天地明察

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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レビュー : 1785
  • Amazon.co.jp ・本 (475ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048740135

作品紹介・あらすじ

江戸時代、前代未聞のベンチャー事業に生涯を賭けた男がいた。ミッションは「日本独自の暦」を作ること-。碁打ちにして数学者・渋川春海の二十年にわたる奮闘・挫折・喜び、そして恋!早くも読書界沸騰!俊英にして鬼才がおくる新潮流歴史ロマン。

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭の満開の桜のごとき絵馬の群れを描いた
    「算額奉納」のシーン。

    壮大な物語の幕開けに相応しい
    ロマンあふれる導入部に
    まず心を奪われました。


    しかし暦と天文学と数学という難しいテーマを
    見事にエンターテイメントに仕上げ
    一気に読ませる技量にはホント脱帽です。

    それにしても江戸時代に
    これほどまでに情熱を持って
    星の動きを研究していた人たちがいたことには
    本当にビックリでした。

    暦を作ることに
    23年もの間命をかける人たち。

    人が命をかけ成就させようという
    強い思いを描いた物語に
    心打たれない人はいないんではないでしょうか(笑)


    主人公は碁打ち衆の一員でありながら、
    算術に生き甲斐を見いだしている
    23歳の渋川春海。


    一瞥即解で難しい算術を解く
    謎の武士、関孝和や
    17歳の若手の碁打ち
    本因坊道策、
    優れた算術の腕を持つ安藤有益、
    会津藩藩主、保科正之、
    豪放磊落な水戸光圀など
    様々な歴史上の人物たちが
    夢を追う気弱な主人公を
    盛り立ててくれるのも
    心躍ります。



    中でも
    関との算方勝負と、

    各地の緯度の測定を行う
    北極出地に向かうエピソードの
    素晴らしさが光ります。

    子供のような無邪気さで嬉々として星を測量する二人の老人、
    観測隊の隊長建部と
    医師の伊藤。


    487日かけて日本全土を巡り
    星々の並びを観測する旅なんて
    想像しただけで
    うっとりしてしまう。



    挫折に次ぐ挫折を経て
    中国の受時暦を日本風にアレンジした
    「大和暦」を
    ついに誕生させる春海。


    自分を信じ愛してくれた人たちが
    次々と志し半ばに死んでいくのを見送りながら、
    夢へと向かう気持ちは
    どんなものだったんだろう。



    暦には、
    明日を信じ
    平和を願う気持ちが込められている。

    何があっても
    明日もこの世は続くのだという事実が
    どれほど心強く
    人々を勇気づけるか。

    そう考えれば
    戦国の世を経た当時の人たちの
    暦に寄せる特別な思いにも共感できました。



    春海にとっての人生の音だった
    絵馬たちの立てる
    「からん、ころん」。


    自分にとっての人生の音は
    何だったんだろう。


    拳が空を切り裂く
    シュッシュッ、

    もしくはギターが奏でる
    ギュイ〜ンか、


    あなたにとって
    それは何ですか?

    • MOTOさん
      読み終えても、永遠余韻が冷めない本は、
      タイトルを目にしただけでも嬉しいものですね♪

      円軌道の外さんのレビューがまた、
      物語の名所の旅へと...
      読み終えても、永遠余韻が冷めない本は、
      タイトルを目にしただけでも嬉しいものですね♪

      円軌道の外さんのレビューがまた、
      物語の名所の旅へと連れていってくれるがのごとく、ツボをつかれていて♪
      いやぁ~、あの満天の夜空の下で感じた、小さすぎる人間の決して小さくはなかった力を懐かしく思い出す事が出来て、とても嬉しかったです!
      ありがとうございました♪

      『天空に音楽あり』って誰か有名な人が言ってましたよね?
      私もその言葉の持つ意味がわかる様な気がしましたよ(^^♪
      2013/07/21
    • 円軌道の外さん

      MOTOさん、遅くなってすいません!

      またまた体調崩しまして(汗)(^_^;)

      また体調崩さないと
      コメント返せる時間がと...

      MOTOさん、遅くなってすいません!

      またまた体調崩しまして(汗)(^_^;)

      また体調崩さないと
      コメント返せる時間がとれないということで(笑)
      ホンマ申し訳ないっス!


      いつも素敵なコメント
      ありがとうございます(^O^)


      MOTOさんが言う、
      「小さすぎる人間の
      決して小さくはなかった力」ってフレーズにグッときたし、

      ちょっとした言い回しや
      表現の仕方が
      いちいちツボで、

      MOTOさんのような文章が書けたらなぁ〜って
      いつも憧れてます(^O^)


      それにしても壮大なロマンあふれる歴史モノを
      わかりやすく読ませてくれるこの冲方さんは、
      気になる存在ですよね(^_^)


      今度は日本人に最も馴染み深い
      水戸の黄門様を描いた
      「光圀伝」を読んでみたいなぁ〜♪


      2013/08/18
  • からん、ころん。全てはここから始まった。
    改暦に全身全霊をかけ勝負した渋川春海の物語。

    当たり前のようにある暦。
    その暦にこんなにも素晴らしい歴史があったとは。
    算術、碁、天文と、全て苦手な分野。けれども文字でこの改暦までの歴史をゆっくり追っていく時間、各シーン、特に観測のシーンを必死に想像するのが本当に楽しかった。

