ジェノサイド

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
4.29
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  • Amazon.co.jp ・本 (590ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048741835

作品紹介・あらすじ

急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入するが…。

感想・レビュー・書評

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  • アフリカ・コンゴ、アメリカ、日本を舞台にしたアクション×サスペンス×エンタメ群像劇!
    これは人類の「新・出アフリカ」記か。

    人類の脅威となりうる「何か」がコンゴで<生まれた>。それを火種に、米ホワイトハウスから物語が動き出す。「何か」に付けられた暗号名は<ヌース>。そして作戦名<ネメシス作戦>。

    アメリカ政府機関、アフリカ紛争の内実、世界情勢、理系基礎研究、軍事、諜報、人類学などの緻密な描写が説得力と重厚さを生み、物語のスケールを支える。

    約500万年前にアフリカで生まれた人類。約20万年前に現生人類が「出アフリカ」し、何万年もかけて地球上に広がった。
    ここから、ふたたび人類が始まるのか。それとも、終わりの始まりか。

    大統領以下の政府高官、科学者、傭兵、日本の大学院生まで、それぞれの信念と思惑が絡み合う。
    デッドライン(文字通りの)があり「逃げながら闘う」2つのストーリー。
    急流のような話の流れに、丹念に張られた伏線。それらが回収されたときのカタルシス。

    人間の本質、戦争の非人道性などテーマは軽くはない。
    しかし、活劇としての純粋な面白さと、知的好奇心への刺激を感じられる傑作だ。
    あっという間の590ページでした。





    作者の、意味不明(?)な日本人下げと たまに挿入される思想的スタンスはすこし引っかかるが・・・おいておこう。
    あのラストを描いてくれたのだから。

    • Tomoyukiさん
      かえさん
      ぜひ楽しんでください!(^^)
      読み終えたら推しメンを教えてくださいね。笑
      かえさん
      ぜひ楽しんでください!(^^)
      読み終えたら推しメンを教えてくださいね。笑
      2024/03/03
    • shintak5555さん
      サル推しです。
      サル推しです。
      2024/03/03
    • Tomoyukiさん
      shintak5555さん
      推しごとのプロの方がいた….笑。
      シングルトン推しとかいってスンマセンでした!
      shintak5555さん
      推しごとのプロの方がいた….笑。
      シングルトン推しとかいってスンマセンでした!
      2024/03/04

  • 元グリーンベレーの傭兵 イエーガーは、不治の難病を抱える息子の命を救うために大金が必要だった。そこへ、多額の報酬と最高ランク機密の作戦任務の依頼がくる。イエーガーは『暗殺任務』ではないかと考えたが余命一ヶ月となった息子の命を救うため承諾する。イエーガーは選りすぐりの精鋭である3人の仲間と共に訓練を受け、第一次アフリカ大戦真っ只中のコンゴ民主共和国に潜入。そこで行われる「ガーディアン作戦」とは、危険な感染症が蔓延したピグミー族の住人たちを『一斉駆除』すること。そしてもう一つ、【これまで見たこともない生物】を見つけた場合、直ちに殺せという謎の任務だった。

    専門分野を薬学とする大学院生の古賀研人は、父親の葬儀を終え、自宅のパソコンに届いた一通のメールを見て驚く。それは急死した父親からのメールで、父親が死亡してから5日後に送信されたものだった。そこには「不治の病を治療する新薬開発を、極秘に一人で完成させろ」「しかし、身の危険を感じた場合はすぐに放棄しろ」と書かれていた。父親の残したメモから、実験用のアパートと 創薬ソフトの入ったパソコンを手にした研人。そして、研人の携帯電話にかかってきた『今すぐあなたの部屋から逃げろ』という音声変換されたメッセージ。このソフトを手にしたことで、何者かに自分の命が狙われていると気づいた研人。しかし、病に冒された少女との出会いと 韓国人留学生の正勲の協力のもと、少女の命の尽きる前に新薬開発を成功させようとする。


    『人類滅亡の可能性
    アフリカに新種の生物出現』


    何の接点もないイエーガーと研人。アフリカと東京のアパートの一室で同時進行する二つの物語。それを繋ぐ鍵は、現生人類の存続を脅かす『驚異的な知能を持つ生物』。

    ✎┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    疲れる読書だった。
    何日かけて読んだのか。薬学の知識など難しい箇所では何度も寝落ち。

