいです。

  • 未来が明るそうで良かった。

  • 本を読む前はタイトルを“可憐”のイントネーションで読んだ。読み終えた今は違う音調が聞こえ、心が揺れる。
    それぞれの別離。それぞれの喪失。痛みを伝えながらも静かな文章で、登場人物達の距離と交錯が描かれる。
    収穫でした。

  • 札幌のラジオ局の契約アナウンサーを辞め、フリーランスとなって東京にやってきた雪乃は、奇妙な依頼を受ける。
    娘が亡くなったことを信じられず投薬を拒否している義父を救うため、亡妻の身代わりとなって義父に接してほしいというのだ。
    幼い頃に義理の姉を亡くした過去を持ち、他者に対する好奇心の強い雪乃はこの奇妙な依頼を受ける。
    身代わりという代償行為から新たに築かれる人と人の関係を静かに描いている。
    この著者の特徴だと思うんだけど、主観がくるくる入れ替わるのがどうしても苦手。全体の雰囲気は好きなんだけど。

  • フリーのアナウンサー雪乃に舞い込んだ仕事は、ある女性の身代わりになること。声が似ている ということで事故死した女性、千勢の身代わりとして目の不自由となった余命いくばくもない父親の元に通う雪乃。千勢の夫と千勢の元恋人と接するうちに自身の哀しい思い出から一歩を踏み出す力を得ていく…「遺された者」の心にしこりのように残る苦い思いは時が経っても癒されることはない。けれど、その思いを共有する誰かによって「遺されたことの意味」を受け入れていくことは出来る のかもしれない。哀しいけれど生きていく、それを自然のことと思えるときに「死」は一つ思い出として成り立つのだろう。

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