羽州ものがたり (カドカワ銀のさじシリーズ)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.75
  • (21)
  • (45)
  • (41)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 244
感想 : 63
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048741682

作品紹介・あらすじ

ひとつしか瞳をもたない鷹のアキと暮らす少女・ムメは、都から来たばかりの少年・春名丸と出会った。それが縁で春名丸の父親・小野春風にさまざまなことを教わるムメ。やがて見違えるような娘へと育ったムメは、春名丸との友情をはぐくんでいく。だがそのころ、羽州では都に対する戦いが起きようとしていて-!!それが、東北の地、羽州で起きた「元慶の乱」のはじまりだった。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「天山の巫女ソニン」の菅野雪虫さんの作品。
    平安時代の東北での出来事を描きます。
    羽州とは、出羽のこと。
    児童書のくくりですが、子供だけに読ませておくのは、惜しい!(笑)

    ムメは、村長の娘で4人きょうだいの長女。
    家族の面倒を見たり、鷹の世話をしたり、かいがいしく働く素直で聡明な女の子だ。
    鷹は祖父が飼っているのだが、目が一つしかない鷹アキを可愛がっていました。
    村には、3年ほど前に現れて森の入り口に小屋を建てて暮らしている「カラス」という少年がいる。

    都から赴任してきた小野春風の息子・春名丸が川に落ちたのを助けたムメとカラスは、春名丸と親しくなります。
    春名丸は都から辺鄙な土地へ来て馴染めず、父にも反発していました。
    父親の春風とも顔を合わせるようになったムメ。
    平和な暮らしがあったが、やがて春風は赴任先が変わり、別れの時が来た。

    羽州は、鉄と名馬と黄金の産地。
    干ばつになり、秋田城司の過酷な税の取り立てに対して、反発が起きる。
    カラスは反乱の指導者ジオに取り込まれ、暴動に加わっていました。
    暴徒に対して城司は逃亡、朝廷が数千の兵を送ってくる。
    善政をしいた藤原保則が出羽権守に任命され、小野春風を副官として再びこの地にやってきます。
    戦を収めることが出来るのか、その結果は…

    この地を思いやる小野春風の思い、村人たちを助けたいムメの思い。
    あまり知られていない時代の、暗い出来事は描きにくいと思いますが。
    そこに光を当て、無名の人がいきいきと活躍する読みやすい物語として、意外な面を明らかにしていきます。

    これが、「元慶の乱」。
    この後、秋田河以北の公式な記録は極端に少なくなったのだそうです。
    寛大な方針によって事態は収まり、羽州は「己地」としてある意味、独立を勝ち取っていたのだ。
    70年前の、征夷に抗ったアテルイ(阿弖流為)の結末と混同していたので、はらはらしていたけど、こういうことだったのか…!

    少女ムメの健やかな輝きが印象に残ります。
    現代でも尽きない争い。
    平和は実現できることを、胸に刻みたいと思います。

  • 平安時代の東北の羽州に育った、村長の娘ムメ(梅の意)が主人公。本の裏のあらすじ見ると、恋愛ものっぽいですがぜんぜんそんなことなく(笑)、どちらかというと歴史物っぽかったです。この時代の東北地方というと、都からは遠く離れ、でもアルテイは破れて……というぐらいの知識しかありませんでした。どちらかというと本命はカラスだよね!裏表紙に鋭いまなざしのカラスが!面白かったのですが、読んでいると無性に「ソニン」が読みたくなりました。文庫ででないかな~。X文庫に合うと思うんだけど~。

  • 63:児童書のコーナーで発見。表紙イラストがすごく綺麗なのですが、きっとまた「ソニン」の時みたいに一筋縄じゃいかない展開なんだろうなあと思っていたら、案の定(笑)、大人でも楽しめました。正しいこととは、善政とは。問いかけが素直に届く、シンプルながら深い物語。

  • 前から読みたかった本。
    そして良い作品でした。

    上橋菜穂子さんの狐笛のかなたを思い起こす登場人物ですが、ファンタジー色は薄く史実に近い内容。
    3人それぞれの生い立ちがきちんと考えられているので、感情移入しながら読み込めます。
    登場人物が魅力的なので、続きもあったらいいのに…と思ってしまいます。

  • 菅野雪虫さんの『天山の巫女ソニン』も面白かったけど、これも本当に楽しめた。ただ主人公の少女ムメと片目の鷹アキの絡め?がもう少しみたかったな。ムメとカラスのような民は創作だけれども小野春風、アテルイなど実在の人物や争乱が出てきたりして、そこも興味の尽きないところ。作中の奥州気質も気に入ったなぁ。戦いが人の知を持って終結したところも。

