県庁おもてなし課

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  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048741828

感想・レビュー・書評

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  • これはどこまでフィクションなのだろうと思うくらい
    リアルな感触の小説だった。

    高知県で発足した「おもてなし課」は、とりあえず、と観光特使の企画を立ち上げたが、特使の一人である人気作家、吉門喬介に激しいダメ出しを受ける。若い担当者、掛水は四苦八苦しながらも、吉門の指摘に真摯に取り組み始める。吉門の紹介でコンサルタントとして関わることになった清遠は、かつて、壮大な観光ビジョンを持ちながら、県庁を去った人物だった―。

    というあたりからお話は始まる。

    掛水と、嘱託でパートナーを組む、明神多紀。
    作家、吉門喬介と、清遠の娘で、かつての義理の妹、佐和。

    このふた組の恋模様が絡みながら、高知県の観光立県化に取り組む
    人々の奮闘が描かれている。

    取材だけでこんなに行政組織のことがリアルに書けるものかなと
    有川さんの小説を読むと毎回思うのだが、今回もその思いは強い。

    公務員だからといって、遊んでいるわけではないし、
    やる気がないわけでもない。むしろ、

    「あの人に対してはOK」「この人に対してはNO」というような不公平は
    法治国家では、あってはならないことなので、どうしても、そこをなんとか
    できそうじゃないの?という見切り発車ができない。

    大切な税金で事業を立ち上げたからには、
    ある程度有用性のあることをやらないければいけないからだ。

    切ないほど真面目なのが役人だが、そこは伝わりにくい。

    行政のやっていることというのは、

    「今日やって、はい明日に結果が出ます。」

    というものではないだけに、取り組みに根気がいる。
    ところがすぐ分かりやすい成果が出なくても、
    やらなければいけないことはある。

    だが現在のように、必要な期間を行動しながら待って、何かの施策を住民とともに育てる余裕がなくなっていることは、元地方公務員として、残念なことだと思う。

    そんな忸怩たる思いも、軽やかに行動しにくいつらさもその中で真剣に仕事をしている人の姿もこの小説は余すところなく描いている。

    もちろん、お客様である住民の目線も、忘れてはいない。

    批判も、評価も余すところなく盛り込まれていることが、
    小説の厚みを増し読み応えを増幅させている。

    この本の中で、掛水やおもてなし課の人々は、大きく飛躍する。

    予算のない中で、こんなこと、どのくらい出来るかな、という逡巡の中で
    何かやるのにも、お金がないから踏み切れない、というジレンマを
    必死に知恵で補ってゆく。

    多くの読者は、これを恋愛小説としてお読みになるだろう。

    確かに恋愛小説として読んでも、ふた組のカップルの顛末は爽やかで
    吉門と掛水の友情も、いかにも男同士といった感じで、読んでいて
    微笑ましい。

    でも、これは行政小説として読んでも、やはり一級品なのだ。

    恋愛小説としてのレビューなら、既にたくさんありそうなので
    私は違う切り口から書いてみた。

    掛水と吉門、どちらがいいかと言われたら、個人的に好きなのは吉門。
    でも一緒に暮らして幸せなのは掛水だと思ったことは、書いておく。

    それと、全編で繰り広げられる土佐弁の会話が、なんとも味がある。
    お国言葉とは、なんと血の通ったものだろう。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「土佐弁の会話が、なんとも味がある。」
      地元を良くしようと、頑張ってる感じがストレートに伝わってきて良いですよね、、、
      映画で実際に耳にする...
      「土佐弁の会話が、なんとも味がある。」
      地元を良くしようと、頑張ってる感じがストレートに伝わってきて良いですよね、、、
      映画で実際に耳にすると、どんな感じに聞こえるか今から愉しみです。。。
      2013/02/05
    • 瑠璃花さん
      >nyancomaru様

      レスつけたつもりでいました。
      ごめんなさい!

      映画、私も楽しみにしています。
      清遠さんをどなたが演じられるのか...
      >nyancomaru様

      レスつけたつもりでいました。
      ごめんなさい!

      映画、私も楽しみにしています。
      清遠さんをどなたが演じられるのかな。
      公式サイトを後で見ることにします。

      美しい言葉というのは、情味を伝えて
      なお耳に美しいものだと思うので、
      郷里の言葉を持っている人って
      とても素敵だなあと思います。

      役者さんはお稽古が大変なのでしょうね。
      自然に聞こえなきゃいけないから。

      映画を観た後で読み返すのもいいかも
      しれませんね。
      2013/02/19
  • 有川節炸裂な爽やかーなお話。
    キャラがみんな素敵やぁ。掛水くんと明神さんがホンマに居そうで、好感(*^^*)

  • あー、おもしろかった。登場人物がこれでもか!っていうぐらい動くし、いやぁそれは!っていうぐらい照れ臭いセリフをはく。
    だからこそ読みはじめると止まらなくてぐいぐい読み進めてしまう。元気がでる。それは今回も期待通り。