    戦争の残虐なシーンでは心が折れるどころか粉砕し一旦やめる。

    けれど、最後の研人とイエーガー、そして人類の命が危うくなるシーンがグルグル変わりながらやってくる展開に、そこからは心臓バクバクさせながら一気に読みきった!!「逃げきれー!」「新薬届けー!」と心の中は大騒ぎだった笑

    研人と正勲の勇敢な青年の物語がなければ最後まで読み進めることは出来なかったかもしれない。

    「戦争がこんなに怖いものだとは知らなかったんだよ」というピアーズ。本当にそう。人間が人間に対してこんなにも酷いことができるのかと。特に子供兵のページは心臓握りつぶされたように痛かった。また戦争からの帰還兵がPTSDを患うのも当たり前かとも思った。銃を持った子どもたちを敵にして殺し合う。まともな精神でいられるはずがない。

    核のボタンを持つ大統領の愚かな決断を聞いた時は、ルーベンスの「この思い上がった下等動物を殺せ!」という心の声に「そうだ!そうだ!」と賛同しそうになった。
    ジェノサイドを繰り返すのが人間だというハイマンズに、ルーベンスが「互いを思いやる心を持ったヒトの方が僅かに上回っているから、現生人類は滅びていないのでは」と反論するところも良かったな。

    研人が アキリに言った言葉。「もう安心だよ。ここには戦争はないからね。この国の人たちは、もう戦争しないと決めたんだ。」

    子どもたちの未来の為に、自分たちの命を顧みず闘った研人と正勲の言葉をアキリはどう受けとめたのか。

    いまだに戦争をやめない私達を見て、アキリは人類に失望し見切りをつけないで欲しいと願うばかりです。

    そして今度こそは間違えずに「グレイヴディッガー」を借りてこれますように(*ノ>ᴗ<)テヘ 笑

    • ゆーき本さん
      いっきゅーさん疲れた…。
      いっきゅーさんもお仕事お疲れ様。
      やっぱりそのくらいボケないとダメかー笑
      明日あたりまたジェノサイドのレビューあげ...
      いっきゅーさん疲れた…。
      いっきゅーさんもお仕事お疲れ様。
      やっぱりそのくらいボケないとダメかー笑
      明日あたりまたジェノサイドのレビューあげてみるか笑
      2024/01/19
    • 1Q84O1さん
      明日、ジェノサイド再レビュー!
      「グレイヴディッガー」を読んだ時もジェノサイドのレビューで!w
      明日、ジェノサイド再レビュー!
      「グレイヴディッガー」を読んだ時もジェノサイドのレビューで!w
      2024/01/19
    • ゆーき本さん
      書くことなくなるわっ!笑
      わたしのレビュー読んだだけで、ほぼお話読んだのと一緒くらいになっちゃうよ笑
      書くことなくなるわっ!笑
      わたしのレビュー読んだだけで、ほぼお話読んだのと一緒くらいになっちゃうよ笑
      2024/01/19
  • 読むのに時間がかかりましたが私の稚拙な感想では本書の凄みが表せないシリーズの星10ぶち抜き案件です。
    なので、数多くあるレビューの中の添え物としてそっと書こうと思います。例えるなら、ほか弁に入っている申し訳程度のお野菜ですね。

    『ジェノサイド』この言葉を知ったのは『サイレン』というホラーゲームでした。エンディング後に主人公がえらい事になり敵をフルボッコにする様を物知りの友人がこう表現していたのです。
    以来、私もすぐ冗談で「ジェノサイドするしかないな」とか言っていたのですが、本書を読んでこの言葉の重みを痛感し軽々しく使えなくなりました。
    相手が敵であれジェノサイドは正しいのか…

    高野さんの『グレイヴディッガー』でもそうだったのですが登場人物ごとの物語が交互に行き来します。更に登場人物が増えて内容も混み入っているのに読みやすくて分かりやすく、再三書いていますが脚本家の方は本当に凄い!
    科学と暴力と政治が交互に展開するので緊張感がずっと持続します。

    父親が亡くなり『肺胞上皮細胞硬化症』という難病の特効薬をたった一月で合成するという無茶苦茶なミッションを引き継いだ、院生の研人。
    重度の『肺胞上皮細胞硬化症』に苦しんでいる息子の治療費を稼ぐために民間軍事会社で身体を張って戦いに身をやつしているイェーガー。主にこの2人を主軸に物語は展開します。ここにファッキ〇大統領のバーンズや飛び抜けたIQを持つ心理学にも明るい科学者のルーベンスなどかなりの登場人物が絡んできます。

