天地明察

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
4.22
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  • / ISBN・EAN: 9784048740135

感想・レビュー・書評

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  • そうとう良かった。長過ぎなければ、人にもどんどんオススメしたくなる小説。歴史的な知識がなくても楽しめると思うが、登場人物の名前や時代背景くらいは知っていた方がもっと楽しく読めるかもしれない。
    希望に燃え、しかし挫折を繰り返しそのたびに周囲と力を合わせて乗り越えようとする姿勢に、心を打たれた。失敗しても、そこで諦めなければ失敗にはならないんだな、と教えてくれた小説。

  • 歴史は苦手でよく分からないけど、こういう教科書みたいな表舞台に出てこない人の話は大好き。


    今みたいにGPSとかパソコンみたいな道具がない中で、人々が和暦(カレンダー)を作っていく。


    普段見ている、カレンダーもこういう人達がいるからこそ。

    カレンダーを見る目が少しばかり変わりました。

  • もっと小難しい話かと思っていたら、意外にも軽いテイスト。
    暦を作る話という認識だったが、算学に熱中した若者の成長ストーリーが正しかった。
    全体的にカジュアルで、学者の堅苦しい話でも、重々しい時代小説でもないので、とても読みやすい。
    きちんとした時代背景で成り立っているが、説明的な文章がさらりとさり気ないので、時代小説初心者にもお勧め。
    派手さはないけれど、知的な駆け引きが散りばめられていて面白い。

  • さわやかな秋風を思わせる読後感。
    大仕事を成し遂げた男の、一途なまでに星を追いかけた情熱。
    男の生き方を教えてくれる物語だった。

    小細工や策など無用だと、この物語は決して大声でではなく語りかけている。
    好きなもの、のめり込めるものがあるなら、後先考えずまっすぐな気持ちでのめり込めば、結果は後から付いてくる。またそれを助けてくれる理解者も現れるものだ。活力と希望を与えてくれる素晴らしい物語だった。

    目下の者、年齢が下のものにも、敬うべきところはある。そこを見極め、彼らに頭を下げて教えを請う。普通の人間にはプライドが邪魔をして、そんなことは出来ないだろう。しかし、プライドとはそういうものだろうか?
    素晴らしい者を認める心、そしてそれを敬う心こそ本当のプライドというものではないだろうか?主人公、春海を見習い矜持をただして生きて行きたいと強く思うのだ。男は器が大きくてなんぼなのだ。

    近頃、元気のない日本人、みんな読めばよいと思う。

  • 舟を編むの江戸時代版みたいな...かんじ。
    先に舟を編む読んだからなんだろうけど。
    モノの歴史にプロジェクトXありね!

  • さすがのクォリティ。数学だったり天文学だったり、ともすれば取っつきにくくなりがちな題材を扱っているにも関わらず、難解になり過ぎることなく、集中力も切れないまま、一気呵成に最後まで読み通せる内容。結構な分量だけど、飽きさせられることなく、先が気になって仕方ない。正しいカレンダーを導入するのに、色んな苦労談があったんですね。

  • 日本史がどうも苦手で、江戸時代と聞いただけで小説も漫画も読まず嫌いをしていました。 しかし、暦・天文・数学…と興味をそそるキーワードにつられて、最初に漫画版を読み、続けて小説を読みました。漫画版で江戸時代の雰囲気や人物のイメージがおおよそできていたので、たいへん読みやすかったです。 文体がすごく好みでした。簡潔で無駄がなくて、それでいて基本的な知識を押さえるところはきっちり書いていてくれて。ドラマはあってもべたべたしていない。美しくて、何度も読みたくなります。(今2回目を読んでいます)

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「興味をそそるキーワードにつられて」
      私もです!
      こんなに壮大で、人間が書けてて、飽きさせない作品でした(勢いでマンガも買ったのですが、もう...
      「興味をそそるキーワードにつられて」
      私もです!
      こんなに壮大で、人間が書けてて、飽きさせない作品でした(勢いでマンガも買ったのですが、もう少し溜まってから読もうと置いてある)。。。
      2013/02/07
  • 話題の本。かなり遅れたが読了。
    全編に渡って、清潔さ、誠実さが満ちている、気持ちのよい読後感の小説だった。
    ひとつのことに精進し、邁進し、それに関わる多くの人の願い想いを背負って生涯を送った主人公を、とても優しく、そして尊敬の念を込めた筆致で描いて、私の心にまで、清らかな水が流れたような気がする。

    ただ、文章の書き方としては、個人的には、もう少しと感じる。どこがとはうまく表現できないが、自在さ、余裕が足りないような。以前愛読していた浅田次郎や宮部みゆきの上手さが、逆に際立って感じられた。比較するものではないけれど。

    だけど文句なしに良い小説だと思います!

