戦友の恋

著者 : 大島真寿美
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2009年11月27日発売)
3.44
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  • 本棚登録 :220
  • レビュー :59
  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048739900

作品紹介

佐紀もそろそろ禁煙したら、と玖美子にしては珍しい忠告をした。いつもなら、うるさいなあと思ったはずなのに、神妙に頷き、まあね、あたしもやめようかなあとは思ってんのよね、と殊勝に答えると、そうしな、と玖美子は短く言った。病院へ行った方がいいよ、と今度は私が忠告した。行くよ、と玖美子は答えた。でも、結局行かなかった。行かないで死んでしまった-残された者の悲しみは誰にも癒せない。喪失の痛みを抱えて、ただただ丁寧に毎日を送ることだけ-。注目の作家が描く、喪失と再生の最高傑作。

戦友の恋の感想・レビュー・書評

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  • 「ピエタ」「やがて目覚めない~」の順で大島作品堪能中。

    もう、素敵すぎ。
    なんだろうこのフンワリとしていて凛とした感じ。
    中盤のスランプの件なんかキレキレで、琴線を刺激してくれて、何度も何度も目頭が熱くなりました。それも一言の文節だけで。同時にそんな自分にも驚愕。切れのある直球で小気味良く打者を打ち取るピッチャーを彷彿してしまいました。

    綴られる言葉がすごく素直で清々しい。とっても良い本でした。
    自分的には、今、最も大ハマリな作家さん!

  • 今も尚、共にいてくれる友人の中でも最も付き合いが長く、さらにここ数年の自分の一番駄目な部分を互いに晒し合い、一緒に笑ったり泣いたりしていた悪友が結婚した。その結婚式後最初に買った本が、本書「戦友の恋」、でございました。
    説明せずとも悟られるように、タイトルで一目惚れし購入。連作からなる本書ですが、表題作である一話目でわかりやすく号泣。しばし続きが読めない程、心の琴線に触れられたのであります。
    相棒の女性が亡くなってしまったところから描かれる=現在はいない、女同士の友情物語は初でしたが、安易に泣いて過ごしたり、素敵な恋人ができたりはしない。仕事の起伏でさえ、全然予期せぬタイミングで起こったり。そうして、その場面場面で色んな小さい出会いがあったりして、主人公の周りの人がまたみんな素敵です。
    テーマがまず好みで、タイトルがタイミングどんぴしゃだったわけでしたが、柔らかい文章も好みで、文体からも「すこやかな日々」を感じさせてもらいました。

  • よかった。

  • 大人の友情をそのまま描くのは難しいのかな。
    仕事と、恋愛と、過去と、死。そういうものがなければうまく説明できないのかな。それともそういうものに絡みつくかたちのないものが友情なのかな。

  • すらすら読めてじわりと沁みる。この人の本、好きだなぁとつくづく思う。 

    悲しいことはあるけれど沈み込むことはなくて、茫洋としてながら割と鮮明で。いやなやつ、と思っても結構いいやつだったりするのだ、本当は。
    凸凹なようでいてバランスの取れている人間関係が、心地よい。

  • さて、働きにいきましょう。
    誰かがどこかで色んなことを考えながら、働いているから。

  • i recommend first story for all of around forty(OBA-SAN):> Love of the fellow soldier. Life of the fellow trooper. Job of the fellow crew. i want to said only one thing, Kumiko have no enemy (She has been dead.)
    やっぱ☆5つ

  • 近頃注目中の大島さんの本。

    水のように胸に染みてくる。

    まだ白かった頃の村山由香さんを思い出しました。
    面白かったです。

  • 『それでも彼女は歩きつづける』を読んで、久しぶりに大島真寿美を読みたい欲が昂進して、図書館にあった本を借りてくる。

    むかしは漫画を描いていた佐紀は、同い年で新人編集者だった玖美子に、こんなへたくそな絵じゃアシスタントにもなれないとくさされて、でもストーリーは面白いから原作者としてやってみない?と誘われて、うだうだと悩んだあげくに、原作者として書いていくことになる。山本あかねという本名よりも、山本佐紀というペンネームがなじむほどに。

    お互いがお互いの「生みの親でもあるし、育ての親でもある」玖美子と佐紀は、長く一緒に仕事をし、一緒に飲み、共に遊んできた。楽しげな女二人に、「どういう関係の友達?」と質問が向けられると、「あたし達、友達じゃないから」と即答する玖美子。自分たちはもっと特別な関係だと言いたいのだと、友達という言葉には当てはまらないと、佐紀も思う。

    あるとき半分酔っ払った勢いで、玖美子が「戦友」だと言った。たしか、亡くなる1年くらい前。このごろ頭が痛いのだとこぼす玖美子に、病院へ行った方がいいと佐紀は忠告した。でも、結局玖美子は病院に行かず、死んでしまった。

