罪火

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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レビュー : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048740197

感想・レビュー・書評

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  • 花火大会の日。
    神社で13歳の美しい少女が殺害された。
    まもなく犯人はつかまるも真犯人は別にいた。
    この物語では冒頭に彼が真犯人であり、どうしてそんな犯罪を犯したのかというのがその後語られている。
    だからこの物語は誰が犯人なのか?
    真相は?というのを追うというよりは罪を犯した人とその被害者となった人の心情を通して人間とは?と問いかけている。
    ・・・と思いきや、最後の最後にまた別の真相があった。
    個人的にはその最後の真相のくだりはいらなかった。
    それまではこの本のテーマとは何だろう?
    という事を通して色々考えさせられる話だったのに、そのくだりがあったために薄くなってしまったように思う。
    まるで犯人や犯罪が美化されてしまったようにも感じた。
    ただ、ミステリーファンや純粋にストーリーを追って楽しむ人にとってはその方が刺激的で面白いのかもしれない。

    私が途中の読書で思っていたのは、犯罪を犯した青年の心情の経緯を通してのこと。
    彼が最初は恵まれない環境にありやさぐれていたのに、ある事から一変、ちゃんとした仕事に就き、彼女もできて順風満帆になる。
    それまでの彼は自分が犯した犯罪をある意味「仕方ない」ととらえていたが、自分が落ち着いた状態になると罪悪感をもち、その後は犯罪が発覚する事を恐れてまた悪い心をもつようになる。
    その様子は本当に人間的だと思い、心情が理解できた。
    ああ、少しでも良心があったり、人間的な部分があればこういう心持になるものだろうな・・・と思った。
    そうして思ったのは、人間再生していくにはある程度の環境も必要という事か?という事。
    ある程度、ひと心地ついて人というのはそれまで自分がした事を振り返る事ができるのか。
    もちろん、そうじゃない人もたくさんいる。
    どんなに恵まれないつらい境遇であっても罪悪感をもち再生していこうとする人。
    そんな人は本当に強靭な精神の持ち主で決意をもっているのだろう。
    返せば、そんな人じゃない、この物語の犯人のような男は恵まれない状況のままだったらまだまだ犯罪をおかしていたのだろう。

    そんな事を思いながら読んでいたので、最後に最後の話には正直ガッカリした。
    こんな理由づけなんていらない。
    その方が考えさせられる話になったと思うのに、急に薄い話になったな・・・と感じた。

    この本で初めて修復的司法というものを知った。
    被害者の回復をめざす仕事で、被害者の母親は校長先生という肩書がありつつそういう仕事もしている。
    実際、自分も被害者という立場になった訳だけど、本当の意味で一人ひとりの被害者の立場になって心に寄り添うというのは本当に本当に難しい事だろうな・・・と思う。

    この作者の本は初めて読んだけど、またこの人の読みたいな・・・と思える文章力と内容だった。

  • デビュー作「雪冤」が横溝正史賞を受賞。
    受賞後第1作目。
    読ませる文章が凄く安定しており、
    最初からスンナリとストーリーに馴染めます。上手いです。

    今作もやはり社会派と呼べるシリアスで被害者と
    加害者の関係を両面から描きつつ、作者の思いを
    伝える事に成功していると思います。
    が、やや事件の見せ方が強引なような気もします。
    不自然...?と思わす部分が多くて途中までは
    ちょっとだけ座り心地の悪い感じ...かなぁと。

    ですが!!最後の最後にその真相が明らかになればこそ、
    その心地悪さは納得出来るつーのは...
    まんまと作者にしてヤられたの...かも。
    個人的には前作よりも数段いい作品かと!

  • 罪を犯したことに傷付く者たち。しかしその罪滅ぼしは人それぞれ。元校長のキャラが少々善人化し過ぎてる気もする。

  • 2017/12/15

    罪の火に焼かれる。
    序盤、若宮の悪意が怖すぎてなかなか読み進められなかった。
    更正ってなんだろうな?殺人は動機によって罪の大きさが変わるのかな?