  • 映画ガイドブックで算哲とえんが夫婦だと知ってしまっていたので
    えんと出会い、そのまま結ばれるとばかり思っていたら
    そうではなくていい意味で意表をつかれた。
    (とはいえ、そこまでの道のりで起こったことには、とくに算哲の様子には
    胸がいたんだ)

    荒木邸でのえんとの再会のくだりはとてもおもしろかった。
    その後もえんとのからみは算哲がかわいらしく、
    えんもとてもえんらしく、ほほえましい。
    プロポーズの場面は笑えるほど最高だった。

    算術に夢中で、すぐに正座して算木を並べ始める姿は可笑しい。
    関への憧れの大きさ。
    まさかはじめて会うのが謝罪になるとは。
    算哲の気持ちがとても痛い。
    けれど関も算哲もお互いを深く思っていた。

    算哲という星が輝くためにまわりにいる星々が光る。
    支えたり励ましたり、常に同じ空にいる。
    それは算哲が挫折しようとも立ち上がっていくからだろう。

  • 算術を愛する碁打ち渋川春海が、新しい暦を生み出すまでのものがたり。

    派手な話ではないけれど、じっくり丁寧で面白かった。
    前半話が動き始めるまではちょっとまったりだったけど、転がり始めてからは、格段に面白くなった。算術の話とか天測の話とかは難しそうに見えるけれど、そこらへんを気にしなくても十分楽しめた。
    保科様も山崎先生も建部氏もおじいさま?方が悉く渋くて男前で素敵。
    小説というより歴史書を読んだ感触だった。

  • 冲方丁著「天地明察」読了。
    文句無しの5つ星の面白さでした。

    江戸時代の暦の改編に人生をかけた男達の物語で、主役である渋川春海が算術に出逢い、改暦をやり遂げるまでを描いた歴史小説です。

    渋川春海の真っ直ぐさと情熱、それを支える周囲の人達の渋さがひたすら胸を打つ、みずみずしい小説で読んだあと、じーんとします。

    この主人公、渋川春海のように、一つのことに人生をかけるのはとても大変なんだろうけど、同時にそこまでしてやり遂げるべき使命に出逢えるなんて、本当に幸せなことなんだろうな、と春海のことを羨ましく思わされます。

    仕事、がんばろっかなと思わせてくれる一冊なので、長期休みの後によいかもしれません(笑)

  • 天地の理を明察する。
    人に積もっていくものはかけがえのないものだなあ・・・

  • 素直に面白かった。正統な歴史物でありながら、見事なエンターテイメント。己の信念を貫くことの大切さと、人のつながりの大切さ、相手を思い遣ることの大切さを見事に感じさせてもらえた。系統としては飯島和一さんの「始祖鳥記」を思い出したが、より気軽に読めるエンタメとしてまとめあげている手腕はすばらしく上手く、なるほど幅広い読者層に訴える力を持った作品であった。
    自らの歩む道を見つけている人間は本当に強い。

  • 映画のあとに小説読んだけど、どちらも本当によく出来ているなぁ!
    人物背景やこの時代の作法や一般的な考え方、それに人物の深みがじっくりと描かれている小説に!
    その時代の測量機や算木など独特なものを説明なしで目で見せる!BGMや背景セットで、臨場感や躍動感が描かれている映画!原作より公家によく動かせ嫌な奴にしてあるため、はらはらドキドキし本当に面白かった!
    私は1つの物語としてではなく、もうノンフィクションとしてこの人たちが本当にいたんだと思ってしまうくらいこの世界にのめり込んだ。
    それは算哲の人柄ためなのか。何度も立ち向かう屈託の精神なのか。それとも、どれも私の興味を惹き、手に取りたい、行ってみたいと思わせるセンス溢れる背景セットなのか。どれがきっかけかはわからないくらいに天地明察の全てが好きだ!