    それに、読んでいくにつれてどんどん高知に行きたくなってくる。正直、高知のことは四万十川しか知らなかったけど、体験ものがたくさんできることとか美味しいものが食べられるとか、知識がついてくる。
    そうするとカラダがうずうず。

    それに、今までは気にもとめていなかった行政の観光パンフ。まるで色がついたみたく、目にとまりだした。日本って、いいかもしんないなぁ。って。

    わたしもおもてなしマインド持ってすごそう。きっと、住んでるところがもっと好きになるはずだから。

  • 高知県に実際あるおもてなし課
    作家のお兄ちゃんと、民宿の手伝いをしている妹、最後はうまくいって良かった。
    馬路村の手作りの看板が面白い! 「シシのお山へ。迷うき行かれん」「けもの道へ。行かれん、行かれん」

  • あっという間に読み終わってしまった。
    地方観光行政という地味な題材だけど、ちゃんと盛り上がりもあり、話の落としどころも現実的、とバランスの良さが光っていた。

  • 高知県庁勤めで民間の世界を知らない主人公と、観光特使になった高知出身の作家がどうにかして高知県を観光県にしようとするお話。
    泣きながら読了。
    命のやりとりとかそんなの全くないのに何でこんなに泣いたんだろ。
    清遠さんがやめさせられちゃうってわかって、佐和さんが駆け込んで来た時が一番泣いた。完全に悔し涙だった。
    固いお話かと思い来やそんなことはなく、やっぱり恋愛いれますよねだって有川浩だもの!
    いやしかし主人公は結局告白しないで終わったなぁ(笑)どっちかってと掛水さんと吉門さんの友情の方が強かった。

  • 読めば高知に興味は持つ本。
    前半はテンポよく進み有川節の気持ちよさを堪能できる。
    後半は無理やりイベントを付けました感が強く流れはよくない。
    でも、この人の本は安心して読めるし、何より読了感がよいのでお勧めできます。
    また巻末の県庁の方々とのお話も、より高知への興味をかき立てます。

  • あー面白かった!実に中身の詰まった1冊でした。内容の一つひとつに、しっかりとした構成がされていて、どういう手順を追って、こういうな結論に辿りつく、っていう経緯がものすごく魅力的に書かれてる。お役所の頭の堅さには笑わされました。色んなものをすり合わせようとすると、どんどんめちゃくちゃになっちゃって、収集がつかなくなっちゃう。国の、県の組織だからこそ、それが足枷になってしまうこともあるんですね。おもてない課と掛水のために一生懸命な頑張り屋さんの多紀ちゃんがかわいかった。吉門さんは本当に憎めない人ですね~。有川さんお得意の、魅力的な男性でした。

  • 地元があるっていいなって思いました
    いや、自分にもあるけど。
    高知県を舞台にした話。

    掛水さんに、役所の人にいらいらして
    でも掛水さんの成長にわくわくして
    たきちゃんになりたいなって思って
    吉門さんにきゅんきゅんして
    佐和さんに想い入れして
    清遠さんに憧れる

    郷土愛を羨ましく思って
    高知が魅力的に見えてくる物語

    ってことで友達と高知へ旅してきました
    馬路村行ってきました

    知れてよかった

  • 有川浩が高知出身で、いかに郷土を愛しているかが分かる。
    高知弁が炸裂している。

    自治体における課題をかなり適格に表現している。
    内部での意見が、いかに通らないかが如実に分かる。

    2人の女性の意思が,2人の男性に届いているところがベタ甘作家の本領発揮。

    社会的な活動と個人的な活動の均衡がよい。
    一方だけだったら味気ないか、甘過ぎるかに偏るだろう。

    有川浩の平衡感覚に乾杯。

    ps.
    参考文献もよい。
    http://www.amazon.co.jp/lm/R271G671DNV5ZZ/

    参考文献が、一部の出版社,一部の著者に偏っていない。

    残念なのは、
    http://booklog.jp/item/1/B000J78BZA
    http://booklog.jp/item/1/4769351313
    などの事例集が参考文献にないことかも。

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著者プロフィール

有川 浩(ありかわ ひろ)
1972年高知県生まれ。PN由来として、「有川」は書店に本が並んだ時に「あ」から始まる名前として、著者五十音順で棚の最初のほうにくるから。「浩」は本名から。
2003年『塩の街 wish on my precious』で第10回電撃ゲーム小説大賞を受賞。2006年『図書館戦争』で「本の雑誌」が選ぶ2006年上半期エンターテインメントで第1位を獲得し、さらに2008年には同シリーズで第39回星雲賞日本長編作品部門を受賞。映画化もされた代表作となる。
『植物図鑑』で第1回ブクログ大賞小説部門大賞、『キケン』で第2回ブクログ大賞小説部門大賞を2年連続で受賞。2011年には『県庁おもてなし課』で「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2011」で総合1位と恋愛小説1位、第3回ブクログ大賞小説部門大賞を3年連続で受賞。2012年『空飛ぶ広報室』が「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2012」で小説部門第1位。
その他、ドラマ化作『フリーター、家を買う。』、映画化された『阪急電車』『県庁おもてなし課』『植物図鑑』などが代表作。

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