夢見る水の王国 下 (カドカワ銀のさじシリーズ)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048739511

作品紹介・あらすじ

砂漠の舟人の少年とともに、「黄泉帰りの森」にやってきたミコは、そこの別名が「『世界の果て』の森」であることを知る。同じ頃マコは、黒豹とともに、「世界の果て」を目指していた。砂漠をさまよううち、井戸をつなぐ地下水路へと入り込む。すると、水路から人の腕が現れ、マコは水の中へと引きずり込まれてしまう。それは、水読みを続けていた月の神殿の大長老だった-。圧倒的な筆力で描かれる美しく幻想的な世界。泉鏡花文学賞作家がおくる、ファンタジーの決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 結局、一瞬の物語であったらしい
    愛されることの喜びと束縛
    放置されることへの寂しさと葛藤

    ある出来事から自分の心の中(?)へと潜り込んで旅をして
    結論を出して戻ってくる話

    テーマが・・・重かった(^^;

  • 人物が「私が頼まなければ、あの子はあんな罪を犯さなかった」「あの子がいなくなってくれたおかげで、私は罪の誘惑に負けずに済んだ」 と、自分が被害に遭っているのに、まるで自分を責めるようにも思えるセリフ。 読んだ当初は、自己犠牲に過ぎる気もした…

    けどこの人達は、物事を別面から見ることが出来る人たちなんだろな ミコも決していい子じゃなく。マコにも優しさがあり。凶暴なマコにも優しく接してくれる人がいたように、人にも物事にも別の面がある。 黒豹がマコに来てくれたのがこの物語の優しさだと思った。

  • 「大好きだけど大嫌い」その葛藤を描こうとした事は分かります。でも、こういうと物語として破綻しちゃうけどミコもマコも人の忠告を聞かず悪い方へ悪い方へといってばかり。そこちはちょっとイラッとしました。あと、ファンタジーの部分と現実の部分がうまくつながってない感じ。なんとなく「だからどうしたの?」と言いたくなるような中途半端な感じでした。

  • 繊細で美しい世界観。壊れそうなほど綺麗な言葉たち。ミコとマコ。分かれた二人は決して善と悪などではなく光と影。ミコの分までマコが影を背負っていた…。本当に美しいファンタジーでした。

  • 上巻からの続き。ネタバレかわからないので一応。

    マコを追うミコとヨミ。当初はミコは善、マコは悪の象徴のように描かれていたが、物語が進むにつれ、それは曖昧になってくる。
    物語全てを通して感じられたのは、何が真実で何が偽りであるということではなく、何事であれ全ての逆説を内包しているものであり、それを受け入れ、考え、その結果がどうであろうと堆積する事に意味があるけれど、またそれにも縛られてはならないのだという事。

    時を重ねたものは美しくなり、芸術家というのはそれを短期間でつくることができる者という考え方がとてもすっきりした。モノ作りの端くれとしてどうしても自然物と人工物の美のジレンマのようなものがあったので。

    挟み込まれた様々な情景も無理なく終盤に向けはまり込み、大きな世界の全容を完成させてゆく。

    本を読む事で学んだり感じたり思う事は、作者が意図するしないに関わらず様々にある事だけれど、こういった人や社会の中に確かに存在し感じているもやもやとしたものを、あらためて「それはどういうことなのか」と見つめなおすという作業が一番素直にでき、また提示できるのはファンタジーならではだと思う。
    そこにあからさまな正解を出してしまうと、説教めいた良い話だとかになる可能性が高くなってしまうけれど。
    もやもやを提示される事で、そのもやもやを感じているのは自分だけではないと思えるし、あらためて感じる事で自分を見つめなおす事が出来る。

    まぁそういった間接的な部分だけでなく、純粋に話の流れとしても長編にしては読みやすいし(若干表面的にエピソード詰め込み過ぎかなぁという気がしなくもないが)、ファンタジックな描写は無理無く思い浮かべる事が出来てワクワクしたりうっとりしたりドキドキしたりできるし、王道ファンタジーとして楽しめるかと。
    細切れ描写を挟む構成が苦手な人も居るかもしれないけど、個人的にはそれがどんどん繋がってひとつの絵になるようなのが好きだし、子守唄を挟む事でその部分を箸休めに出来ました。

  • なんか、全体的に話がごちゃごちゃしてて
    読みにくかった。視点がころころ変わるから
    内容も頭にちゃんと入って来なくて、
    読み終わったときもなんとなくわかったって感じ。

    個人的にはあまり好きじゃない。
    ただ、1日で上下読んでしまったので
    引き込まれる感じはすごくした。

    なんか微妙。

  • ヌバタマとおじいさんと郵便やさん。
    愛情は自由と一緒でなくてはダメ。守るだけが愛ではない。
    自分を愛してから家族を愛して。そうしないと全部歪んでしまう。
    間に合わないことすら思し召しなのかな。
    好きと嫌いがない人はいない。いい子は歪む。悪い子は寂しい。
    じゃあどんな子がいいの?満ち足りている、幸福な笑顔を持つ子?
    嫌いなものがある自分を否定しないで。嫌いにならないで。
    もっと愛して、自分を。ダメじゃないから。
    自己犠牲は美しいけど、自分を愛してから、見返りを求めずに。
    自分でいて。生まれた瞬間から自分は自分のもの。親のものではないの。
    なにがあっても自分を自分で人にあげてしまわないで。
    私は私だから。

  • 全体的に面白かったのだけど、最後がもう少し欲しかった…

  •  視点と舞台と時間軸がかなり短い章ごとにくるくる移り変わってゆくので読み始めは混乱したけれど、下巻まで辿り着くとようやく全体が見通せた気がしてほうっと息がつけた。結局、マミコはまるで水の中に潜るように自分の内部に沈んで、自己と対話し、それを統合したのだと思う。もう、“おじいさん”の愛で庇護(或いは束縛)される子ども、少女ではいられなくなったマミコは、そうしなければ生きてゆけないから。
     寮美千子らしい幻想味豊かなファンタジーだった。

  • 雲母を砕く老鉱夫、螺旋の町の双子の妹、砂漠の舟人、極楽鳥のおかま、闇夜王と鴉たち、大蝙蝠、卵鼠、いろいろな出会いの中、月の宮を一角獣とミコは目指す。マコはおじいさんでもある大長老を一角獣の角で突く。ミコは郵便配達夫でもある神官マニに助けられて、マコを追う。最後は少しあっけなかったようだが、それなりに面白かった。ただ、愛する事と束縛する事の紙一重の同一性というテーマは、今ひとつ分かりづらかった。

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著者プロフィール

東京生まれ。
2005年、泉鏡花文学賞受賞を機に、翌年奈良に転居。
2007年より、奈良少年刑務所で「物語の教室」を担当。その成果を『空が青いから白をえらんだのです』(新潮文庫)と、続編『世界はもっと美しくなる 奈良少年刑務所詩集』(ロクリン社)として上梓。
『あふれでたのはやさしさだった 奈良少年刑務所 絵本と詩の教室』(小社刊)ほか著書多数。

「2021年 『なっちゃんの花園』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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