    関さんと算哲の関係ほどステキなものはないなぁ~。お互い切磋琢磨し共に上り詰めてゆきながら、相手のことを必ず上に見ているところが、「ライバル同士」というよりはもっとやんわりしている。
    算哲の、自分の設問に「名を書いてよいですか?」と訊き黒々と「関考和殿」と書くあたりがなんとも可愛いそーーー!!!相手の凄さを糧にしながらも尊敬することは忘れない。なんて心地良い関係だろう!
    それ故にあの怒号が心に痛い。

    算哲と道策の関係もいやいや捨て難いステキさだ。碁に執着なくなった算哲にライバル視ガンガンの道策なのに、ことあるごとに邪魔されて戦いが遠のいていってしまうのが面白いwww
    算哲の、夢へまっすぐな道策を美しく思っているところもステキさの要因だ。

    思ったよりもえんが怖いことにびっくり!宮崎あおいちゃんの天使のほほえみはどこへ?あらら~?えんちゃん、もっと笑ってよ~と焦った。大人になったえんは宮崎あおいちゃんそのものだった!
    映画には元嫁のことは出て来なかったが、この子もなんとも健気で可愛らしい子だ~。そしてことを大事にしている算哲も可愛らしい~!
    算哲×えんも大好きだけど、算哲×ことも、私は大好きだぁ♪

    しかし映画の闇斉の死に方はかわいそうだよ~。そんな映画の見せ場とか締める所とかなくていいから!幸せでいさせてあげてよ~。

    「改暦による世の影響を考察せよ」保科正之はすごいことするな~と本当に感心した。これを部下に命令するのがスゲーよ!しかもこの命令で2にも3にも効果が出てる!すごい人物だな。

    しかし、はじめて関さんが同い年としって稿本を開けずにいた時の算哲の心の葛藤が、ものずごい共感で、目頭がじんわりした。
    「あるのは歓びや感動だけでがない。悲痛や憤怒さえ抱く、己の足りなさ至らなさを嘆き呪う。達したい境地に届かないことを激しく恨む。名人たちはそうした思いさえも乗り越えて勝つ!
    自分にそれが出来るだろうか?そう思うほど怖いものはない。
    退屈な勝負に身を委ねる方がよっぽど気楽でいられた。稿本を読まずに返せばよいとすら思った。こんな怖い思いとは一生縁がなく生きていける。」
    でも算哲はそのまま綴った。
    「そうすれば本当の歓びを知らずに死んでゆく。一生が終わる前に今生きているこの心が死に絶える。」
    諦めないことを選んだ彼をまぶしく思った。目に痛かったけど、でもこんなにかっこいいことはない!

    残す所1/4での怒涛のラッシュで目が回りそうでした。映画は生死に関わる大事になるまでがとんとんびょうしで怖いし。
    小説はみんなにすこしづつ変化が見られ算哲も色々な実在するものを作り、最後は巧みに頭で勝負!なんとも賢くなったものよ~~~~(ρ_;)
    原作は一回負けてるし!その直後にもう一度、暦変更を申し上げるとか、どない!?でも、ちゃんと計算どおり!算哲~!本当にすごくなったなぁ~~~!

    最後の最後でみんなを見送る読者側は辛いね。
    できたら私も、恋人とは、共に死んでゆきたいです。

  • 数々の苦労をしながら、日本の改暦を成し遂げようとする春海のひたむきな姿は、見習うべきところがある。

  • 面白かったです。

    出だしは微妙でしたが、後半はどっぷりハマって一気読み。

    天体観測、算術、暦が密接に絡んでいるとは全く知らなかった。

    好きなことをして、人との繋がりを大事にする。
    そして、改暦という大仕事を成し遂げる。

    まさに男子一生の仕事です。
    こんな仕事を見つけられた人は、幸せですね。

    チョットしか出てこないけど、光國伝を凄く読みたくなった。
    保科正之もかっこいい。

    特に歴史好きの人にオススメ。

  • すごく話がうまくできていてどんどん読めました。江戸時代のこの武士世界の「義」具合がいい感じに描かれていて良かったです。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「武士世界の「義」具合がいい感じに」
      「義」かぁ、、、忘れられた言葉にならないように、多くの人に「天地明察」読んで貰わなきゃ!
      「武士世界の「義」具合がいい感じに」
      「義」かぁ、、、忘れられた言葉にならないように、多くの人に「天地明察」読んで貰わなきゃ!
      2012/10/22
  • (2009年のブログから引っ張ってきました)
     要するに、碁打ちで算術家で暦法家で天文家の渋川春海の一生をぎゅぎゅぎゅーっと圧縮したもので、私の印象として彼は「一生青春の塊」でした。
     ほんとのほんとに、面白かった。
     現状で、冲方最高傑作だと思います。
     
     何度となく泣かされました。もう、ティッシュ片手に読み続けまして。
     春海が、何度も何度も置いていかれて、沢山のものを背負って、ようやく成し遂げるときの、その手際といったらもう、凄い。
     「燃えて萌える、青春活劇」って感じ。私の最萌(笑)は、伊藤と建部のじいちゃんずでした。春海とじいちゃんずの

