ジェノサイド

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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レビュー : 1958
  • Amazon.co.jp ・本 (590ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048741835

作品紹介・あらすじ

急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入するが…。

感想・レビュー・書評

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  • 最後の最後まで綱渡りの連続。
    ドキドキハラハラの読書時間だった。

    著者の人間という生き物に対する評価は厳しく、それに反論する術がないように私には思える。
    この物語の中では研人と正勲の存在が何よりの希望だった。
    終盤、逃げろという警告に逆らう研人の姿に感動した。
    薬を届けるために危険だと分かっている場所に乗り込む姿にも。

    たくさんの人が死んでいくけれど、死んだ人が悪人で生き残った人が善人だというわけではないのだろうと思った。
    物語を読んでいるとどうしても助かってほしい人と、この人さえいなければと思ってしまう人が出てくるけれど、それは読者の視点がある程度固定されているからではないかという気かがする。
    感情移入しやすい相手としにくい相手がどうしても出てきてしまう。
    日本人であること以外の情報がほとんど明かされなかったミックは、感情移入しにくい相手の典型ではないか。
    それでも私は彼が死んでしまったことが悲しかった。
    チームの誰とも心を通わせられなかった彼のことが悲しくて仕方なかった。

    私が毎日同じ時間に起きて、同じ時間に電車に乗って、ほぼ同じ時間に会社を出て帰宅しているのと同時刻に、生きるために病気と闘っている人や自分を殺そうとする相手から必死で逃げようとしている人がいる。
    知らないわけではない。
    でもそれは実感には程遠くて、今日あった小さな嫌なことよりも私の脳内での重要度は低くなっている。
    時折思い出しては、私は一体何をしているんだろうと自己嫌悪に襲われるけれど、だからと言って何が出来るというわけではない。
    この物語の中で行われるジェノサイドに気分が悪くなりながら感じたことは、私にはこの残忍な行いを非難することは出来ないのではないかということだった。
    自分の手で誰かを殺したことはないし、人の尊厳を踏みにじったこともないと思っている。
    でも、私はこの世界でのうのうと生きているではないか。
    苦しんでいる人の存在を知りながら、テレビの映像に眉を顰めながらも自分の欲望を優先しているではないか。
    ひどいと感じながらも、では自分は?という問いかけにさらに気分が沈んでいった。

    どう生きるべきなのかなんて、考えれば考えるほど判らなくなる。
    誰かが正解を提示してくれたとして、それを実行出来る自信がない。
    あまりに無力で、臆病で、怠惰で、ずる賢いのだ。嫌になるくらいに。

    心に残ったセリフがある。
    「もう安心だよ。ここには戦争はないからね。この国の人たちは、もう戦争はしないと決めたんだ」
    この言葉を読んだ時、いつまでもそう言い続けられる国であってほしいと心から思った。
    周辺国の動きであるとか、国内の事情だけでどうにか出来ることばかりではないのだろうけれど、「やめたんです」と言い切ってしまう頑固さがあってもいいのではないだろうか。
    誰がどうするとか、どう言ったかなんて関係ない。ただ私はやめると決めたんです、と。
    自分が正しいと信じたことのために命を懸けたこの物語の主人公達のように真っ直ぐに、そして頑固に、言い切ってしまってもいいのではないだろうか。
    それはこの国に生きる人間が善良であるとか、高潔であるとか、そんなことではなくて、それによって罪悪感が減じるとか考えているわけでもない。
    ただ、研人が口にしたその言葉はどこまでも優しくて、強いと思った。
    ちょっと泣きそうにもなった。
    生きるための闘いが、戦争という手段を選ばなくなってほしい。湧きあがってきたのはそういう思いだったのかもしれない。

    • 九月猫さん
      takanatsuさん、こんにちは。

      takanatsuさんが選びそうにない本(わたしの勝手なイメージですが)
      だったので、オドロキ...
      takanatsuさん、こんにちは。

      takanatsuさんが選びそうにない本(わたしの勝手なイメージですが)
      だったので、オドロキました。
      この本、とても気になってるんですけれど、
      恐ろしいタイトルに腰が引けまくりで・・・(^^;)
      やっぱり死人が多そうですけれど、読後感はどうでしたか?
      読後感がよさそうなら、読みたいです。
      2013/07/20
    • takanatsuさん
      九月猫さん、コメントありがとうございます!
      ご想像の通り、最初はタイトルが怖そうだからと避けていたのですが、ブクログの高評価のレビュや会社の...
      九月猫さん、コメントありがとうございます!
      ご想像の通り、最初はタイトルが怖そうだからと避けていたのですが、ブクログの高評価のレビュや会社の人の「面白かった!」の一言で読む気になりました。
      最後は爽やかに閉じられていますが、途中の戦闘シーンや殺戮シーンは気持ちが悪くなりました。
      私は救いが欲しくて続きを読まずにはいられなくなりました。