    不意にいなくなってしまった玖美子。玖美子がここにいないというところから始めるしかない。佐紀は、長い長い喪中のように、玖美子を失った日を送っていく。その日々が、穏やかに書かれていく。佐紀が、携帯もってないところに、みょうに親近感がわいた。

    急逝した玖美子の代わりに担当編集者となった君津、玖美子と二人でよく飲みにいったライブハウス・リズの律子さん、風呂屋・大和湯のオーナーの孫である美和… そうした人たちとの関わりのなかで、佐紀は、一日、一日、玖美子のいない日を生きていく。

    そして、リズの受付で思いがけず再会した幼なじみの木山達貴。

    記憶は、ときにびびびとよみがえり、幼稚園から中学の卒業間際まで一緒だった木山達貴を思い出して、佐紀は笑ってしまった。「こんなおっさんなのに木山達貴の顔してるなんて」と。それはお互いさまで、木山達貴のほうは、佐紀のことを「気味悪いくらい変わってないから幽霊かと思った」と言うのだ。

    「木山達貴は変わり者だってみんな言ってたけど」と佐紀が言えば、「変わり者だってみんなが言ってたのは、山本あかねだ」と木山達貴も言い返してくる。

    君津や律子さんや美和とのやりとりよりも、この木山達貴と佐紀とのやりとりが、印象ぶかく、おもしろかった。我慢に我慢を重ね、心底うんざりして辞表を叩きつけて職場を辞めたという木山達貴は、疲れきってしまったのか、「寝ても寝ても疲れが取れなくて」と言い、再就職のための活動もままならないと言った。

    同い年の佐紀は、そんな疲れが、実感としてよくわかると木山達貴にしゃべる。ここまできた、あーやれやれという思い、けれど、ここだって楽しいことばかりじゃない。気がつけば、若い頃とは何かが少しずつ違ってきていて、なんだろう? なんでだろう?って立ち止まってしまう。

    ▼…いろんなことがまだ間に合うような気もするし、間に合いそうでいて、もう取り返しのつかないところまで来てしまっている気もする。これでいいのか。これではだめなのか。決断するなら今だ、と思ったり、でも決断の仕方がわからなかったり。どっちにでも行けそうで、それでいて、どっちかにしか行けない、ってこともよくわかってる。それくらいは学んでるのよ、さすがにこの年まで生きてくると。ねえ、もしかしたら、再就職するのが恐いんじゃない?(p.96)

    そう木山達貴に問いかけながら、佐紀は、自分にも同じ問いを向けているのだろうと思う。書けなくなったら潔く辞めようと思っていた原作者の仕事を、タイミングがわるくて、スランプに陥りながら、ずるずると続けている。そんな佐紀自身の思いが、木山達貴へのおしゃべりには含まれているのだろうなと思った。

    その後、達貴はアパートをひきはらい、引っ越し先もわからずじまいで、消えてしまった達貴に、佐紀はひどく落胆した。けれど、恨んだり、悔やんだり、じたばたしたりはしたくないと、きっと達貴はどこかで元気にやってる、それで十分だとなんべんもなんべんも思って、佐紀は達貴の不在を納得しようとした。

    あきらめたはずの達貴の消息が知れたとき、佐紀は、そっちに行くわよと、田舎の小学校で美術の教師をすることになった達貴を訪ねたのだ。「受け持ちの生徒に山本あかねみたいな子供がいるんだよ。そっくりなんだよ」という話に、どれくらい似ているのかこの目で確かめてやる、と。

    ▼消えてしまったと思った人がまだそこにいるのなら、まだそこにいるうちに会いたい。
     私を突き動かしたものは、ただ、それだけだった。
     喪うことに慣れてしまったからといって、喪う前に放棄してしまっていいわけではない。喪うことに慣れてしまったからこそ、ようやく繋がった、ようやく見つけたこの細い線を手放してはならないのではないか。…(p.179)

    そして、ラストシーンの絶景。
    がらんとした空間に、遙かな空と遙かな海。
    その光景が目に浮かぶようで、あざやかすぎて、すげえと思った。

    (6/20了)

  • (2013年3月1日読了)
    ここのところ少し違和感を感じ始めた大島さん。タイトルもあまり好みではないけど、借りて見ることにした。
    戦友の恋 / レイン 
    本のタイトルは、ひとつめの話のタイトルで、全体から見ると、内容とはかけはなれている気がする。なぜ、このタイトルにしたのか不思議。
    戦友はいいとして、「恋」とした理由は?コイバナと読者に思わせたかったのか?
    漫画化志願の佐紀が漫画の原作者として生きて行く、その転機を作った玖美子との出会いからが書かれているが、玖美子はもういない。
    今後を期待させるラストだけど、どうにかなるんでしょうねって期待はなかった。

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