    もう禁止用語を使ってしまう位の怒りを覚えてしまうバーンズですが、今の時代に読むとプーチンに比べたらマシだなと思ってしまいますね。ドヤ顔で再選する気満々なので遠い国の私ですら頭を抱えているのに、ロシアの良識ある方々のご心労は計り知れないと思うのです。何故こんな現世への憂いが出てくるのかと言うと、本書は2011年に書かれたもので作中でも出て来ますがイラク戦争が終わったすぐ後の話です。
    2024年の今、あれ同等かそれ以上に酷い殺し合いが続いている現状にゾッとしたからなのです。
    もし今、イェーガーを含め抜擢された4人の特殊部隊が暗殺を命令されたとある未確認生物が現存していたら、我々人類を見てどんな決断を下すのか暫く考えてしまいました。

    ここまででお察しの通り、読むのにかなりのエネルギーを必要とします。科学がサッパリなので知らない世界を知るのは楽しくて大好きなのですが、理解するまでに時間がかかった事も原因ではあります。政治の暗部や人間の善悪、神の視点から見た人類、何度も出て来る大量虐殺(子供も含まれます)に虐待。
    かなりヘビーです。
    それ故に命を懸けて他人を救おうとする研人と見返りも求めず研人を助ける韓国人のジョンフンの善性に感動が止まらないのです。

    このバランスが絶妙。話の構成も素晴らしいので海外ドラマを見ている時のように先が読めずにハラハラし通しで、眠いけど少しだけでも、と思っていたら終盤はもうページを捲る手が止まらなくなり結局目がギンギンに冴えた上に最後の方で何度もやってくる久々の涙腺崩壊。
    目の下のクマに加えて明日は目が腫れぼったくなっているというフルコンボですが、眼鏡をかけて誤魔化そうと思います。(さっき鏡を見てあまりの酷い顔に変な声が出ましたが)

    イェーガー達が派遣されたのが南アフリカなので、舞台が日本、アメリカ、南アフリカと転換するのもページ数が多いのに一切飽きない要素の1つでした。
    基本的にはバーンズが1番酷く書かれてはいますが、日本人にもヤバい人物が出て来ます。この辺りが平等なのでより本書で提示されている問題が身につまされます。

    もしかすると小難しく思われてしまったかも知れませんが、この内容なのにエンタメ性が失われていないのでエネルギーは必要ですが全然苦ではありません。今こそ読むべき本だと思いますのでお気になられている方は是非チャレンジしてみて欲しい一冊です。

    前のレビューで集中して読書をしたい時は音楽を流すと書いたのですが、今回は終盤ずっと『人間椅子』というクールすぎるおじ様メタルバンドの『さらば世界』という楽曲をリピートしていました。
    このバンド、私はメタルで文学作品を聴かせてくれるバンドという認識なのですがこの楽曲は本書にピッタリな気がしました。
    ちなみに、PVのCGの雑さが最高です。逆に今これが出来るなんてたまりません。

    • yukimisakeさん
      シンさまが混乱されている!笑
      そうそう、日本の美味しい食べ物、チキン南蛮タルタルソースがけを研人から教えてもらい、ハマってしまう戦場グルメ小...
      シンさまが混乱されている!笑
      そうそう、日本の美味しい食べ物、チキン南蛮タルタルソースがけを研人から教えてもらい、ハマってしまう戦場グルメ小説です笑


      違うー!!笑笑
      2024/02/05
    • 1Q84O1さん
      レビューは濃く、弁当をあっさりにしますか
      あっさり…、あっさり…、唐揚げのレモンソースなどw
      もう、弁当の話はいいか…(^.^;
      レビューは濃く、弁当をあっさりにしますか
      あっさり…、あっさり…、唐揚げのレモンソースなどw
      もう、弁当の話はいいか…(^.^;
      2024/02/05
    • yukimisakeさん
      本日のお弁当は肉じゃがと卵焼きなのでややあっさりでした笑
      唐揚げのレモンソース!食べたばかりなのにお腹減るー!!
      本日のお弁当は肉じゃがと卵焼きなのでややあっさりでした笑
      唐揚げのレモンソース!食べたばかりなのにお腹減るー!!
      2024/02/05
  • 2020/08/30読了
    #このミス作品43冊目