      興味深く読めるところもあるし、ドキドキハラハラして面白いところもあるし、人間も捨てたものじゃないよ!と思えるところもあります。
      でも、気分が沈むところもたくさんありました。

      読後感はどうだったかと言われると、そんなには良くなかったかもしれません。
      物語のハッピーエンドに良かったなと思う一方で、どよんと何かが沈殿している感じがあったように思います。

      …ううむ。プラスなことが書けなくてすみません。
      でもすごく引き込まれる作品でした。
      2013/07/20
    • 九月猫さん
      takanatsuさん♪

      わっ、さっそくのお返事ありがとうございます!
      むむむっ、なんだか読んでいる間中、気持ちが、
      上がったり下...
      takanatsuさん♪

      わっ、さっそくのお返事ありがとうございます!
      むむむっ、なんだか読んでいる間中、気持ちが、
      上がったり下がったりぐるぐるしたりしそうな作品ですね。
      ラストは爽やかとのことなので(どよんともするようですが;)、
      すんごい元気でハデな映画を観た後なんかに、
      同じ勢いで読んだらいいかも、ですね。

      残酷な描写があっても、読んでいるかたが多くて、評価も高いってことは、
      それだけ心をつかまれる何かがあるってことですものね。
      うん、いつかチャレンジすることにします!

      教えてくださって、ありがとうございました(*´∇`*)
      2013/07/20
  • 急死した父親から届いたメール。
    そこには不可解な頼みごとが綴られており、その最後には、決して誰にも言わないようにとの言葉が書かれていた。
    理由も目的もわからないまま父の遺志を継ぎ研究をすすめる、大学院生の息子、研人。

    一方、難病を患い余命いくばくもない息子のための治療費を得ようと、アフリカへ向かう民間軍事サービスの傭兵、イエーガー。

    どこにも接点の見当たらない2人。
    東京の研人とアフリカにいるイエーガーの人生が交錯する。

    研人の行動を国防を阻害するものだとして排除にかかるアメリカの諜報部。研人の知人や友人、家族にもその手が及び、いよいよ追い詰められていく。
    行動範囲が狭められ大切な人たちにも近づけなくなっていき、その孤独は増す。


    読んでいると、はらはらする。息が詰まる。
    しかしながらすべてを投げ出して、その場から消えてしまいたくなるような、もうどうにでもなれといった投げやりな気持ちは湧いてこない。
    それは、研人のそばには、正勲という信頼できる友人がいて、彼の研究を支えてくれるからだ。彼は、研人が警察に追い詰められて、自分にも危機が迫ってきていると知ったときも、最悪の場合の結果よりも、うまくいったときに起こるであろう良いほうの結果を信じる明るさがあり、研人のことを決して見放すことはない。
    危険を回避できるようにアドバイスを与えてくれる人もいる。

    だからだろう。
    極限まで追い詰められていても、肉体的には厳しい状態であっても、
    信頼できる人が近くにいてくれて、自分がやり通したい使命があることが、未来を感じさせてくれる。
    必ず人を助けると決意した彼はますますタフになり、折れない心を持つことができた。

    多くの人たちが登場し、それぞれの行動は複雑で、それぞれの利害のためにランダムに動いている。それでも多いとはいえ、地球上には有限の数の人間しかいないわけで、驚くほど離れている人たちが絡まっていることを思わずにはいられない。
    あちこちに様々な伏線を張りながら、きっちりと回収されていき納得の結末が用意されている。

    バイオレンスもあり、目をふさぎたくなる部分もあった(きっと現実の方がもっと醜いことが多いと思うけど)
    現実の世界でも起こっているのでは、と恐怖を感じる作品でもある。
    それでも、大いに希望の持てる結末と普通の人が必死に生きるその先にある良心や使命を存分に堪能した。
    大きな仕事をやり終えたかのようにふぅと息を吐いて余韻を楽しんだ1冊。

    • だいさん
      試料解析室のおばちゃんは、機器の操作とデータを見て予測できる、という件がありましたよね。
      こういう人が研究を支えているのだなぁ~、と感心しま...
      試料解析室のおばちゃんは、機器の操作とデータを見て予測できる、という件がありましたよね。
      こういう人が研究を支えているのだなぁ~、と感心しました。
      2013/09/07
    • nico314さん
      だい▽さん、こんにちは!

