モルフェウスの領域

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  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048741538

感想・レビュー・書評

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  • 海堂氏は作品を通して問題を提起し、世論に訴えることにより官僚の重い腰を動かしているように思います。
    とっても尊敬しています。
    海堂氏の作品はすべて読んでいます。

    登場人物がかぶるので海堂ワールドがとても面白い。
    今回の作品でもほとんどが今までの作品に登場したことのある人物です。
    今回も随所に官僚批判が見られます。この作品では両眼の摘出が必要な網膜芽細胞腫の少年が、治療時期を延ばすために人工冬眠に入るところから話が始ります。
    この物語は続きがあるようにも思いました。次の作品も楽しみです。

    もうすぐ公開される海堂氏原作の映画「ジーンワルツ」は産婦人科の現場の悲鳴を取り上げながらの本格ミステリーです。
    この映画も絶対に観に行こうと思っています。

  • コールドスリープ(冷凍睡眠)、SFではお馴染みのガジェットですが、、
    「バチスタシリーズ」の海堂さんが、その冷凍睡眠を題材にした物語。

    現役のお医者さんが描くと、妙にリアリティを感じてしまいます。
    『ナイチンゲールの沈黙』とどことなくシンパシーも。

    そのバチスタでの東城大の懐かしい面々もてんこ盛りに。
    如月翔子、田口、高階、そして、渡海、、うーん、豪華。

    後の『医学のたまご』ともつながっていて、桜宮サーガの軸の一つとも。
    羊水をたゆたうその描写が、詩的で絵画的で、ただ美しい。

     「スリーパーをひとりぼっちにしてはならない」

    冷凍睡眠の技術、どこまで実用化されているのかと、気になります。
    Aiの実用性を考えると、決して絵空事ではないとも思いたいですが。。

    知的好奇心を刺激してくれるのは相変わらずに。
    続編も書かれているとのことで、待ち遠しく感じてしまいました。

  • 理系作者の本って感じ。冷たく深く漂う感じ。論理に感情が加わってしかし論理的にミステリアスに展開する。

  • スッキリしないようでスッキリした。
    そんな感じ。
    つかめそうでつかめない。
    知りたいけど、ここままで良い気もする。
    でもそれが不快じゃない。

    海堂作品の中でもすごく難しいと思うし
    実際理解できなくて読み返す部分も多いんだけど、
    気持ち的には流れるように読めた。
    女性が主役だから?
    コールドスリープという非現実な話だけど、
    人物にも設定にも深みがあるぶん、
    実際は知らないことの多い現実の世界よりリアルに感じる。

    お馴染みの人たちが、違和感なく効果的に登場してる。
    ノルガ共和国の医務官って・・・私の思い浮かべてるあの人で良いの?!

    医学のたまごとナイチンゲールをもう一回読みたくなった。

  • ホヤホヤの中学生になった我が家の凡児が「医学のたまご」を読んだ。普段、まったく本を読まないのに。高校生の姉に勧められたのか?この長女も中学生の頃、この本を読んでいる。二人とも面白かったと云う。大人が読んでも、なかなか読みごたえのある本だと思うのだが。
    久しぶりに、読み返すとスーパー高校生アツシ君が恰好良くって、ほれぼれする。「ナイチンゲールの沈黙」では、甘えん坊の子供だったのに。

    本棚に本が溢れて、妻に怒られるので、文庫になるまで我慢しようと思っていたのだが。そんなわけで昔の本を読んでいたら、アツシ君の話が読みたくなって、我慢できなくなった。
    「医学のたまご」の後の話かと思っていたが、前半は9歳からの5年間、コールドスリープするアツシと見守る涼子の話。海堂先生独特のカッコつけ過ぎで、けれん味タップリの文章が堪らない。死神のような西野とか、ステルス・シンイチロウとか、初めて読んだら口に合わない人もいるかも。最初、涼子の逡巡の訳が判らなかったが、ジワジワ伝わってくる。この辺の加減、ホント巧いなと思う。
    後半は、覚醒したアツシと田口先生や看護師長の翔子も絡んでの話。
    文体はやや落ち着きを取り戻す。9歳の心、人並み外れた知性、中学生の身体のアツシが生まれ変わっていく。
    敷き終えた線路をゆっくり下りてゆくような印象。それでも、クライマックスはジーンと感動した。
    シンイチロウの「スリーパーをひとりぼっちにしてはならない」の答えがこれだったんだろうか、とか思わないわけではないが、あまりに美し過ぎる結末で、細かい疑問なんてどうでも良いや。
    涼子と翔子の二人の女性の在り方が素敵で、海堂先生の知らなかった一面を見たような印象。

  • 海堂尊の紡ぐ桜宮サーガのうち、「ナイチンゲールの沈黙」と「医学のたまご」の間をつなぐ作品。
    ミステリではなく、SF寄りの言葉遊びといったところか。

    この人の描く登場人物はおしなべて、レトリックに富んだ会話を駆使する非常にクレバーな人ばかりで、直情径行の自分としてはこんな言い回しもあるものかと非常に興味深く読ませて貰っている。

