歌集 滑走路

著者 :
  • KADOKAWA
4.07
  • (34)
  • (48)
  • (22)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 455
レビュー : 57
  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048764773

作品紹介・あらすじ

生きづらい、不安な時代を生きるすべての人へ 若き歌人が残した295首のエール

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 歌集なのに映画化…?ってどういうことなんだろう…と思ったのがきっかけで借りた本。図書館本。私が好きな歌人、尾崎左永子さんみを感じた。

    「言葉と言葉」
    遠くからみてもあなたとわかるのはあなたがあなたしかいないから

    表紙の「滑走路」と、離陸した飛行機。読み終えて「そっか…そうだったのか…」と思った。言葉だけを残して決意し飛び立ち、違う場所に行ってしまったのだ……と感じた。目に見えない翼にも似ている言葉。自由や心って一体なんなんだろう…。萩原さんの短歌をもっともっと読みたかった。

    映画化決定(サイト) https://eiga.com/news/20200325/2/

    【メモ】
    命や継承をテーマにした詩集(『手から、手へ』)と、「もうこの世には存在していない」人に焦点をあてた作品(『朽ちていった命』、『滑走路』)を続けて読んでしまったので、振り幅が大きすぎてどうしたらいいのかわからなくなってしまい気持ちが落ち着かない日が続いた。

  • 近代詩集なんてほとんど読んだことないし感動したこともない、それが古典になるまでその価値は確定出来ないと思っている。本書が元になって映画化されると知って読んでみた。確かに映画化できそうなネタはそろっているが、何故か他人の日記を覗き見しているような気になった、確かに途中で「日記ではないのだ・・・」という句があって本人も日記を書いているじゃないだろうかと不安になったのかもしれない、まあ著者が夭折しているので、こういう社会の弱者が生まれてくる社会なんだと気付くことになった。

  • きみのため用意されたる滑走路きみは翼を手にすればいい
     萩原慎一郎

     昨年初夏、32歳で世を去った作者の遺歌集が版を重ねている。新聞やテレビ番組で話題となり、角川書店の総合誌「短歌」7月号でも特集が組まれた。20代、30代の心を揺さぶる、次のような歌がある。

     ぼくも非正規きみも非正規秋がきて牛丼屋にて牛丼食べる

     若い世代の4割近くが非正規雇用であり、「も」のリフレインに現実感が濃厚だ。「きみ」は、職場の同僚ともとれるが、牛丼店の従業員のことかもしれない。

     「研修中」だったあなたが「店員」になって真剣な眼差しがいい

     飲食店などで「研修中」のバッジをつけていた「あなた」が、数カ月後、独り立ちしたことにエールを送っている。働く若者同士のささやかな連帯感と、寄り添う「眼差し」に、体温がある。

     ぼくたちの世代の歌が居酒屋で流れているよ そういう歳だ

     一人称の「ぼく」を歌っても、おのずと同世代の「ぼくたち」を歌うことにつながる。居酒屋で耳にしたなじみの曲は、同世代が通勤中でも聞いている曲なのだろう。

     真摯に労働し、生き抜いているが、輝かしい将来像をなかなか描けずにいる「ぼくたち」の肉声。それらが、歌集からひりひりと伝わってくる。

     掲出歌の「きみ」は、同世代であり、自分自身でもあるのだろう。「滑走路」は用意され、あとはただ前を見て一歩飛び出せばよいのだが―夭折が惜しまれてならない。
    (2018年8月26日掲載)

  • 日常の中に潜む「その先」を想像するのが上手い人。帰り道に買うコンビニの肉まんが美味しいことを知っているだろうし、横断歩道のボタンを押す感覚がきっと好きだろうなと思う。人間らしい人間だなあと個人的に感じた。
    この作品は著者が今のままではいけない、もっと、もっとと高みを目指して、そうして、その意志と共に羽ばたくことを願ったのを随所から読み取る事が出来る作品。呼吸に合わせて読みたくなるし、ホットミルクよりも麦茶のほうがこの歌集には合う。
    みそひともじを愛した彼は翼を得ただろうか。ことばに遺された心臓が、とても温かく、柔らかくて、酷く切なくなった。

  • 弟の健也さんの宣伝で知り読み始めました。短歌といえば寺山修司や石川啄木辺りしか読んだことが無かったのですが、これはそういうものに匹敵するような力がある作品だと思いました。時間を忘れて夢中で滑走路の世界観に引き込まれ読み終えたときには、目頭が熱くなっていました。

    いじめとか非正規とかそういう可哀想な人が可哀想な日記を書いたのでなく、どんな状況でも立ち向かい続けた萩原慎一郎という一流の詩人が、平成を代表する大作を残し旅立っていったのだなと思いました。

    この本に出会えて良かったです。

  • 歌集なので、好き嫌いが分かれるというか、刺さる人と刺さらない人の差はすごいと思うけど、私には大きな矢のような感じで心に刺さった。「最後に1冊だけ選んで旅立て」と言われたらきっとこの本を選ぶ。

  • 32歳にして亡くなってしまった若き歌人の初にして遺稿となった歌集。非正規雇用である自身の悶々とした日常を歌いながらも、口語による短歌がとてもいきいきとしている。

    もう少し待ってみようか曇天が過ぎ去ってゆく時を信じて
    おそらくはコンビニエンスストアにも前身ありて今の形に
    消しゴムが丸くなるごと苦労してきっと優しくなってゆくのだ
    提げている袋の中におにぎりと緑茶を入れてもうすぐ春だ
    ぼくも非正規きみも非正規秋がきて牛丼屋にて牛丼食べる
    コピー用紙補充しながらこのままで終わるわけにはいかぬ人生
    自転車の空気入れつつこれからの恋のことなど考えている
    頭を下げて頭を下げて牛丼を食べて頭を下げて暮れゆく
    夜明けとはぼくにとっては残酷だ 朝になったら下っ端だから

  • 俵万智以来の口語短歌。
    俵万智とは違い、ときに悲鳴のような、ときに祈りのような、痛切な思いを感じる。
    バブルで浮き足立っていた頃と、経済的に先が見えない今の違いなのかと思ったけど、それだけではない事があとがきで分かって、やり切れなくなる。
    彼の純粋な感性と才能を潰してしまったかつての野球部員たちは、それでも自分たちの罪ではないと思うんだろうな。いじめた方は覚えてなかったり、自分がしたことを正当化して記憶してたりするから。

  • “生きるのに僕には僕のペースあり飴玉舌に転がしながら”

    “パソコンの向こうにひとがいるんだとアイスクリーム食べて深呼吸”

    “理解者はひとりかふたり でも理解者がいたことはしあわせだった”

  • 新聞の歌壇を毎週楽しみに読んでいる。常連さんがいて、その人達の生活の片鱗、変化が見えることが楽しい。この作者もそんな1人。賞を取った非正規雇用についての短歌はとてもよく覚えている。この歌集は初の歌集だけど遺作になってしまった。全作品を通じての作者の思いの強さが感じられる。遺作だなんてとても悔しい。

全57件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1984年 東京都生まれ私立武蔵高校・早稲田大学卒業。りとむ短歌会所属2017年6月8日逝去(享年32)

「2020年 『歌集 滑走路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

萩原慎一郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上春樹
辻村 深月
ヴィクトール・E...
凪良 ゆう
村田 沙耶香
益田ミリ
朝井 リョウ
有効な右矢印 無効な右矢印

歌集 滑走路を本棚に登録しているひと

ツイートする
×