    「頼みましたよ」
    「たのまれました」

    のやりとりは、何度となく出されるセリフのやり取りなのですが、春海が「背負う人」で「見送る人」で「成し遂げる人」なのだと如実に表していて、後半で出てくる度、涙が出ました。今でも涙が出てきます。
     ほんとにもう、登場人物みんなが生き生きとしていて、この辺はキャラクター小説でもあるラノベを書き続けてた冲方一日の長とでも言いますかね(冲方の最近のラノベは迷走しているというかマルドゥック方面に駆け抜けてるんで、ラノベといえども甘くないわけだが)

     とにかく面白いです。今年読んだ中ではダントツかもしれない。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「伊藤と建部のじいちゃんず」
      ホント素敵でしたね。
      ところで、「光圀伝」は読まれましたでしょうか?
      「伊藤と建部のじいちゃんず」
      ホント素敵でしたね。
      ところで、「光圀伝」は読まれましたでしょうか?
      2012/10/11
  • 囲碁打ちを仕事とする晴海が日本の一大プロジェクトに挑む。

    人と人とのつながりって大事だなー。
    それも、晴海の人柄によるものなのだろうけど。
    今日が今日じゃないと知らされた時の衝撃は半端ないですね。
    前半の読み応えに比べて、後半があっさりしていたのが少し気になるけど、面白かった。

  • 人生を追う小説は,やっぱり読み応えがあります。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「人生を追う小説」
      山あり谷ありでも、前進していくところに感動しました。。。元気を貰える小説ですよね!
      「人生を追う小説」
      山あり谷ありでも、前進していくところに感動しました。。。元気を貰える小説ですよね!
      2012/10/05
  • えんちゃんのツンデレっぷりが相当かわいい。

  • コレはすごい。
    最初のうちは、無理に見せ場を盛り上げたりやたらに引きを作る文体に抵抗を感じていたものの、最後までたどり着いて全体を振り返ってみると、胸にずっしりと響く面白さがある。

    渋川春海という人間の凄さは、「負けから始まる勝負」にある。敗因にこそ真実が宿っていることを、どれだけの人が見抜き、行動に移せるだろうか。しかも無私の心持ちで。

    碁打ち衆として家老たちに指南碁を打つかたわら、あくまで天と地の理を信じて粘り強く探求を続ける。優れた算術家、あまたの学者をして「彼ならやってくれるに違いない」と思わせる器の大きさ。世界レベルの学者が江戸時代の日本にいたとは。彼が和算を確立した関孝和と同時代の学者にもかかわらす、関ほど知られてないのが不思議。

  • 結果が分かっていても、サクセスストーリーはやっぱり読後感が良い。頑張る元気がわいてくる。主人公、渋川春海の並の人なら立ち直れなくなるような挫折を何度もしてもそこからふらふらと立ち直る。そう、冒頭にあった彼の囲碁そのまま、飄々と持久戦に持ち込み、最後には勝負に勝ってしまう。人生もそのまま持久戦にもちこむ。そして恋愛も(^^ゞ wikiで履歴をみると、レオナルドダビンチ並の多芸天才に見える。彼の才能に人が注目し、彼の無私で学問に貪欲な姿が彼を支えようとする気持ちにさせるのだろう。そんな彼も老成し、ちゃんと裏工作ができるように成長する。そんな姿も輝いて見えました。四十五歳かぁ。自分も淡々と生きてきたが、何か成し遂げたかなぁ。

  • 本屋大賞受賞した頃からずっと読もうと思っていたの機会がなく、このたびやっと読むことができた。歴史に詳しくないし、数字や天文学は頭がついていかないしで不安だったけれど、サクサク読了。ぼうっと空を見上げたり数字を眺めるのでなく、整然と数値化、解析していける頭ってすごいなあと感心する。おまけにロマンもあるし。暦にしろ、今ならPCにしろ全然わかってない私のような人でも使えるようになっているものを創り出した人たちの努力と情熱にただただ脱帽するばかり。面白かったです。

  • 上巻〕
    徳川四代将軍家綱の治世にある「プロジェクト」が立ちあがる。
    それは日本独自の暦を作り上げること。
    当時使われていた暦・宣明暦は正確さを失い暦にずれが生じ始めていた。
    改暦の実行者として選ばれたのは渋川春海。
    碁打ちの名門に生まれた春海は己の境遇に飽き算術に生き甲斐を見出していた。
    彼と「天」との壮絶な勝負が今、幕開く。
    〔下巻〕
    「この国の老いた暦を斬ってくれぬか」。
    会津藩藩主にして将軍家綱の後見人、保科正之から春海に告げられた重き言葉。
    武家と公家、士と農、そして天と地を強靱な絆で結ぶこの改暦事業は、
    文治国家として日本が変革を遂げる象徴でもあった。
    改暦の「総大将」に任じられた春海だが、ここから想像を絶する苦闘の道が始まることになる。
    (「BOOK」データベースからの抜粋)

