南の子供が夜いくところ

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048740326

作品紹介・あらすじ

「今年で120歳」というおねえさんと出逢ったタカシは、彼女に連れられ、遠く離れた南の島で暮らすことになる。多様な声と土地の呪力にみちびかれた、めくるめく魔術的世界。

感想・レビュー・書評

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  • 舞台は架空の島・トロンバス島。南の島や港町ときくと陽気で開放的なイメージが頭に浮かぶけれど、恒川光太郎は孤島の影の部分にスポットライトを当てるので、いくつもの妖魔の姿が暗闇に浮かび上がる。

    一つひとつの作品は短く、次やその次の作品に少しだけ重なるように構成されている短編集。読み終えた後にまた初めから読み直し、全体でひとつの環のように読むのも楽しい。

  • ワタシはあまり、作家の時系列を考えて読んでないんですが(新作も何も気にしてないし)、この本を読んでいるとき、デビュー当時の作品なのかと勘違いしました。
    少し、今までの恒川さんの作品とは違う感じ・・・です。
    わざとやってるんだろうけど、文章もなんとなく荒削りな感じ。作風も、荒削りな感じ。
    でもやっぱり恒川さんの作品が好きですけれども~♪(笑。
    最後の章が一番好き、かな。

  • この世かあの世か、それとも異世界なのか。不思議な場所と不思議な人が織りなす短編集です。

    日常のすぐそばにある“あちら”っていう感じが上手くて、不思議な雰囲気が好きだなぁ~と思っていたけど
    本作は日常をとっぱらった「あちらの世界」のみな印象を受けました。
    初読みの「夜市」は衝撃的だった。まだそれを越える作品には出会っていません。
    ゆっくり他の作品も楽しもうと思います。

  • 今ひとつ、、、南の島の雰囲気は分かったが、、、

  • なんか、世の中の事を、結構知っているつもりでいても、実は、何も知らないのではないか。この小説を読んでいると、何が正しくて、何が正しくないか、分からなくなる。いや、むしろ、そういった概念自体、的外れなのかもしれない、等と思ってしまった。

    面白かったです。

  • 子供のころ、世界はとても不安定で、夜は果てしなく深く未知のものだった。もっと有り体に言うと、自分は何時まで、保護下に置いてもらえるのだろうか。何らかの心変わりで置き去りにされやしないか。頭の中はそんな風な最悪のシナリオを描いたりもした。恒川さんの小説に触れると、子供時代の怯えから来る漠然とした心のざわめきが蘇る。どこかゆったりとした南国情緒の濃密な空気をまとった中に、しっとりとした情感や、神話・伝承とシュルレアリスム様々なものを織り交ぜた、魔法や夢想に彩られた幻想譚という感じです。

  • 不思議な話。
    短編連作集とも言える。
    なんとなく背筋が寒くなるようでもあり、ほのぼのと暖かさを感じるようでもあり・・・
    不思議な作品。

  • これまでの日本的なほの暗さを感じさせる作風から、舞台を南国へと移して色が変わり新鮮でした。
    湿り気のある南国の空気、悠久の時を刻み続ける煌めきや物悲しさ。
    時空間を超越した物語の数々は読み進める度に奥行きを広げていく。
    それぞれのお話の中にリンクする所もあり、沢山の夢を見ているような気持ちになりました。
    『紫焔樹の島』と『まどろみのティユルさん』がお気に入り。
    最終話のおぞましい夜の闇や絶望を、読み手に最後に光を感じさせて幕を下ろす所も好きです。
    ある話で【オン】の文字が出てきて何故か心が温かくなりました。
    続編希望。

  • いやーやっぱ恒川さんはいいっ。
    この独特の世界観。
    なんとゆーか、目に見えているものは同じでも空気が違うような、
    場所も時代も空間もなにもかもがいっしょくたになって、
    みたこともないような世界が現われてくる感じ。
    なんか、色が、どっちかってゆーと原色っぽくて、
    でもその配色がすっごく独特で、くせになる味みたい。

    一番最後に読んだからやっぱパイナップル頭は衝撃的だったな。
    うわー、喰ってる、おいしいんだっって。
    しかもそのあとアボガド頭になって、
    そうしてそのあとまた帰ってゆくんだからすごい。
    なんなんだ、それは、とゆー感じ。
    本人にしては相当な悪夢だ。

    好きなのはやっぱユナのトイトイさまの話だろうか。
    安穏と生きることは人を弱くするのだろうか。
    生きるか死ぬかの中で生き続けることは確かに強さがなければできないか。
    が、どちらがいいといえば私は前者がいいな。
    でもそれゆえに滅んでゆくのを受け入れることは・・・・できるだろうか?
    うーん。
    魔神はなんだか怖かったな。
    あの海賊と感じが似てた気がするのだけれど関係あったりするのだろうか?
    そしてユナとともに旅をしていた彼は今はどこにいるのだろう。

    南の、という題名にあるからか、
    なんだか熱帯の島の暑さが感じられるような。
    神話のような時代から、現代まで、暗闇の奥の方から眩しすぎてみえなくなるほどの光のなかまで、ものすごい濃い密度のお話を読んだ気持ち。

  • 「草祭り」があまりに良かったので、ついつい比べてしまうけれど、同じ形式(すべての短編の何かがひとつの街でつながっている)であるにも関わらず、「草祭り」とは程遠い完成度としか思えない。この作品の短編に共通する要素は「トロンバス島」という島であり、「ユナ」という女性である。お話の何かが必ずこの2つとつながっており、不思議なお話のすべてがそこにつながることによって、この2つの神秘性を高めるという効果を狙ったものと思われる。「草祭り」では大成功した手法です。でも、ここではそれは失敗しています。なぜだろう?
    まず、あまりにも空想小説すぎる。夢物語というか、出来の悪いおとぎ話というか、妄想すぎるというか、変質的というか、とにかく現実感がゼロ。現実とつながる要素がひとつもない。これ、大きなマイナス。
    そして、この作品で露呈しているのは、恒川さんは登場人物の会話を書くのが下手すぎる。台詞が幼稚すぎる。これは致命的ともいえるマイナス要因だと思うのです。
    無理やりひとつの要素でつなげることなく、それぞれを独立した短編にしてもよかったのじゃないかな?とも思ったり。

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著者プロフィール

1973年東京都生まれ。2005年、「夜市」で日本ホラー小説大賞を受賞してデビュー。直木賞候補となる。さらに『雷の季節の終わりに』『草祭』『金色の獣、彼方に向かう』(後に『異神千夜』に改題)は山本周五郎賞候補、『秋の牢獄』『金色機械』は吉川英治文学新人賞候補、『滅びの園』は山田風太郎賞候補となる。14年『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞。その他の作品に、『南の子供が夜いくところ』『月夜の島渡り』『スタープレイヤー』『ヘブンメイカー』『無貌の神』『白昼夢の森の少女』『真夜中のたずねびと』『化物園』など。

「2022年 『箱庭の巡礼者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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