鋼鉄の叫び

  • 角川書店 (2010年10月29日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (520ページ) / ISBN・EAN: 9784048740692

作品紹介・あらすじ

終戦50周年番組を企画しているプロデューサーの雪島忠信に届いた一通のハガキ。番組が追っている、自分の意思で特攻の編隊から離れた男の情報があると言うが……!?  大勢に翻弄される日本人の本質を描く。

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

テーマは、終戦を背景にした日本人の本質と個々の選択が描かれており、特攻隊の生還者を探るプロデューサーの物語が中心です。主人公の忠信は、神風特攻隊に興味を持ち、その調査を進める中で、戦争の影響を受けた家...

感想・レビュー・書評

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  • 物足りなさが残る

    作家デビュー20周年という気負いからか、少し空回り気味の感あり。「リング」シリーズ後半あたりから、ガイア理論というか運命論者的な作風になってしまった印象があったが今作でもそれは変わらない。作者の言わんとする現代日本へ警鐘も分からないではないが、作中でも自虐的に触れられているように無理矢理な印象は否めない。

    そもそも主人公である忠信と菜都子の不倫関係の話が不要。菜都子にそこまで尽くすほどの魅力が描かれていないし、神風特攻隊取材のきっかけとしても不自然で、もっと別のアプローチがあったはず。自分の判断を取材対象である神風特攻隊の峰岸との対比のようにまとめているが無理があり過ぎる。不倫の清算と特攻するしないの判断では比較対象にならないだろうに。

  • リングとかホラーで一時代を築いてならした作家ではあるが、本作は全くホラー要素抜きの社会派作風である。ただし、何故、今、バブル崩壊後の時代設定で終戦記念日の特番取材をテーマにした作品として発表されたのか、残念ながら最後まで全く分からなかった。時代のありようにより主体を持たず流されやすい国民性を批判するつもりなのか分からず、作中の相対するディレクターの発言にあるように、それを語るのは傲慢というのも逆に理解できる。サブ主人公の中尉の造形は良く、こちらを語るべきではないかと思うのだが、いかんせん、多くの紙面を割かれて語られる主人公の不倫物のストーリーがいまいちで、共感を持てず、無理やり結末をつけるための決心のつけ方が、本来、全く次元が異なる特攻隊の決心に相応するものとして語られることに違和感が残る。大作の割に少々、残念な作品。

  • いや〜、面白かった!ディレクター本人の人生と、峰岸の人生と。最後不倫の始末をどう付けるか、についてはすこしうーんというところもあったけれど、とても読み応えのあった作品。ものすごいリサーチを経たんだろうなというリアルな描写ばかりで、500ページが短く感じた。ほんとにいたんだろうか…参考文献も気になる。

    p.491
    思った通り、それは、ニューヨークタイムズに掲載されたインタビュー記事だった。拡大コピーさ
    れた用紙が五枚、ホッチキスでとめられてファイルに保存されていた。
    忠は、辞書を引き引き丁寧に読み進め、今の自分にとって必要と思われる箇所にアンダーラインを引いた。
    インタビュアーに、先住民族の地位向上のため政府と交渉し、予想以上の成功を収めることができた秘誌は何かと訊かれ、ディビッドはこう答える。
    ・・・・・・交渉の場における最大の障害は、相手への憎しみである。
    憎しみが募れば、相手をやっつけて、自分の要望ばかり通そうと躍起になり、交渉は決裂する。まず、相手が辿ってきた歴史を理解し、その心情を理解しなければならない。
    ・・・・金は手段であって、目的ではない。相手から要求されたのならともかく、先に金額を提示して事を早く済まそうとすれば、相手のプライドは傷つく。
    …・....嫌なことを避けてはならない。労を惜しまず、心の内を明かし、言葉を尽くす。困難を乗り切った先には大いなる成長が待っていると言じて、事に当たるべし。
    それ以外にも、ディビッドは、インタビュアーに訊かれるまま、彼の人生哲学を披瀝していた。
    ......失敗を乗り越えて、成功に転じるための唯一の方法は、失敗の本質を分析し、言語によって意識化することである。この作業を経ないまま、同じ状況に遭遇すると、失敗は繰り返される。
    …・・・・合理は追求されるべきである。不合理を放置すれば、やがて破滅が訪れる。問題は、何が合理で、何が不合理なのか、明らかにされないところにある。
    直接に会話を持ったことがないにもかかわらず、どの言葉も峰岸の声となって、忠の耳に届けられてきた。
    どれもこれも、彼の体験に根差した内容だった。特攻隊員として太平洋戦争を戦い、日本に批判の目を向けた者に特有の視点が、言葉の背後に見え隠れする。威圧され、身体が前に押し出されるようだった。いや、動かされるのは身体ではなく、心だった。行動へと駆り立てる力が周囲にみなぎり、為すべきことが徐々に明瞭になっていく。