    さて、本書の内容についてだけど、なんと言ったらいいか迷う。

    レティノブラストーマにかかった少年が眼球全摘出の危機を乗り越えるため、特効薬が認可されるまでの間を冷凍睡眠でやり過ごす。そして、彼が目覚める時に何が起こるのか。

    というストーリーなのだが、読み始めから何故か幕末のイメージが浮かんできた。

    「凍眠八則」を提唱する曾根崎伸一郎は、「船中八策」をまとめ上げた坂本龍馬。その定めに護られ、同時に縛られた佐々木アツシは徳川将軍家。「凍眠八則」を自家薬籠中のものにしようとする官僚は、新政府に加わった列藩か。となると、日比野凉子は勝海舟か。

    などと勝手な思いでいたのだけど、中盤から終盤に向かっていくにつれて考えは変わった。

    これは純粋なラブストーリーだ。

    直接話したことはほとんどなくても、相手を思いやる気持ちがどんどんと溢れてくる二人。生物的な同族愛、肉親に感じる家族愛、そして、相手の個性に惹かれる愛と全部含まれてるみたいだ。

    死神と呼ばれた西野がまるでキューピッドに見えるくらいだった。


    ミステリから純愛までこの作者の振れ幅は大きい。
    何を読者に伝えたいのだろうか?
    どっかでインタビューに答えて無いかな。

  • 主人公(だと思われる)『日比野涼子』は"凍眠”を見守り続ける。
    守り続けるのは 螺鈿 で出てきた『佐々木アツシ』。コールドスリープ選択後のお話。
    新たな登場人物として『西野』というモンスター登場。
    彼はコールドスリープのシステムを作った人。そりゃ、モンスターなわけだわ。

    曽根崎教授(ステルス・シンイチロウ)登場、そして涼子とロジック展開。
     狸が動けば田口が動かされる のはどうしても爆笑。

    後半、アツシ覚醒後に 螺鈿 で活躍した翔子が出てきてオレンジ病棟に舞台は移る。
    オレンジ病棟でアツシと年齢の近い オレンジ・クイーンこと『村田佳菜』
    によって完全覚醒。
    子供じみた表現も無くなり、人工的に英才教育を施されていたアツシ。
    それを『英語で論文に』と狸こと高階委員長に田口先生と翔子は任命される。

    アツシが覚醒してから2ヵ月後。
    西野がオレンジ病棟に現れ、涼子の顛末を翔子とアツシに告げる。
    彼女がコールドスリープに自ら入る事により、アツシと今の事業を存続させるという選択肢を取る。
    アツシは涼子の『生命維持業務』の依頼を受ける。
    5年間、ずっとアツシを見守り続けた人。
    その人が眠り、アツシを、事業を守ろうとコールドスリープしたという事実。
    5年後、彼女はどうするのだろうか?
    そしてアツシは?

    きっと続くんだろうなぁ。どう出るのか気になりますっ!
    時間軸がクロスオーバーしていて、登場人物もクロスしているので、掴みでちょっと時間取りました。
    それと。
    薫くん2歳で登場。『マドンナ・・・』とも微妙に絡んでます。

  • 海堂さんの新作です。
    今回は、現在、持病を抱えている方が、凍結によって完治できる可能性のある時まで治療を延ばせたらどのような問題点が起こるかということについて描かれています。
    しかも、5年間という凍結の限界の中で、起きた時に本当に治療法が確立してるか分からないことや、その間の権利や年齢の問題など様々な問題点が生じることがこの本を読んで考えさせられます。
    今までの海堂さんの本とはちょっと違った雰囲気があると思います。

  • あの人やこの人が出てくる海堂ワールド。相変わらず医療問題に叫んでます。今回は最後ちょっとホロっときました。面白いです。

  • ちょっと言い回しがキザすぎませんか先生?と苦笑したくなる部分がありますが、海堂尊さんの文章が本当に好きなのでどんどん読めます。
    医療の話を推し進めてSFとしてもこんなに面白い話に広げて深められるなんてすごい。登場人物では主人公の日野涼子が好きですが、ブラック・ペアンからの三部作に登場するある人物が出て来てくれるのも嬉しいです。
    続編は『アクアマリンの神殿』です。

著者プロフィール

1961年千葉県生まれ。医師、作家。外科医・病理医としての経験を活かした医療現場のリアリティあふれる描写で現実社会に起こっている問題を衝くアクチュアルなフィクション作品を発表し続けている。作家としてのデビュー作『チーム・バチスタの栄光』(宝島社)をはじめ同シリーズは累計1千万部を超え、映像化作品多数。Ai(オートプシー・イメージング=死亡時画像診断)の概念提唱者で関連著作に『死因不明社会2018』(講談社)がある。近刊著に『北里柴三郎 よみがえる天才7』(ちくまプリマー新書) 、『コロナ黙示録』『コロナ狂騒録』(宝島社)、『奏鳴曲 北里と鷗外』(文藝春秋) 。

「2022年 『よみがえる天才8 森鷗外』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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