エウスカディ 下

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048741170

感想・レビュー・書評

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  • ワルテルが考える自由で平等な世界、なんて、ない。哀れ、哀れ。
    作者のバックグラウンドを知っているだけに、哀れというか、滑稽に感じた。

  • 物語はワルテル(1972年前後)とその息子アイトール(2005年)の2つの時代を行き来しながら進んでいく。

    日本赤軍のメンバーである吉岡良輝ことワルテルはパレスチナに軍事訓練の為参加した本体から連携模索のためETA(バスク祖国と自由)に派遣される。

    ETAに派遣されたワルテルは東洋人という立場を活かして数々のETA構成員を殺してきた治安警備隊の幹部をバルで爆殺。
    東洋人でありながらバスクのために働いたとあってバスクの英雄となる。

    一方息子のアイトールは父ワルテルを幼い頃に亡くし、母マリアの手で育てられた。そんなアイトールはアテネオリンピックで柔道のスペイン代表を務め、メダル獲得はならなかったものの道着の下にはバスクのシャツを着ていたとあって同じくバスクの英雄と呼ばれていた。

    選手としての限界を感じていたアイトールのもとへ新聞記者を名乗るヘススという男が現れ両親はETAではないかと問いただしてきたところから物語は始まる。


    感想
    アイトールが自問し、またマリアからも言われるようにアイトールが動かなければ何も起きなかった。
    もちろんキッカケはヘススではあるが途中何度も真相究明をやめることのできる場面はあった。その結果クリスとの出会いという僥倖はあったがそれも最後には悲惨な事になる。もちろん結末なんか当人にわかるわけはなく作者も真実を求める心は止められないといった事を描きたかったのかもしれないがちょっと余計な事し過ぎってか我慢効かなすぎ。まぁそれがアイトールの良いとこなのかもしれないけど。
    話事態はまぁバスクが好きということも会ってETAの活動が盛んだった頃の様子やあまり日本では感じられないバスクの文化なんかに触れられて興味深かった。

    ただ一番興味をそそられたのは
    本編ではなく日本赤軍とETAとの連携という部分。
    日本赤軍は世界革命を標榜しており世界を社会主義、もしくは共産主義に塗り替えようとしている。一方のETAの目的はバスクの独立。確かにファシストであるフランコ政権は左派の敵ではあるだろうがスペインで行われていたのは右派と左派の戦いではなく右派と右派の戦い。仮にETAの目的が成就したとして、日本赤軍の目的達成のためには国家という枠組みは無くなるはずである。この点をどのように特に赤軍側は納得していたのだろうか。目的達成の為なら手段は問わず力を蓄える為には右派だろうがなんだろうが連携できるところとはするということなのだろうか。それで民衆の支持を得られると考えていたのだろうか。だからこそ崩壊していったのかもしれないが当時を知らない人間としては赤軍たちの考えが理解できない。

    もう一点、ETAの活動についても考えさせられる。
    結局のところバスクの独立を標榜してはいるが復讐の為、もしくは若気の至りで活動しているように感じる。特に現在の政権下では自治が認められてバスク語を話すことも禁じられてはいない。それでも活動を続けるのは肉親を殺された人がその復讐心に動かされているだけのように感じるしそういった描写もある。またETAが構成員を勧誘するときに肉親を殺された人間を狙うことにも由来するのだろうが。
    若気の至りに関してはワルテルが自身何度か自問するようにテロを起こす自分に、大きな事をする自分たちに酔っているだけではないだろうか。その証拠にアイトールとマリアという生きがいを見つけたワルテルの心は徐々に世界革命から離れていっているように感じる。
    そこで問題になってくるのがワルテルとマリアの差は何だったのかという点である。
    お互いに愛しあい、子どもを授かりながらマリアとワルテルは活動において決定的に異なった。その要因はやはり肉親を殺された事ではないだろうか。マリアは人生をその復讐に捧げたが、ワルテルに復讐心はなく桃源郷の実現という夢が原動力だった。
    復讐心は夢に勝る。そういうことなのか。

  • 2つの時代が同時進行する内容で、バスク地方の独立のために戦う組織内の裏切り・・・
    なかなか読んだことのない物語でした。
    なかなかこの小説家ははまるかも!