    【参考文献】

    太平洋戦争がよくわかる本120ポイントで理解する/太平洋戦争研究会(PHP研究所)
    日本海軍がよくわかる事典ーその組織、機能から兵器、生活まで/太平洋戦争研究会(PHP研究所)
    新版きけわだつみのこえー日本戦没学生の手記/編:日本戦没学生記念会(光文社)
    図解・軍用機シリーズ戦/編:雑誌「丸」編集部(光人社)
    零式艦上戦闘機(第2次大戦兵器ブックス)/マーチンケイディン、戸高一成(並木普房)
    トレイシー 日本兵捕虜秘密尋問所/中田整一(講談社)
    海軍航空予備学生ー予備士官パイロットの生と死/碇義朗(光人社)
    特攻からの生還ー知られざる特攻隊員の記録/鈴木勘次(光人社)
    学徒出陣ー戦争と青春(歴史文化ライブラリー)/蜷川壽恵(吉川弘文館)
    昭和は遠く1生き残った特攻隊員の遺書/松浦喜一(径書房)
    特別攻撃隊/編:特攻隊慰霊顕彰会
    あの戦争になぜ負けたのか/半藤一利、保阪正康、中西輝政、戸高一成、福田和也、加藤陽子(文藝春秋)
    客戦と戦艦大和/半藤一利、秦郁彦、前間孝則、鎌田伸一、戸高一成、江議介、兵頭二十八、福田和也、清水
    政彦(文藝春秋)
    失敗の本質1日本軍の組織論的研究/戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎(中
    央公論新社)
    日本はなぜ敗れるのか1敗因21カ条/山本七平(角川書店)
    ドキュメント太平洋戦争/編:NHK取材(角川書店)
    昭和の一哲学者1戦争を生きぬいて/沢田允茂(慶應義塾大学出版会)
    哲学の風景ーポスト・ヒューマニズムを目指して/沢田允茂(講談社)
    敷島隊死への五日間1神風特攻隊長関行男と四人の若者の最後/根本順善(光人社)
    戦士の肖像/神立尚紀(文藝春秋)
    背中の勲章/吉村昭(新潮社)

  • 1

  • 展開は面白ろかったが、不倫の話と最後に至る展開はいまひとつだった。

  • 久しぶりに面白い小悦を読んだ。鋼鉄の叫びというタイトルがこれまた誤解を招いている部分もあると思うのだが、終戦の日前後に読む本としては最適で様々な事を巻あげさせてくれた。NHKのディレクターが父の影響で、神風特攻隊に興味を持ち、どこから自分の意志で生還した中尉がいたことを偶然に発見し、企画作りを進めるべく調査をしていくところが主な筋なのだが、それをサポートする戦争末期の主人公の父親が死ぬ事をさける事が出来たエピソードや、その中尉が生き残ったエピソード、また彼が日本人としてではなく今に生きているという下りなど、すべてが緻密に計算されていて、主人公の恋愛話も含め本当によく出来た小説と思える作品でした。
    おすすめです。

  • 父の命の恩人と巡り巡って会う。
    そして父も恩人と再会できる。
    こんなことってあるのか? いや、きっとある。
    そう思いたい。
    縁ってあるよ、絶対。
    そんなつながりで生きているような気がする。

  • 特攻隊の話の部分は内容が濃くてよかった。
    ただ現代の不倫の部分は余計かな?

    もう少し中尉の話も書いてほしかったな

  •  どの時代の話も、濃く感じました。
     日本人の特性の印象は‘負’だという感覚に陥りそうになるところを、全く正反対の印象へと導かれていき、最後には日本に生まれて良かったという気持ちにさせてくれます。

     全体的には後半で、話がぽんぽん先へ先へ飛んでいき、都合がよくないか?と思ったのですが、ここはテンポよく進んだのだと思いたい。

     戦争が絡むと、ついついひいき目で読んでしまう傾向にあるのですが、読んで良かったと思えた一冊でした。

  • 特攻隊の話がメインなので、つい永遠の0と比べてしまう。特攻の話は良かったし登場人物も生きてる感がある、しかし現代での不倫話と絡めるのはどうなんだろ?何で不倫だったんだろ?私にはそこが良く分からなかった。

  • 今回は『リング』を書いたことで有名な鈴木光司の作品で、2年ほど前に出した長編です(ハードカバーで500Pくらい)。

    読評の前に、少し鈴木光司さんの話をば。

    最近になって、さらにキャラクタ化した感じでマスコミに出てきている「貞子」の生みの親であることで、ホラー小説家(しかもB級レベルっぽく)に見られることが多い方ですが、ぜんぜんそんなことはなく、俺はかなり好きな作家です。
    原田宗典、東野圭吾が先頭争いをしていて、第2グループに瀬名秀明、雫井脩介(新興勢力)、そんで鈴木光司がいる感じです。ちなみに江戸川乱歩は殿堂入りしてます。

