ばんば憑き    

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 1727
レビュー : 290
  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048741750

作品紹介・あらすじ

湯治旅の帰途、若夫婦が雨で足止めになった老女との相部屋を引き受けた。不機嫌な若妻をよそに、世話を焼く婿養子の夫に老女が語り出したのは、五十年前の忌まわしい出来事だった…。表題作「ばんば憑き」のほか、『日暮らし』の政五郎親分とおでこが謎を解き明かす「お文の影」、『あんじゅう』の青野利一郎と悪童三人組が奮闘する「討債鬼」など、宮部みゆきの江戸物を縦断する傑作全六編。

感想・レビュー・書評

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  • 江戸の下町を舞台に、怪談めいた不思議な人情話6篇。

    一つ多い影の正体を探す「お文の影」には、ぼんくらシリーズでおなじみの政五郎とおでこちゃんが出てきて、政五郎の大親分でおでこに大量の昔の捕物話を語ったのが回向院の茂七親分なんだねー。
    「討債鬼」で、討債鬼が憑いていると殺されそうになる信太郎を助けるために奔走する手習所の青野先生や行然坊も、「あんじゅう」以前のお話で、宮部江戸ワールドが広がりました。

    その他の、掛け軸の壺の絵に坊主が見えたことで、疫病を避けられる聖の力を受け継ぐ「坊主の壺」
    飢えた心からできた化け物博打眼を狛犬と犬張り子さんたちと退治する「博打眼」
    化け猫お玉と、人を殺めた記憶のために化け物となった木槌を成仏させる「野槌の墓」

    どれも人の心の弱く醜く恐ろしい部分に付け入るような物の怪が出てきてぞっとするけど、最終的には慰められるお話になっています。
    怖いだけじゃなくて味わい深いいいお話しばかり。

    でも、表題作の「ばんば憑き」はなぁ。
    殺められた者の魂を呼び出して、殺めた者の体に宿らせることを、とある土地の言葉で「ばんば憑き」というそうで。
    入り婿で道具のように扱われる立場の佐一郎が、旅中の宿で出会った老女の昔語りを聞くのですが、最後の佐一郎の思いが怖い。
    切ないが怖いよー。

  • 宮部さんの江戸ものには、時代は違えど、そこここに人々の営みや心のごく当たり前の在り様が丁寧に描かれます。

    こうありたい、あれが手に欲しいと。
    でも理不尽が身近について回るのが世の常。

    頑張れば必ず報われる。そう信じたいもので、精一杯生きることで、結果も手に入れられれば一番嬉しいのですが、哀しいかな。果実が手に入らないことの方が多いのかもしれません。

    人々の心のにある温かみや賢明さと同時に、狡さや傲慢さや弱さもあるのが人間。恨みもつらみも、決して他人事ではないと、登場人物たちが交錯して織りなす短編集に世の常を感じます。

    6編のなかには、以前読んだ『日暮らし』に登場する政五郎親分とおでこが再登場したり、『あんじゅう』の青野先生と三人組が奮闘して、親しさを感じたり、宮部ファンならではの愉しさも味わえました。

    ぞくぞくするものもあって、良かったのですが、やはり時代物は長編の方が好みです。
    そろそろ三島屋シリーズの続きも読みたいな。

  • 6編の怪奇譚。
    表題作の「ばんば憑き」は大店に婿入りして肩身の狭い暮らしをする男が似たような境遇かと思われる旅先で出会った老女の不思議な身の上話を聞くこととなる。
    死者の魂を殺害者の身体に埋め込み、死から蘇る「ばんば憑き」という風習があると。
    男は話を聞いたあとに自分の窮屈な人生を感じ、これからは自分の思ったような歩き方をしてみるかという思いになる。定められた変えようのないと思い込んでいた人生も見方を変えて腹をくくれば景色が変わる。
    「野槌の墓」
    古い道具の類が化けると付喪神(つくもがみ)となる。
    けれどある悲しい過去を持つ木槌が成仏できずに人を襲っている。そのような化け物にしてしまったのは人間の非道であり被害者とも言える道具の悲しさが哀れ。