      私もそう思いました。
      創薬って膨大な時間とお金をかけて実験を積み重ねても、
      完成したりしなかったりと気が...
      だい▽さん、こんにちは!

      私もそう思いました。
      創薬って膨大な時間とお金をかけて実験を積み重ねても、
      完成したりしなかったりと気が遠くなりそうです。
      閃いたり何かを見つける人と、職人さんのように誰にも真似できない
      技を持った人たちによって成立しているのでしょうね。

      ちょっとだけ登場する人たちにも想像力がかき立てられて、
      映像を見ているようでした。
      2013/09/07
  • 医薬品開発の関する物語だと聞いていたので、ある程度読み始めに内容を予測する。ジェノサイド?ジェノタイプ?とイメージが錯綜した。人類の進化という話になっているので、同じミスリードをする輩がいるかも知れず。(いないか)。

    新人類が生まれる可能性と、土地柄。自然の淘汰、人間の淘汰。先祖がえりなのか、進化なのか、が生まれたときには、どうするのか?現代の医学では、どう評価し、何を行う?そのまま育っても、社会が順応しない?昔ほど、他者に優しい社会では、なくなっている。弱者は、まれびととして保護育成されるべきなのかもしれない。

    もう一方の伏線となる、米国監視システムのこと、エンシュロン。技術は、ここまで進んでいるのか!と大変勉強になった。何が使われているのか良く分からないが、スゴイ、ヤバイ、と思う。それと共に人類を、代表するべく、米国大統領とは、馬鹿の代名詞であることが、明らかにされている。どうして、これほどに戦争好きな国民性なのだろうか?

    エンシュロンの監視は、拡大する。コンピュータを使わない現代の姿が、創造できないごとく。大国である、米国には、PCを基から制御する仕組みを構築できる可能性が高い。閉鎖的な仕組み、一企業による独占は、この業種では良くないことなのかもしれない。国家が行えば、正義となる。オープンソースでも、同様なことがありえるのかもしれないが?情報とはまさに、容易に、操作可能なものなのかもしれない。

    薬の化合物の検証、これほど短時間では同定することは、無理であろうと思われる。

    登場人物が多いため、各人のキャラ立ちが悪いと思う。
    物語の構成は、大風呂敷の後の収束が、出来ていない。どうしても、ラストの幕引きが、駆け足になってしまう気がする。

  •  これはすごい。なんとスケールの大きい作品。万城目学の書評として、この本の帯に「これを書いた人はどういう脳みそをしているのか」と書かれてあったけど、確かにそう思う。

     まったく別々の3つのシーンが同時進行で展開していく方式で書かれているので、頭を切り替えて読むのがなかなか大変だったし、薬学の専門用語がばんばん出てくるので、序盤は読むスピードがなかなか上がらなかったけど、研人くんが警察の追及を逃れて自分のアパートから逃走して、新薬を作り始め、イエーガーたちが、ガーディアン作戦に着手したあたりから、もう、早く続きが知りたくてたまらなくなった。
     
     ただ、研人たちの日本シーンはともかく、イエーガーたちのコンゴシーンは残虐な描写が多くて、すごく怖かった。これ、現実?これが人間のすること?って何度も思った。
     ヒトは同属を大量に殺す唯一の生物であると書かれていた。おろかでちっぽけで、それを認めることもできない生き物。食欲と性欲から逃れられないのに、それを理性で制御できていると思い込んでいる生き物。なんて、悲しいことなんだろう。
     殺戮の描写、レイプの描写が出てくるたびに、「こんなの本の中の話だから」と現実逃避する自分が出てきたけれど、それは、私が知らないからにすぎない。実際にコンゴやルワンダでは、こういったことが起きており、何も悪いことをしていない人を、同属である人が殺しているんだろう。

     コンゴの大激闘を終えて、仲間を殺して失って、そんなイエーガーが「オレ何やってんだ。これって正しかったのか?」と考え、困惑して泣くシーン。つられて仲間4人全員が泣くシーン、私も泣けた。アキリまでもが泣いて。
     お願い、アキリ。お願いだから、人間に絶望しないで。自分と、そして自分以外の他者の命も大切に思ってほしい。