    誰もとの出会いが全て必然的だったと感じずにはいられない。
    誰もが春海を支えてくれた、誰の思いも無駄にしなかった、そんな熱き天と地の間に立っての勝負、お見事だった。

    読んで良かった!その思いで満たされた。

  • 【感想】
    正直なところ、天文学関係の専門的な内容は全く頭に入ってこなかったが・・・・
    主人公をはじめとする登場人物の魅力がとても高い作品で、読んでいてとても面白かった。
    歴史を引っくり返すという大きなプロジェクトに生涯を捧げた男たちの物語は、本当に読んでいて胸が熱くなる。

    現在の自分の使命に疑問を感じ、才能がありながらも苦悩する渋川春海。
    彼が己の生涯を賭けるに値するミッションを見つけることができた事が羨ましいなと思った。
    やはり、この世に生まれたからには、己のすべてを捧げないといけないような事業に関わらないといけないなぁ。
    平和で平凡な人生も決して悪くないが、やはりそういった人生も歩みたいなと憧れの気持ちを抱いた。

    登場人物の全てが実在するノンフィクションの作品というのもオツでした。


    【あらすじ】
    江戸、四代将軍家綱の御代。
    前代未聞のベンチャー事業に生涯を賭けた男がいた。
    即ち、日本独自の太陰暦を作り上げること。
    碁打ちにして数学者・渋川春海の二十年にわたる奮闘・挫折・喜び、そして恋。

    俊英にして鬼才がおくる新潮流歴史ロマン。
    日本文化を変えた大いなる計画を、個の成長物語としてみずみずしくも重厚に描く傑作時代小説!!


    【引用】
    p115
    碁は、春海にとって己の生命ではなかった。
    過去の棋譜、名勝負をどれだけ見ても悔しさとはほど遠い思いしか抱けない。
    今の碁打ちたちの勝負にも熱狂が湧かない。

    算術だけだった。
    これほどの感情をもたらすのはそれしかなかった。
    飽きないということは、そういうことなのだ。だから怖かった。
    あるのは歓びや感動だけではない。
    きっとその反対の感情にも襲われる。

    退屈な勝負に身を委ねる方がよっぽど気楽で入られた。
    そうすれば、こんな怖い思いとは一生縁がなく生きていける。

    だがそうなればきっと、本当の歓びを知らずに死んでゆく。
    一生が終わる前に、今生きているこの心が死に絶える、そう思った。


    p276
    保科正之の非凡さ
    「なぜ島原の乱は起こった?」
    「なぜそもそも一揆は起こる?」
    凶作、飢饉、飢餓。調べれば調べるほどそれらが第一原因だと確信した。

    さらに疑問を続け、
    「民のために蓄える方法を為政者たちが創出してこなかった。」
    と過去の治世の欠点を喝破し、
    「凶作と飢饉は天意に左右されるゆえ仕方なしとすれども、飢饉によって飢餓を生み、あまつさえ一揆叛乱を生じさせるのは、君主の名折れである」という結論に達した。

    将軍とは、武家とは、武士とは何であるか?
    「民の生活の安定確保をはかる存在」と答えを定めている。
    戦国の世においては、侵略阻止、領土拡大、領内治安こそ何よりの安定確保であろう。

    では、泰平の世におけるそれは如何に?という問いに、「民の生活向上」と大目標を定めたのである。

    結果、なんと凶作の年にも他藩に米を貸すほどの蓄えとなり、ついには「会津に飢人なし」と評されるに至った。

  • 岡田准一・宮崎あおい主演の映画も記憶に新しいが、珍しく映像化ありきではなく本屋大賞だからという理由で買った1冊。

    天体の測量がテーマだが、江戸時代という泰平の世にそのような偉業に挑んだ日本人がいたと知るだけで大変誇らしくなる。

    少し展開はさささっと進む感もあるが、歴史モノとしての読みにくさはなく、冲方丁の文体のリーダビリティの高さが感じられる。

    この本が面白かったので『光圀伝』も読もうとしていた気がするが、文庫化までしたのに未だ手つかず。昔も今も、思考と実行の間には大きな溝が横たわっているらしい。

  • 歴史に疎く、「大奥」や「龍馬伝」のドラマを見て、ようやく歴史に興味が湧いたくらいの知識の私でもスラスラ読めた時代小説。

    もちろん渋川春海という人物がいたこと、算術が流行っていたこと、囲碁と幕府の関係などは知らなかったので、まるで未知の世界に足を踏み入れたようだった。(まぁ、江戸時代に生きたわけでもないから知っていても既知とは言い難い。)

    算術から囲碁、天文学とめくるめく魅惑の知の世界を垣間みる。学ぶことが楽しくなるような渋川春海のひたむきさに、こんな偉人がいたのかと驚く。そして彼を囲む天才たち。特に保科正之の描写には、私まで平伏してしまいそうになった。清廉でありたいと思った。本当にこのような人々がいたのか。先人をみて、先の我が世を想う。歴史を知る事がまた楽しくなった。