    高度な知識を持った新人類の誕生に
    恐れを抱く現人類の国を興した抹殺計画。
    学生に委ねられたタイムリミット付きの
    難病ワクチンの創薬。
    2軸で進む壮大なストーリー。
    とにかく頭フル回転で読み進めたい。

  • 難解な専門用語に打ちのめされながらも、先が気になって読み進めずにはいられなかった。

    ・強欲と権力と傲慢が渦巻くホワイトハウス
    ・濃密なジャングルの湿度と血なまぐさい戦闘に渦巻くコンゴ
    ・荒削りでそしてフレッシュな頭脳をフル回転させている2人の若い科学者が潜む日本の小さな1部屋

    この3つの拠点で、新薬と未知なる生命を巡りそれぞれが命をかける。

    これでもかというほどの残虐な描写が続くストーリーのラストは、暗雲の中から一筋の美しい光が射すような思いがけず爽やかなものだった。

    なんといっても魅力的だったのは大学院生2人の愛おしいまでの情熱だろう。
    時間との戦いとなる後半はハラハラしどおしであった。「無理だ」と言わなくなった研人が自分の命を顧みずに薬を届ける場面では手を握りしめながらページをめくった。窮地でも柔らかく笑ってきっちり仕事をこなす正勲がまたパートナーとして素晴らしい。余談になるが、韓国の「情(ジョン)」の考えにもとても惹かれた。

    エマの敵への報復もまた見どころである。
    大統領にも思い切り報復を与えて欲しいとおもったけれど、未来永劫の恐怖を与えることが1番の報復なのだなぁと解釈。

    本編中、人類とは人類の歴史とはなんと強欲と血にまみれた穢らわしいものなんだろうと悲しくなった。
    日本では報道されない理不尽な紛争が世界にはあふれているのだろう。

    ラストに研人がアキリに言った「この国の人たちは、もう戦争はしないと決めたんだ」という言葉が嘘になりませんように。と願ってやまない。
    ピグミーのような愛すべき民族も平和で暮らせる地球であってほしい。

    この著名な著者の作品を読むのは今回初めてだったが、なかなか生気を吸い取られる作品だった。
    読み終わってしばしぼーっとしてしまった。
    また他の本も読んで生気を吸い取られてみたい。笑

  • 最後の最後まで綱渡りの連続。
    ドキドキハラハラの読書時間だった。

    著者の人間という生き物に対する評価は厳しく、それに反論する術がないように私には思える。
    この物語の中では研人と正勲の存在が何よりの希望だった。
    終盤、逃げろという警告に逆らう研人の姿に感動した。
    薬を届けるために危険だと分かっている場所に乗り込む姿にも。

    たくさんの人が死んでいくけれど、死んだ人が悪人で生き残った人が善人だというわけではないのだろうと思った。
    物語を読んでいるとどうしても助かってほしい人と、この人さえいなければと思ってしまう人が出てくるけれど、それは読者の視点がある程度固定されているからではないかという気かがする。
    感情移入しやすい相手としにくい相手がどうしても出てきてしまう。
    日本人であること以外の情報がほとんど明かされなかったミックは、感情移入しにくい相手の典型ではないか。
    それでも私は彼が死んでしまったことが悲しかった。
    チームの誰とも心を通わせられなかった彼のことが悲しくて仕方なかった。

    私が毎日同じ時間に起きて、同じ時間に電車に乗って、ほぼ同じ時間に会社を出て帰宅しているのと同時刻に、生きるために病気と闘っている人や自分を殺そうとする相手から必死で逃げようとしている人がいる。
    知らないわけではない。
    でもそれは実感には程遠くて、今日あった小さな嫌なことよりも私の脳内での重要度は低くなっている。
    時折思い出しては、私は一体何をしているんだろうと自己嫌悪に襲われるけれど、だからと言って何が出来るというわけではない。
    この物語の中で行われるジェノサイドに気分が悪くなりながら感じたことは、私にはこの残忍な行いを非難することは出来ないのではないかということだった。
    自分の手で誰かを殺したことはないし、人の尊厳を踏みにじったこともないと思っている。
    でも、私はこの世界でのうのうと生きているではないか。
    苦しんでいる人の存在を知りながら、テレビの映像に眉を顰めながらも自分の欲望を優先しているではないか。
    ひどいと感じながらも、では自分は?という問いかけにさらに気分が沈んでいった。