     人間は殺し合うけど、助け合うこともできる。見返りなく他者のために動くことができる、面もある。私はそう信じたいんだけど、それは甘い考えなのかな?人間まだまだ捨てたものじゃないって、思われたいし、思わせたい。私はそんな人間でありたい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「人間まだまだ捨てたものじゃないって」
      私も同じように思ってます。きっと作者は同じ思いの仲間が増えるコトを願っている筈です!
      「人間まだまだ捨てたものじゃないって」
      私も同じように思ってます。きっと作者は同じ思いの仲間が増えるコトを願っている筈です!
      2012/09/19
  • 久しぶりに小説などを読んでみましたが、
    非常に面白い。

    ハードカバーでボリュームも有りますが一気読みです。

    満点つけちゃいましょう。

    題名のジェノサイドにあるように
    戦争の模様も書かれているため、
    かなりグロテスクな描写も含まれます。

    とても取材された、バックボーンのしっかりとした
    リアリティを感じさせてくれます。

    事実じゃないのか?と思えるほど、
    まぁフィクションなんですけどね。

    メインストーリーからはずれますが、
    戦争についての表現があるので、
    どうしても人間の獣性について考えさせられます。

    なんとバカなのか、
    人が人を殺すことの異常さを人間は理由を付けて逃げています。

    人に対して優しくなれる
    気がします。気がするだけだけど、
    人を責める、攻めることのバカらしさを強く感じます。

    残虐的なグロテスクな表現を生理的に受け付けないということがなければ
    非常におすすめの一冊です。

    そのエグさもリアリティを感じさせているのですがね。

  • 面白い。面白すぎる。

    はじめから終わりまでずっと読ませる。
    ミストリ好きにもたまらないカラクリが綴じ込まれている。

    テーマも大きい。
    人は生きるべき種族なのかと問いかける。

    アクションもある。
    冷徹な現実を目を覆いたくなる描写で叩きつけてくる。

    ひさびさに読み応えのあるワクワクしっぱなしの作品でした!

  • 世間の話題にたがわず、面白かったです。これぞ、エンターテイメント小説!読んで絶対に損はさせません。
    多分、読書の楽しみを知らない人は、こういう本を読んだことがないのでしょう。お気の毒に。
    何しろ、話の展開も広がりも多岐に渡っていて、飽きさせません。当初、読み始めた時とは、全然違う方向にあれよあれよという間に引き込まれて行きます。
    ちょっと、中だるみと発散的なところもありましたが、結果オーライ。
    昨年のベストワンを総ナメしたのも頷けます。
    読むべし、そしてエンタメ小説の世界に君もハマるのだ。
    この面白さに匹敵する小説など、まだいくらでもありますから・・・

    読んで、語って、楽しみましょう。読書が趣味で良かった。

  • 面白いとか、面白くないとかいう次元ではなく、読み終わって、腹立たしさしか感じなかった。

    確かに良くできた話だと思う。ストーリーの展開は確かに面白い。
    ただ、ジェノサイド(虐殺)をタイトルにしている以上、人間の残虐性を強調するのは当然としても、そこは、人間という種の残虐性を現さなければいけないはず。どうして特定の民族の残虐性だけを強調し、貶めようとするのか。

    具体的に言うと、アメリカ人と日本人を必要以上に残酷に描き、貶めているような印象を受ける。
    特に、日本人については、南京虐殺や、関東大震災の時の朝鮮人への虐殺など、歴史的に見てその信憑性に疑問のある事例を殊更強調しているのが目につく。
    特に、南京虐殺については、参考文献に何冊か資料が見受けられるが、おそらく肯定派の本なのだろう。(確認したわけではないので申し訳ないが)否定派の文献もたくさん出ているのに、全く目を通さなかったのだろうか。