  • 帯に“たつみや章 絶賛!”と書いてありますが、確かに、たつみやセンセ好きそうな良いお話でした。平安時代に秋田県で起きた『元慶の乱』を基にした、友情と治世の物語。歴史的には小さな出来事でしょうが、実に大切な事が描かれてました。主人公の賢い少女・ムメが敵対する立場の側に立っても物事を捉えられる姿勢が好ましいです。ムメ、カラス、春名丸のその後の話もあったらいいのにな。でも、そうすると歴史の話から外れてしまうかw。

  • 今から千年ほど前、平安時代。都は京だが、東北の地・出羽の国すなわち羽州が舞台の話。鉄と名馬と黄金が産地で、よい米が取れる。民は忍耐力があり、働き者で真面目なものが多い。しかしその70年ほど昔(延暦21年、802年)には北の民たちはアテルイを首領に、都の支配と闘ったこともあった。
    村長の長女ムメ(梅の花の意味。15歳)は働き者で、幼い兄弟たちの世話から家の仕事、田畑の仕事などをよくする頭の良い娘だった。鷹飼の祖父から片目の鷹のアキをゆずりうけ、育ててもいる。
    村には一人で小屋をたてて生きている15歳の少年カラスがいる。人見知りで無口で、頭が悪いと思われてもいるが、身体能力はすばらしく、釣りや狩猟は得意だし、細かい作業や道具作りにも長けている。村の中では浮いた存在だが、誰にも分け隔て無く優しく、何よりカラスの事を認めているムメには心を許している。
    そして、都からきた官人・小野春風の息子、春名丸。都から来たため、言葉も通じず、子どもたちからからかわれたりしていた。春名丸自身も都落ちの父をうらみ、羽州の者たちを蔑んでもいた。

    ある時、川の氾濫がおこり、春名丸は水にさらわれた。居合わせたムメが川に飛び込み、ついでカラスが傷を負いながらも春名丸を助けた。
    この事故から3人は仲良くなった。都からきた小野春風は豊かな知識をもち、そしてそれをムメやカラスたちにも学ばせた。

    しかしその幸せな時間は長くはなかった。小野春風は博多へ移ることとなった。そして新たに来た官人は、厳しい取り立てをし、そこに干ばつが重なったのだ・・・。



    作者(福島出身)の郷土愛が伝わってきます。
    読み終わって、ちゃんとハッピーエンドなので嬉しいのですが、
    まだ続きがあってもいいのでは?とも思います。
    小学校高学年〜

  • 時は平安、羽州で起こった「元慶の乱」を、地元の村長の娘と、赴任してきた官吏の息子の視点から描いた児童書。歴史的事実の羅列ではなく、物語になっているので読みやすかった。題材をすっきり調理しているが、皆川博子的に耽美な感じにしてもいいなぁと思った。カラスとジオの関係がちょっと美味しいなと思ったのは内緒です。

  • ソニンに続き、またしても賢く素直でまっすぐな女の子が主人公。
    聞き覚えのある土地が出てきたのも、また楽しかった。

  • Thanks to 「天山の巫女ソニン」, 菅野雪虫 became one of my favorite authors and definitely on my author radar to look out for new books.

    So you can imagine how excited I was when I first heard about this book. I would have gotten it the day it was released, but unfortunately, Kinokuniya is very selective on which books can be sent/sold in America and this book happened to be one that they didn't deem worthy enough.

    After reading this book, I was glad to find that I still love this author. It wasn't as marvelous as ソニン's story, but still well done. I can't wait for what the author has in store next. *hint*moreソニンplease*hint*

全63件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1969年、福島県南相馬市生まれ。2002年、「橋の上の少年」で第36回北日本文学賞受賞。2005年、「ソニンと燕になった王子」で第46回講談社児童文学新人賞を受賞し、改題・加筆した『天山の巫女ソニン1 黄金の燕』でデビュー。同作品で第40回日本児童文学者協会新人賞を受賞した。「天山の巫女ソニン」シリーズ以外の著書に、『チポロ』3部作(講談社)、『羽州ものがたり』(角川書店)、『女王さまがおまちかね』(ポプラ社)、『アトリと五人の王』(中央公論新社)、『星天の兄弟』(東京創元社)がある。ペンネームは、子どものころ好きだった、雪を呼ぶといわれる初冬に飛ぶ虫の名からつけた。


「2023年 『YA!ジェンダーフリーアンソロジー TRUE Colors』 で使われていた紹介文から引用しています。」

菅野雪虫の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×