    『リング』自体もホラー要素は強いものの、あくまでサスペンスwithミステリな感じで、「貞子」という登場人物も、悲しみを背負った登場人物として、魅力的なキャラクタとなっています。
    当時としては非常に斬新な切り口だった「呪いの感染」と、媒体にビデオテープを使うということ。さらに『らせん』『ループ』『バースデイ』と続くシリーズを読んでいくことで、さらに真実に迫っていける作品の書き方。

    未読の方は、ぜひホラーという先入観なしに、読んでみてもらいたいですね。

    さて、本題の『鋼鉄の叫び』ですね。

    あらすじは……TVディレクターである主人公が、ふとしたインスピレーションをきっかけに、戦後50周年特集の番組に「特攻隊に編成されながらも、出撃後に自らの意思で隊を離れた人物」を出すことを考えるようになり、ふさわしい人物を追い求めていくうちに、父親の人生の秘密、そして不倫関係にある自分の恋人との関係の決着に導かれていく。そして見つけ出したふさわしい人物は、死んだと思われていた父親の命の恩人であり、想像すらできないほどの大人物だった……という感じです。

    まぁ~、ばっちりおもしろかったですね。
    『リング』シリーズから共通するものとして、「作品の経過で、どんどん世界が広がっていくところ」と「見た目が美しく、一種危険でもある愛情を持ち合わせた女性」も出てきており、十二分に鈴木光司の魅力を堪能できる作品でした。終わりの方が駆け足だったので、やや読後感がさっぱりしてしまったのが残念でしたが(できれば、染み込みように読み終わりたかった)、こちらもぜひ読んでほしい本です。

  • リング以降あまりピンと来なかったのだが、久しぶりに良いものに当たりました。追いかけていて良かった。
    特攻とはなんぞや!

  • かけがえなのない”個”を剥奪し機械に隷属させ生還の見込みもなく無理やり駆り立てる特攻。忠信は、戦中の日本というシステムの中に雁字搦めにされながらも自分の意志で帰還した特攻隊員を追う。その中で自身の問題にも向き合う。
    「逃げない」「選択と決断」「考え抜くこと」「合理を追求すること」が胸に迫る。
    そして、偶然ではなく必然で紡がれた物語。必然に心が暖かくなる。

  • 作者の出演した「ラジオ版学問ノススメ」のポッドキャストを聴いて、日本人の行動心理についての熱い語り口と、自らの意思で生還した特攻隊員という設定に興味を持って購入。
    大変ドラマチックで、面白い小説。時間が許せば一気読みできる。
    ただ、日本人論としては、ポッドキャストの方が断然明快。もしこれを聞かずに本書を読んだら、何がテーマなのか伝わらなかっただろう。その原因は主人公の不倫のくどい程の描写だ。主人公が元特攻隊員を探すというところに限定すればよかったのに、不倫物語でわざわざ「この精神構造が今も息づいている」と教えることで、上から目線で説教されているようで素直に入ってこない。そもそも特攻隊員の心理と、不倫を貫徹しようとする姿勢とが同列で語られていることには違和感を感じる。作者の思い入れが強すぎたのだろうか。
    物語としては面白いので、エンタテインメントとしてはおすすめ。

  • 初めての鈴木光司さん。全体的にちょっと共感できなかったりピンとこないことが多くて、星2つ。
    現代と戦時中のエピソードが交互に展開なんかは、「永遠の0」と似てた。戦時中のエピソードはなかなか読み応えがあるんだけど、現代のストーリーが陳腐すぎる気がする。特攻と不倫をリンクさせて語るのはどうかと。
    峰岸中尉が特攻を止める経緯やその後の生き方も、もっと深い展開を期待してただけにちょっと期待外れだったな。

  • 500頁を越す大作を最後まで読めとおせはしたけど、心に響ききらなかったのが正直な感想。
    前半は若干盛り上がりに欠け、中盤の特攻隊の描写では太平洋戦争に対して感じる怒りが喚起されたけど、
    終盤はあまりに大がかりな場面展開にちょっとついていけなかった。
    男女の心の機知はうまく描写できてるなぁと思ったけど、良く練られたストーリーがかえってtoo muchだったかな。

  • 特攻隊のところは面白かった。が、現代の不倫に関してはテーマにギャップがありすぎる。

  • 分厚い本ですが,一気に読ませます。
    ストーリー展開は素晴らしいですが,特攻隊というテーマと比較して,現代が不倫問題というのはちょっとスケールが小さいような…。
    現代の方がもっと別のテーマを扱っていたら,傑作になっていたと思います。

  • タイトルからどんな話になるのかなと期待。半分位までは、結構期待通りで読み進めましたが、それ以降は話を急いで忙しくまとめて来た感じがして、少し残念。

  • 難しい。一回できちんと理解するのは大変そう。「鋼の錬金術師」に近い印象です。

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著者プロフィール

千葉中央メディカルセンター勤務。認定理学療法士(代謝)、呼吸療法認定士、糖尿病療養指導士、住環境福祉コーディネーター2級。

「2018年 『リハビリのプロがすすめる 健康寿命を延ばす1000冊』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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