  • 加害者の贖罪と更生、被害者の怒り苦しみ、そして赦免。
    加害者側の揺れる心理描写がとても良かったです。

  • 叙述トリックの社会派推理サスペンス。根底に修復的司法がある。被疑者と被害者家族が向き合う事で真摯に犯罪を受け止めようとするものだが、双方の思いが掛け違い負担が大きくなるデメリットの方が多い。新たな犯罪の引き金にもなりかねない!そうした危惧を小説として世に問いかけた作品と言えるだろう。
    若宮が少年時代に殺人事件を起こし、町村校長が修復司として係わる。ここから事件が連鎖していくが、何故若宮が少年犯罪に陥ってしまったのかが抜け落ちている。犯罪者心理と被害者家族の心理描写で構成されて最後のどんでん返しで未来志向の落ちに成っている。何となく甘さを禁じ得ない!

  • そういうどんでん返し、かぁ。
    主人公は「悪い人」だけど、やはりどこかで「悪」にはなりきれない。罪を償い、待つ人たちのもとで帰ってくることを願う。

  • 2作目。雪冤と同じく、死刑制度や被害者と加害者が会う制度のことが出てきた。でも雪冤よりずっと読みやすくなってた。さすが。いわゆる社会の底辺にいる人たちがやけになる気持ちも分からなくはない。派遣の人はこんなに虐げられるのか。でも原口お母さんは楽しんで仕事してる感じだけど。しかし、それがちょっとのきっかけで正社員、結婚とメジャーな人生に戻れることもあるのだ。若宮のように。でも、若宮はほんとの悪ではなかったから良かったんだよね。しかし、被害者と思ってた子が加害者で、それをかばおうとしたり、遺族がまた相手を刺したり。ほんと人が死ぬって大変だな。あと、雪冤は「まっかなジャムを塗って食べる」が出てきて、今回はラジオからイエモンが流れた、という形で登場。作者の人、イエモンファンなのかな。殺人とレイプはどちらが罪が重いのか。命にまさるものはないんだろうけど、被害者としては同じくらい踏みにじられているわけで。レイプされた後自殺しちゃったら、結局殺人と一緒じゃないかと思う。性犯罪はもっと重い量刑にした方がいいのではないか。でもそれも、安易な厳罰化になるのだろうか。今回も被虐待児として書かれていたし。被害者が加害者になる、というのは定番なのか。今の職場の子達が、こんな人生を送らずにすみますように。暖かな人たちの中で暮らせますように。

  • 久々に読書。
    この作者さんの作品は多分2度目。読みにくい印象だったけれど、こちらはあっさり読めました。

    特殊な団体活動をしている設定の割りには感情移入しやすかった。
    ただ、ラストの『どんでん返しです!』的なのは要らなかったかな…

    智人君は繰り返すのかしら?再火

  • 巧い。かおりが最後に若宮に「許さない」ではなく「赦さない」と言ったところに、一連の事件で罪を冒す人に向けた憎悪が、罪に、償いへと、少しポジティブな方向を示唆した感じが非常に良かった。

    最後のどんでん返しもミステリーとしてはベタだけど、ベッタベタ感を紙一重でスッキリとさせてるような、終わりの良さがあった。

    最後の一節というか、事実はこの手のミステリーでは王道?嫌いじゃない(笑)

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プロフィール

だいもん・たけあき
1974年三重県生まれ。龍谷大学文学部卒。第29回横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をダブル受賞した『雪冤』で2009年にデビュー、ドラマ化される。主な著書に『告解者』『婚活探偵』『優しき共犯者』『鍵師ギドウ』などがある。『テミスの求刑』『獄の棘』など映像化作品も多い。

「2017年 『反撃のスイッチ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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