ブギウギ

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (468ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048740371

作品紹介・あらすじ

敗戦間近、箱根に疎開中のドイツ軍潜水艦長・ネッツバントが変死した。遺体を発見したのは、旅館に住み込みで働く安西リツ。この事件の調査をする海軍に通訳として連れ出された法城恭輔は、他殺の可能性を色濃く感じていた。しかし、ドイツ軍医・シュルツェは自殺であると断言する。不審に思い調べを進めると、事件の背後にはナチス・ドイツの陰謀が見え隠れしていた。一方リツは、若いドイツ人潜水艦乗組員のパウルと急接近していく。そしてリツも、否応なくその陰謀に巻き込まれていくこととなる-。激動する時代と、そこで力強く生きる人々を緻密な描写で描いた、傑作長編ヒューマン・ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 202/2/22
    坂東眞砂子、やはり面白い。

  • 太平洋戦争終戦前後を舞台に、箱根の旅館に収容されたドイツ軍Uボート艦長の不審死を巡るミステリ活劇小説。

    この時期の日本にドイツ兵が存在していた(しかもドイツ降伏後なので、既に同盟国ではなくなっており、「捕虜」の立場)という設定が新鮮。
    冷静に考えれば、史実としてそのようなドイツ兵がいたとしても不思議ではないが、「鬼畜米英」とは異なる西洋人だが観方とも言い難い、という微妙な立場と、箱根・芦ノ湖畔の閑静な旅館町という組み合わせが実に妙味。

    戦後の東京の描写も佳い。
    綿密なリサーチに裏打ちされているに違いないディテールで生き生きと紙面から立ち上がってくる、焼け野原と闇市とGHQに象られた、敗戦直後の東京。

    登場人物のキャラクタリゼーションも秀逸。
    特に、エネルギッシュで純粋でありながら、強かさも備え持つヒロイン・リツが、ぐいぐいと物語をドライヴしていく。

    ミステリとしては今一歩鮮やかさに欠ける気もするけど、そういうことがあんまり気にならない自分のような読者には十分。
    一気に読ませる力のある小説です。

  • 敗戦間近の日本、箱根にてドイツ軍人の不審な遺体が発見された。
    調べを進めると見えてくる…はずの隠謀がなかなか見えてこなくて途中で少しダレましたが
    陽気なタイトルとは裏腹にお堅いミステリーでした。

  • 1945年の戦中、そして戦後すぐの混乱期を舞台に箱根で水死体が発見されたドイツ人船長の死の謎から、第2の死、そしてヒロインともいうべき女中リツの東京での活躍、通訳者・法城の謎を追っての行動と、ドイツ人女記者・オルガ・・・。この辺りになるとスリル満点です。戦中・敗戦直後の混乱期の日本の事情が詳細に書かれ、しかも日独という敗戦国の暗い部分、そして戦勝国米国側においても、様々な勢力の張合いが描かれ、歴史の勉強にもなる大変面白い本でした。

  • 個人的に非常に興味を持っている時代が舞台で途中まですごく面白かったんだけどなぁ~。

  • ●:引用

    ミステリーであることは間違いないが、最後の最後まで、何が書きたかったのか(主題?)が読み取れなかった。これか?
    ●女たちにとっては、国が戦争に負けたことなんか、どうでもいいのだ。無条件降伏を前にして、大日本帝国の男たちは、国体を護持することを求めた。第三帝国の男たちは、アルゼンチンに亡命してまで、帝国の存続を図った。男たちは永続を求める。しかし、女はそんなことはどうでもいい。(中略)大切なのは、生き延びること。(中略)大東亜戦争は、日本人の集合的無意識の生み出した古代神、現人神の天皇による、キリスト教世界への挑戦であった。しかし、敗戦という破壊の中から生まれてきたものは、男と女では違っていた。男にとっては、敗北者の精神。アメリカは、勝者という神になった。女にとっては、新たなる女たちの誕生。アメリカは、新たなる女たちを庇護する神となった。その神は、アメリカという姿をとってはいるが、実体は日本の古来の神なのかもしれない。いずれにしろ、アメリカという神は、日本人に告げる。忘れよ、と。女たちは、古い女を忘れて、新しい女に生まれ変わる。そして、男は敗北の屈辱を忘れて、神の僕となる。わたしには忘れられそうもないと思った。
    ●わたしには、オルガの『愛』と呼ぶものが、胡散臭い代物にしか思えなかった。オルガが共産主義こそ『愛』だと呼ぶことと、ヒットラーが、ゲルマン民族による支配を、世界平和のためだ主張したことと、どう違うというのか。女たちは、自分の行動原理を『愛』と呼び直すことで、権力志向に浪漫的な化粧をほどこしているだけではないか。
    ●女たちにとって、何でもいいのだ。相手が男でも、子どもでも、動物でも、政治形態ですらもいい。その対象に向かう気持ちに『愛』と名づけるだけでいい。そこから、迸るような力が湧いてでてくる。それが女というものなのだ。理念によって立ち向かうのではなく、心と情熱で立ち向かう生き物。(中略)わたしたちは友人だったのだ。彼女が、その繋がりを『愛』と呼び、信じている限り、それは愛となる。

    「化石の荒野」に似ている?
    戦争責任(東京裁判、ニュールンベルグ裁判)の問題?が見え隠れする。

  •  人間は何がしかの信念を持って生きるのではない。生き続けた果てに、生き残った結末として、そこに残ってしまった何がしかのものこそが、信念と呼べるものではなかろうか。
     正義とか悪とかどうでもいい。大和民族とかゲルマン民族、大日本帝国とか第三帝国とか共産主義、愛さえどうでもいい。勝利や敗北などの目先に小さな結果とやらは、いつかどこかへ消え去って行く。頼りなくも儚く、不安と疑心暗鬼のなかで、縋り付けるものだけを信じよう。
     まず生き残れ。歌うのはそれからだ。

     終戦前後の混乱期を描いた作品。
     読み終わった後に残るのは、作中にあった楽曲のメロディ。その作品は知らなくても、ここまで生き残った自分のなかに刻み込まれたリズムだった。

     

  • 東京などを舞台とした作品です。

  • 途中で読むのをやめる。未読。

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著者プロフィール

高知県生まれ。奈良女子大学卒業後、イタリアで建築と美術を学ぶ。ライター、童話作家を経て、1996年『桜雨』で島清恋愛文学賞、同年『山妣』で直木賞、2002年『曼荼羅道』で柴田連三郎賞を受賞。著書に『死国』『狗神』『蟲』『桃色浄土』『傀儡』『ブギウギ』など多数。

「2013年 『ブギウギ 敗戦後』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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