西巷説百物語 (怪BOOKS)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
4.05
  • (153)
  • (197)
  • (122)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 1433
感想 : 185
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (611ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048740548

作品紹介・あらすじ

上方には上方の仕掛けあり。「これで終いの金比羅さんやで」巷説シリーズ、新機軸の第五弾。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 良く覚えていないんだが、おもしろかった記憶はそこそこある。
    このシリーズはやっぱり良いな。

  • 長く続いているこのシリーズは、実はあんまり好きではなかったんだけど、この西版は上手にまとまっているな…と思いました。

    人間、どんなに良い人に思われていても、やっぱり心に闇はあるわけで…。
    闇のない「良い人」なんて、場合によっては単なる内面的キャパの狭いおバカさんだったりするしね。

    人によっては世間の尺度からすると「かなり」悪いことをしてきても、そこから目をそらして平気で生きようと自分を欺瞞して暮らしているのだねぇ…。

    で、そんな自己欺瞞によって満ち足りない暮らしをしている方々が外側の皮を剥かれ、自分が自分と対峙せざるを得ない状況になったとき、人はけっこう自ら死を選ぶのだな…と思いました。

    でも、自己欺瞞から不満な日々を送り、そのまま死ぬのとどっちがいいんだろ?
    いろいろ深いお話ばかりだったよ。

  • 久々の京極作品。だいぶ積んだままでした。文庫落ちまでしていたのですね。

    そろそろお盆も近いので雰囲気で読んでみる。

    見たくなくて思い出したくなくて隠していること騙してることを、日本文化の枠組みからは外れないけれど非常にロジカルに分解してみせる真理分析医のような林蔵一派。このころ宗教という装置をこのように分解できた人はいたのでしょうか?
    妖怪と現代的な手法の奇妙な同居が特徴的。

    最後に東の又市とも絡む編が収められています。懐かしい。

    単行本だったので、シリーズ徹底解説書がついてました。もう一度通して読んでみるかな。

  • 京極堂より巷説派です。


    西は巷説シリーズ第5弾!
    西というくらいなので舞台は上方、大坂。
    西の主役は靄船の林蔵。
    又市の悪友であり小悪党の仲間です。


    個人的には唯一のハッピーエンドの豆狸と
    一番救いようのない鍛冶が嬶が好きかなー
    あとは自業自得というかなんというか・・・・
    鍛冶が嬶は怖い。
    自分が八重だったらほんと怖いと思う。


    久しぶりにシリーズを読み返したくなりました。
    ラストの野狐がぼんやりと巷説(1作目)を
    思い出させるからでしょうか。


    シリーズの中では1作目の巷説百物語が
    一番面白いと思い、やっぱり一番好きです。

  • タイトルどおり、大坂での物語。靄船の林蔵が活躍します。決め台詞「これで終いの金毘羅さんや」ってのが妙に気に入りました。最終話にはあの人やあの人が登場するのも、シリーズファンとしては嬉しいところ。
    お気に入りは「鍛冶が嬶」。恐ろしいってのもありますが。何とはなしに、悲しい気分にもなりました。あの人はきっと、本当に一生懸命だったんでしょうね……そりゃもちろんやりすぎだけど。深刻に悩みながらも、自分でそれに気づけなかったということが、とても可哀想に思えました。
    悪人に報いを、という作品がほとんどの中、ちょっと違う趣向の「豆狸」も良かったな。こういう仕事もしてるんですね。ほんわかします。

  • 他シリーズ同様面白い。構成的に仕掛けられる人が誰なのかわかるけど、読んでいくうちにどんどん歪さが明かされていってゾクゾクする。仕掛け後の種明かしを堪能できるのも面白い。百介さん出てきた時は歓喜した!

  • 大坂随一の版元にして、実は上方の裏仕事の元締である一文字屋仁蔵の元には、数々の因縁話が持ち込まれる。いずれも一筋縄ではいかぬそれらの筋道を心づくしの仕掛けで通してやるのは、あの又市の悪友にして腐れ縁の、靄船の林蔵。二ツ名通り、死人が操る亡者船さながらの口先三寸の嘘船でそれと知れぬ間に彼らを彼岸へと――連れて行く。「これで終いの金比羅さんや――」
    (2010年)

  • 今回は上方で林蔵が仕掛ける仕事の話。どれも寂しく哀しい話ですが、救いのある話もあり。最後は林蔵と又市が上方を落ちるきっかけになった出来事を16年越しで暴きだし、悲しい解決をつけます。このシリーズは本当に複雑に絡み合っているので、何度でも読み返して時系列や人物を確認したくなります…。

  • シリーズではちょい役だった上方の林蔵たちが中心の物語だが、シリーズ主人公の又市、百介まで登場は嬉しい(*´∇`*)
    畳みかけるような(きっと前のめりの早口の)百介のしゃべり方も懐かしかった。

    月の魔性、供養を怠って発狂、夜の楽屋での浄瑠璃人形同士の争い…などなど、巷説の妖怪譚も深い事情があった。
    妖怪を使って相手を揺さぶった後、現実に引き戻して逃げられない状況へと追い込み、そして責任を追わせる。妖怪には妖怪の、鬼には鬼になった事情があるというものの。
    「今際の際に、親族に有り難うと言えなんだ、その一言のために人は迷う」

  • 目次
    ・桂男
    ・遺言幽霊 水乞幽霊
    ・鍛冶が嬶(かか)
    ・夜楽屋(よるのがくや)
    ・溝出(みぞいだし)
    ・豆狸
    ・野狐

    小股潜りの又市の朋輩、靄船の林蔵が通しの主人公。
    舞台は大坂。

    愛する女のために成す非道に気付かぬ業、自らの行った罪をすっかり忘れてしまえる無情。
    それが怖くて。恐ろしくて。

    又市と林蔵の一番の違いは、終わった後の態度。
    又市は、事件に関わ多人のその後を最後まで気に掛けるが、林蔵は、終わった後のことを気にしない。
    それは若かりし頃、又市に思いを寄せつつ林蔵と付き合うことになり命を喪ったおちかに対する態度の違いでわかっていたことだ。
    自分の命を守るため江戸から逃げた林蔵と、命を賭けて江戸にとどまった又市。

    所詮妖の話なので、結末がもやもやしようとかまわない。
    話として矛盾がなければ、それもひとつの作品のあり方だとは思う。
    ただ、私は又市のような、ひょうひょうとしていながら無情ではない、そういう人が好きなのだ。
    だから最後の事件、又市と林蔵がタッグを組んだ大仕掛けは、満足をさせてもらった。
    やはり私は又市が好きなのだ。
    「豆狸」はハッピーエンドだったけれども、ここで終わっていたらやはり物足りなく感じていたのではないかと思う。

全185件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

京極夏彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×