    小説から歴史を学ぶことがこんなに面白いとは。
    味気ない教科書に色をさしてくれる時代小説の1つなのではないでしょうか。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「清廉でありたいと思った。」
      私も「天地明察」を読むまで全然知らなかった人が一杯出てきたので、落ち着いたら読んでみようと思って検索しましたの...
      「清廉でありたいと思った。」
      私も「天地明察」を読むまで全然知らなかった人が一杯出てきたので、落ち着いたら読んでみようと思って検索しましたのが、、、
      中村彰彦「名君の碑―保科正之の生涯」文春文庫
      面白いかなぁ?
      2012/08/01
    • Manabさん
      保科正之の生涯、気になりますね!私も関連書読みたくなりました!
      保科正之の生涯、気になりますね!私も関連書読みたくなりました!
      2012/08/11
  • 江戸時代に将軍に使える役人が、暦を改正する物語。実話を基につくられており、算術、天文学、宗教、占星術にも踏み込み、興味深いストーリーであった。話の展開も絶妙で、500ページに及ぶ大作ながらもスムーズにわくわくしながら読み進められた。人の描写が素晴らしく、登場人物の感情表現がうまい。表情、態度がありありと思い浮かべることができ、感動させられた。著者の力量は相当なものだと思う。

  • 歴史ものはちょっと苦手なために、読むのに時間がかかってしまった。
    しかも歴史上に存在した人物といっても、渋川春海なんて人の名前聞いたことないし、日本の暦を変えた人って言われてもピンとこない。
    でも読んでみて、江戸の時代にここまで現代の数学や天文学に通じる考えがすでにあったということに驚いた。世界の中でこんな小さな島国にあって、地球は丸いという事や、地球が太陽の周りを公転しているなんてことを知っている人がいたなんて。
    未知なるものを捕らえようとする探究心。その知識を持って、間違った方向に行ってしまいそうな日本の舵をとってくれようとする人。その改革への情熱。
    いつの時代も、日本にはそんな人がいて、今の日本があるんだなぁと思う。

    春海や周りの登場人物の描かれ方も魅力的だった。
    物語はいくつかの山場である、生涯にわたり春海の人生に影響を及ぼし続ける天才数術師との出会い。北極出地。1度目の暦改革への挑戦。そのたびに、深い挫折や喪失を経験する春海だが、自ら新しい暦を生み出し、最後には政治にまで頭を働かせて、採決させるに成長した姿に感動した。でも、いつもどこか不器用で、情にあつく、涙もろい性格はそのままで。春海の囲碁棋士としての側面や、恋愛部分もおもしろかった。

     最近の読書では、夢を追う人の話が続いているけど、やはり共通して「ひたむきさ」に感動する。夢がかなったかはさておき、夢を追うということだけで、追える夢があるということだけで、一つの幸せな生き方なのだと思う。

  • 人の一生を読んだ…という充足感に包まれております。

    若い頃の心の未熟さ、壮年の頃の疾走感。。。
    壮大なモノを目の当たりにし、胸がいっぱいになって涙がとまらなかったよ。
    託され、託しは世の常ですが、なんとも言えない寂しさと満足感と感動を覚えます。

    生意気なんですが。。。一生をかけるに値する『モノ』に出会える幸福は本当に羨ましいかぎりです。

  • あっぱれーー⭐⭐
    日本にこんな偉業を成し遂げた人がいたなんて知らなかった。囲碁打ちの渋川春海の生涯をかけ改暦に挑む傑作時代小説。春海の情熱的でまっすぐな生き方が羨ましい。
    日本には72の季節があると言われているが、季節と旬を感じ、楽しんで生活したいなと改め感じた。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「まっすぐな生き方が羨ましい」
      何かと出会ったら、まっしぐらに進んでいけるのかなぁ~その時のために自分に力を蓄えなきゃね!
      「まっすぐな生き方が羨ましい」
      何かと出会ったら、まっしぐらに進んでいけるのかなぁ~その時のために自分に力を蓄えなきゃね!
      2012/12/20
  • 当たり前すぎて意識していなかった時間や暦の歴史を知りました。改暦は渋川春海さんの多彩な興味が統合されて成せる大事業だったのですね。面白くて4回読みました。主人公をとりまく人たちが皆、志があり優しい人たちで心が温かくなります。

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著者プロフィール

冲方丁(うぶかたとう)
1977年、岐阜県生まれ。4歳から9歳までシンガポール、10歳から14歳までネパールで過ごす。早稲田大学第一文学部中退。小説のみならずメディアを限定せず幅広く活動を展開する。
『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞、『天地明察』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞、北東文芸賞を受賞し、第143回直木賞にノミネートされた。『光圀伝』で第3回山田風太郎賞受賞。
代表作となる『天地明察』は2011年にコミック化、そして2012年に岡田准一主演で映画化されヒット作となる。2019年1月、『十二人の死にたい子どもたち』が堤幸彦監督により映画化。

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