    そして、それとは対照的に、不自然に韓国を美化しているのが気になった。
    主人公の協力者として登場す韓国人留学生。彼の存在がどうにも不自然に感じた。最後まで読んでも、ここで韓国人をわざわざ登場させる意味がわからず、別に日本人でも全く問題ないのでは?と思ってしまう。
    彼を通して韓国を美化するエピソードがいくつか語られる。それが間違っているとは言わないが、散々、他の民族の残虐性を強調しているなかでは、妙に違和感を感じてしまう。
    そして、韓国人留学生が登場したことで、物語の本筋とは全く関係ない、主人公の祖父や伯父が朝鮮人を毛嫌いしていた、というエピソードが語られるのだが、作者はここで、祖父や伯父を差別的と断罪し、主人公にこう語らせる。"愚かな先祖を持つと、末代が苦労する"と。話の流れからして、おそらく作者の思いを代弁したのだと思われる。
    ふざけるな、と言いたい。今の日本の繁栄は誰のおかげなのか。自分の先祖は間違った事をしたが、自分は正しいとでも言うつもりなのだろうか。

    これは、エンターテイメントの形をとったプロパガンダ小説だ。

  • とても面白かった!!!
    久々に手に汗握るようなSFを読んで、満足感でいっぱいです。

    高野さんってこういう作品も書けるんだ、と正直驚きました(笑)
    巻末の膨大な参考文献の数からも、想像を絶するような勉強と取材を
    重ねられたんだろうなぁ、というのが伝わってきましたね~。
    (ま、貴志さんの「天使の囀り」あたりに比べるとツメの甘さもあるけれど)

    ジェノサイド=集団虐殺。
    この不穏なタイトルの意味する事が分かった時、鳥肌が立ちました。

    アフリカのコンゴで、ある極秘の暗殺任務を請け負った4人の傭兵。
    同じ頃日本では、大学院生が急死したはずの父親からメールを受け取る。
    そして、アメリカ・ホワイトハウスでは水面下で活動する各機関の幹部達…

    コンゴでは一体何が起こっているのか?
    何故特定の民族の虐殺を命じられたのか?ウイルスか?それとも…

    あちこちで専門的な用語が出てくるものの、
    これだけ勢いで読ませてくれる作品は、なかなかありません。
    ここ数年、このミスとは相性があまり良くなかったのですが、
    今回ばかりはちょっと見直しました。Good job!高野さん!

  • 折角作り上げた物語に作者の一方的な思想的政治的な説教を加えるという行為は、「その思想に共感できない、また自分の見地から異議を申し立てたい人」とに加えて「そもそも物語にそういう一方的な説教を持ち込まれると不愉快になる人」、その二種類の人種からその話を楽しむ権利を完全に奪い取るから、創作を行い且つ自分の作品をより多くの人に楽しんで貰いたい、という当たり前の欲求を抱いている創作者は気をつけよう、という見本のような作品。
    私も気をつけようと心底思った、という意味では勉強になった一冊。
    まあもしかしたら作者にはその二者を切り捨て、自らの創作作品を政治主張の道具に貶めてまでも主張したいことがあったのかも知れませんが……。
    研人と正勲のエピソードも、単純に異国人の二人が学者としての知的好奇心や子供を助けたいという思いと友情で結びつき、目標に向かうという話だったらすごく楽しめたのに、と非常に勿体ないです。

    あとあまり語られていませんが、多分作者は文系の人間のことも遍く嫌いなんだな、という印象を受けました。
    実際問題、全ての文系人間が理系を貶めているということは常識的に考えてありません。寧ろ日常ではその差異を意識さえしていません。
    こういう一方的なレッテル貼りは普通に相互理解しようと思っている人間さえも怒りに突き落としてその気持ちを奪うだけなので良くないと思います。

    …そういうことをしてしまう作者だからこそ、感想冒頭で述べたような、作品自体を損なうような真似を平気でできるのかも知れませんが。

    あと「ミステリー」の間口は私が思う以上に途方もなく広いんだな、と驚かされました。

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著者プロフィール

高野 和明(たかの かずあき)
1964年、東京都生まれの小説家・脚本家。日本推理作家協会会員。
幼少の頃から映画監督を志していた。ロサンゼルス・シティー・カレッジ映画科中退。 1991年Vシネマの監督を誘われたことがきっかけの中退で、帰国後は脚本家として活動した。
2000年に江戸川乱歩賞への応募を目的に書かれたミステリー『13階段』が、2001年第47回江戸川乱歩賞を満場一致で受賞。その後も脚本家として活動しつつ執筆活動を行っており、2011年の『ジェノサイド』が第2回山田風太郎賞と第65回日本推理作家協会賞(長編および連作短編編集部門賞)を受賞、「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」ともに1位に。本屋大賞ノミネートも果たしている。2013年に文庫化され、ベストセラーとなった。

高野和明の作品

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