    どう生きるべきなのかなんて、考えれば考えるほど判らなくなる。
    誰かが正解を提示してくれたとして、それを実行出来る自信がない。
    あまりに無力で、臆病で、怠惰で、ずる賢いのだ。嫌になるくらいに。

    心に残ったセリフがある。
    「もう安心だよ。ここには戦争はないからね。この国の人たちは、もう戦争はしないと決めたんだ」
    この言葉を読んだ時、いつまでもそう言い続けられる国であってほしいと心から思った。
    周辺国の動きであるとか、国内の事情だけでどうにか出来ることばかりではないのだろうけれど、「やめたんです」と言い切ってしまう頑固さがあってもいいのではないだろうか。
    誰がどうするとか、どう言ったかなんて関係ない。ただ私はやめると決めたんです、と。
    自分が正しいと信じたことのために命を懸けたこの物語の主人公達のように真っ直ぐに、そして頑固に、言い切ってしまってもいいのではないだろうか。
    それはこの国に生きる人間が善良であるとか、高潔であるとか、そんなことではなくて、それによって罪悪感が減じるとか考えているわけでもない。
    ただ、研人が口にしたその言葉はどこまでも優しくて、強いと思った。
    ちょっと泣きそうにもなった。
    生きるための闘いが、戦争という手段を選ばなくなってほしい。湧きあがってきたのはそういう思いだったのかもしれない。

    • 九月猫さん
      takanatsuさん、こんにちは。

      takanatsuさんが選びそうにない本(わたしの勝手なイメージですが)
      だったので、オドロキ...
      takanatsuさん、こんにちは。

      takanatsuさんが選びそうにない本(わたしの勝手なイメージですが)
      だったので、オドロキました。
      この本、とても気になってるんですけれど、
      恐ろしいタイトルに腰が引けまくりで・・・(^^;)
      やっぱり死人が多そうですけれど、読後感はどうでしたか?
      読後感がよさそうなら、読みたいです。
      2013/07/20
    • takanatsuさん
      九月猫さん、コメントありがとうございます!
      ご想像の通り、最初はタイトルが怖そうだからと避けていたのですが、ブクログの高評価のレビュや会社の...
      九月猫さん、コメントありがとうございます!
      ご想像の通り、最初はタイトルが怖そうだからと避けていたのですが、ブクログの高評価のレビュや会社の人の「面白かった!」の一言で読む気になりました。
      最後は爽やかに閉じられていますが、途中の戦闘シーンや殺戮シーンは気持ちが悪くなりました。
      私は救いが欲しくて続きを読まずにはいられなくなりました。

      興味深く読めるところもあるし、ドキドキハラハラして面白いところもあるし、人間も捨てたものじゃないよ!と思えるところもあります。
      でも、気分が沈むところもたくさんありました。

      読後感はどうだったかと言われると、そんなには良くなかったかもしれません。
      物語のハッピーエンドに良かったなと思う一方で、どよんと何かが沈殿している感じがあったように思います。

      …ううむ。プラスなことが書けなくてすみません。
      でもすごく引き込まれる作品でした。
      2013/07/20
    • 九月猫さん
      takanatsuさん♪

      わっ、さっそくのお返事ありがとうございます!
      むむむっ、なんだか読んでいる間中、気持ちが、
      上がったり下...
      takanatsuさん♪

      わっ、さっそくのお返事ありがとうございます!
      むむむっ、なんだか読んでいる間中、気持ちが、
      上がったり下がったりぐるぐるしたりしそうな作品ですね。
      ラストは爽やかとのことなので(どよんともするようですが;)、
      すんごい元気でハデな映画を観た後なんかに、
      同じ勢いで読んだらいいかも、ですね。

      残酷な描写があっても、読んでいるかたが多くて、評価も高いってことは、
      それだけ心をつかまれる何かがあるってことですものね。
      うん、いつかチャレンジすることにします!