  • ぼんくらのスピンオフのお話も収めた短編集。妖も怖いけど何より人の心が怖い。

    当時の貧困に加え、折檻され犠牲になった子供達のお話も多く…現代も虐待が問題になっているので題材に選ばれたのかな。

  • やはり短編でもしっかり読ませるなぁ。読んだ時代モノ全てにおいてハズレ無し。
    女性や子供を肝にしている話が多かった。

    ・坊主の壺 疫病を背景とした役割と厄介。「おつぎ」は選ばれるべくして選ばれたと感じる。名は体を表すとはまさにこの事。
    ・お文の影 最初は幽霊話かとヒヤっとするも、お文の経緯は聞くに堪えない理不尽さ。たった一人の友達は影絵遊びの影さん。悲しさと願いでホロリとする話でした。
    ・博打眼 見た目も経緯も不気味で残虐的な妖怪。だが、その解決の肝となるお美代、阿吽さん、犬士さんがとても可愛らしい。
    ・討債鬼 主人が屑すぎる。兄のものを全て手に入れ、挙句に女も作るが責任取らず。そんな後ろめたさがあるから与太話にも付け込まれる。その与太を逆に利用し、災いに苦しむ妻子を救い出す流れは鮮やかだった。
    唯一、利一郎の過去はやるせない悲劇でした。
    ・ばんば憑き 禁忌の術とでもいうべきか。妻の本性をしった佐一郎。正しいとは言えないが、気になります。
    ・野槌の墓 ザ・妖怪!人に仇為すものでない妖怪からの頼み事。子の犠牲と心が破けた槌を救う。その手間賃は妖怪ならではの粋な計らいだった。

  • 時代物の短編集。お文の影におでこさんが出てた。
    宮部さんの時代物は、人の心が暗闇に何を見るか見せるか、そのあたりが恐い。

    ばんば憑きの佐一郎さんも、いい人にしかみえない。
    お松さんの人生の結末を見て、その人生が誰の人生だったのか、しみじみと想いながら、それなのにばんば憑きの方法をいずれに備えて調べようと思う佐一郎が怖い。
    このままでは、そうなるかも知れない。そう分かっていながら、その道を歩くしかないのは人間の弱さなのか、したたかさなのか。

    博打眼も、それが作られた理由と方法を思うと、弱いと言うことは暗闇に近いと言うことなのかも知れないなと思う。

  • 表題作がせつない。知ってしまったゆえの、行き場のない気持ち、妄想に逃げるしかない心。人の心は悲しくて恐ろしい。

  • 「坊主の壺」「お文の影」「博打眼」「討債鬼」「ばんば憑き」「野槌の墓」の六編からなる短編集。「お文の影」はぼんくらシリーズの番外編、「討債鬼」は三島屋シリーズの青野利一郎のプロローグ?として楽しめた。
    人間は恐ろしいものをこしらえて、それに苦しむのもまた人間。「ばんば憑き」の最後で優しい佐一郎の心にも何か暗いものが生まれ、誰の心にも鬼は巣くうことができるのだと、分かりきった事だけどやはり悲しくなった。
    締めくくりの「野槌の墓」の最後は救われる思いがしてジーンときた。源五郎右衛門いいわぁ。


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    【あらすじ:「BOOK」データベースより】
    湯治旅の帰途、若夫婦が雨で足止めになった老女との相部屋を引き受けた。不機嫌な若妻をよそに、世話を焼く婿養子の夫に老女が語り出したのは、五十年前の忌まわしい出来事だった…。表題作「ばんば憑き」のほか、『日暮らし』の政五郎親分とおでこが謎を解き明かす「お文の影」、『あんじゅう』の青野利一郎と悪童三人組が奮闘する「討債鬼」など、宮部みゆきの江戸物を縦断する傑作全六編。

  • やはり宮部さんの江戸物は秀逸です。どの話もちょっと怖いけど、どこかあったかい気持ちになるのは子供が出てくる話が多いから?人情厚い人が多いから?
    最後の「野槌の墓」は、私の中では宮崎アニメかまんが日本むかしばなし的映像が浮かんでました。物の怪のキャラがまんがチックだったのかな?

  • 江戸時代の市井を舞台にした怪奇譚。お文の影では、「日暮らし」などにでてきた、おでこや政五郎親分が、討債鬼では、おちか百物語シリーズの青野利一郎やいたずら3人組など、知った顔が出てくるのがなんともうれしい。他の話の登場人物も、どこかで出てきたんじゃないか!と気になって気になって結局、全部調べてしまった。

    少しホロリとしたり、ぞっとしたり、あまりにも痛ましい事件に胸が痛んだりしつつ、やはり怖いのは妖ではなく人間なのだなぁと思わずにはいられない。

    「あやし」とか、短編小説も面白いけれど、やはり長編が好きです。初物語は続きないのかな…。お初ちゃんのその後も気になるし…。おでこには絶対また会いたいし(長編で!)
    最後の野槌の墓に出てくる猫又もかわいかった!

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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