パロール・ジュレと紙屑の都

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.79
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本棚登録 : 495
レビュー : 48
  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048740432

作品紹介・あらすじ

紙魚となって時空を超え書物を渡り歩く諜報員・フィッシュ、彼を追う刑事・ロイド、凍った言葉を解く4人の"解凍士"、秘密を握っていると思しき水晶の眼の女・レン-凍った言葉をめぐるマジカル・ファンタジー。

感想・レビュー・書評

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  • なかなか読みやすかった。吉田篤弘の魅力といえば一番は文章の美しさでしょう。それから発想。
    奇抜といえば奇抜なんだけれども、奇をてらってるわけじゃなくて日常の素朴な気づきからのストーリー。
    この人の普段の頭の中のぞいてみたい。
    しかしパロール・ジュレ、ひとつだけ宝物みたいに持っていたいなぁ。儚い薄氷と言の葉を重ねる感性が好き。

  • 2014 3/5

  • 「彼はたったいま書物の頁から抜け出てきた。これは比喩ではなく。」
    書きだしの1行でこの物語に首ったけになりました。

    主人公の「十一番目のフィッシュ」は、言葉が凍りつく神秘を解き明かす任務を負い、本の中を転々としています。

    物語の中の凍った言葉を「解凍」したら、どんな声が聞こえてくるのでしょう。

    登場人物たちは、時がゆっくりと流れる国のある町で、
    独りを大事にしがら、他の人との交わりを求めていて、
    言葉を交わすわりには核心を言葉にせず、
    それでいて共通に大切にしているものがあります。

    短い章で様々な登場人物の視点から「パロール・ジュレ」(凍った言葉)が語られ、章が進むにつれ、丹念に物語が紡がれ、やがて全容がくっきりと浮き彫りになります。

    それでも、この物語は決してすべてを言葉で語り尽くしません。
    彼らが大切にしているものを、私たち読み手も共有できたらしめたもの。

  • あらすじを読んだときから心をがっちりと掴まれてしまって、どうしても読みたかった本。まず、発想が素敵。無国籍感もたまらなかったです。<十一番目のフィッシュ>や<解凍士><移動写真師><血管路地街>などのワードにいちいち心惹かれます。<幻影ビアホール>がかなりツボ。鮭皮のベストに黒ビールとスモーク・サーモン!献立に悩む場面も良かったです。ああ。最後は、少しうるうるきました。感想がうまく書けない。

  • 別離により分断された国の中にある、小さな北の街キノフ。
    そこでは言葉が凍り付き、パロール・ジュレと呼ばれる物質になるという。
    そんな不思議な現象を探る為にキノフに派遣された諜報員、十一番目のフィッシュ。
    彼は紙魚であり、本の中を自在に泳ぎ回る事ができ、また本の中の人物に変貌することができた。

    そんな彼をはじめとし、パロール・ジュレに魅せられた人間達の物語です。
    フィッシュを追う刑事ロイドの思惑や孤独。
    水晶の目を持つ謎の女レンが漂わせる秘密や怪しさ。
    パロール・ジュレを解凍し、凍り付いた言葉を拾い上げる解凍師たちの誠実さや孤独感。
    キノフに住まう人々の雑多な感情。
    それらがいかにも思わせ振りで謎めいています。
    ドキドキするような謎ではなく、じんわりと不思議だなあと首を傾げたくなるような。
    魔法めいた事柄のなかに謎がありゆっくりと紐解かれていきます。
    ファンタジーのような世界観ですが妙に現実的です。

    フィッシュの淡々とした語り口は、そのままキノフの淡々とした、少し冷たく、雑多で、優しい雰囲気に上手く溶け込んでいくように思えます。
    街の中に流れる時間は美しく優しく寂しいです。永遠にそうなのではないかと、勘違いしたくなるほどに。
    人々が凍結した言葉を解凍したときに、世界はかわるのでしょうか。


    最後の最後、やっと辿り着いた結末にじんわりしました。
    凄く好きな本です。
    雑多で汚らしいものと美しいものが混在している世界なのに、穏やかで冷たい美しい雰囲気がたまりません。

  • 「パロール・ジュレ」という言葉が美しい。
    自分があまり読まないジャンルだけれど、すぐ物語に引き込まれた。

  • 本のなかを旅するような夢をみているようなはなし。

    C0093

  • 言葉さえも凍ることがある北の国にあるキノフ。その街を舞台に凍った言葉の秘密をめぐって、紙魚と呼ばれる諜報員、刑事、言葉の解凍司、売春宿の女主人らが暗躍する物語。

    さすがの吉田篤弘ブランド、世界感は独特でそこに入りこんでしまえば、物語はグイグイと進む。物語世界に入り込んで楽しんでいるうちはいいのだが、本作においては少々ミステリー要素もあり、クライマックスを楽しむには人物相関図をある程度正確に把握しておかないといけないのだが。

    その人物相関図が複雑で、どっかに載っけて欲しいくらいなんだけど、掲載してしまうとネタバレになりかねないしというジレンマ。頭の弱さがツラかったぁ。もうちょいアホにも分かるように書いてくれればと、持たざる者の苦情というか弱音を吐いてしまいそう。

    ラストの美しさも、俺がもうちょい明快に物語を把握してたらひとしおだったろうに、と星一つ減は自分の無力の責任なんだけどもなぁ。

  • ユーモラスな語り口ではじまった物語は思いもかけないさみしさ、やるせなさを伴って幕を閉じる。
    触れられそうな親しみがあったはずのストーリーが「離別」以前のことが明かされる(解凍される)とともにひんやりとした手触りの、壁を隔てたものに変わっていくよう。
    一瞬の言葉が凍結し結晶化されるうつくしさ、義眼の中にかつて恋したひとのジュレをしまいこんでいたレン、その義眼に魅せられてロイドとともにジュレの神秘を守っていた写真家。タトイをはじめとした解凍士たち、レストランのコックなど、キャラクターの造形がとても印象的。
    綿密に構築された世界は寒色の中にきらきらしさを内包していて、ついつい立ち止まっては一文を何度も眺めてしまう。
    紙魚になれないわたしたちは何者に変貌することもできず、自分という視界で分厚いクッションを挟んだ状態で物語と向かい合うことになる。それでも、物語の中を存分に泳ぎ回るような素晴らしい時間を過ごすことができました。
    優しいけれどどこか厳かな、何度も読み返したくなる小説。

  • 「自分」というのは何なのか。人が知っている自分と、自分自身が「自分だ」と思っている自分と。
    誰かに伝えたとしても、伝わっていないとしても、一人で呟いたものだったとしても、言葉がぽっかり浮かんで残るイメージがある時が確かにあって、「コトバが凍る」というのはなんというかとてもしっくりくる。最近は、こうやってインターネットにどれだけでも言葉を吐き出すことができるけれど、だからこそあらゆる人のコトバが氾濫していてそれをしっかり「解凍」することってあまり出来ていないなあと感じた。
    少し間をあけて、もう一度読みたい。

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著者プロフィール

吉田篤弘(よしだ・あつひろ)
1962年東京生まれ。作家。小説を執筆するかたわら、クラフト・エヴィング商會名義による著作とデザインの仕事を続けている。著書に『フィンガーボウルの話のつづき』『つむじ風食堂の夜』『それからはスープのことばかり考えて暮らした』『レインコートを着た犬』『木挽町月光夜咄』『電氣ホテル』『台所のラジオ』『金曜日の本』『神様のいる街』『あること、ないこと』『雲と鉛筆』『おやすみ、東京』など多数。

「2018年 『おるもすと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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