      教えてくださって、ありがとうございました(*´∇`*)
      2013/07/20
  • 急死した父親から届いたメール。
    そこには不可解な頼みごとが綴られており、その最後には、決して誰にも言わないようにとの言葉が書かれていた。
    理由も目的もわからないまま父の遺志を継ぎ研究をすすめる、大学院生の息子、研人。

    一方、難病を患い余命いくばくもない息子のための治療費を得ようと、アフリカへ向かう民間軍事サービスの傭兵、イエーガー。

    どこにも接点の見当たらない2人。
    東京の研人とアフリカにいるイエーガーの人生が交錯する。

    研人の行動を国防を阻害するものだとして排除にかかるアメリカの諜報部。研人の知人や友人、家族にもその手が及び、いよいよ追い詰められていく。
    行動範囲が狭められ大切な人たちにも近づけなくなっていき、その孤独は増す。


    読んでいると、はらはらする。息が詰まる。
    しかしながらすべてを投げ出して、その場から消えてしまいたくなるような、もうどうにでもなれといった投げやりな気持ちは湧いてこない。
    それは、研人のそばには、正勲という信頼できる友人がいて、彼の研究を支えてくれるからだ。彼は、研人が警察に追い詰められて、自分にも危機が迫ってきていると知ったときも、最悪の場合の結果よりも、うまくいったときに起こるであろう良いほうの結果を信じる明るさがあり、研人のことを決して見放すことはない。
    危険を回避できるようにアドバイスを与えてくれる人もいる。

    だからだろう。
    極限まで追い詰められていても、肉体的には厳しい状態であっても、
    信頼できる人が近くにいてくれて、自分がやり通したい使命があることが、未来を感じさせてくれる。
    必ず人を助けると決意した彼はますますタフになり、折れない心を持つことができた。

    多くの人たちが登場し、それぞれの行動は複雑で、それぞれの利害のためにランダムに動いている。それでも多いとはいえ、地球上には有限の数の人間しかいないわけで、驚くほど離れている人たちが絡まっていることを思わずにはいられない。
    あちこちに様々な伏線を張りながら、きっちりと回収されていき納得の結末が用意されている。

    バイオレンスもあり、目をふさぎたくなる部分もあった(きっと現実の方がもっと醜いことが多いと思うけど)
    現実の世界でも起こっているのでは、と恐怖を感じる作品でもある。
    それでも、大いに希望の持てる結末と普通の人が必死に生きるその先にある良心や使命を存分に堪能した。
    大きな仕事をやり終えたかのようにふぅと息を吐いて余韻を楽しんだ1冊。

    • だいさん
      試料解析室のおばちゃんは、機器の操作とデータを見て予測できる、という件がありましたよね。
      こういう人が研究を支えているのだなぁ~、と感心しま...
      試料解析室のおばちゃんは、機器の操作とデータを見て予測できる、という件がありましたよね。
      こういう人が研究を支えているのだなぁ~、と感心しました。
      2013/09/07
    • nico314さん
      だい▽さん、こんにちは!

      私もそう思いました。
      創薬って膨大な時間とお金をかけて実験を積み重ねても、
      完成したりしなかったりと気が...
      だい▽さん、こんにちは!

      私もそう思いました。
      創薬って膨大な時間とお金をかけて実験を積み重ねても、
      完成したりしなかったりと気が遠くなりそうです。
      閃いたり何かを見つける人と、職人さんのように誰にも真似できない
      技を持った人たちによって成立しているのでしょうね。

      ちょっとだけ登場する人たちにも想像力がかき立てられて、
      映像を見ているようでした。
      2013/09/07
  • 高野氏は発表順に「13階段」「グレイブディッガー」「K・Nの悲劇」と読んできて、少し飛ばして4冊目。ブクログの本の紹介で「急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。」とそこまでで紹介を読むのを止めて読み進む。死んだ父からのメール? そそられるではないか。

    今回はアフリカはコンゴのピグミー集落、アメリカはワシントン、そして薬学部の大学院生古賀研人のいる東京、とこの3地点がからまる、またもや追いつ追われつの物語だった。「グレイヴディッガー」でも手術までに骨髄を提供しなければ、という切羽詰まった設定だったが、今回も父からのメールは、1か月で、ある難病の特効薬を開発しろ、というもの。果たして研人は開発できるのか? いままでの3冊の読後感から、高野氏は大団円的な終りだよなあ、と希望を抱きつつ、読む。

    今回のメインは新薬と「超人類」(と勝手に名付けてしまった)。未知の人類に対してとる社会、政治の中の人間模様を描いている。SF的にも見えるのだが、SFじゃない、やはりミステリーという読み心地。異質なものに対する人間の行動をいろいろと書き込んでいる。

    いつかはこんな「超人類」が出現するのか? 出現したらおもしろいなあ、と思う。でも周りはどう? 影響は? 当の本人たちはどうなのか? いろいろと思う。

    攻防戦での残虐な描写がつらかった。
    アフリカに密命を帯びて行く、アメリカの兵士4人。中の一人は日本人の設定で、どうやら幼児に虐待を受けて育ったので、現在の手早い行動がある、という設定。これもつらかった。