  •  日本冒険小説協会ができた頃、その名の通り、日本では冒険小説の名が一躍読書会を賑わした。これまでとはスケールを異にした日本の作家による世界を舞台にした冒険小説が次々と書かれ、時代の寵児とも言われるべき作家の精鋭たちが登場したのだ。

     船戸与一、逢坂剛、佐々木譲、森 詠、いずれの作家もその後日本のエンターテインメントを代表するような活躍を見せ、確かにあの時代に金字塔を掲げて今、さらに題材を求め、語り部の術に磨きをかけ冒険小説を追求する道を選ぶ者もあれば、異なるジャンルや時代のニーズにフィットして自分を変えてゆく道を選ぶ者もあったろう。

     その日本冒険小説協会の会長にはハードボイルド芸人・内藤陳が会長となったわけだが、彼が店に立つのを条件に協会はゴールデン街の店を借りることができたと聴く。その店はギャビン・ライアルの名作の名を取って「深夜+1」という酒場として開店。

     本書の著者である馳星周は当時、横浜の某大学を受験する道すがらこの店を訪れる。日高育ちの馳は、横浜の某大学に入学するや否や、この店でアルバイトを開始し、連夜店のカウンターに立った。毎夜、内藤陳の読書薀蓄に耳を傾け、多くの作家や、多くの評論家や、多くの翻訳者や、多くの読書オタク、その他ゴールデン街や歌舞伎町界隈の夜の仕事師たちに出会って、尋常ならざる都会での青春をスタートさせた。

     日高から歌舞伎町には距離だけでは測ることのできない隔たりを感じただろう。そして冒険小説が日本で次々と産声をあげてゆく様に震えただろう。その道の大物たちからの言葉に熱くなったろう。多感で繊細な彼の青春は、今の馳星周という冒険小説作家を作るまでに「暗黒小説」「馳ノワール」などという回り道をせねばならなかった。

     「馳ノワール」の辛味が聴きすぎて、この人はノワールに拘り続けると最後まで走り続けることができないんじゃないだろうか、とぼくは内心不安であった。焼き直しだけでは作家人生は成り立たんぞ、とそれなり真剣に。

     ここ数年、馳星周の文体やプロットに関し、ノワールへのこだわりからの脱却が明らかに見られる。主人公の生死に関わりなく、悲劇であろうが喜劇であろうが、彼らの真摯な生き様の背景に、時代や風土の重さが与えられ、プロット重視である以上に構築された物語の美学のようなもの、一言で言えば風格が加わるようになった。

     本書『エウスカディ』は、また1マイル、馳の道標を先に延ばした素晴らしい作品だ。これまで冒険小説の時代に生まれた作家たちしか書かなかったほどのスケールで世界に物語を翔かせた。なかでも彼の今回チャレンジしたバスク地方は、かつて森 詠や逢坂剛が常に題材にせんとしていた、いわば大御所たちの踏み跡でもある。

     そんな場所に、馳星周という遅れてきた冒険作家は、大きな叙事詩を刻んだのだ。彼と毎夜のようにチャットで話していた時代、スティーブン・ハンターの『さらばカタロニヤ戦線』を話題にして双方熱く語った想い出がある。スペイン、ETA、カタロニア、そしてバスク、彼はあのハンターにまでチャレンジをしてみせたのだ。

     歌舞伎町のバーカウンターから、バスクのバルへとはるばるショバを変えにいった馳星周、その不動な視線のうちに作家としての自信がより強固に育まれてきているのを感じる。

     もう船戸ら先輩陣の領域には来てるよな。ぼくは内心の驚愕を隠せずにそう呟いているのだった。

     ※ちなみに『猛き箱船』を熱く語り合ったのも馳であった。

     ※ちなみにエウスカディはバスク語で「バスク」を意味する言葉らしい。侵略されると言葉までが使用禁止になり失われてゆくため、非侵略民族は尊厳どころか民族の言葉まで失う。馳星周の育った日高地区では今も文章という形では残らないユーカリをアイヌ民族の大切な伝承文化として残そうという運動がわずかながら続けられている。

  • イケメン先輩から紹介いただいた本。

    同時併記される二つの時代がラストで繋がり壮絶な結末。

  • 過去と現在の2つの話を同時進行させていくせいか
    スピード感が落ちている気がする。
    ただ安定した読みやすさがあるので軽く読める
    長編なのに軽く読めるというのもおかしな感じかもしれないけど。。

    日本赤軍との関係がどこでどうなったかいまいち理解できない
    バスクに命をささげることにしたのはわからないわけでもないが
    じゃぁ赤軍はどうしちゃったの?というような
    地味な疑問が次々残っては解消されない。

  • バスクの独立運動に日本赤軍の主人公が関わっていた、という設定からしてかなりムリな感じのお話。
    世界同時革命、とか言ってた70年代の主人公と現代に生きるその息子の視点が交互に入れ替わるようにして語られる。馳星周にしてはスピード感がないハズレ作品。

  • 良かった良かった
    痺れる!には一歩足らないけど、
    年月の重さがより残酷

  • やはり長編はよい(^v^)
    久しぶりになっがーい話を読めたので満足でした^^

    でもラスト、ラストが…!

  • こいつはおもしろかった。時空を越えて二つの物語が進行し、一つの結末にいたる。そしてあの日本赤軍が懐かしい。

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著者プロフィール

1996年、『不夜城』でデビュー。これまでに吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞、大藪晴彦賞ほかを受賞。

「2017年 『暗手』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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