    この物語の主人公は江戸時代前期を生きた渋川 春海。
    囲碁棋士であり、後に天文暦学者、神道家として生涯を捧げた人物で、
    実在の人物を題材として書かれた「暦」を巡る壮大な物語です。

    江戸時代の算術はどのようなものなのか、
    人々はどのように算術に関わっていたのかなど、
    序盤では算術と碁に関する当時の様子が分かりやすく描かれています。

    そして、北極星を観測するための1年以上に渡る観測派遣を通じて、
    今まで使われてきた暦のズレが明らかになってきます。
    この辺りは星を見ることの好きな私にとっては非常に興味深い内容でした。

    さらに暦を替えることが当時はどれだけ世の中に影響を与えるのか、
    幕府と朝廷との関わりや公家の考え方はどうなのかなど、
    読んでいてハラハラするような展開も待ち構えています。

    物語の題名にもなっている「明察」とは、
    はっきりと真相や事態を見抜くことという意味。
    算術で問題に正解した時に書かれていた言葉でもあるようです。

    地を測り天の星を測って暦の正しい運行を導き出すことの難しさが、
    最後は「明察」という形で返ってくるのかどうか。
    最後まで息を抜けない展開が待っています。

    何かに一生を捧げることの素晴らしさと尊さが書かれたこの一冊。
    お勧めです!

  • 最初は厚い本で少し引いてしまいましたが、読み始めると止まらなくなりました。内容は熱く爽快で人物ひとりひとりのキャラが立っているので読後もそのキャラが懐かしくまるで生きているかのように感じられたのが不思議です。

  • 渋川春海という一人の人間とそれをとりまく人々の物語。

    渋川春海という人は賢い人だと思いました。
    算学や天文ということについての頭の良さももちろんですが、そうじゃない部分で本当にすごい人だ、と。
    すべてのものごとに対して誠実に真剣に取り組んでいく姿に心を打たれます。
    お勤めの方法や形式は違っても現代に通じるというか、私自身見習わなくてはならないところがいっぱいで物語そのものよりも渋川春海という人そのものを読んでいた気がします。
    途方もないことでも自らの信念や責任を貫いていく姿は現代に生きる私たちにこそ必要なものなのではないかと問いかけられているようでした。

    あと、道策や二十八宿等知っていた人物や言葉が登場して勝手に親近感を覚えてしまいました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「道策や二十八宿等知っていた人物や言葉が」
      ツウですねぇ。
      私は道策のファンです。
      明日から映画公開!愉しみです。。。
      「道策や二十八宿等知っていた人物や言葉が」
      ツウですねぇ。
      私は道策のファンです。
      明日から映画公開!愉しみです。。。
      2012/09/14
  • 最初は読みにくかったけど、最後になればなる程、夢中になった。人生というのを考えた作品でした。

  • 時代小説は誰が誰だか分からなくなってしまう私ですら、人物をごっちゃにすることなく、読了した小説。算哲のヘタレっぷりがたまらない。最後の場面はホロリときました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「算哲のヘタレっぷり」
      身も蓋もない仰言りよう、、、私は結構好き。
      今から映画が愉しみです!
      「算哲のヘタレっぷり」
      身も蓋もない仰言りよう、、、私は結構好き。
      今から映画が愉しみです!
      2012/09/04
    • ユエヅヅさん
      nyancomaruさん:
      コメントありがとうございます!ヘタレな男性は私は非常に好きでして、褒め言葉です。笑
      映画化情報を全く知らずに読ん...
      nyancomaruさん:
      コメントありがとうございます!ヘタレな男性は私は非常に好きでして、褒め言葉です。笑
      映画化情報を全く知らずに読んだので、私も映画が楽しみです~ヽ(^o^)丿
      2012/09/05
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「褒め言葉です」
      それは失礼しました。。。
      「褒め言葉です」
      それは失礼しました。。。
      2012/09/07
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著者プロフィール

1977年岐阜県生まれ。1996年『黒い季節』で角川スニーカー大賞金賞を受賞しデビュー。2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞、2010年『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、第4回舟橋聖一文学賞、第7回北東文学賞、2012年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞。主な著書に『十二人の死にたい子どもたち』『戦の国』『剣樹抄』『麒麟児』『アクティベイター』などがある。

「2022年 『骨灰』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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