    イラク侵攻とかを背景に描いていて、そこでのアメリカの論理、人間の戦いへの高野氏の考えが織り込まれている。


    野性時代 2010.4月号から2011.4月号連載

    2011.3.30初版 図書館

  • すごい!!とんでもなくすごいスケールの物語だった!
    ”人類“というものの本質を考えさせられる壮大なお話でした。
    もう、面白くって面白くって!!
    残虐な辛いシーンもたくさんあるけれど…ラストは大感動でした。
    (図書館本で読みましたが、私は文庫を買うことを決めました!)

    日本で父を亡くしたばかりの研人、
    難病の子を持つ衛兵、イエーガー、
    ホワイトハウスのバーンズ大統領、
    優秀な頭脳を持ち分析官としてホワイトハウスに呼ばれるルーベンス、
    主に、この4視点から語られ、時折他の人の視点も入りますが、高野さんの文は読みやすく、混乱もしないまま、グイグイ読めます。(理数系おバカの私でも大丈夫だった)

    人類は100年で滅びると言ったのは、ホーキング博士だったよね。100年経ったら、自分は死んでるからいいや、なんて思ってる私ですが・・・「ヒト」というのは、善の心もいっぱいあるはずなのに、この世で戦争は無くならない。そういったことを、いろいろと考えながら読んでいました。
    息を呑むほどの傑作でした!!

    印象に残ったところ・・・
    ーーーーー
    不幸というものは、傍観者であるか、当事者であるかによって、見え方はまったく異なる。

    科学技術力こそが国力に直結する時代に、科学者や技術者を冷遇していては発展は望めない。

    戦争当事者の中で、もっとも残忍な意思を持つ人間、つまり戦争開始を決定する最高権力者ほど、敵からの心理的・物理的距離が離れた位置に置かれているということである。

    「生物は、長い時間をかけて微細な変化を蓄積させていく一方で、ある時突然、大きく形質を変え得る」

    仲間を窮地から救え。この世界にはそんな人間もいることを、アキリに見せなくてはならない。

    「恐ろしいのは知力ではなく、ましてや武力でもない。この世でもっとも恐ろしいのは、それを使う人格なんです」

    私は人間という生物が嫌いなんだ。(中略)すべての生物種の中で、人間だけが同種間の大量殺戮(ジェノサイド)を行う唯一の動物だからだ。それがヒトという生き物の定義だよ。

    全知全能の存在を夢想し、異教徒を敵と見放すのは、ホモ・サピエンスに広く見られる習性だ。肌の色や言語の違いだけでなく、どんな神を信じるかも敵みかたを識別するための装置として機能する。その上、神は、悔い改めたと言いさえすれば、大量殺戮の罪感すらも消し去ってくれる便利な存在なのだ。

    世界はこんなに美しいのに、とイエーガーは思った。この星には、人間という害獣がいる。

    生命の脆さに、人間のおぞましさに、善の無力さに、そして善悪の判断すらつかないでいる自分自身に、イエーガーは苛立ち、哀しみ、声を殺して泣き続けた。
    ーーーーー
    この作品、以前から気になりつつ
    、なかなか手に取らずにいたけど(ジェノサイドという題名の怖さでかな)もっと早く読めば良かった「私のバカバカ!」という気持ち。間違いなく、今年のマイベストに入ります!それにしても、なぜ映画化されてないんだろう?ハリウッド映画化されてもおかしくないのになあ。読み終えてみると、私個人としては、題名は『GIFT』でも良い気がしました。

  • かなりのボリューム!

    1ページあたりの文字数が多く
    専門用語も多いため
    読むのに時間はかかるが
    読み応え抜群
    とても面白かった


    物語の全体像がわかってくると
    先が気になり
    パラパラページをめくってしまうことも。


    人間が嫌になるが
    人間のよさも感じる物語。


    そして自分も人間なのだと
    改めて思い知る。

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著者プロフィール

1964年生まれ。2001年に『13階段』で第47回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。著書に『幽霊人命救助隊』、『夢のカルテ』(阪上仁志との共著)など。2011年、『ジェノサイド』で第2回山田風太郎賞を受賞。自著のドラマ化『6時間後に君は死ぬ』では脚本・監督も務めた。

「2012年 『グレイヴディッガー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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